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第32話 出来すぎた偶然。
獣のように求め合う行為が終わり、グランドピアノ下から身体を起こし身支度を整えたときには、既に夜更けになっていた。
今日教会に訪ねて来てくれた人達は留守だと思って帰ってしまっただろう。
それでも明日の午前中までに薬を取りに来る人達もいる、私は沐浴をしてから薬を作りはじめた。
「アルフレッドは真面目だな。薬が一回分くらいなくても死にはしないよ」
一緒に作業をしてくれるのは有難いが、セドリックはなんてことをいうのだろうか。
「ここまでありがとう。けれどこれ以上君を拘束すること出来ない。家に帰りなさい」
一通りの作業を終えてから私は感謝を伝えると、彼は真面目な面持ちで聞いてきた。
「アルが音楽学校に通ってた頃、……ピアノの教官ってダニエル先生だった?」
「……ええ。よく知っていますね」
彼は私の過去が知りたいらしい。
隠すつもりもなかったので、私は頷いた。
「俺もダニエル教官にピアノを教わってました。あなたの火災事故は十五歳の頃、僕のピアノ事故も十五歳でした。教官が同じなのも偶然すぎると思いませんか?」
セドの教官もダニエル先生だったらしい、こんな偶然はそうそう無いだろう。
「私の場合はピアノの才能は無かったし、事故と言っても火元か家族なんだ。何もおかしいところはないけれど」
「僕の事故の場合は男爵夫人が口を出したと言ってましたが、そのことを相談したあと直ぐに事故に合いました」
セドはパイプオルガンの椅子に座り長い足を組む姿は、まるで絵画のように美しかった。
こんなに魅力的な少年なら、私なんて相手にしなくても数多の人達に愛されるだろうに。
「教官の周り関係者や元教え子達は、みんな金髪で綺麗な容姿をしています。そして何処かしら怪我の跡があるんです。……偶然にしては出来すぎていると思いませんか?」
セドは教官が事故を起こしているとでも言いたいのだろうか。
それは有り得ない話だった。
「数日後くらいまでに町から人が訪ねてくると思います。アルには会ってほしくないですが、仕事上そういう訳にもいかなくなると思うけど、くれぐれも用心してほしい」
そう言い残すとセドリックは去っていった。
確かに私もセドも十五歳で事故に合っているが、これは偶然だと思っていた。
「……」
しかし同じ教官から音楽を学び、同じタイミングで事故に合う、そんな偶然はあるのだろうか。
今更ながら私も少しおかしいと思いはじめていた。
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