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0話-エピローグ
ちゃぷん、と湯の水面が揺れる。
猫足のバスタブで――手狭なのは否めないが、薫と遥か彼方は一緒に湯あみしていた。
「遥か彼方……甘やかして?」
まるで、こどものように薫が甘えてくる。
ふわふわの癖毛を押しつけてきて、髪を撫でるように促す。
(これが薫様の素の顔なのだろうか……幼いというか、これが年相応なのでしょう……)
散々、性技で泣かされたことを思い出しつつ、ほんのりと頬を染める。
しばらく、遥か彼方は薫の髪を撫でてやった。
それから、きゅっと抱きしめる。
遥か彼方なりに主人への服従と愛情表現を示したつもりだ。
「ありがとう。僕は先に出るからゆっくりしていて」
「どこかへ……行くんですか……?」
気ままな彼のことだから、もしかしたらこのまま自分を置いてふらりといなくなってしまうのではないか、そんな不安がよぎった。
「仕事。明日のお昼にはかえってくるから心配しないで。あと、ここの主人に今度はちゃんとした食事を用意するように“注意“するし、それ以外の理由でお前に接触しようとしたら殺すから安心してね?」
なにやら、不穏な言葉が聞こえた気がするが――気を取り直して、遥か彼方は聞く。
「薫様のお仕事は何をされているのですか?」
だが、薫はそれには答えず、言った。
「それ以外は鍵をかけて部屋から出ないように――この世界が残酷なのは予定調和で退屈だからだしね」
何やら、遥か彼方には理解のできない意味深長な言葉を残して、浴室の扉が閉まる。
……これが、美しく、不思議な旅人の薫と記憶喪失の亜人種の青年、遥か彼方の出会いの物語である。
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