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第1話 苦手な常連客
アスランズ王国の首都、大通りから一本入った細い道沿いに、その店はある。
小人の魔道具修理の看板を掲げた店は、大繁盛こそしないが、依頼が絶える日はない。
今日も早速、若い剣士が店にやってきた。
「いらっしゃい、ま……せ」
その顔を見付けて、クリシェは身構えた。
長身に鋭い眼光、引き締まった筋肉は、どれをとっても小人族のクリシェとは真逆だ。
(また来ました……!)
この男はこの数日、何度も同じ剣を修理に持ち込んでくる。
「おはようございます、ガレス様。今日はどういったご用件でしょうか」
クリシェは精いっぱいの作り笑いでガレスを迎えた。
「剣が折れたので、直してほしい」
ガレスがカウンターに剣を置いた。
「……拝見いたします」
剣を鞘から抜く。剣先が大きく欠けていた。
(またです。これで何度目ですか。剣が可哀想です)
クリシェは欠けた剣先を手に取った。クリシェの掌を隠すほどに大きい。
(こんな欠け方、普通はしません。一体、どんな使い方を……)
クリシェはガレスを見上げた。
「つかぬことをお伺いしますが、どうして欠けたのですか?」
ガレスが剣を眺めた。
「振りかぶって、こう……振り下ろしたら、折れた」
ガレスが剣を振る仕草をしてみせた。
「その程度でこんなに大きく欠けるわけがないでしょう!」
クリシェは思わず怒鳴った。瞬間に自分の口を手で覆った。
「だから、折れた」
ガレスが剣先を指さす。
欠けたのではなく折れたのだと主張したいらしい。
クリシェは、またもイラっとした。
「毎回毎回、こうも剣を壊すなんて」
ガレスは王立騎士団の魔導剣士だったはずだ。
剣を折るような腕ではないはずなのに。
「そもそも、うちは魔道具修理屋であって武具修理じゃないんですよ」
「その剣は、魔術剣だ」
「魔術剣は武器でしょう」
「魔道具だ」
ガレスが淡々と言い放つ。譲る気はないらしい。
クリシェは息を吐いた。
「仕方ないので、今回はお引き受けしますが。これが最後ですよ。また折ったら、次こそ武器の修理屋に行ってくださいね」
剣を鞘に納めると、魔術剣を預かる。
後ろの修理棚に置いた。
「大丈夫だ、これが最後だから」
「そうですよ、さすがに最後……え?」
ガレスの言葉が気になって、振り返る。
「また、三日後に来る」
ガレスの視線がクリシェに向く。
その目がいつもより柔らかく感じられた。
気のせいだろうか。
考える間もなく、ガレスが背を向けて店から出て行った。
「修理期間は三日って、言うつもりでしたけど」
先に言われると釈然としない。
これまでの修理も三日で仕上げていたから、覚えていたのだろう。
「最後って、どういう意味でしょう。本当に武器修理屋に行く気になったのでしょうか」
ガレスの言葉が心に引っ掛かる。
折れた剣を、クリシェは見詰めていた。
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