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〈第1部〉プロローグ
少し歳の離れた弟と妹は、昔から好き嫌いが多かった。
「兄ちゃん、俺ピーマン嫌い」
「コラ、兄貴のメシが食えないのかー?」
「私ニンジンいらなーい」
「‥‥はぁ」
共働きで多忙な両親の代わりに食事を作ることが日常であったため、いつしかそれが特技となり趣味にもなっていたのだが、どうにも弟妹の偏食には手を焼いていた。
「お前さ、進路ってもう決めた?」
高校3年。受験という言葉が現実味を増し、周囲は否が応でも自分の将来と向き合い始める。この時点で自分の未来の姿を想像できる生徒はまだそう多くはいないだろう。
‥けれど、中岡優介は違った。
先程配られた希望大学記入用紙を面倒臭そうに眺めている友人からの問いに、優介は迷いのない眼差しを向けて答る。
「俺、栄養教諭になるわ」
希望大学を聞いただけなんだけど‥そう言いたげに目をぱちくりさせている友人を気にも止めず、優介は用紙にザザッと大学名を書き込んで友人に爽やかな笑顔を見せると、足早に職員室へと向かうのだった。
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