10 / 16
10.
振り向く細貝が驚いた顔を見せ、ハッとしたが遅い。
「細貝さん。慣れた様子ですが、よく行くんですか?」
「いや、今回で二回目ですが⋯⋯」
「二回目⋯⋯? ってことは、あの人事の人と行ったんですか」
「人事⋯⋯? 何の話ですか。その初めても今回も大林さん、あなただけですよ」
「へ、ぇ⋯⋯?」
「⋯⋯いくらなんでも覚えてなさすぎですよ⋯⋯」
「え、何か言っ─⋯⋯」
大林の胸倉を掴んだ細貝が唇を押しつけた。
大きく開いた瞳孔が揺れる。
細貝からそんなことをするなんて。だが、この感触覚えがある。
じゃあやはり、初めても細貝と。
「それは覚えているんですね。じゃあ俺にしたことは覚えているんですか?」
「したこと⋯⋯?」
キスをした以外に細貝に何をしたというのか。
呆けた顔をして思考を巡らせていた時、痺れを切らした細貝が言った。
「⋯⋯っ、俺の尻に指を突っ込んで、前立腺と呼ばれるところを押したことですよ! 本当に覚えてないんですかっ!」
目に涙を浮かべ、これ以上ないぐらい真っ赤にして細貝が怒っている。
あの細貝がこんな感情的になるなんて。
そうなった原因は自分ではあるが、本当に一切覚えてない。が、ただ覚えてないと言っても細貝の怒りが収まるはずがない。ここはひとまず。
「えー⋯⋯と⋯⋯。こんなところに連れて行ってしまった挙げ句、そのようなところを許可なく触ってしまい、申し訳ございません」
「本当です。あの日以来、あの時の快感⋯⋯が、忘れられなくてもどかしいんです。責任取ってください」
責任⋯⋯?
と頭の上に疑問符を思い浮かべたのと、細貝がおもむろにズボンを下ろしたのは同時だった。
ともだちにシェアしよう!

