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9.
今回の商談も無事に成立し、会社に良い報告が出来、そのまま直帰していた大林だったが、現在の時間帯の夕日のように途端に気持ちがどんどん沈んでいった。
こんな気持ちを抱えたまま帰りたくない。
どこか呑みに行こうか。けれども、一人で呑む気分ではない。
人恋しい───⋯⋯。
「お、大林さん⋯⋯っ」
行く手を阻むように下がっていた目線の先に靴が映った。
が、呼ばれたその声に思わず顔を上げる。
「⋯⋯細貝さん」
目の前にいたのはあろうことか一方的に気まずさを覚えている人物だった。
今日も顔が赤く見えるのは夕日のせいか。
「どうしてここに」
「営業の人に聞きました。⋯⋯直帰だそうで。でしたら、これから予定はないですよね?」
「え、ええ、まあ⋯⋯」
「でしたら、これから行くところに一緒に行ってもらいます⋯⋯っ」
「え⋯⋯ちょ⋯⋯っ」
有無を言わさず、ぐいっと手首を掴まれ、細貝は足早と歩き出した。
これからどこに行くんだ、とか掴む手が痛いほど力強く、だが、どこか震えているようでそれは何なのかと疑問符が増えていくばかり。
しかし、それを問いかける雰囲気ではなかった。
どちらとも何も言わず、半ば強引に連れて来られたのは。
「え、ラブホ⋯⋯?」
「はい。ラブホです」
「え、いや、なんで⋯⋯」
その疑問に返される応えはなく、そのまま共に中に入った細貝は慣れた手つきでパネルを操作した。
今日このような場所に行くのが初めてである大林とは対照的に当たり前な足取りである部屋に入った細貝の姿を見ていた時、脳裏にあの時見た人事の女性が浮かび、気がつけば手を払っていた。
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