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第6話

 目を覚ますと匠海の目に飛び込んできたのは、知らない天井だった。 「え、病院?」  腕には点滴の針が刺さっている。まだ頭痛はあるが、目だけ横に動かすとそこには丸椅子に腰かけた洲永が心配そうに匠海のことを覗き込んでいた。 「やっと目を覚ましたか」と彼はスポーツドリンクを匠海へ差し出した。 「俺、もしかして倒れました……?」 「そうだ。定食屋で突然、気絶するからずいぶん驚いたんだぞ。救急車を呼ぼうと思ったけれど、息はあったからひとまず近くの内科におぶって診てもらった。過呼吸だって」  大の大人を背負えるなんてどんだけ筋力があるのだろう。ましてや匠海は痩せているわけではないのに。 「そんなに俺とメシ食べることが嫌だったか?」  さきほどまでの自信たっぷりな表情から一変して、目を伏せながら悩むように俯く彼に匠海は慌てて首を振る。 「ち、違うんです。洲永さんの食べる姿があまりにも綺麗だから、俺……つい見惚れてしまって」 「どういうことだ? 食べ方ということか?」  大きな声では言えない性癖をどう伝えたらいいのか分からず、喉の奥でなんども言葉が引っかかる。 「……とにかくリベンジさせてください」 「ひとりでメシを食べたい浮間なのに?」  ひとくちスポーツドリンクを喉に流し込むと、洲永はそのペットボトルを匠海の手から奪って、横を向いて飲み始める。ふたたびしっかりと硬くせりあがる喉仏の動きを凝視してしまい顔が火照る瞬間が自分でも分かった。 「洲永さん……、また、相席、お願いします!」  彼は口からペットボトルを放して、片方の手の甲で零れた水滴を拭う。 「あぁ、今度は業後にゆっくりと相席しようぜ」と彼は言いながら匠海の額に手を当てる。 「ふたりで食べるメシが美味しいってことを、俺が教えてやるから」  まだ洲永は匠海の特殊な性癖を知らない。彼が美しく食べれば食べるほど、洲永に求められたいと願う匠海が現れてしまうというのに。 「洲永さんこそ、覚悟してくださいね。俺をメシに誘ったことを後悔しないでくださいよ」  彼の手のひらからペットボトルを奪い返すと残ったスポーツドリンクを飲み干した。甘くてしょっぱいその味はまるで彼とキスでもしたかのように唇がじんと痺れた。 【相席、お願いします! おわり】

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