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第44話 愛するためにここにいる
ひとまず落ち着いて、蜜とリキは部屋でまったりしている。事件の全貌が見えて来るにつれ、
亡くなった犬や猫の事が偲ばれる。
ギターを抱いて爪弾くリキを、蜜は力丸を膝の上に抱いて見ていた。
煽るようにバーボンを飲んでいるリキに
「なんか、寂しそうだね、リキ。」
リキは切ないブルースをいい声で歌ってから
「おまえも寂しそうだよ。
おいで。」
ギターを置いてリキが言った。
首に齧り付いて
「リキは会いたい人がいる?」
力丸が飛び降りた。
「二人でいるのになんで寂しいんだろ?」
リキは笑って誰かにメールを送った。
しばらくして外に車が停まった。
「シドのクラウンだ。」
「ああ、組の車だな。」
ドアに走って行った蜜がシドを見つけた。
後から恭司も降りてきた。
シドに抱きついてキスしている蜜に
「おいおいラブシーンか?」
「そう、ラブシーン。恭ちゃんとリキも
ラブシーンやりなよ。」
恭司とリキは見つめあって気まずそうにソファに座った。
「飲むか?」
バーボンの瓶を取って
「ああ、ロックで。氷は一つ。」
笑ってグラスに注いだ。
「ミャアーオ。」
力丸が呆れてソファに飛び乗った。
「一緒に暮らさないか?」
恭司がリキに言った。
「シドは部屋住み、終わりだ。
自立しろ、部屋借りて。」
「そうだ、シド、蜜とリキにも見せてやれ。」
シドはシャツを脱いだ。
その背中には和彫りで観音様が彫られていた。
まだ未完成だが、ボカシが入った見事な物だった。以前のタトゥーを上手く柄に取り入れて自然だ。
「なんかこの観音様,蜜に似てるな。」
蜜の写メを彫り師に見せて頼んだのは内緒。
二代目彫武の名が入っている。彫武とグレースは友達だ。
恭司が思い出したように
「神谷の叔父貴から聞いた。
グレースが全ての呪いを解いてくれた。」
動物虐待をやめない者たちには全てのカルマが
絡む。自分たちに戻って来る苦しみ。あの神谷たちの拷問も必要な事だったと言った。誰が手を下さなくてもいつか身をもって償う時が来る。早く止めなくてはまた犠牲が増える。
未だ気狂いじみた動物虐待はなくならない。
わずかでも一石を投じただろうか?
弱いものを、自分は絶対に安全な所から虐待する事に、ゾクゾクする楽しみを見出す哀れな性癖の者がいる。全ては己に返って来るのに。
そんな者たちを皆殺しに出来るわけもない。
リキは悲しいメロディのブルースを歌った。
恭司の目を見てリキが言った。
「高校の時からずいぶん長い付き合いになった。
気がつくと恭司はいつもそばにいてくれた。」
リキに見つめられて恭司は言った。
「あなたを愛するために,俺はここにいる。」
蜜はシドの隣で微笑んでいる。
力丸はソファで丸くなる。
了
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