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第43話 グレース

「ねえ、ジョー、不思議に思わない?」  グレースは神谷丈の始末、の仕事をよく理解している。自分の弟、ユールにもキチンと話している。  非合法な殺人は、してはいけない事だ。それでは合法的な殺人なんて存在するのか?  人を殺してはいけない。もちろんだ。 「俺は地獄に行くと思うよ。」  丈は言った。 「ノーノー、地獄があるのは死んでからじゃないの。生きてるうちに落とされるのよ。  死後の世界、なんてそんなに整然と有るわけじゃない。  人が傷つける。傷つけられた相手は苦しむ。 それはしてはいけない事なの。  生命に刻まれる。傷つける相手が人だけでは無く,生きとし生けるもの全て。全体を指す。  虐待ビジネスは、してはいけない事をするのだから、全部自分に返って来るのは当たり前。  神様とか魔法とかでは無く、この世の理(ことわり)なの。  ジョーがやるのは、理の実行よ。 地獄になんか落ちない。彼らには、ただ自分に返ってきただけだから。丈はただ、代行をしただけ。気に病むことはないわ。」  それでも心優しい神谷丈は、残酷な仕返しが今一つ、嫌な気持ちになってしまうのだ。  C国では臓器売買も当たり前で、何の良心の呵責も感じないそうだ。  我が子が小さいうちに小動物を与えて虐殺の練習をさせる。惨たらしく殺すと 「偉いねぇ、勇気があるねぇ。」  と褒めるらしい。血みどろになるのを恐れない、動物に哀れみなんか持たない事を良し、とする文化。  殺す事を躊躇すると 「勇気がない。そんな事じゃ誰にも勝てないよ。」  と、叱られる。こんな狂った国だ。この事になんら疑問も感じないで育つ人間ばかりの国。 「ジョーは必要悪だよ。大丈夫。ジャーの神は許す。私の力の限り、呪術を掛けておいたから。」    不思議な慰め方をされた。 神谷丈は、自分の始末屋という仕事に、心削られる事も多い。トラウマがすごい。 (それでも誰かが、止めなくては。)  愛犬の大門の首を抱いて、嘆息を吐いた。 (俺は許されなくても殺るしかない。 生かしておけない外道がいるんだ。)  終わりなき戦いだ。人の煩悩との戦い。 殺すのは、一度だって楽しかったことはない。 苦渋に満ちている。

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