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Ⅲ 合流
エドウィンは階段を下りながらスマホをチェックしたが、メッセージは来ていなかった。ブースには戻っていないようだ。
――見つかるまで俺は俺で探すしかないか。
だがこの広い構内のどこを探せばいいのか。隅から隅まで探し回るのは途方もない時間と労力が要る。そこでエドウィンははっとする。
――もしも。クララさんがスマホを落としたことに気づいていなければ、自分が心配されているとは思わないだろう。そのとき彼女が夢中になる何かを見つけたとしたら。
エドウィンが今日行動をともにした短い時間で、彼女が興味を引かれるものがあると目を輝かせてすぐに駆け寄っていったこと、ゲームの列に並ぶことを一瞬迷ったものの、好奇心に勝てず、待とうとしたことを思い出した。
――何かで頭がいっぱいになれば、ついそちらに行ってしまうかもしれない。
エドウィンはスマホを取り出した。
Edwin:クララさんがこの学園祭で興味を持っていたものに心当たりはありますか?
――彼女が興味を持っていて、まだまわっていないところがあれば、そこにいるかもしれない。
一縷の望みをかけてエドウィンがユリウスにLINEすると、返信はすぐに来た。
Julius:そう言えば、漫画アニメ研究会が気になっているようだった
「漫研……」
エドウィンは大学の中央広場に漫画アニメ研究会のブースがあるのを思い出し、駆け出した。
果たして、彼女はそこにいた。
「クララさん!」
漫画アニメ研究会のブースの前でパイプ椅子に座り、スタッフが懸命に何か描いているのをじっと見ていたクラリッサは名前を呼ばれて振り返った。エドウィンが駆けてくるのを見て、鳶色の瞳を大きく見張る。
「エド……」
彼女は駆け寄ってきたエドウィンに小さく呟き、椅子から立ち上がった。
「探しましたよ! あなたとはぐれたから、俺とユリウスさんは心配して探していたんです」
「探した? 心配されるような年齢ではないわ」
「と、とにかく俺と一緒にユリウスさんのところへ行きましょう。あ、見つかったって知らせないと」
エドウィンはすぐにLINEを送った。
「クララ!」
エドウィンとクラリッサがフードコートに戻ると、ユリウスは妹を見るなり駆け寄ってきて彼女を抱き締めた。
「この……馬鹿! どれだけ心配したか……」
クラリッサは兄に抱き締められて不覚にも鼻の奥がツンとしたが、周囲の注目を浴びているのを感じ、恥ずかしさと腹立たしさで彼を押し戻した。
「な……何よ、心配なら電話すればよかったじゃない!」
「お前、スマホを落としたことに気づいてなかったのか!?」
「えっ……!?」
クラリッサが慌てて斜め掛けしていたポシェットを見ると、留め具が外れていた。
「ほら、私が拾っておいた」
「ごめんなさい、兄様……」
クラリッサは電話を持たずに迷子になった自分を兄がどれだけ心配したかを理解し、自身のスマホを受け取ったとき、素真に謝った。
「それにしても……どうしてフラフラと行ってしまったんだ?」
「……それはその、無料で一枚、好きなキャラクターを描いてもらえる、って漫研のポスターに書いてあったから、つい……」
「エドが学内放送をかけてくれたのも聞こえなかったのか?」
「漫研のブースがある広場ではブラスバンド部が演奏会をやっていたから聞こえなかったのかも……」
「……」
ユリウスは大きな溜息を吐き、改めてエドウィンに向き直った。
「エド、妹を見つけてくれてありがとう」
「いえ、見つかってよかったです。……!! そうだ、武道演武!!」
エドウィンが慌てて腕時計を確認すると、開始まであと二十分もなかった。
「やばっ! 早く行って着替えないと!」
エドウィンは急いで大ホールへと向かった。
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