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第12話:ちゃんと上手に出来ている※

   ルッツが諦めて快楽を素直に受け入れてからどれくらい時間が経ったのだろう。 「――っ、ルッツ……!!」 「あ……あ”あっ、シュヴァリエたい、ちょ……うっ……!」  ぎゅっと強く抱きしめられたかと思うと、収められたシュヴァリエの陰茎からようやく熱せられた白濁を吐き出した。つけられたゴムの内側にたっぷり溜まり、膨れたゴムがルッツの内壁を擦った。  シュヴァリエは気持ちよさそうに長く息を吐いている。長い射精の後、しばらく抱き合っていた。  結局シュヴァリエが1度射精するまで、ルッツは更に2回射精した。これもそれもシュヴァリエがルッツの快楽優先で動くからである。  体力の限界を迎えたルッツの身体はもう思うように動かない。全身は心地よい痺れによって痙攣し、だらしなく開いた両足すら満足に閉じられない。  シュヴァリエと繋がっていたものがするりと離れていく。ゴムの先端に白濁が溜まったそれは固さを失っておらず、まだ物足りないと一目で分かる。  それでもシュヴァリエはこれ以上行う気はないらしい。陰茎に付けたゴムをゴミ袋に捨て、力なく布団の上に倒れるルッツの頭を撫でた。 「お疲れ様だ。今身体を拭くから少し待ってくれ」  温かい手のひらが離れていく。遠くで何かが発光し、しばらくすると水に浸したタオルを絞る音が聞こえた。ここに来る前にルッツが使っていた魔法石で作ったぬるま湯だろう。  気怠い身体でぼんやりとテントの低い天井を眺めながら、今日の事を反省していた。これも、いつもやっている事だ。  次こそは、次こそはちゃんとシュヴァリエを満足させるまで気持ち良くさせるんだと決意を固めていた。ここに配属されてから1年は経つが、未だにそれは上手くいっていない。それどころかルッツの気持ち良いところを完全に理解したシュヴァリエにただ慰められ続けるだけだ。  心の内側にある細い決意の柱が、少しずつひび割れていく感覚だ。  気が付けば瞳が熱くなり、ぽろぽろと涙が零れていた。 「ルッツ、どうした!?」  そんなルッツの様子に気付いたシュヴァリエは顔を真っ青にして慌てて駆け寄ってくる。手には絞ったタオルを握り、焦った顔でルッツの目元にタオルを押し当てた。 「痛かったか? 怪我とかしているか? 無理を……させたよな?」 「ちが……違うんです。謝らないで、下さい……貴方は何も悪くない」  心配そうに顔を覗き込むシュヴァリエを安心させようとするが、散々喘いだせいで喉が掠れて説得力がない。ああ、このままではまた心配をかけてしまう。思うように動かない身体がもどかしかった。 「ごめんなさい……」  掠れた弱々しい声が零れる。  次はきっと上手くいくと、気丈に振舞っていた気持ちも自己嫌悪で塗り潰されていく。 「下手くそでごめんなさい……役に立てなくてごめんなさい……」 「ルッツ!!」  咎めるかのような大きな声が、鼓膜を震わせる。  両肩を力強く掴まれ、目を見開けば苦悶を秘めた瞳が見つめている。何かを言いたそうな口が開かれたかと思えばまた閉じてしまった。  シュヴァリエは言葉を発することなく、感情を鎮めるかのように数秒間、目を閉じた。深く何度も深呼吸をした後、再び開いたその目は温かい慈しみを宿していた。 「俺は今とても満たされた気分だよ。本当に……本当に気持ち良かった。君はちゃんと上手に出来ている。だからまた君に頼みたいな」  力なく横たわる身体を持ち上げられ、シュヴァリエにぎゅっと抱きしめられる。あやすように背中をポンポンと優しく叩かれ、泣き腫らした目元に優しいキスが落とされる。 「疲れているのに無茶をさせてすまない。今日はもう休もう。疲れが取れればきっと心も元気になる。きっと、きっと……」  祈るようなシュヴァリエの言葉に胸が苦しくなる。  これ以上迷惑はかけたくないのに、重い瞼は意思を無視して下りていく。胸の温もりに包まれながら、ルッツはそのまま眠ってしまった。  

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