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第13話:おやつを作ろう

   キラーヴォルフ討伐の任務から1週間が経過した。  ルッツはあの後深い眠りに落ち、次に目を覚ました時には朝だった。身体は綺麗に拭かれ、脱いだバスローブも着せてもらい、新しく替えたシーツの上でシュヴァリエと添い寝をしていた。  逞しい腕がルッツを抱き枕のようにぎゅっと抱きしめ、規則的な寝息を立てているのをぼんやりと見つめていた。そうしている内に目を覚ましたシュヴァリエと少し世間話をし、一緒に朝食の準備の為に外へ出た。    その後は各々割り振られた仕事をこなしつつ、何事もなく無事に首都ハルネジアに帰還した。国壁の内側で出迎えてくれる国民たちの前を、気まずい気持ちで通り抜けていた。持ち帰った魔物も解体業者に渡されて、何かの役に立っている事だろう。 ――――――――― 「僕は何をやっているんだろうな……」  皆がまだ起きないような早い時間に起きたルッツは、自室で育てている薬草に水やりをしながら1人呟く。  窓の外を見れば今日も快晴のいい天気で、温かい日の光が世界を照らしている。開けた窓から入り込むそよ風が、部屋中の青々と茂る薬草たちの葉を揺らす。踊るように動く葉から、清涼感のある香りが漂う。  それでもルッツの心には薄暗い影が漂っていた。  一通り水やりを終えた後は朝の読書タイムだ。本棚には自宅から持ってきた植物図鑑や、図書館から借りてきた小説本が収まっている。その小説に手を伸ばした時、ふと先週崖の上で白い花が咲いていた事を思い出した。 「載っているかな?」  思い出せないままなのはなんとも気持ちが良くない。図鑑を掴みなおし、テーブルに向かってページをめくっていく。既視感があるという事は、おそらく薬草関係だろうと踏んでいた。 「あった、これだ」  図鑑には手描きのスケッチと一緒にあの白い花の事が書かれていた。図鑑の説明によると、エリ草という名の植物らしい。葉の部分に様々な栄養と微量の魔力が含まれている特殊な植物のようだ。  希少な薬茶の植物として有名らしく、緊張緩和効果に加え、魔力と疲労の回復効果も非常に高いと書いてある。未だに生息域が不明の珍しい植物なのだとか。また、日の光に弱く、日当たりのよい場所ではなかなか見つけられないらしい。  そういえばあの崖の上にあった花も、長い草や大きな岩の影になるように密かに咲いていた。 「そんなに珍しいなら持ち帰れば良かったかも」  今更悔いても仕方がないが。その後も図鑑をペラペラめくっていくと、外からゴーン……と重々しい鐘の音が鳴る。  騎士団の朝の訓練の小休憩を告げるチャイムだ。聖グローリア騎士団では、一番長い昼休憩の他に、午前と午後に15分程度の小休憩がある。  少しゆっくりしすぎたかもしれないと、ルッツは図鑑を本棚に戻して立ち上がった。  薬の在庫を確認し、訓練所に届けるため鞄の中に詰めていく。基本的に安全を考慮した訓練がされているが、実技訓練など怪我をする事はままある。魔法石の癒しの力は強力だが、その魔法を石に込められる者は多くない為量産は出来ない。なので練習で負った傷は基本的には薬で治療することになっている。 「そうだ。せっかくだから差し入れでも持っていこう。簡単なおやつくらいなら作れるかな」 冷凍庫には討伐したキラーヴォルフの肉が入っている。  今回は討伐した数が多かったため、肉の一部を兵士たちにも分けられていたのだ。リーリブでよく作っていたフレンダが好きなおやつを持っていこう。ルッツは、いそいそと厨房へ向かった。  

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