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番外編:魔術師長とご対面③
ルッツがリベッサとお茶会をして数日が経過した。
あの後シュヴァリエは、ルッツを今すぐ独り占めしたいからとすぐにお開きとなった。ティーポットに余ったエリ草の茶や残りのビスケットはそのままリベッサに渡した。
(そんな事よりその後の方が大変だった……)
シュヴァリエはルッツを自室に運ぶや否や、ベッドに押し倒した。
番になってからというもの、仕事以外でも2人は身体を重ねるようになっていた。相変わらずずっと優しく、甘く溶かしてくれる。
(いつもより、かなり長かったな。すっごく気持ち良かったから良いけど……)
もう肉食獣の口の中でずっと弄ばれているような気分だった。
勿論脱がされる前に、やって良いかの確認をされて了承したからああなったのだが、たっぷり前も後ろも甘やかされた。何度も『可愛い、愛している』と囁かれながら、止めなかったばかりに本当にもう無理という手前のラインまで抱かれた。
お陰で夜になる頃にはぐったりと倒れていた。
「ルッツ、そういえばリベッサ魔術師長から伝言を預かっているぞ。エリ草のお茶、効果が凄かったそうだ」
就業後、シュヴァリエは遅い時間までルッツの部屋に入り浸る事が増えてきた。
一緒に植物に水をやったり、お茶を飲んだり、ベッドに転がってイチャイチャしたり。番になる前では考えられないほど幸せな日々を送っている。
今日は先日渡したエリ草の薬茶の感想をもらったそうだ。
「本当ですか!?」
「ああ、飲んで即回復みたいな事は起きないが、やっぱり一晩寝て起きた後のコンディションが全く違うそうだ。いつもより効率よく魔法石を作れているらしい。泣いて喜んでいたぞ!」
「え、泣くのは流石に大袈裟でしょ……?」
「いや、本当に泣いていた。今後はリベッサ魔術師長以外にも渡されていくだろう。いずれちゃんとお礼をしたいと言っていたし、また彼女の部屋に行ってくれないか? 今度はちゃんとルッツにも分かる話をするから」
「あ、はい。僕もご迷惑をおかけしたのでお詫びを兼ねてまた挨拶に伺いたいです」
正直もうあの程度で嫉妬してしまった事は黒歴史に近い。
リベッサは謝ってくれたが、自分はまだちゃんと謝れていなかった。シュヴァリエに言われなくても、詫びも兼ねて今度甘いお菓子でも作って持っていこうと思っていた。
「あとこれ、彼女からのささやかなプレゼントだ」
そう言ってシュヴァリエはルッツの手のひらに緑色の石を乗せた。癒しの力を込めた魔法石だ。貴重品だから普段は魔物討伐の時にしか渡されない物が、ルッツの手のひらの上で輝いている。
「君にとっては複雑な物かもしれないが、彼女にとってはこれが君に出来る一番のお礼なんだ。だからどうか、受け取ってあげてほしい」
どうやら仕事の支給品ではなく、私物として渡されているようだ。
「良いのですか? 癒しの魔法石は貴重品なのでしょう?」
ルッツは最近ようやく魔法石の作り方を知ったのだが、1つ作るのに想像以上に魔力を使うらしい。魔術師たちの負担は会議の議題にも上がっているくらい深刻な問題だ。
それほどまでに癒しの魔法石は貴重なものだった。そんなものをお茶とビスケットのお礼に頂いても良いのだろうか。
「なあに、君のお陰で彼女も久しぶりにすごく体調が良いと言っていた。それにエリ草の栽培に成功すれば今回だけでなく長期的に、より多くの魔術師を助ける事が出来る。人を癒す医療班である君にこそ受け取ってほしいと言っていたよ」
ルッツは魔法石を握りしめる。
この石は本当に人を救える力を秘めている。魔術師長であるリベッサが一番のお礼と言った、何個あっても足りないくらいの貴重品。それくらいリベッサはルッツに感謝しているのだ。
「嬉しいです。リベッサさんに直接お礼を言いたいです」
「うん、今度リベッサ魔術師長にいつ予定が空いているか聞いておくよ。楽しみだね」
「はい!」
ルッツはいつも持ち歩いているポーチの中に魔法石を大事に仕舞った。
スライムに襲われた時のように、この石に助けられる日が来るかもしれない。そして自分が作った薬茶が、この魔法石を作った魔術師を助ける。
それを実感したから、自分と魔法石を受け入れる事が出来るようになった。
助け合って生きていく……それがルッツの理想の世界だから。
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魔術師長とご対面(完)
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