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子供、2年生になる

「朝陽ー、持ち物準備できてるか? 体操服は?」 「始業式だからいらなーい」  のそのそと起きて来た朝陽が、緩慢な動きで服を着替える。その姿をやきもきと見ながら、恭平は朝陽の水筒にお茶と氷を入れた。 「だから昨日は早く寝ろって言ったのに。早くしないと2年生初日から遅刻だぞ朝陽!」 「だってー、なかなかボス倒せなかったんだもん。ねえ楓」 「あ奴は手ごわかったのお」 「んもー、楓さんまで」  恭平が焼いたウインナーを皿に入れる横で、トースターから焼けたパンを取り出した楓が、ジャムとバターをテーブルに並べてくれる。  三人が揃ったところで、一緒に手を合わせる。 「いただきます」  食パンに乗せるジャムは、楓と朝陽がこの前作ってくれたものだ。市販の物にはなかなかない、容赦のない甘さと大粒の苺がチャームポイントだ。 「あ、そう言えば朝陽、今日帰ってくるの早いよな? 時間的に次のゲームの打ち合わせしてるかもしれないから、裸でいきなり部屋入ってきたりするなよ」  前回の打ち合わせ時を思い出しながら、恭平は朝陽を軽く睨みつけた。友人相手だったからよかったけど、それでも大恥である。 「大丈夫だよ、あれはたまたまだって」 「なんでたまたま裸なことがあるんだよ」 「暑かったんだもん」  暑かったら、服を脱ぐのは当たり前。そう言わんばかりの顔をしてジャム付き食パンを食べ終わった朝陽が、「あ」と動きを止めた。 「そうだ、今日から新学期だから集団登校の集合時間変わってたんだった」 「えっ!?」  そんなの初耳である。コーヒーでむせそうになっていると、「どこだっけかなあ」とのんびりとした動きで朝陽がランドセルを開けた。 「……あ、あったあった。5分前になったんだよね」 「な、なんで今朝になってそんなこと言うんだ!」  慌てて恭平は時計に目をやった。5分前だったら、もう家を出なければいけない時刻だ。 「急げ朝陽! 早く行け!」 「あ、ちょっと待って、名札つけなきゃ」 「だからさっき準備できてるか聞いたのに! もう!」 「待ってってば~……あ痛っ」  焦ると余計に上手くいかないようで、手の中で滑った安全ピンが朝陽の指を刺した。取り落とした名札が床に落ちる。  朝陽の横に屈みこんだ楓が、すかさずそれを拾った。 「ほら朝陽、こっちを向くのじゃ」  楓の大きな手が、朝陽の胸元に名札を止める。ついでに水筒も首にかけさせ、上履き袋を手に持たせた。 「これでよし、じゃ」 「あ、ありがとう楓!」  黄色い安全帽を被った朝陽が、玄関で振り返る。 「行ってきます!」 「いってらっしゃい」  もう二年生なので、集合場所まで送ったりはしない。  駆け足で走る足音が遠ざかるのを聞きながら、恭平はほっと息をついた。 「……とりあえず、初日から遅刻は免れそうですね」 「じゃな」  見上げた先にいる楓と微笑み合う。 「楓さんは……今日は、特区の博物館に手伝いに行く日でしたっけ」 「うむ」 「じゃあこの後、ちょっと、時間ありますよね」  軽く顎を上げると、楓の唇が降ってくる。  その瞬間、玄関が開いた。 「やばい、ランドセル忘れてた!」 (終)

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