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⑼ アプリと恋心
派遣社員はボーナスがないから、ひたすら節約生活で貯蓄をしたい僕。
だからお昼は自作おにぎり二個のみ。早番の土井さんも手作り弁当を食べていた。
「土井さんのお弁当美味しそうですね」
と声を掛けたらおかずを分けてくれて、めっちゃうまかった。
「佐藤君、××さん転勤だって聞いたかい?」
「え、マジですか?やったね!」
意地悪な女は嫌いだ。(昨日もまた土井さんに靴下投げやがって~。許さん!)
「佐藤君声デカイよ。隣の区の特養、正社員足りないんだって」
だから急遽移動するらしい。
土井さんは苦笑いしながら教えてくれた。
新しい正社員がこちらに入るようだ。
未経験ではなく有料老人ホーム経験者の介護福祉士だそうだ。
僕らの気持ちが明るくなった。
明るい職場バンザイ!
スマホが振動した。見ると龍さんからメッセージが来ていた。
(この前はごめんな。今度の休みはいつだ? )
(先日はありがとうございました。金曜は夜勤です。土曜日の朝から日曜日は休みです)
(土曜日の朝職場に迎えに行く)
(眠いからダメです)
(一緒に寝よう)
(眠らせてもらえる気がしない)
(L I◯Eアプリ入れてないのか? )
ニヤつきながら返事してたが、手が止まってしまった。
僕はそのアプリを敢えて使用していない。
昔僕が中学生だった頃ヘビ達がグループを作り、僕をリンチしようと楽しく会話していた。
内緒で見せてくれたクラスメイトがいた。
日時と場所、方法まで計画していて、僕はどうやって戦えばいいか途方にくれた。
今のスマホは働き始めてから購入したからアプリを使っても大丈夫だろうか?
この施設も、たまに認知症の入居者が隙をみて脱走する事があって、捜索を呼びかける時に重宝しているそうだ。
ユニット内の職員同士の休み交換などもスムーズに出来るので、参加を呼び掛けられてはいたのだ。
無料だし。スタンプが可愛いとか、写真やビデオも送り合えるらしいし…って、恋人じゃないのに、僕は何の妄想しとるんじゃ。
僕の身体には龍神が住んでいる。
龍神は僕をヘビから守ってくれるはず。
僕はもう大人で、ひ弱だった中学生じゃない。
僕はその夜アプリをダウンロードして、龍さんへスタンプを送ってみた。
土曜日の朝施設の脇に黒いワンボックスカーが止まっていて、僕はチャリごと龍さんに回収された。
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