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⑻ 僕のお仕事

僕は別に介護職員になりたかった訳じゃない。 高校生の時に母さんが癌になり、具合が悪くて働けなくなった。 母の知り合いの看護師が勤めるグループホームで人手が足りないからと声を掛けてくれて、夕方、認知症のおじいちゃんやおばあちゃんのサポートをするバイトをしていた。 卒業後印刷会社に就職したら、ひと月で倒産して社長は夜逃げした。 慌てて駆け込んだ僕に、ハロワのおじさんは失業手当をもらいながら通える資格取得の学校を勧めてくれた。 介護職員初任者研修を三ヶ月で取得して、介護職員の派遣社員になった。 正社員にならなかったのは、正社員は転勤があるし、基本給が事務職より安いから。下手すると派遣社員の方が稼げる。 それに派遣はサービス残業もない。 一番重要なのは、ゲイバレしてイジメを受けたら契約更新せずに逃げられるから! 介護業界の人手不足は深刻だから、僕はどこででも歓迎される。 それに僕を傷つけたヘビの仲間は、高齢者施設にはほとんどいないと思う。 それに僕には初めて仕事仲間といえそうな人物が出来たかもしれないんだ。 その人の名は「土井(どい)さん」年齢は25歳。独身。全然タイプじゃない。 もちろんノーマルなので気軽に話せる唯一の人だ。 身長が僕とほぼ一緒の彼。 僕よりガリガリな上に某魔法使いの映画に出てくる俳優にソックリで、施設長でさえウッカリあだ名で呼びかける時がある。 「あ、()()ーさん、おはようございます、あ。」 施設長逃げて行ったよ~。 …まあね、兎に角ね、鼻がマンモス並みに大きくて垂れ下がり気味なんだよね~。 目も少女漫画並みだけどギョロリ気味でさ。 微笑むとましなんだけどね~。 僕と同じ派遣社員で、三ヶ月前から同じユニットで働いてる。 猫背で、ヒョコヒョコ歩く姿を若い女性職員は気味悪がって、『土び井ー解放!』と叫んで雑巾を投げつけてるのを目撃してしまった。 もうさ、僕頭にきたんだよ。 「危ないですよ!××さん!」 つい大声で止めに入ったら、それ以来僕と土井さんはキモ男コンビと影で呼ばれている。コレはイジメだ。 けれど女性八割のこの施設で、殴られる訳じゃないし、ゲイバレしてないからとりあえず働いてる。 「ありがとう、佐藤君」 年下の僕に丁寧に頭を下げて礼を言う。 そんな土井さんは決して介護に手を抜かない。 僕も逃げるだけじゃなくて、入居者さんに誠実に接してお世話したいと思うんだ。 介護は24時間切れ目がない仕事だ。 早番、日勤、遅番、夜勤でシフトを組んでいる。 子供がいる女性社員が日勤帯を独占してるから、派遣社員はそれ以外のシフトで使われている。 夜勤も8時間勤務だから、月5回は入るけど、他の2フロアーに一人ずつ夜勤者がいるから心細くはない。 でも22時から6時過ぎ迄は僕一人で20名のお世話をしなくてはならない。 でも若い女性職員がいないからかえって気楽だ。 廊下の自動販売機の釣り銭口に、ウンコ入れたの誰だ~? 10円玉と僕の指、洗っても匂いとれない。 夢のような初体験から2日経ち、僕のお尻と腰はだいぶ復活した。 介護職は腰が命。 今日は隣のユニットに土井さんが早番出勤していて僕とお昼が重なった。 楽しいランチタイムになりそうだ。

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