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閑話⑷ー② おばあちゃんは異世界人 女子高校生 A奈の告白(後編)
特養老人ホームのモッサいひとは、A奈のそばにトコトコやってくると、恥ずかしそうに笑って自己紹介した。
「 このユニットで働いてる、佐藤 るいです。よろしくお願いします! 」
あれ?なんだかよく顔を見るとかわいい?髪が邪魔でよくわからん。
「 ◯◯中学校から来ました、T橋 A奈です。 よろしくお願いします 」
A奈は外面はいいから、挨拶はきちんとできるのさ。
佐藤さんはA奈を入居している老人達の所へ連れて行って、みんなに紹介した。
「 こちらは◯◯中学校から職業体験に来てくれました、T橋 A奈さんです。よろしくお願いしますね~ 」
佐藤さんのしゃべり方はなんかオネエ臭かった。
「 T橋 A奈です。よろしくお願いします! 」
老人達は口々に
「 あら、わざわざここに来てくれたの?ありがとうね~」
「 よろしく! ほれ、飴っこ食べらいん」
などと話しかけてくれた。
全員車椅子で、ここにいない人は寝たきりの人だと佐藤さんが教えてくれた。
廊下の隅に、車椅子でウロウロしてるおばあちゃんがいた。
佐藤さんが車椅子を押して連れてきた。
「 ◯代さん、T橋さんが遊びに来たよ 」
「 こんにちは。T橋 A奈 です。よろしくお願いします 」
挨拶しても、あらぬ方向を見て反応がない。無視された。
「 ◯代さんは、重度の認知症だから、お返事は難しいけど聞こえてるから話しかけてみてね 」
え?話しかけるって、何を?天気とかの話題出せばいいの?わかんないんですけど。
「 お姉さん、こっちにおいで。テレビでも見てお茶飲んだらいいよ 」
佐藤さんはA奈を認知症じゃない老人達の側に座らせ、みんなで10時のお茶を飲んで世間話をした。
佐藤さんは湯のみをA奈に洗わせてる間、寝たきりの人のオムツを替えに行った。
それが済むと、A奈と入居者の部屋を掃除したが、その部屋を使ってる本人に掃除していいかと許可を得ていた。
物腰がホテルとか、デパートの人みたい。
えー?こっちは綺麗にしてあげるんだから、わざわざ丁寧に訊かなくてもいいんじゃないの?
ベッドメイキングや床の掃除をしてたら、あっと言う間にお昼になった。
あと30分で帰れる。やった!
佐藤さんは認知症の◯代さんの食事介助を横で見学するよう言った。
「 あと少しだから、椅子に座って休んでてね 。疲れたでしょ? 」
身体ヘロヘロなのバレてる~。
◯代さんは、A奈のおばあちゃんと変わらない年に見えた。おばあちゃんもこうなったらどうしよう?
なんか急に涙が出てきた。
「 あたしのおばあちゃん、認知症になっちゃった。この人みたいになったらどう接したらいいの?今も時々あたしの事わからないし 、嘘つくし、汚れたパンツ隠すし 」
佐藤さんはA奈を椅子に座らせてから話し始めた。
「 僕は介護の仕事を始めてまだ半年なんだ。だからわからない事もあるんだよ。でも、相手はもっとわからなくて不安なんだな、と思うんだ 」
佐藤さんは◯代さんの手を握ってにっこり笑いかけてる。
「 T橋さんのおばあちゃんも、突然異世界にきたみたいに感じるんじゃないかな? それで、わからないことがあって、どうしていいか不安になるから隠したり、嘘ついたりするんだよ 」
「 あたしはどうすればいいの? 」
「 迷子になった人に親切にすればいいんだと思う。ほら流行りの異世界モノには、必ず親切に面倒見てくれる人いるでしょ? 僕はアレの真似してるんだよ!」
「 できるかわかんないよ 」
「 一人で悩んじゃダメだよ。福祉の人に相談してみて。今度みんなで見学においでよ 」
泣いてたら、何にも反応がなかった◯代さんがA奈の頭を撫でていた。
◯代さんは異世界の迷い人になっても、優しさは残っていたんだね。
職場体験はあっと言う間に終了した。
A奈が涙ポロポロ流してたら、何故か佐藤さんまで泣きだした。
佐藤さんはメガネを外して目を拭いたら、コンタクトが外れて落ちた。
A奈が拾ったら、色が黒かった。
え?黒のカラコン?わざわざ?
佐藤さんの瞳を見たら、外れた方が蜂蜜色をしていた。
慌てて受け取る佐藤さん。
困ったように笑う顔はジャ◯ーズの◯山君より可愛かった。マジか!
夜一人で考えた。
アレは、バレたくないから変装してるんだよね。
バレたらあそこの女の人に迫られそうだよね。
A奈も秘密にしておくからね、佐藤さん。
高校入ったら、お礼がてら会いに行っていいかな。
やっぱストーカーぽいかな……… 。
まあ、家はこんなだし。
想うだけならいいよね?
おばあちゃんの認知は進み、お風呂はA奈が短パンとTシャツで付き添って身体を洗ったり、手を貸して湯船に入れたりするようになった。
ママに、A奈がおばあちゃんの接し方を異世界の迷い人だと思うようにしたと話したら笑っていた。
おばあちゃんが湯上がりに脱衣所で抱きついてきたから、A奈がびしょ濡れになってしまった。
おばあちゃんに紙パンツとパジャマを着せてから、A奈が服を脱ぎながらママを呼ぶ。
「 ママー!終わったからおばあちゃん連れてってー!!」
ガラリと戸が開き、沈黙してるので振り向くと、ヤンキー①がこちらを見て呆然としている。
え?なに?
「 ぎゃー!!」
A奈すっぽんぽんだったよ!
「 わあああ!すいません!」
ヤンキー①が走り去った。
あいつ殺してやる~!!
今年、無事高校に入ったA奈。
おばあちゃんの認知症が進み、徘徊するので目が離せず、佐藤さんには会いに行っていない。
学校から帰宅したら、おばあちゃんがまた行方不明になっていた。洋服やお気に入りの茶巾袋に名前と住所、電話番号を縫い付けてるが、今日は着物を着て出かけてしまったようだ。部屋には脱いだ紙おむつが……… 。
おばあちゃんノーパンか!
オーマイゴット!!
急いで近所をヤンキー①と探す。
A奈はアレ以来、コイツの顔を見れない。
何故だ。
コイツの目がいけないんだ!
なんか、こう、燃えてるみたいで怖いんだもん。
スマホにママから発見されたと連絡が入る。
お日さま商店街の婦人服屋で保護してるらしい。
ママ、A奈、ヤンキー①が迎えに行く。
おばあちゃんはお漏らしして外をウロウロしていた所を、偶然介護職員の若い男性が見つけてこちらに協力を求めてきたという。
迅速に身体を清潔にして、着替えさせてくれたそうで、その男性は用事があるからと去って行ってしまった。
そうお店の人が教えてくれた。
「 なんとか名前と電話番号を書いてもらいましたよ 」
ママが受け取る。
「 佐藤 瑠衣さんね 」
え?今なんて?
「 ママ、それ見せて 」
もしかしてこれは運命?
「 ちょっと待って、今お礼の電話をしてみるから 」
ママがスマホを取りだす。
「 ちょっ、ママかしてよ!」
紙の切れ端に手を伸ばす。あと少し。
そこへヌッと手が出てきて紙を千切りとり、おばあちゃんが口へイン!
クチャクチャクチャクチャ。
「 !!」
「 おばあちゃん!食べちゃダメ! 」
ゴクリ。
大声にビックリしておばあちゃん飲んじゃったよ!うっそ、マジか!?
「 あら、もうないわ。すいません、お水もらえますか?」
ママ冷静だな…… 。
「 あぁ、さよなら私の初恋…… 」
A奈が呟く。
「 初恋…… 」
ヤンキー①が呟く。
「 あんたなに言ってるの?」
とママ。
「 その人、A奈の初恋の人なの! 番号知りたかったのに~!」
おばあちゃんのばか~!
無事おばあちゃんはゲットしたけど、佐藤さんの電話番号と初恋はロストしてしまったよ。
職場体験の施設にママが電話したら、佐藤さんは派遣期間終了で退職していた。
いつかお礼だけでも伝えたいな。
おばあちゃんを助けてくれてありがとうございました!
もうすぐクリスマス。
今日はママとおばあちゃんは美容室にお出かけ。
父親は会長宅に呼ばれて行った。
ママに編み物を教えてもらおうと思い本を開く。
やっぱ最初はマフラーかな~?
誰に編んであげよーかな?
…… 父親うるさそう。
ソファでひとりゴロゴロしてると、ヤンキー①がやってきた。
あれ?休みなのかな。父親と出かけなかったんだ。
「…… 」
「 ? なに? 」
そんなにジッと見られると困るんですけど。
編み物の本を持ちながら起き上がる。
「 それ、初恋の人に編んでやるのか?」
へ?初恋?
「 だ、誰に編んでもいいでしょ!」
アンタに関係ないし!
何故か口調がムキになっていく。
ヤンキー①が急にA奈の前に跪く。
ちょっ⁉︎ 何、そのボーズは⁉︎
ヤンキー①は春から髪を黒く戻して、なんだか短く爽やかな髪型にしていた。ちょっとはカッコ良くなったんじゃないの?知らないけど。
21歳になったらしいしね。
ヤンキー①はA奈の両手を包み込んで言った。
「 俺の初恋はA奈だ。初めてこの家に来た時から、頭の中にはお前しかいない。A奈が東京の大学に行きたがってるのは知ってる。お前が東京に行けば、俺の初恋は終わる 。A奈、ここにずっといてくれないか? 」
じりじりと距離を詰めて、A奈の脚の間に身体をねじ込んでくる。
何故か、A奈はドキドキして力が入らない。しっかりしろ、A奈!押し返すのよ!
よく見ると、端正な顔立ちのヤンキー①が、今度は両手で顔を挟んできたー。
ちょっ、ちょ、息がかかるんですけど~。はひぃぃ~。
「 A奈の裸を見た時、社長に殺されてもいいから抱いちまおうと思った。 今すぐにでも、お前が頷いたら食い尽くしたいくらいなんだ 」
ひ~A奈は食料じゃないからね~。
「 た、食べちゃだめぇ…… 」
「 いいっていえよ」
べろりとA奈の唇を舐めあげる。
「 や、やだもん…… 」
角度を変えてそっと舌を差し込んでくる。
「いえって 。俺のものになってくれ 」
「………… 」
「 いえって 」
「 …… ここじゃやだもん 」
ヤンキー①に拉致られて、夕方までラブホで食らいつくされた。
帰ったら速攻で父親にA奈をくださいと土下座したからまあ、許してやる。
佐藤さんに会えたのは、ヤンキー①がうちに婿入りした後のことだった。
佐藤さんが菊田さんになっていた。
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