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(37)監禁
「 千葉議員?元環境大臣の?」
組長が問う。
「 県出身者では一番大臣就任回数が多い大物だな 」
龍さんが呟いて僕を見る。
僕の様子を確認しながら加藤弁護士が続ける。
「 会長は、議員の自宅に家政婦として女性を送り込み調査させてました。弱味を探してたんです 。あらゆる場所にカメラや盗聴器を仕掛けました。もちろん子供部屋にも 」
そして、何か網にかかってくるのを待った。
やがて、長女がとんでもないことをやらかす。
「 その家政婦から会長に、長女がクラスメイトを自分の部屋のウォークインクローゼットに監禁したと連絡が入ったのです 」
「 それが瑠衣君か 」
組長が僕へと視線を寄越した。
「 そうです。長女は、友達はお茶を飲んですぐ帰ったと告げたが、クローゼットの監視カメラには薬で意識のない瑠衣君が縛られて横たわっているのが映っていた 。屋敷内の数台のカメラが写す画像はリアルタイムで家政婦のパソコンから組長のパソコンへ転送され、録画してありました 」
加藤弁護士が鍵のついたアタッシュケースから、茶封筒を取り出した。
中から数枚の写真を抜き、組長に渡す。
その写真を見た組長が顔をしかめた。
龍さんが会長に視線を合わせると、会長が頷く。
組長の蓮さんが写真を龍さんに手渡すと、再び加藤弁護士が説明を続けた。
「 その写真は、家政婦が撮影したものです。長女は猟奇殺人犯を捕まえる海外ドラマに嵌っていて、ドラマの犯人のように小動物を虐待して庭に埋めていました 」
恐らく皮を剥がれたり、解剖遊びに使われた猫やウサギを掘り起こして撮影したのだろう。
龍さんが覗こうとした僕を止めた。
僕が恐がると思ったのだろう。
「 大丈夫だよ、龍さん。僕は彼女のスマホで死んだこの子達を見せられたんだよ 。可愛いのに逃げようとするから殺しちゃったと可笑しそうに笑ってたよ 」
「 瑠衣君、話をするのは辛くないですか? 」
加藤弁護士は僕があの時の事を思い出して苦しむと心配してくれている。
僕は首を振る。
「 僕は家政婦さんが会長に助けを呼んでくれて龍青会に救出されました。会長が僕の母に身の安全と慰謝料を保障するから、事件の録画を取り引きに使いたいと申し出て、母はそれを了承しました。そして僕は会長の刺青を見て、赤龍神を授けてもらったんです 」
それが全て。何も暗い話を細かく説明する必要はない。
「 そこまで端折られては、会長のお気持ちが組長と龍君に伝わりませんよ。会長は、瑠衣君に誠意ある対応をした事をこの二人に分かって欲しいのですよ 」
加藤弁護士が必死で取り繕うが、蓮さんも龍さんも憮然としている。
「 会長になって引退した気でいるから、突然善人にでもなったつもりだろうけどよ。嘘はダメだろ。あらかた親父が議員と対等に張り合う為に瑠衣君を半殺しまで放置しておけと命令したんだろう? 」
「…… 」
会長の沈黙が蓮さんの言葉を肯定している。
相手に食われかけてる状態で、生温い恐喝では反撃の糸口さえ掴めないのだ。
徹底した反撃材料が欲しかった。
己の為より組の、組員の家族の為にも。
会長は僕にそう言って謝った。
「 会長は入院先の病院の床に土下座して、組や組員の家族の生活を守る為に僕を利用して悪かったと謝ってくれたんだよ。だからもういいの! 」
僕が断言する。
「 組員の家族のため…… 」
蓮さんが呟いた。
「 もういいって…… 。あっさり許し過ぎだろ 、瑠衣 」
龍さんにまた眉間のシワが…… 。
えー、僕が何も考えてないみたいに見ないで龍さん。
「 わしを許してくれるのか? 瑠衣君 」
「 はい。会長もお気を悩ませないでくださいね 」
「 昔みたいにタメ口がいいんだがな 」
「え?いいの?みんなの前なのに」
「 いい、いい。どうせすぐにバレるしな 」
「 そっか。ならいいかな~ 」
「 いいとも。昔はずっとこうだったろ?な、菊田 」
会長が突然龍さんのお義父さんに振る。
「 ……まあ、会長ご本人が納得してるなら、俺は何も言う事はありませんよ 」
「 なんだこの中学生のダチみたいなノリは…… 」
組長が呆れてる。
それまで事の成り行きを見守っていた会長夫人が、僕に話しかけてきた。
「 今日は瑠衣君に会ってもらいたい人がいるのよ。ちょっと待っててね 」
廊下に出ると、しばらくしてまた襖が開いた。
会長夫人の後から入ってきた人物を見た僕は、びっくりして大声で叫んじゃったよ!
「 相沢さん⁉︎ 」
「 お久しぶり。元気だった?」
ふくふくとした懐かしい笑顔があった。
「 瑠衣、この方は? 」
龍さんが訊いてきた。
「 ほら、僕が先月まで働いてた老人ホームでとてもお世話になった人だよ! ユニットリーダーをしていて、鈴木さんのセクハラの事も相談したら、すぐシフトを替えてくれたんだよ! 」
一年以上、お節介なお母さんみたいに面倒を見てくれたとてもいい人だよ。
改めて相沢さんは会長や皆に挨拶をし、龍さんと僕にお祝いの言葉をかけてくれた。
「 菊田さん、瑠衣君、この度はご結婚おめでとうございます。お二人のご結婚を知り、ぜひ申し上げたいことがあり本日はお邪魔させていただきました 」
龍さんと僕に話したい事?なんだろう?
キョトンとした顔の僕を見て、会長夫人が可笑しそうに笑う。
え?なんだろう?
「 瑠衣君、分からないみたいだから教えちゃうけど‥‥。相沢さんは、議員の自宅にうちが潜らせたあの時の家政婦さんよ 」
ええぇぇ~~~⁉︎
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