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(38) 相沢さんは女スパイ?

うそーん。相沢さんが女スパイ!?びっくりだよ~。 「 瑠衣、声が出てるぞ 」 龍さんのツッコミが入りましたぁ。 でも、あの時の家政婦さんよりなんかふっくらしてるぞ? 「 瑠衣君、あの頃と比べてかなり私が太ったから分からなかったのね。施設でもいつか気づかれるんじゃと警戒していたけど、女性職員を避けてたしね 」 さ、さすが女スパイ。バレてます。はひ~。 「 私がお二人にお話ししたい事は、会長は決して瑠衣君を龍青会の道具のように扱うつもりではなかったという事です 」 いつもの気のいいお母さんの顔とは違い、見たことのない厳しい顔だ。 まるでこれから戦場に行く女戦士のようだ。 「 私が瑠衣君をその場で助け出す事は可能でした。ですが、長女を気絶させ拘束したら龍青会を潰すことになり、今この繁栄はなかったと断言します。私は彼女が風呂でその場を離れた時に、必ず助け出すから急所以外の場所に怪我を負うように瑠衣君に指示しました 。結果、龍青会や関連会社は急成長し、瑠衣君は回復して望みの龍神の刺青を手に入れました 」 相沢さんの言葉に若頭の菊田さん、補佐の高橋さんが頷く。会長は腕組みをして相沢さんを見守っている。 「会長は瑠衣君が成人して結婚するまで、私に瑠衣君を影で支えるよう指示しました 」 「 それで同じ職場にいたんですね」 今思い出したが、かなり顔の印象も違う。 「 昔は一重でしたよね? 鼻ももう少し高かったような? 」 「 あちらに追われてますからね、山本先生に魔法をかけてもらいました。体型は、中年太りですけどね 」 ふふふ、と微笑む。 「 あと10年くらいは一緒に働くつもりでいたのよ。それまでに仲良くなって、瑠衣君が結婚してもお友達として会いたいと思っていたの。予想外に結婚が早くてびっくりしちゃったわ」 うん、僕もまさか結婚すると思ってなかったよ! 龍さんを見て、ウンウンと頷いてたら、 「 こら 」と軽く頭をくしゃりとされたよ。 「僕が独身で派遣場所を変えたらどうするつもりだったの?」 「 あら、もちろんまた偶然を装って一緒に働くつもりでいたわ 。会長のコネは広いのよ 」 僕はそこまで見守ってもらっていたんだね。 感激だよ~。我慢出来ずに抱きついちゃった~。 「 ありがとう相沢さん!」 優しさをありがとう!大好き! 「 あらあら 」 そういいつつ抱きとめてくれた。 「 おい、龍、あれはお母さんの抱擁だからな?」 蓮さんが説明してくれてるよ。 龍さんがジト目で見てる~!?うそーん。 「 指示したのはワシなんだがなぁ 」 会長が寂しげに呟く。 「 なんだ親父、瑠衣君に抱きついてもらいたいみたいだな 」 蓮さんが呆れてる。 龍さんの視線が怖いから、その場を取りなさなくちゃ! 「 相沢さんは、自分はある人に恩義があるからそれに報いるために議員を探ってると明かしてくれたんだ。危険な仕事を覚悟させるほどの人は、どんな人なんだろうと思った。生きて会いたいと思ったよ。病院で会長さんに会った時、僕わかったよ。みんなの命を背負って戦ってる人なんだなって 」 僕は会長さんの前まで移動し、正座して告げた。 「 だから僕も会長みたいな龍神を彫って、カッコいい男になりたかったんだよ! 」 「 瑠衣君!」 熱い男同士の抱擁が決まったよ!! 「 龍、あれは親子…… 。いや爺さんと孫の抱擁だからな?」 「…… 」 蓮さんの説明が再び入ってるよ。 龍さんの眉間のシワが深い~。ひぃ~。 ドスドスと龍さんがやってきて、会長から僕を引っぺがすと、また元の位置に戻って二人で正座した。 気持ち龍さんにくっついてるけど。えへへ。 おっと、まだ会長さん宅だった。 相沢さんはクスクス笑ってる。 蓮さんと高橋さんは呆気にとられてるよ。 「 今度は私の話を聞いてくれるかしら? 」 会長夫人が声をかけてきた。 龍さんと僕は居住まいを正して言葉を待つ。 「 龍君が結婚したら、ぜひ伝えたいことがあったの。龍君には私の我儘で非凡な人生を歩ませてしまって申し訳ないと思っています 。本当にごめんなさいね 」 会長夫人の突然の謝罪に龍さんが慌ててる。 「 会長夫人、頭を上げてください!」 「 龍君を菊田の養子にして、蓮のための護衛に育てるように命令したのは私です 」 26年前、何度目かの流産を経験してやっと生まれてきたのが現龍青会組長、蓮さんだった。 幼少の頃は病弱で、小学校に入学するまで月に二度は熱を出し、たいそう母の小夜子さんの気を揉ませた。 小学生になったものの、龍青会の組員には蓮さんと同学年の息子を持つ者はおらず、遊び相手は2、3歳年が離れていた。 当時組長だった夫の大学 廣は、登下校の護衛を当時18歳だった菊田に任せた。 菊田は強面の寡黙な青年で、護衛としての不安はなかったが、小夜子の心配はそれ以外の、むしろ学校生活にあったのだ。 極道の息子としていずれは自覚して菊田に鍛えてもらうにしても、学校生活での子供達のカーストには親の職業はむしろやっかみの原因となった。 会社員の家庭ではありえない登下校の黒塗りの車と護衛。 着ている服のさりげない高級感。 担任教師のどこか遠慮がちな蓮への接し方が子供達の不満を生み、ある日びしょ濡れの蓮を菊田が連れて帰ってきた。 翌日、小夜子は校長に抗議し、ひと月間登校から下校まで、果てはトイレの中まで付き添った。 クラスメイトの子供達は親に伝えて、付き添いは大袈裟だと止めるよう校長に抗議したという。 抗議なら直接聞くまで聞き入れません、と担任や校長を突っぱねた。 子供達の親は、あの子には関わるなと釘を刺した。 子供達も蓮の母親の気迫に押され、いじめどころか怯えて蓮に寄りさえしなくなった。 時は経ち、蓮は友達が1人も出来ずに3年生に進級した。 蓮はずっとひとりぼっちだった。 小夜子は焦って、若い菊田に身寄りのない子供を養子に取ることを考えついた。 蓮に安全で楽しい学校生活を送らせたい。 そう、夫を説得して菊田に施設をまわるよう指示した。 菊田が龍と出会ったのは、繁華街にみかじめ料を集金に行く途中に立ち寄った公園だった。 その少年は、暗闇の中薄汚い野良犬に自分のパンを分け与え、寄り添って頭を撫でていた。 汚れた服を着て、痩せた身体をしていたが、菊田を見る瞳には鋭さがあったという。 「 姐さん、俺は菊田のオヤジに養子にしてもらい感謝しかありません。オヤジから聞いてると思いますが、俺の母親は本当に最低な親でした。オヤジに拾ってもらわなければ死んでいたかもしれません 」 僕は龍さんの言葉にショックを受けた。 思わず龍さんのスーツの袖を握ってしまったよ。 龍さんはそんな僕を慰めるように手を重ねて安心させるように笑っていった。 「 まあ、菊田のオヤジにかけられた言葉にはさすがに度肝を抜かれたがな 」 今度はクックと思い出し笑いをして、発言者へ視線を向けた。 「 お義父さんは何て言ったの?」 僕が答えを急かした。 菊田さんは龍さんが蓮さんと同じ小学3年生と知り、こう言ったという。 「 もし帰る家がないなら、龍青会の(ぼん)の猟犬になれ 」

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