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(39)龍青会の猟犬になれ

「 住む場所と食事は保障するし、毎月お前に給料を出そう 。俺の息子になって、学校で坊ちゃんのボディーガードをするんだ 」 若い菊田さんは小学生の龍さんに初っ端から仕事モード全開だったらしい。 「 なんか、芸能人のスカウトもびっくりだね 」 僕つい呟いちゃったよ。 「ガキに変にご機嫌取ったり、嘘つく方が怪しい奴だろう? 俺はそんなのは向いてねえからな 」 お義父さんはハハハと僕が慣れつつある笑い声を上げた。 僕が怪我をした当時は、この陽気な面は抑えていたのだろう。 気を使わせてたんだね。 僕も暗かったしね。 いつ向こうの人達に捕まるか不安だったし。 「 龍は立派な龍青会の影の猟犬になってくれた。それは俺が保障する。お袋の我儘を聞いてくれて感謝してるよ 」 蓮さんの言葉に僕以外の皆の顔がびっくりしている。 「 お前からそんな素直な言葉を聞けるとは思わなかったな 」 龍さんが驚き、戸惑ってるよ。うれしそうだけど。 「 今日はお前達の祝いの日だろ。はなむけがわりだよ 」 お、蓮さんが照れくさそうに鼻を手で擦ってる。なんか少年ジャ◯プみたいだね! あ、思い出した。 「 昔|菊田さん《おとうさん》が言ってたのは、龍さんのことだったんだね!」 「 え⁉︎」 龍さんがまたまたびっくり。 「 昔、僕の病室で家族の話になって、俺には20歳になる真面目で仕事の出来る自慢の息子がいるんだって言ってたんだよ!ね、お義父さん! 」 今僕はそれに全面的に賛成!ついでにカッコよさも加えて下さい! あれ?お義父さんと龍さんが沈黙してるよ。 ここ熱い抱擁じゃないの? あ、そうだ。 「 会長さんに訊いたら、俺にも20歳の将来有望な息子がいるぞと自慢してたよ。組の将来は安泰だって。組長さんのことだよね?龍さん !」 「 あら、あなたがそんなことを…… 」 小夜子さんが会長を見る。 「 へぇ、お前、瑠衣君に息子自慢か 。ハハハハ」 高橋社長が大笑い。意外なのかな? 「 案外親バカなんですね…… 」 相沢さん、そのツッコミ大丈夫ですか? 「 会長も若頭も天邪鬼ですからね 」 冷静だね加藤弁護士。 会長と蓮さんと、龍さんとお義父さんの生温い沈黙を破ったのは、愛しの旦那さんだった。 「 瑠衣、会長は他に何か言ってたか?」 「 え?他に? 」 えーと? 「 僕の怪我を見て、治って大人になったら、キャバクラやオッパイパブ連れてくから元気出せ!って励ましてくれたよ!」 まあ、行かないけどね。 「 中学生に何いってんだか 」 と蓮さん。 「瑠衣、行くつもりか? 」 龍さん。目が猟犬なんですけど…… 。 「 い、いかないでしゅ …… 」 「 …… ホント気が休まらねぇ 」 「 お察ししますよ 」 加藤弁護士が同意してるよ。 え?なんでー? 「 まあ、とにかく、今日は二人のめでたい門出の日だ。これは組から龍達への祝いだ 」 先程納めた三千万円を受け取るつもりはないらしい。これをどう決着つけたらいいんだろう? それを納めたのは会長だった。 「 これじゃいつまでも|埒《らち》があかん。蓮、一旦お前が受け取れ。株で儲けて返してやりゃいいだろ 」 「 親父、簡単にいうなよ 」 蓮さんがぶーたれてる。 「 瑠衣だって急かさんだろう。な?」 会長すごい笑顔だよ? 「う、うん 」 むしろいらないし。株なんて早々儲からないしね? 気を使わせない為の口上だよね? 「ここまで期待されないと逆にムカつくんだが…… 」 え、蓮さん不機嫌? 「 お前の才能を知らんからな 」 会長がニヤついてる~。 「 龍さん以外目に入らないですからね、基本は 」 加藤弁護士の発言に龍さんが噛み付く。 「 基本ってなんだ?」 「まあ…… 瑠衣君には、類友が集まりやすいですからね…… 」 加藤弁護士が小声で囁く。 聞こえてるよ!僕。それカエラ先生のこと? まさか土井さんも? 「 わしからの祝いは今呼ぶから 」 小夜子さんが立ち上がる。相沢さんも下がって行った。 若い男性が一人で応接間に入って来た。 会長や組長、幹部に挨拶を済ます。 「 龍兄貴、この度はご結婚おめでとうございます 」 下げていた頭をあげたら目が合った。 「あ、やっぱり佐竹さんだ! 」 「 やっぱり瑠衣君か。びっくりしたなぁ!」 まあ、僕が龍さんの嫁なんてびっくりだよね。 「 龍青会の規模がこの数年で大きくなり、組員をまとめるためにも幹部で新しく決めた事がある。」 会長の言葉を組長の蓮さんが引き継ぐ。 「 組の幹部は現在四方の龍神としているが、それ以外の方角も加えて、とりあえずは8名まで増やす事になった 。龍を5番目の龍神としたので、佐竹と相談して彫らせるといい 」 え?それって幹部になるって事? |菊田若頭《おとうさん》が続く。 「 前々から龍には早く彫らせたいと思いつつも、何処でお前に逃げ道を残しておきたい矛盾した考えがあってな。会長に待ったをかけていたんだよ 」 命令とはいえ、子供をこの道に引き込んだ負い目があったのだろう。 「 だが瑠衣君のおかげで龍がこの世界で生きる覚悟がとっくにあったことを気付かされたよ 。龍、すまなかったな 」 「 オヤジ…… 」 「 龍兄貴、どんな龍でも望みのものを彫ってみせますよ!」 佐竹さんの息子、明彦さんが自分の胸を叩く。 龍さんはどんな龍神を彫るのだろう? 凄く楽しみだ! 「 僕とお揃いかな~? 」 なあんて。 「 いや、お前のはエロ過ぎてダメだろ! 」 龍さんに怒られた。なんで? 「 あ、やっぱそうですか?実は俺もエロス追求し過ぎたかなって。心配してたんですよ。アレ見たらヤバイですもんね! 」 ニパッと明彦さんが笑った。 「 そんなにヤバイのか? 瑠衣君の赤龍は 」 「 デザイン画を見せてみろ 」 会長と高橋社長が言う。 明彦さんが赤龍神のデザイン画を広げてみせた。うん、カッコイイ! 「 これが腰にあるんですよ 」 明彦さんが説明する。 「 会長見たい?僕今日ふんどししてきたよ!」 「 !! 」 「 瑠衣、なんでふんどししてる⁉︎ いつ買ったんだ? 」 「 加藤弁護士に頼んだんだよ~。やっぱ男は勝負するときはふんどし締めなきゃでしょ? 」 「 加藤弁護士なんで買ってきてるんですか!」 龍さん激オコだよーひー。 「 瑠衣君のリクエストですからね。軟禁されたストレスで欲しくなったのかなと…… 」 加藤弁護士がしらっと答えてる。 「 いや、絶対今日使うって知ってたなアレ……」 蓮さんが確信した口調だよ。僕は言ってないよ? 「 せっかくだから見せてもらうかな、高橋 」 「 ええ、会長。瑠衣君見せてもらっていいかな?」 「 はい!」 ん?龍さんが蓮さんに拘束されてる? 白いフンドシ一丁になり、会長さんに授けてもらった赤龍神をドヤ顔で見せてくるりと回ったよ! 「明彦お前……これはやりすぎだろう?」 会長がため息をつく。 「 こりゃ龍がヤキモキするわけだ 」 高橋社長が呟いてる。 「 いやー、これ女どもがしゃぶりつきそうですよね。ヤバイなあ! 」 「 もうすでに三回拉致されてんだよ!」 明彦さんの頭からゴツっと音がしたよ。 え?龍さんが殴ったの? 「 大聖堂の壁画から落ちてきて羽をもがれて刺青を施された堕天使でしょうか? 」 加藤弁護士が何やら詩的な感想言ってる? 「 龍、誰か護衛兼運転手雇えよ 」 蓮さんがアドバイスしてる。 「 …… 誰か紹介してくれ 」 龍さんが頭を抱えてたよ。頭痛? 挨拶の後は、会長が祝膳を用意してくれていたので、ありがたくご馳走になりました! 最後に応接間で集合写真を撮影したよ。 年明けに改めて幹部に就任することが関係者に知らされるらしい。 あ、そうそう。ヤンさんは契約上12月は休暇が年末まで取れないらしく、年明けに改めて会いに行く事にしたよ。 これは加藤弁護士と会長が手を打ったんだけどね。了解を得て、龍さんには明かした。 「 日本になんで呼びたくないんだ?」 うーん、呼びたいのは山々なんだけどね。 「 ヤンさんはうっかり名前を間違えて呼ぶからね。龍さん、僕が佐藤 瑠衣になったのは6年前からなんだよ 」

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