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第1話 初夜

 結人のお披露目式は盛況のうちに終わり、鬼神一家の姐として初めて本宅のここ離れに帰ってきた。  緊張の続いた一日さすがに疲れ果てた結人は、ソファーにどっかりと座りこむ。 「疲れただろ、風呂入るか?」 「うん、そうだね」  そう言って立ち上がった結人に祥吾が近寄る。 「……何? なんかにやけてない」 「初夜だからな」 「初夜って」  そう言って離れようとした結人を、祥吾はがしっと抱き寄せる。 「もうーっ、ちょっと離してよ」  抗う結人を、祥吾は益々強く抱きしめ口付ける。そのまま結人の口腔内を甘く蹂躙すると、抗う力が弱まっていく。  存分に味わい解放すると、結人が上目遣いで睨んでくる。濡れた唇に涙目で睨まれても、怖くないどころか、むしゃぶりつきたいほど可愛い。  祥吾には煽られているとしか思えない。 「このままベッドへ行くか?」 「……いやっ……風呂入る」 「そうだな、俺が洗ってやる」  そう言うなり、結人を抱き上げる。 「ちょっと! 待って! やだよ! 一人で入るっ!」 「暴れるな、おとなしくしろ。初夜なんだから俺にまかせろ」 「もーっ初夜って関係ないだろっ! 降ろしてよっ」  抵抗する結人を、祥吾は難なく風呂場の脱衣所まで運び、そこで降ろして、着物を脱がせにかかる。 「ちょっ、ちょっと」  抗っても、あっという間に袴は下に落ち、前も開けて褌が姿を見せる。 「おっ! お前やっぱり褌似あうぞ。いつもこれにしろ」  祥吾は褌姿の結人を見つめる。じっくり鑑賞するっといった感じだ。朝着付ける時にもう少し見ていたかったが我慢したのだ。  すっ裸より、むしろ煽情的だ。存分に楽しみたい。  結人は視姦されている気分にで落ち着かない。  この状態なら裸になったほうがいいかも……と思う。だけど、自分から脱ぐのはしゃくだ。  あーっもうと思って、パンチを繰り出す。キックもお見舞いだ。  がむしゃらにパンチとキックを繰り出す結人。  祥吾には猫にじゃれつかれている気分。可愛いにもほどがある。 「全く、猫みたいなやつだな。こういうの可愛いだけだって自覚したほうがいいぞ」 「何が猫だよっ! もういい、帰るっ!」 「帰るって、お前の家はここだろ」 「じゃあいい、家出する。初夜の晩に、伴侶に家出された哀れな夫は一人寂しく寝てね」 「はいはい、分かったよ。哀れな夫にはなりたくないからな。機嫌直せよ。なあ……」  あやすように結人の乱れた髪を直してやりながら「一緒に入ろ」と耳元で囁くように言うと、結人が祥吾の胸に顔を傾ける。  結人もここらで矛を収めるのかと祥吾は思った。  実際結人の思いもそうだった。まさか本気で家出するなんて思ってはいない。ただ、すんなり事が運ぶのをしゃくに思うだけだ。  祥吾が結人の褌の紐を解くと、はらりと下に落ちる。パンツを脱いだ時とは違うなんだか妙な解放感。 「いつも褌にしろよ」 「それはいやだ。着物のときだけ」 「まあな、それも特別感があっていいな。そうだ、お前、Tバックははかないのか? あれもいいんじゃないか」 「はかない! ボクサーパンツ一択」 「そうか……」  若干気落ちしながらも、祥吾は結人を洗い続ける。泡だったボディーソープで丁寧に優しく洗っていく。 「あっ……」 「なんだ?」  結人は上目遣いで祥吾を睨む。 「ここもきれいにしないとな……そうだろ」  結人の尻と蕾を洗いながら祥吾が言う。その刺激に結人は祥吾にしがみつく。祥吾はそのまま指できれいに清めていく。  洗うというよりも、愛撫しているような動きに結人の感応も少しずつ引き出されていく。 「よしっ、きれいになった。上がるぞ」    バスローブ姿で寝室の窓辺に佇んでいる結人に、後から入ってきた祥吾が後ろから抱き込む。 「ベッドへ行くぞ」  耳元で言う祥吾に結人は頷く。 「なんだか初夜だと思うと、ちょっと興奮するな」 「初夜って」 「そうだろ。榊結人は何度も抱いたが、鬼神結人を抱くのは今晩が初めてだからな」 「まあ、そうだけど……」  言われたら確かに特別感があるが、それよりも祥吾の興奮の方が怖い。野獣のように襲われたら明日の体が心配になる。 「加減してよ。明日腰が立たないと困るから」 「加減?! 初夜に無茶を言うなっ!」  無茶ってなんだ! そっちが無茶だろ! 結人に睨まれる祥吾。 「……まあ……大丈夫だ。心配するな、お前の腰に負担にはならないように優しくする。俺はいつも優しいだろ」  無駄口は終わりとばかりに、祥吾は口付ける。    結人は祥吾のキスが好きだ。口の中から全身に甘い痺れが広がっていく。祥吾と経験するまでキスがこれほどの快感をもたらすとは知らなかった。それ以前のキスは、単に唇を重ねたものだったと思う。  このキスでとろけさせられると、あとはどうでもいいような気分になってくる。快感が全身を支配するのだ。  きゃんきゃんと吠え付く結人を黙らせるのはキスが一番なのは事実なのだ。祥吾の思惑通り。

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