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第16話 親になる決意
「本人の玲が承知すればこの件は正式に決定だ。浩貴、後はお前に任せる」
東吾の言葉で解散になる。
実務面は三角が一切を取り仕切るため、祥吾は勿論、結人もなんの心配もする必要がない。
三角の調整能力を含めた実務能力は抜群だ。さすが会長が見こみ、娘婿としたうえで手放さないのも分かると、結人は常々思っている。
考えたら玲は、東吾の孫と言うだけではなく、三角の息子なんだ。
東吾のカリスマ性に三角の緻密さを併せ持つ、末恐ろしいというか、鬼神一家の未来は明るい。
そして唐突に思う。自分の父親を。名前はおろか生きているのかさえ分からない。おそらくだが、その人は自分という息子の存在も知らないだろう。
非嫡出子、その身の上を悲観したことはない。その分、母親は愛情をかけてくれたし、身が立つようにと教育にも力を入れてくれた。弁護士になれたのもそのおかげだと思っている。
血筋も、何もない自分が今ここにいることを、面白いと結人は感じる。これが運命なんだろうか……少し大げさかな。
「玲くん、玲くんの部屋見てみる?」
「僕の部屋あるの?」
「あるんだよ」
離れは一階がLDKと結人の書斎。二階が祥吾と結人の寝室、そして玲の部屋になっている。最初から玲の部屋は用意されていたのだが、玲には見せていなかったのだ。
「へえーっ、二階があるんだね」
「そうだよ、ここが玲くんの部屋」
「そっちは?」
「僕と祥吾さんの部屋だよ」
そうか、叔父さんとお兄ちゃんは結婚してるから同じ部屋か。父さんと母さんも二人で一緒の部屋だもんねと玲は思う。
「さあ、入って」
「うわーっ、ベッドも、机もある!」
「そうだよ、あと何か欲しいものとかあるならそろえてもらえるよ」
ベッドと机だけだが、温かみのあるベッドカバーとカーテンで、殺風景さは感じられない。玲もニコニコしている。気に入ったようで、結人は安堵する。
できるだけ玲には、不自由なく快適に暮らして欲しい。
「ねえお兄ちゃん、僕がここへ来たらお兄ちゃんもここで一緒に寝ようね」
「えっ!」
玲の一緒に寝よう攻勢、それは久しぶりで結人は不意をつかれた。
結人が鬼神へ嫁ぐ前、時折泊りがけで来た時、必ず玲から一緒に寝ようと言われ、たいていはそうしてきた。しかし、嫁いで以降、それはなかったのだ。
玲が本宅で泊る時は、母屋の客間で寝ていたのだ。新婚の二人を邪魔しないようにとの三角の配慮で、玲も三角の言いつけには逆らわない。
にこっと笑顔で結人を見つめる玲。抗えないものを感じる。これが鬼神の血か!
「えっと……一緒にって……玲くんいつもお父さんたちと一緒に寝てるの?」
「ううん、今は一人で寝てるよ。でもね、たまには母さんと一緒に寝るよ」
ああ、そうかと結人は思う。まだ小さいから、いつもは一人でもたまには母親と一緒に寝るのだと。甘えたい時もあるのだろうと。
実際は、確かにもっと小さな時はそんなことがあったが、最近はなくなっていた。でも、玲に嘘をついている自覚は無い。以前はあったからだ。しかし、結人は今でもあると理解した。
ならば、突き放しては可哀そうだと思う。未だ八歳の子供。しかも、親と離れるのは自分のせいだ。
「そっかぁ、じゃあたまには一緒に寝ようか」
玲の眼がきらりと光る。
「やったー! 嬉しいな!」
喜んで抱きつく玲を抱きしめて、頭を撫でてやる。可愛いなあ、色々考えることはあるけど、これだけ懐かれると、率直に嬉しい。
自分が親になって大丈夫なのかとも思うが、何とかやれるだろうと前向きな気持ちにもなる。それは、玲が懐いてくれるから。
しかし、今の結人は知らない。たまには一緒の、たまにはの頻度で叔父甥、否その時は親子のバトルが繰り広げられることを。
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