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第15話 親になる決意

「玲、ちょっといいか、話がある」 「うん、なあに」  三角に呼ばれた玲は、両親の前に来て座る。子供心にも真面目な話と察する。 「お前を鬼神の本宅、祥吾叔父さんと結人さんの子供にという話があるのだが、どうだ? 叔父さんと結人さんの子供にならないか?」 「叔父さんとお兄ちゃんの子供?」 「そうだ。お二人は結婚したのだが男同士では子供が出来ない。鬼神一家は、まあ会社のようなものだがおじいさまが会長で、次の会長は祥吾叔父さん。だが、祥吾叔父さんに子供がいないとその次に会長になるものがいない。だからお前に祥吾叔父さんの子供になってもらいたい、そういうことなんだが分かるか?」 「僕が、叔父さんの次に会長になるってこと?」 「将来はな」  自分の祖父が会長であるということは玲もなんとなく理解している。祖父に対する皆の態度を見ると会長がとても偉い人だという認識もある。その会長に自分がなる……うーんまだよく分からないけど、じいちゃんみたいに偉い人になるのはいいかも。 「叔父さんとお兄ちゃんの子供になったら僕はどうなるの?」 「本宅へ引っ越してお二人と一緒に離れで住むことになる。あと、名前が三角玲から鬼神玲に変わる」  えーっと玲は驚く。二人の子供になるってそう言う事なの!? 「父さんと母さんは?」 「二人でこのままここに住む。だけど父さんは今でも毎日本宅へ行ってるから、お前が本宅へ行っても毎日会える。母さんも今は毎日行かないが、お前が本宅へ行けば毎日行って会える」  なるほどと玲は思う。大好きなお兄ちゃんと暮らせるのは嬉しいけど、両親と離れる淋しさもある。だけど毎日会えるならその心配はいらないのかな……。 「父さんと母さんは子供がいなくなるね」 「お前が本宅へ行っても父さんたちの子供であることは変わらない」 「そうよ、だから父さんと母さんのことは心配いらないのよ。玲が立派な跡継ぎになってくれたらそれが嬉しいから」  そうか、だったら叔父さんとお兄ちゃんの子供になってもいいかも。立派な跡継ぎ、じいちゃんみたいに偉い会長になるのも、なんだか嬉しいと思う。 「うん、わかった。僕、叔父さんとお兄ちゃんの子供になるよ」 「そうか、では祥吾叔父さんに返事をする。明日本宅でおじいさまからも話があるだろう」  ———— 「義兄貴からだ、玲が承知したと。明日午後から姉貴と一緒に来る」 「そうか、玲くん承知してくれたんだね。名字もいいのかな?」 「承知ってことはそうだろう」  ひょっとしたら未だ八歳の子供。そこまで深く考えてはいないかもと思う。しかし、それを今考えても仕方ない。玲が承知してくれたなら自分もより覚悟を持たねばならない。結人はそう思った。  翌日本宅の玄関に走りこんできた玲を、結人は全身で受け止める。これはいつものことだが、以前と比べて大きくなった玲の全身を受け止めるのは中々大変だ。それこそ全身で受け止めないと、後ろに倒れる勢い。そして感じる子供の成長を。出会った頃に較べると随分大きくなった。自分はさほど変わらないのに。 「お兄ちゃん、僕お兄ちゃんの子供のなるんだよね」 「うん、玲くんなってくれるの?」  うん、と頷いて結人の耳元にひそひそ話のように告げる玲の言葉に結人は苦笑する。そして昨夜祥吾が言った、玲には既にその片鱗があるとの言葉を思い出し、なるほどと同意する。  これが血なんだろうか……。 「玲も含めて皆揃ったな。玲、本宅へ来ることを承知したんだな?」 「うん、叔父さんとお兄ちゃんの子供になるんだよね。名前も鬼神玲になって、僕が将来の会長になるんだよ」 「そうだ、わしの後が祥吾、次がお前だ」 「会長って偉い人なんだよね」 「ああ、そうだが威張ってたら務まらん。中々大変なんだぞ。だがら祥吾もわしを助けながら、立派な会長になるため頑張っておる。お前もここへ来たら少しずつ学ばねばならん。いいか、分るか?」 「うん、分った。頑張るよ」 「頼もしいな! さすがはわしの孫じゃ!」  東吾の称賛の言葉に結人も同意する。全くその通りだと大きく頷く。  何を頑張るのか、多分本人も分かってはいないだろう。だがこれが世襲なんだと思う。非嫡出子として産まれて、世襲からはほど遠い立場だった自分が、この場にいる不思議さを感じるのだった。

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