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第14話 親になる決意
鬼神の嫁になって初めての年末年始を慌ただしくも滞りなく過ぎたことに、結人はほっとしていた。一家の恒例の行事としては最大なものを無事にやり終えたのは、結人にとっての自信にも繋がった。
自分の中で、大丈夫だ! これからもやっていけるという自信。
そして月が替わり二月、結人は祥吾と共に、改めて話があると東吾に呼ばれた。
東吾の部屋に入ると、三角がいるのはいつものことだが、燁子も来ている。
「結人、お前もうちに来て来月で一年だ。どうだ、大分慣れてきたんではないか?」
「そうですね、おかげさまで随分と慣れてきたっていうか、このままやっていけば大丈夫かなとは思っています。まだまだ至らぬ点は多いと思いますが、少しずつ学んでいきたいと思っています」
「わしもお前はこのままやっていけると思っている。正月も堂々として立派だったぞ」
「そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます」
東吾から直に褒められて、結人は頬を染める。率直に嬉しい。
正直戸惑うことも多い中、頑張ってきた自負はある。その努力を、一家の会長から認められた嬉しさ。
素直に喜びを表す結人は初々しい。その姿を祥吾は可愛いと思うし、三角と燁子も好感を持ち、皆が微笑で結人を見る。
「それでだな、今日は玲のことだ」
東吾のその言葉で、察するものがあり、結人は背筋を正す。
「玲をお前たちの養子にし、ゆくゆくは一家の跡目にすることは承知のことだな。来月結人の一年目の節目でもあるし、玲をうちに迎えようと思うがどうだ?」
やはりそうだ。半ば覚悟はしていた。結人は祥吾へ視線を向けると頷かれた。
「あの、今一度確認したいのですが、義兄さんと義姉さんはそれでよろしいでしょうか? 玲くんはお二人にとって一人息子。大切な一人息子を、祥吾さんは元々叔父だからともかく生さぬ仲の僕に託してもらえるのですか?」
結人の真摯な問いかけに三角と燁子の夫婦はお互い視線を合す。そして先ず三角が口を開く。
「私たちは昨年この話がでた時から、全てを承知し、覚悟もつけてきました。何より玲が結人さんに懐いている。生さぬ仲などとは思えぬくらいに」
「そうだよな、俺よりよっぽど結人に懐いてるよな」
祥吾が横から口を出すと、燁子も同意とばかりに深く頷く。
「ほんとそうよね。昨年の海の写真なんか見ると三人お揃いで違和感ないから。それに私もね結人さん、昨年この話がでて決心してから、この子と一緒に暮らすのはあと一年と思いながらきたの。あの子と別れて淋しさが全くないと言えば嘘になるけど、あなたに懐く玲を見ていると安心できるから。それに、浩貴さんは毎日ここに来るわけだし、私もしょっちゅう来ているわけだし大丈夫よ」
玲の両親である二人の言葉は結人の胸にしんと響く。そしてじんわりと温かく広がる。再び祥吾へと視線を向けると頷かれた。
「そうですか、お二人にそう言ってもらうと僕も嬉しいです。あと肝心なところは玲くんの気持ちです。玲くん本人は大丈夫でしょうか? そうなると姓も変わるわけだし」
「それは早速今晩告げたいと思います」
「嫌とは言わんだろうがな」
そうだろうかと結人は不安に思う。思えばここまで、本人の気持ちをよそに大人の思惑だけで決められてきた。
就学前の幼児ならともかく、玲は今度三年生になる。新学年の節目といえど名字が変わるのは大丈夫なのか、そして何より両親との別れを受け入れられるのか……。
「決まればどういう流れになる?」
「そうですね春休みが四月にかけて三週間ありますから、その間に引っ越しと籍の手続き、そしてお二人との親子固めの儀式の流れが良いかと」
「ああ、そうだな。ならば今晩玲に告げて、明日は休みだろ、連れてこい。そこで正式に決定する」
「どうかしたか?」
「うん、玲くんほんとに大丈夫かなと思って」
「あんだけお前に懐いてるんだ大丈夫だ」
「それとこれとは別だよ。だいたい名字が変わるって子供にとっては一大事だよ」
「そのうち慣れるって」
「そのうちって、気楽に言わないでよ。玲くんが承知したって、それでからかわれたり、最悪いじめもあるだろ」
「そんなことでめげてたら鬼神の跡目は務まらん」
「まだ小学生の子供に鬼神の跡目がどうのなんて分かんないよ」
「そういうわけにはいかん。あいつもここに来る以上将来の鬼神の跡目だ」
結人は玲が可哀そうになる。たった八歳の子共に荷が重過ぎる。そもそもそうなったのは自分が祥吾の伴侶になったため。自分では子が産めないからだ。玲に重荷を負わすのは自分のせいだと思うと申し訳ない思いになる。
「僕のせいで玲くんに重荷を背負わすことになると思うと申し訳ない……」
「別にお前のせいだけではない。あいつの今の姓は確かに三角だが、鬼神の血を引いてるし、義兄貴だってうちの人間だ。子供でも鬼神の男だと、既にその片鱗を感じることもある」
確かにそれは結人も感じることがある。むしろ自分より男を感じさせるものが玲にはある。だからいいのだろうか……結人には答えがだせなかった。
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