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第13話 結人の天敵
祥吾は一家にGとその親戚全ての出禁を緊急指令としてを出す。Gと違い、親戚は勝手に湧いてくることはないから、持ち込み禁止だ。現物だけではなく写真の類も禁止。さらには、Gは勿論親戚もフルネームを出すのも厳禁。
しかし、さすがに現物を持ち込む者はいないだろう? と思った時、一人だけ該当人物がいることに気付く。
小学生の玲だ。現物を持ち込まなくても、写真くらいは見せるかもしれない。
「義兄貴、Gの件だが」
呼び止められた三角は微妙な表情。当然、今回のG騒動の全てを把握し、会長にも報告済だ。
「玲にも注意して欲しいんだ。結人マジで苦手だから、現物は勿論だが、写真も見せるなと」
「俺もそれを心配して昨日玲には言っておいた。あれも分ったと言ってたから心配いらない、大丈夫だ」
「そうか、さすが義兄貴だ、感謝する」
「なんだ、ゴキブリのことか」
「だから、親父! はっきり言うなって、マジあいつ嫌がるから」
「猫はゴキブリ退治得意じゃないのか」
「猫って、あいつが聞いたら怒るぞ」
「お前がいつも言ってるんだろ。猫パンチだの、猫みたいに可愛いと」
「まあ、そうだが。とにかくうちの猫の天敵はGとその親戚だ」
「カブトムシとクワガタがゴキブリの親戚とはなあ」
東吾がくくっと笑いながら続ける。
「結人も面白いやつだなあ。まあ、お前にはそこも可愛いんだろ」
「そうだよ、あいつマジで怖がって、俺にしがみついて涙目だったからな。庇護欲がわくだろ」
東吾はこの話を知った時から笑いが止まらない気分だ。実際最初に聞いた時は大笑いした。
男がゴキブリを怖がるとは……女の燁子でもゴキブリくらい平気だろう。やはり住む世界が違うのか、東大だの、弁護士だのはお上品な世界。だが、その中で結人はよく努力しているし、男だが嫁なのだから、これでいいとも思っている。
「それで浩貴、玲は分かったとだけか? 何か言っていたか? まさかあいつはゴキブリ大丈夫なんだろうな」
「好きではないが怖くはないようです。お兄ちゃんが怖いなら見せないし、もし出たら僕が守ると言ってました。子供の戯言ですね」
「戯言じゃないぞ、偉いじゃないか。さすがはわしの孫、五代目を継ぐ男だな」
「会長……」
「いいか、祥吾も聞け。玲がここへ来て、親として玲を守るのは祥吾、お前の務めだ。だが、結人は守る側の人間じゃない。あれは守ってやらねばならん。玲は将来跡目として五代目を継ぐ男として守る側の人間だ。結人が親だからと言って玲を守るんじゃない、玲が男として結人を守るんだ。その片鱗が玲には既にある。さすがはわしが見こんだだけはある。頼もしいぞ」
会長から息子を褒められ、三角は恐縮の面持ちで頭を下げる。
「義兄貴、俺は感謝してるぞ。玲がいたから結人となんの躊躇もなく一緒になれた。それに、玲は結人に懐いているだけじゃなく、守ろうという気持ちがあるとは、親父の言う通り頼もしいな」
「会長と若からそう言ってもらうと、玲の親として嬉しいです。安心してここ本宅へ送り出せます」
「そうだな、来年年明けくらいか」
「学校があるから三月がいいんじゃないか。新年度で区切りが良いだろう」
「そうですね、名前も変わりますから、玲のことを考えると三月の春休みにここへ来て新年度から鬼神玲として通学すると良いかと思います」
「そうだな、三月なら結人がきて丁度一年でもあるしな。それを目処に考えるといいな」
玲がここへ来ることで、新しい体制が完成することになる。今はまだ途上なのだ。
そしてその流れは、ゴキブリが出たからと言って揺らぐものではない。
思いがけなく起こったゴキブリ騒動。たわいないエピソードでは終わらない、この先長くGとその親戚の鬼神一家への出禁は続くのであった。
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