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第3話
あれは…僕が入学してままならないとき
大学の偉大な外郭に圧倒されて入れずに校門前で佇んでいると
「入らないのかね?」
横で不意に声がした…入って早々話しかけるなんて心の準備もなかった僕は声の主を確かめることなく校内へと逃げ込んだ
入口や廊下でジロジロ見られてはいたが僕は気にせず教室までたどり着いた
ワイワイガヤガヤという声もなく静かな教室…入っていいのか分からない
僕はドアノブを掴んで離すを繰り返している
回りからどう見られるかなんて考えていない
「おや…また君か…」
さっきの声が後ろでする…振り向いてみると
ちょうど白衣の胸が目の前に来た
「うわぁ!!」
僕はドアノブを引きちぎるぐらいの力で引っ張り中へと入っていった
ドアのわずかな段差につまずき大袈裟に転んでしまった
さっきまで静まり返っていた教室は瞬く間に騒がしくなった
あの人は僕をまたいで教壇に上がった
その足音で静かになる…僕は辱しめにあってなかなか起き上がれない
笑い声に紛れて起き上がればましだったかもしれないが…今起き上がるとなると勇気がどれだけ必要なのだろう…
「さぁ、そこで地面とキスしている男は無視しておこう…私は今日やすんだ担任の代わりを頼まれた颯田護だ…普段は研究室に入り浸っている…何かあれば来るといい…では出席を確認する」
パサパサと本を開く音がする…きっと回りもその本のほうに目が行くだろう
僕は立ち上がった
「ほう…自己主張がすごいな…君はたしか…」
颯田というその人は出席簿のページをせわしなくめくっていく…
時おり本と僕とを照らし合わせている
名前が見つかったのか頷いて
「彼は速水享君だ…まぁなんとも恥ずかしい自己紹介となってしまったが…」
その一言でドッと湧く
あぁもうどこかへいってしまいたい
その後も僕はことあるごとにいじられ…自己紹介が一段落した
チャイムがなりようやく僕は解放された
しかし颯田先生が僕のほうへ歩み寄ってきた
「申し訳ないが…先程の転倒の怪我が気にかかる…私の実験室に来てほしい」
僕はここから離れられる事以外考えていなかったから颯田先生の後ろをついていった
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