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第21話
「ああ、全く……お前は……!」
帝の唸り声が部屋に響いた。
俺はくくくっと笑いながらパチンと駒を移動する。
「あなた、弱いですね」
「お主が強すぎるのだろう!」
シャンチーを初めて一刻経過していた。
俺はもうすでに帝から2勝していた。
「そろそろお休みになられますか」
「いいや。お前に勝つまでやるぞ」
「明日の仕事に障りますよ」
「……ならば、寝かせてくれ」
俺はどうしようかと考えた。
さすがに帝を気絶させるわけにはいかないし、薬を盛るわけにもいかない。
「……子守唄でも歌いましょうか」
「俺は子供じゃない」
「いや、子守唄は大人にも効果ありますよ」
俺は寝台の方に行き、布団を広げた。
そして振り返ろうとしたとき、帝が後ろに立っていたことに気が付き、驚いて寝台に座ってしまう。
「……志明 」
「……夜伽をお望みなのであれば、お受けいたします」
「本当か?」
「ここに来たのは、それも覚悟のうえです」
帝は、俺を見つめた。
そして、手がゆっくりと伸びて、俺の唇を手でなぞる。
「いいのか」
「構いません」
「怖くないか」
「優しくしてくださいね」
俺は帝を見つめ、そして笑った。
寝台に押し倒された俺は、静かに横たわっていた。
一つずつ服を脱がされていく。無理矢理とは程遠い。優しい手つきで体を触る。
「お前はよく鍛えているのだな」
帝の手が、指先が、俺の筋肉を触りながら呟いた。
「武官ですよ」
「そうだな」
触れられる時間はくすぐったくて、俺は身をねじった。
「くすぐったいです」
「ではもっとくすぐったくしてやろうか?」と言われた瞬間、脇腹をくすぐられた。
「うわっ、ちょっと、いや、やめてください!」
寝台の上でバタバタしていると、帝が楽しそうに笑っている顔が見えて、見つめてしまった。
そして、くすぐっていた手も止まる。
見つめ合えば、帝の手が俺の頬を撫でて「触れてもいいか」と聞いた。
「いいですよ」と言うと、俺は目を閉じる。
鼻息が軽くかかり、帝の唇が自分の唇へと触れた。軽いものだ。
目を開けると、帝と視線がぶつかる。
「私の名を呼んでほしい」
「名前知りません」
「龍輝 だ」
「龍輝 さま」
「さまなどいらぬ」
「……龍輝 」
俺の声が、静かな部屋に響いた。帝は満足そうに頷く。
「ああ。それでいい。俺の名を知っているのは、この外後宮ではお前だけだ。覚えておけ」
「……沐陽 さまも知らないのですか」
「よその男の名前をここでは出すな」
そう言って、唇を軽く噛む。
甘噛みされた程度で痛くはなく、むしろまたくすぐったくて仕方なかった。
「出しませんから」というと「ならいい」と言った。
唇が離れたが、顔は近いまま。
俺は自分がどう動けばいいのか分からなかった。
「俺は……経験はあるけれど、こうして……床の上でするのは初めてです。だから……教えてください」
「襲われたことを経験などとは言わぬ。お前は経験がない。それでいい。お前が気持ちよくなるまで、たくさん愛そう」
俺は帝──いや、龍輝 に口づけされた。それは、軽い触れ合うだけのものではなく、たしかに俺に欲情している口づけだった。
体を触られ、全身を見られ、そして帝の手は俺の唯一の穴へ向かっていた。
白い練り薬のようなものをつけ、それを俺の固く閉ざされた蕾に塗りはじめる。
「力を抜いていればいい」
「そんなこと言われても無理ですよ」
「そうだな」
龍輝 が諦めたかと思うと、俺の方に体を寄せ、そして唇を重ねた。
今度は舌が入り込んできて、俺の舌と絡ませた。
そうしてるうちに、俺は気持ちよくなってしまう。龍輝 の口づけはあまりにもよくて、頭が真っ白くなってふわふわしてしまった。
唇が離れていき、彼が言う。
「できるじゃないか」と。
気がつけば、俺の体の中に帝の指が入っていた。
ぬち、と音を立てて抜き取ると、龍輝 は満足げに笑い、そして服をゆっくり脱ぎ始める。
一つずつ脱げば、引き締まった筋肉質の体と、そして大きな陽物が現れた。
男同士だというのに、その男らしいそれに目をそらしてしまう。
「いれてもいいか」
「……や、優しくしてくれないと殴るかもしれませんよ……」
「大丈夫だ」
そう言って、また口づけをされる。今度はいつ入ってくるのかと恐ろしく、あまり集中してできない。そうしていたら、龍輝 がムッとした顔で「集中しろ」と言う。
「ごめんなさい……」と小さく謝ると、俺は龍輝 の首に手をかけて、口づけを交わした。
深い口づけに夢中になっていれば、開きかけている蕾に、先端が当たる。
それを受け入れる準備はできていた。
「志明 、いくぞ」
「ん、」
先が当たり、そしてグッと中に押しこんで入ってくる。
ず、ず、ず、と少しずつ侵入してきて、腹の中にある異物感を抱え込んだ。でも、それほど痛くはない。
「痛くない」
「そうか。良かった。しばらくこうしていよう」
そうして龍輝に抱かれ、何度も唇を交わした。深く、時には軽く。そんな中で、龍輝 が腰を引いた。
(ああ、来る)
そう思った。しかし、激しいとは真逆だった。
馴染ませるように、ゆっくりと中を知るように腰をゆっくり引いたり押したりしていた。
「辛くないですか」
「辛くなどない。お前は大丈夫か?」
「はい」
俺はなんともいえない温かな感情を心の中で感じた。
龍輝 の首に手を回して抱きしめる。
そして、なんとなくかんざしを引き抜くと、龍輝 の髪がぱらりと落ちた。
「ふっ、なんだ?」
「なんでもないですよ」
そう言ってかんざしを適当に脇の方に置くと、長い髪のカーテンの中で、龍輝 に軽く口付けた。
その瞬間、中で龍輝 のものが大きくなった感覚に襲われる。
「ん?」
「なあ、志明 。煽るのは勘弁してくれ。我慢できなくなる」
「……それは……その……」
龍輝 の顔を見ると、眉間を寄せて苦しそうだった。
自分の何かで反応したのは間違いない。
「……好きなようにしてください」
俺はそう言った。
「いいんだな?」
「構いません」
そして、龍輝 は俺の肩に顔を埋め、俺の腰を持ち上げた。
そして、激しく腰を打ち付ける。
「っあ!?」
奥に響いた感覚に驚き、声が出た。
そして、またもう一回、もう一回と体の奥にズンと当たって響く。
奥から引き抜かれると、肩に当たっていた唇が開き、そして俺の肩を噛んだ。
「いっ、」
痛いと言った瞬間、中で激しく出し入れされていく。
じわじわと熱い何かを感じていたが、次第にそれが快感に変わる。
「んっ、んんっ、ん、」
「志明 、気持ちいいのか?」
「龍輝 、だめ、それ、」
「はははっ、やめると思うか」
「やめっ、やめてっ……!!」
激しい動きが、一定のところを狙っている。
そこがあまりにも気持ちよく、頭が真っ白になっていた。
どうしたらいいのか分からない感覚に襲われていると、龍輝 の手が俺の肉棒を掴み、手を上下に動かし始める。
「龍輝 ……っ、龍輝!」
「志明 っ!」
ほぼ、同時だった。
龍輝 に強く抱きしめられ、反射的にしがみついたとき、快楽の頂点で達した。
意識がふわふわしている中で、俺は龍輝に後処理をしてもらっている。
ハッとした頃には処置が終わっていて、申し訳無さに頭を下げる。
「私がやるべきことなのに」
「志明はやらなくていい。俺がやりたいんだ」
「……そう……ですか」
恥ずかしさに俯くと、龍輝 は俺の頭を撫でてくれた。
「疲れただろう? 寝よう」
「はい」
ぐちゃぐちゃになった寝台のある部屋から、隣の部屋に移動する。隣の部屋のほうが豪華で、その部屋で横になった。
「おやすみ、志明」
「おやすみなさい。龍輝」
しばらくすれば、静かな部屋に二人の寝息が聞こえてきた。
翌朝、俺の隣で帝が眠っていた。
昨晩のことを思い出しながら、俺は一人顔を赤く染める。
(くそ、ダメだ……こんな始まりは嫌だ!)
ガシガシと頭を掻いていると、帝が「なにをしてる」という声が聞こえてきた。
「おはようございます」と平然を装った顔をしながら振り返ると、色気を振りまく帝が髪をかきあげた。
「っ!!」
ドクン、と心臓が音を鳴らず。
大変申し訳ないが、心臓に悪い。
やっぱり体を許すべきではなかった。
「顔が赤いぞ」と、帝が起き上がって俺を引き寄せる。
「どうしたんだ?」
「陛下……近寄らないでください」
「緊張するか」
「……はい」
「慣れろ」
その言葉は無責任だと、俺は思った。
「私はあなたの寵愛は、望んでいません」
「なぜだ?」
強い口調だった。俺はそれでも言葉を繋ぐ。
「この外後宮には、あなたからの寵愛を受けるために必死になっている方々がいる。私があなたからの寵愛を受ければ、どうなるか……なんとなく……察してしまったのです」
「では、俺が志明 、お前を守ろう。他のものが近付きたくならないぐらいに。警備も警護も、強くしよう」
「沐陽 さまはどうなるのですか?」
「……それは……考えておこう」
「……沐陽 さまのことが好きなのであれば、私に構わないでください」
「私は沐陽 のことは好きではないぞ。どうしてそんなことを思うのだ?」
「え?」
俺は一番に寵愛を受けていること、恋愛関係にある話を聞いたことを伝えた。
「沐陽 の仕業だな。まぁいい。沐陽は陳家の次男だ。陳家は女が生まれなかったので、外後宮に沐陽を入れたがったんだ。それで、沐陽も俺に気があったらしい。だから恋愛関係にあるなどと言っていたのだろう」
「……じゃあ、沐陽は政治的な意味で寵愛していたということですか?」
「そうだぞ? この外後宮は後宮と大して変わらない」
「宦官もいるって話は?」
「……それは答えないでおこう」
俺の髪を撫で、顔を伺ってきた。
「恋愛的な意味で招いたのはお前が初めてだ」
「……」
「昨晩は良かっただろう? また来てもいいか?」
「仕事にどうぞ」
「一緒に行こうじゃないか」
「俺は、お風呂に入るので」
「じゃあ俺も」
「うざい」
「帝だぞ?」
「知るか」
そう言うと、帝は楽しそうに寝台に倒れて大きく笑った。
「良いな。お前に認められたような気がするぞ」
「不敬とあらば、さっさと首を切ってくださいね」
「肖然がいなければ、不敬などない。構わんさ」
俺は横になる帝を見つめた。
そして、心に決めて口にした。
「お風呂、一緒に入ります?」と。
帝は起き上がり、嬉しそうに笑った。
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