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第1話 運命の番

『俺の番の香りは本当にたまんないんだよ。初めて嗅いだときの発情は運命だって思ったね。今も嗅ぐたびに興奮する』 「へぇ〜、ラブラブじゃん」  スバルは、ノロケる従兄弟の、電話越しの声に適当に返事をした。  従兄弟はスバルの反応を気にしない様子で、話を続ける。  しかし、この話の流れはスバルに被弾する恐れがあった。 『スバルも早くトリガーがわかると良いよな』  きた……。 「そうだね。うちの家系は運命型が多いから、俺も番に出会ったらトリガーがわかるのかもね」 『運命って響きがいいよな〜』  従兄弟はまた、番の話を繰り返してくる。  スバルは早く電話を切りたかったが、スバルの相槌が、従兄弟には話しやすいようだ。 『スバルももう、二十歳だろ?今まで発情が無かったんだから、季節型でも臭気型でもないだろ。おまえもきっと運命型だよ。早く番に出会えるといいな』 「そうだね、ありがとう」  スバルはスマホを当てていない方の耳に触れ、少し垂れている耳介を指でムニムニと弄んだ。  この世の中には、香情体質と呼ばれる体質を持った人間がいる。  正式名称は「香気誘発系発情体質」という。  要するに、香りで発情するのだ。  香情体質の人間は、皆分かりやすく耳介が少し垂れている。  その耳は、発情すると動物のようにピンと立ち上がり、発情の度合いをそれで表してしまうのだ。  恥ずかしい事この上ない。  スバルの家は香情体質の人間が多く、トリガーも、番の匂いで発情をする運命型が多い。  季節の香りや特定の臭いに反応する季節型や臭気型は、思春期にはそのトリガーがわかるようになるのだが、スバルは未だに発情を経験したことがない。 『あまり心配だったら、香情専門外来で相談した方がいいぞ。血液検査でトリガーは簡単にわかるんだから』 「別に心配はしてないよ。そのうちわかればいいし、そもそも発情とか恥ずかしいじゃん……」 『バカだなおまえ、発情を経験してみろ。あれはたまらないぞ。もう……なんていうか……」  従兄弟は興奮のあまり言葉になっていない。  運命型だった従兄弟は、番に出会って、匂いを嗅いだ瞬間に倒れるくらいの発情をしたらしい。運命型はそういう体質なのだ。  一度体液を交換してしまえば、その後は体液の匂いにしか反応しなくなるらしいが。 「ねぇ、もうわかったよ。番の人と仲良くね。俺もう昼飯食べたいから切るぞ」  午後から大学の授業があるスバルは、今のうちに昼飯を済ませておきたかった。  従兄弟からの電話のせいで、ゆっくりと食べている時間はなくなってきている。  悪い悪いと従兄弟は笑って、ようやく電話を切ってくれた。 「運命とか、いつ出会えるかもわかんないじゃんか。その相手に発情しても、好みじゃなかったらどうすんだよ」  スバルはかなりの面喰いであった。  男でも女でも、まず顔の良い人が好きで、そこからその人に恋をする。  だから、運命型で番が見つかっても好きになれるのかが不安だった。  それならば、相手に縛られない季節型や臭気型で自由に恋愛がしたいと思っている。  しかし、今までの人生で匂いを嗅いで発情するものは無かった。 「まだ、すべてのトリガーを嗅いだわけじゃないしな。滅多に嗅がない香りがトリガーならその方が生活も楽だ」  スバルは昼飯は何を食べようかと街に漂う香りを吸い込んだ。  大学に近いこの通りは、学生向けに安い飲食店が多く、昼時を少し過ぎてしまった今の時間でも良い香りが漂っていた。 「あ、パスタか。安いし、腹持ちいいしこれにするか」  スバルはイタリアンレストランの看板にペペロンチーノランチの文字を見つけて、店の扉を開けた。  初めて入った店の中は、昼のピークが過ぎたようで他に客はおらず、空いているテーブルやカウンターに下げきれていない食器が置かれたままになっていた。 「いらっしゃいませ。空いてる席にどうぞ」  店の扉のウインドウチャイムに反応して、食器を下げていた初老の男性が、丁寧な所作でスバルに声をかける。  スバルが店内の一番奥にある二人掛けのテーブルに座ると、初老の男性は丁寧に水を出してくれた。 「あの、ペペロンチーノランチで」 「かしこまりました。少々お待ちください」  男性は伝票を書いて、カウンターの奥に向かってランチお願いしますと声をかけた。  どうやら料理をするのは別の人のようだ。  スバルはスマホを取り出して、通知画面から、次の授業の連絡が来ていることに気付き開いた。 「え、休講……マジかよ〜……」  通知は一時間前のものだったが、従兄弟の電話のせいで気付けず大学の近くまで来てしまっていた。  わかっていれば別の街へ行ってもっと有意義に時間を使えたのにと、スバルはテーブルに項垂れる。 「失礼します……」  そんなタイミングで、料理ができたらしく少し遠慮がちに声をかけられた。  スバルはショックを受けたまま顔を上げられず、体だけを起こして、目の前に皿が来るのを待った。  料理を持ってきたのは、先ほどの初老の男性とは違う人のようだ。  視界の端に白いコック服が見え、スバルは顔を上げようとした瞬間、置かれた皿に、ビクリと体が跳ねた。  香りがしたのだ。  料理の香りと、料理を持ってきた人の香り。  バクバクと心臓が速くなり、一気に息が上がった。  恐る恐る耳に触れると、しっかりと立ち上がって耳の先がジンジンとしていた。  発情……したのか……なんで……?  熱くなる体を抱えるように身を丸めていくと、流石に異常に気付いたのだろう、店員が顔を覗き込むように様子を窺ってきた。 「大丈夫ですか? なんの臭いがトリガーですか?」  覗き込まれたその顔を見て、スバルの心臓が、またいっそう跳ね上がった。 「イケメン……」 「は?」  その店員は、どストライクにスバルの好みだった。  もう、興奮し過ぎて、息の仕方も忘れているスバルは、ビンビンに立っている耳を見せつけるように首を傾げ、上目遣いでねだるように彼を見つめた。 「トリガーは……まだ、わからないんです……発情も初めてで……」  話しながら、目尻に涙が溜まっていくのがわかった。  そして、スバルのその目に、彼も息を呑んでいるのがわかった。 「…………それって……」 「運命……かも……」  彼はバッと口元を片手で隠すと、驚きつつも、目元が緩んでいった。  喜んでる?  俺は、このイケメンが運命の番ならすごく嬉しい。 「て、店長……急な発情みたいで、介抱してきてもいいですか?」 「ん?あぁ、二階の部屋を使っていいよ」  初老の男性は店長だったようだ。  穏やかに二階へ続く階段を指し示して、入り口の扉にcloseの札をかけた。 「あの、初めての発情で、俺が相手でもいいですか?」 「…………相手って……マジで……良いの?」  スバルはギュッと目を瞑って涙をこぼすと、彼の手に手を伸ばし、笑顔を向けた。 「お願い……します……もう、たまらない……」  ゴクリと唾を飲み込んだ店員の彼はサッと小柄なスバルの体を抱き上げ階段を駆け上がっていった。 ◇◇◇ 「んっ、はぁ……っ……苦しい……」 「すぐ、楽にしてあげます」  スバルは熱い息を繰り返し、息苦しさと力の入らない体のもどかしさを感じ、降ろされたベッドの上で身悶えた。  コック服を脱ぎながら、ベッドへ上がってくる彼も、スバルほどではないが興奮した様子で息を荒げている。 「あ、そうか。俺はライアと言います」 「ライ……ア……」  コック服を脱いで現れた胸筋に、手を添えながら、スバルはライアの名前を呼ぶ。  ライアの声で、耳がビクビクと反応している。  これが、運命の発情なのか……。  苦しくて、体がいうことを聞かない。  でも、なんかすごく幸せ。 「名前を、聞いても良いですか?」 「……スバル……ライア、早く欲しい……」 「スバル……」  ライアはスバルの名前を大事そうに呼ぶと、優しく優しく抱きしめる。  スバルはふぅふぅと荒げた息を、ライアの肩口に吹きかけながら、どんどんと熱くなっていく体の熱に翻弄される。 「ライア……もう……」  ビンビンに立つ耳が痛くて、ライアの胸に擦り付けると、ライアはスバルの服を脱がしていった。 「俺も、やばいくらい興奮してる……運命なのか……」 「運命……そう、だよ……絶対……んんっ」  スバルの言葉に、ライアはフッと笑って、スバルの口を唇で塞いだ。  すぐに深いところまで舌が入ってきて、スバルの息がどんどん上がっていく。  苦しくて、甘くて、溶けそうで、必死にライアの首にしがみつくと、そのままベッドに押し倒された。 「ライア……だめ、もう……苦しい……」  スバルが根を上げると、ライアはスバルの下着ごと全てを脱がして、固く主張している塊に手を添えた。  ゆるゆると扱かれて、あっという間に達そうになる体に、スバルが驚く。 「あぁっ、だめ……まっ……でる……」  発情している時の快感がこんなにも強いとは思っておらず、スバルはあっけなく達した。 「あぅっ……んんっ……はぁっ……はっ……」 「まだまだ足りなそうだな……後ろが濡れてる……」 「え……」  普通、男が発情しても濡れることはない。  でも、確かにスバルの後ろの穴は求めるように湿り気を帯びてきた。  クッと力を入れたら、クチャりと音が鳴った。  恥ずかしくて、顔を背けると、ライアはニコリと笑ってスバルを抱きしめる。 「大丈夫、それだけ俺を求めてくれてるってことだろ」 「……うん……欲しい……奥までライアが欲しい……」  ギュッとライアの腕に力が入って、スバルは息を詰めた。  熱い体の芯に触れて欲しくて、ライアの下着に手をかけると、そそり立つそれが現れた。 「で……か……」 「……ごめん……」  絶句するスバルの頬に、ライアは手を添えて、無理はさせないと囁いた。  その手からは、また香りがした。 「んんっ……だめ……無理でもいい……もう、待てない……」  スバルはどうしようもない衝動に、自ら足を広げてライアにねだるような目を向ける。 「エロ……やば……」  ライアは誘われるように、スバルの後ろの穴に口を寄せる。  チュッと唇をつければ、ピクリと体を揺らすスバルが可愛くて、続けてチュッチュッと繰り返した。 「ぁうっ……んぁっ……あぁぁっ」 「指、簡単に入るんだけど……」  濡れているスバルの後ろの穴は、骨ばったライアの指を飲み込んで、奥へと誘うように締め付けてくる。  ライアはスバルの様子を見ながら指を増やしていく。 「あぁぁっ、ライア……あぁっ……」 「ここ? 気持ち良い?」 「んぅぅっ……だめ……」  ライアの指が一点に触れると、スバルの背が大きくのけ反る。  体に電流が走ったような感覚に、ビクビクとつま先まで震えさせて、スバルは快感に悶えやめてくれと訴える。  固くなったままの前から、また精を飛ばしそうで、必死に下腹に力を入れて耐えていた。 「我慢しなくていい……出せばいいだろ……」 「んっ……だって……あぅっ……」  こんな短時間で二回も出したことはない。  これで終わってしまったらつまらないじゃないか。 「発情してれば、何回でもイける」 「え……あっ……やっだめ……んあぁぁっ」  ライアの手がスバルの塊に触れ、スリスリと撫でられれば、あっという間にスバルは果てた。  白濁が腹や胸に飛び、それをライアが撫で付けてニヤリと笑った。 「挿れたい……」 「……っ……」  切羽詰まったようにスバルを見つめてくるライアの顔が、たまらなく格好良かった。  後ろの穴に入っているライアの指を締め付けて、キュウっとスバルの下腹部が反応した。 「息を吐いてくれ」 「ふぅ……」  ライアに言われ息を吐くと、後ろに圧迫感を感じ、そして、体を割り開かれる感覚にとてつもない快感を感じた。 「あぅぅっ……あぁっ……」  声なんて抑えられずに、絶叫するように全身を震わすと、ライアの動きが止まる。 「大丈夫か……」 「あっ……んんっ……」  止まってしまった動きがもどかしくて、スバルはライアを締め付けながら激しく首を縦に振る。  ポロポロと溢れる涙が一緒に弾け飛んで、たまらずライアの首に手を回し、腰を上げた。 「もっと……ぁっ……奥まで……」 「っ……スバル……」  ライアはスバルの唇にキスをすると、ズンと腰を進め、最奥を突く。 「あっ……あぁぁぁっ」  プシャっとスバルの腹に温かいものがかかり、軽くイっているのだと気付く。 「ははっ、本当何度もイけるんだな……」  ライアは少し驚きつつ、腰を動かし始めた。 「あっんっ……ぁはっ……あぁっ、気持ちい……また、出る……」 「あぁ、気持ち良い……スバル……イけよ。奥、気持ち良いんだろ……」 「あっ、あっ……ライアっ……あっ、あぁぁっ……あんっ……」  プシャップシャッとスバルから白濁が吐き出され、それは短く何度も何度も続いていた。 「ぁっ……あぁっ……も、やだ……ずっと……イってる……あぁっやだ……」 「突くたびにイってんのか……っ……やば……」 「あぁうっ……くる……し……ライ、ア……」 「スバル……わかった……」  ライアはスバルを抱きしめると、浮いている腰とベッドの隙間に手を入れて、グッと腰を引き寄せた。  ズッと自分の腰を引くと、力強く一気に奥を穿った。 「んあぅっ、あぁぁぁっ!!」 「ぐっ……んぁっ……」  スバルは絶叫し、全身を震わせて背を反らす。  目の前がチカチカとして、ライアの顔もよく見えない。  気持ち良いという感覚だけで頭の中がいっぱいになる。  後ろの中には、ドクンと震えたライアから、たっぷりと体液が注がれていた。  ぐったりとベッドに体を沈めると、ライアが優しく覆い被さってきた。  スルリと頬を撫でられ、耳に触れられる。 「んっ……」 「落ち着いたみたいだな……」 「ライアの体液もらったから……」 「そっか……」  立ち上がっていたスバルの耳は、フニフニと柔らかさを戻し、その手触りをライアは楽しんでいる。 「んんっ……ちょっとくすぐったい……」 「そっか……」 「や、めて……」 「そっか……」  同じ言葉を繰り返すライアに、スバルは怪訝そうに顔を上げて口を尖らせた。 「かわい……」 「もう……」 「スバル……」  ライアは強くスバルを抱きしめて、口付ける。 「やばい、さっき会ったばかりなのに、すごい好き……」 「運命……だからじゃない……?」 「そっか……」  そう言って笑うライアはさらにスバルを抱きしめた。

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