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第2話 運命の匂いは……?
「俺もわかったよ、運命って」
『だろっ? もう倒れるかもしれないくらいたまんない発情だっただろ?』
「そうだな。たまらなかった……」
スバルはライアと付き合うこととなり、従兄弟にそれを報告していた。
全て終わってから、ライアは改めて自己紹介をしてくれた。
イタリアンレストランのシェフで、店長と一緒に店をしていること。
年齢は三十歳。結構年上で驚いた。
すぐに連絡先を交換し、次の休みにはデートをする約束をした。
ライアは世話焼きな性格のようで、頻繁にメッセージを送ってきては、スバルの様子を確認している。
そして、閉店後は必ず電話が来るのだ。
『いや、でも良かったな。やっぱりスバルも運命型だったんだな。最初の発情みたいに強いものはもう急には来ないから、安心しろ。ただ、安易に街中でキスとかして体液をもらっちまうと危ないからな』
「あー、わかってる。あ、でもそっか。間接キスも危ないってことか」
『そうだ。相手が使った食器を使うのは、二人だけの時にしろよ』
「わかった。今度のデートの時も気をつけるよ」
先輩の意見として、従兄弟の言葉を素直に受け取ったスバルは、週末のデートに期待を膨らませた。
顔が良くて、スタイルも良くて、抱かれ心地も良い、運命じゃなくても好きになっただろうライアが、自分の番だなんてスバルは完全に舞い上がっていた。
ープププー
「あ、キャッチだ。ごめん、助言ありがとな、また」
スバルはそう言って従兄弟との通話を切ると、キャッチに応答した。
もう、着信画面を見なくても誰だかわかっている。
ちょうど、店が閉店する時間だからだ。
「おつかれ〜」
『あぁ、スバルも、おつかれ』
「別に、疲れてもないよ。今日は一コマしか授業なかったから」
『そっか、体は大丈夫か?』
「大丈夫だって。ライアの体液をもらわなきゃもう発情しないから」
『いや、それでも、スバルは可愛いから、発情してなくても言い寄られてるんじゃないかって心配になる』
「か、わいいって……」
『可愛い。本当に好き、愛してる』
ストレートに言ってくるライアに、スバルは恥ずかしくてたまらなくなる。
誰にも聞かれていないし、誰に見られてもいないのに、モジモジと体をくねらせてワンルームの窓辺で夜風に当たった。
「あのさ、明日のデートすごい楽しみ。会うの二回目なのにね」
『そうだな。早く会いたい』
「うん、俺も……」
始めて会った日からたったの五日。
それなのに、こんなにも愛おしい。
これが運命なのだろう……。
夜風で火照った頬を冷やしながら、スバルは立ち上がりかけている耳を撫でて宥めた。
◇◇◇
ライアの店が休みの平日、海の見える広い公園には、散歩をする老夫婦や、小さな子供を連れた主婦が集まっていた。
スバルはライアの隣を歩きながら、すれ違う人たちの視線に優越感を感じていた。
ライアの私服はシンプルだがライアの綺麗な体格がわかり、とても似合っていて格好良い。
爽やかに微笑んでくる顔は、向けられるたびにスバルの心臓を撃ち抜いていた。
そんなイケメンが、スバルの隣を歩いていて、手まで繋いでる。
何を言われなくても、自慢したくなるもんだ。
「スバル、ご機嫌だな」
「ライアに会えたからね」
「それは俺も。スバルに会えたから、好きな気持ちが抑えられない」
公園の端にある見晴らし台で、ライアはまっすぐにスバルを見つめ、肩を抱いてきた。
公園の端には人はいない。
誰も見ていないからと、ライアはスバルの腰に手を滑らせた。
「んっ……ちょっと……」
「嫌か?」
「いや……じゃない……けど……」
「なら、こっち向いて?」
スバルの顔を上に向かせたライアは、優しく頬を撫で、顔を近付けてきた。
キス……するの……?
目を瞑りかけたスバルだが、従兄弟の言葉を思い出し、慌ててライアの口を手で押さえた。
口を抑えられ、間抜けな顔で不満のそうな目を向けてくるライアに、スバルは謝る。
「ごめん、あの……キスで体液もらったら、また発情するから……」
「あ、そっか……悪い……」
そうだったなとライアは頭を掻いて、深く息を吐いた。
何かを我慢しているのは、スバルにもわかる。
しかし、せっかくのデートをベッドの上だけで終わらせたくはない。
「ふっ、じゃあ、後のお楽しみだな。スバルも期待してる……」
「んっ……」
ライアはイタズラっぽく笑うと、立ち上がりかけたスバルの耳を撫でる。
香情体質の耳は、興奮状態を隠してはくれない。
スバルは両手で耳を隠しながら、口を尖らせた顔をライアに向ける。
「それ、可愛いからな?」
クシャリとスバルの頭を撫でて、ライアはまた手を繋いだ。
「腹減らないか? 広場で飲食のフェスやってるから。行ってみよう」
「うん……」
スバルを愛でるように微笑み、ライアはスバルの手を引いた。
年上の余裕なのか、言葉がストレートすぎて、スバルの頭は情報が処理しきれない。
ライア、格好良すぎ…………。
◇◇◇
松の木の防風林を抜けると、広場には良い香りが充満していた。
スバルの腹は鳴り、ライアがクスリと笑う。
「スバルは何が好きなんだ?」
「え、う〜ん。これといって好きも嫌いもないよ。この前のライアのパスタは美味しかった」
この前のペペロンチーノランチは、手をつける前に発情してしまったため、落ち着いた時にはすっかり冷めてしまっていた。
スバルはそれでも良いと食べようとしたら、ライアがペペロンチーノは自分の賄いにするからと、新しくカルボナーラを作ってくれたのだ。
「良かった。多分、スバルはペペロンチーノよりカルボナーラかなって思ったんだ」
「あ〜、まぁ確かにカルボナーラの方が満足感あるから好きかも」
「胃袋が若いな。味より満足感か」
穏やかに微笑むライアに自分の発言が恥ずかしくなって、スバルは屋台に視線を送り、話題を変えようとした。
「ライアは何が好き? ライアの美味しいって思うものって何?」
「あ〜、そうだな……肉は好きだな」
「ライアだって若いじゃん」
「そうか?」
スバルはライアの手を引いて、肉を食べようと、串焼きの屋台へ向かっていく。
ライアの大きな手が、握り返してくれるのが嬉しくてスバルは大きく息を吸い込んだ。
ザワリと吸い込んだ空気に体が反応して、一瞬だけ足を止めると、不思議な顔をしたライアが顔を覗き込んできた。
耳がゾクゾクとするが、ライアに心配をかけたくなくて、スバルは屋台に駆け込んだ。
「美味そう。ライア、どれにする?」
「すごいな、変わった串ばかりだ。スピエディーニに似てるな」
「スピエディーニって?」
「イタリアの串焼き」
「へぇ〜」
ライアは流石料理人で、屋台の変わった肉の名前も全て知っていて、スバルに説明しつつ、注文をしてくれた。
スバルは、ライアが屋台の店員と料理の話で盛り上がっている間、だんだんと耳が熱くなってきて、息が上がり始めたことに気付く。
なんで……ライアとキスしたわけでもないのに。
手、繋いだだけだよ……?
「はい、スバル。スタミナ豚串焼き。色々あったけど食べ慣れた肉の方が良いだろ?ガッツリ系だぞ」
「ありが……ぅんっ……」
ライアが差し出した串焼きを受け取ろうとした時、ふわりと香りがして、スバルの体は小刻みに震え出した。
「スバルっ?!」
「はっ……なんで……」
ピンと立ち上がった耳が、発情を知らせている。
ライアはスバルを抱き寄せて、人目を遮るように自分のパーカーを頭からかぶせた。
「なんで、今発情した……俺の体液じゃないと発情しないはずだろ……」
「ふっ……うっ……ライ、ア……」
発情反応が強いのか、スバルはライアの服を握りしめ、すがるように見つめてくる。
ゴクリとライアが唾を飲み込んだ時、持っていた豚串を落としそうになって、スバルの目の前で串を持ち替えた。
「あぁぁっ……も……だめ……」
スバルは身悶えてライアに下半身を擦り付けてくる。
明らかに豚串に反応をしているのが見てわかる。
まさか…………。
ライアは、昨日作ったペペロンチーノの材料を思い出す。
オリーブオイルに、たっぷりのニンニク……。
スタミナ豚串焼きには、豚肉と、丸のままのニンニクが刺さっている。
「ニンニクっ!!?」
「へ?」
ライアはその場に立ち尽くす。
発情してふらついているスバルの身体はかろうじて抱き止めているが、膝から崩れ落ちて手をつきたい気分だった。
「スバル、おまえは臭気型の香情体質だ……」
「え……うそ……」
ライアの言葉に、スバルは体の力が抜け、ズルズルと崩れ落ちていった。
ライアは屋台の店員にスタミナ豚串を預けると、しゃがみ込んでスバルの背中をさする。
「うそ……運命じゃないの……しかも、ニンニク? いつも食べてたよ?」
「問題なかった香りが急にトリガーになることもあるんだろ?」
スバルの落ち込み様に、ライアは優しく声をかける。
ふぅふぅという息遣いと、立ち上がった耳が苦しそうで、運命の番でなかった喪失感よりも、スバルを早く楽にしてあげたいとライアは思った。
「スバル、俺の家に行こう。立てるか?」
「んっ……ぅぅっ……」
差し出されたライアの手に、スバルは顔を上げたが、先ほどまで持っていたスタミナ豚串の香りが残っていて、ビクビクと体を揺らした。
「あぁ、悪い。少しだけ頑張ってくれ」
ライアはシャツの裾に手を擦り付け、軽く拭うと、スバルを横に抱き抱えた。
周りで心配そうに見ていた人達から小さく声が上がる。
「目立つよな。ごめんなスバル、顔隠しておけ。俺の家、すぐそこだから」
そう言うと、ライアは駆け出した。
スバルはぐったりとした頭でも、声を上げた人達に優越感を感じていた。
◇◇◇
ライアの家は本当にすぐそばで、どっちにしても公園デートの後には連れ込まれていたんだろうなとスバルはちょっと嬉しくなっていた。
「手を洗ってくるから、後少しだけ頑張ってくれ」
寝室のベッドに降ろされて、スバルはぐったりとシーツに体を預けなんとか頷いた。
屋台の香りというのは、一度服についたらすぐには取れない。
ライアのパーカーを被せられていたとはいえ、ニンニクの匂いがずっと興奮を助長させていた。
「あぅ……だめ……だ……服脱がなきゃ……」
スバルは震える手で服を脱ぎだすが、上半身は脱げても、ベルトを外すことが出来なかった。
ふわりふわりと香ってくるニンニクの臭いに、身体はビクビクと跳ね、苦しさに涙が溢れた。
「お待たせ、スバル。大丈夫かっ?!」
「だめ……もう、苦しい……」
洗面所から駆け込んできたライアは、上半身を脱いで、服の上から自分の塊を触っているスバルに絶句した。
その場で自分の服を脱ぎ捨て、下着姿になると、ベッドに飛び乗る。
「苦しいな、すぐに脱がせてやるから」
「ライ……アっ……」
スバルはライアが近くに来たことで、本能的に唇を求めた。
臭気型の香情体質なら、相手の体液を摂取したところで何も変わらない。ただ、性欲を吐き出せられればそれで落ち着くはずなのだ。
しかし、可愛く身を寄せてくるスバルに、ライアは堪らず口付ける。
「んんっ……はっ……触って……ライアっ……」
息を切らし、しっとりと汗ばんだスバルの肌は、手に馴染む。
しかし、この前よりかは体温は高くないように思えた。
ライアはスバルの服を全て脱がし、昂っている塊に触れる。
「はち切れそうだな……」
「苦しい……出したい……」
恥ずかしそうに顔を背けながらも、スバルの腰は浮いている。
優しく数回擦ってやれば、簡単に白濁を出した。
「はっ……はっ……はぁっ……」
多少落ち着いたのか、スバルはぐったりとしながらも息切れは治っていく。
立ち上がっていた耳は多少柔らかさを持つ。
「大丈夫か?この前よりは激しくないみたいだな」
「ん……ぅん……でも、まだ……」
「待って、今日はちゃんと濡らさないと」
ライアはベッドサイドの引き出しを開けると、潤滑剤を取り出した。
スバルの窄まりに塗りたくると、ヒクヒクとそこはライアを誘ってきた。
「慣らすぞ……」
「いいよ……いける……もう、奥まで欲しい……」
スバルは自分から足を広げて、窄まりを両手で広げてみせた。
少し自分の指を食い込ませ、入り口を広げるスバルの姿に、ライアは自分の昂りを沈めるように握り込む。
「怪我させる……だろ……」
スバルを直視できないライアは、ゆっくりとスバルの体をうつ伏せに転がした。
「やだ……いいから……」
「ダメだ……」
スバルの腰を持ち上げ、窄まりに指を入れようとしたら、急にスバルが起き上がった。
「わっ、あぶな……」
「やだ……ねぇ……もう我慢できないから……」
スバルはそういうと、ライアの肩に手を置いて、全体重をかけライアをベッドに押し倒した。
「スバル……」
「俺がする、痛かったらやめるから……ライアぁ……」
トロンとした目でライアに跨り、甘えるような声を出すスバルに、もうライアは抵抗できない。
スバルはライアの大きすぎる昂りに手を沿わせ、握り込むと、自分の窄まりに充てがった。
「んっ……うんっ……あっ……ぁっ……」
グプリと音を立てながら飲み込まれていくライア自身と、ライアの上で快感に身を捩らせているスバルの姿だけで、達しそうになるのを、ライアは必死に堪えた。
「ス……バル……大丈夫……か……」
「ライアこそ……」
まだイかないでと掠れた声で言われ、ライアは下腹に力を入れた。
スバルは自分の欲に任せるままに腰を動かし、背を反らす体の中心は、動きに合わせて揺れている。
「どうしよ……気持ちい……ライア、好き……」
「あぁ……もう、たまらない……」
ゆるゆると動くスバルの腰は確かに気持ちがいいが、スバルもライアも決定的な刺激がなく、だんだんともどかしく苦しくなっていった。
「だめ……も……イきたい……ライア……」
「あぁ、もう限界だ……」
ライアはスバルの腰を掴むと、下からズンと突き上げた。
「あぁぁっ!」
細いスバルの体が大きく揺れ、プシャっと白濁がライアの腹にかかる。
「イったのか?」
「まだ……まだ欲しい……」
「あぁ……」
ズンズンと突き上げるたびに、スバルからは雫が弾ける。
中もきゅうきゅうと締め付けてきて、ライアは限界を迎えた。
「も、出す……」
「あぁっん……おれ、も……イく……あぁっ……奥に……んぁっ……」
「あぁ、一番奥に注いでやる」
パンと肌のぶつかる音が響いて、スバルの背にはゾクゾクと快感が走った。
「あっあぁぁっ! はぁっん……」
「うぅっ……ぁっ……あ……」
スバル自身から弧を描いて白濁が飛び出し、ライアは暖かさを感じながら、スバルに腰骨を打ち付ける勢いで奥にめがけ欲を吐きだした。
しばらく、寝室には二人の息遣いしか聞こえなかった。
ライアが腹の上でぐったりとしているスバルの耳に触れ、柔らかさを確かめる。
スバルはされるがままに、ライアの腹に頬を擦り付けていた。
「この前の発情よりは弱くなっているんじゃないか?」
「……わかんない……」
「そっか……」
臭気型の香情体質は慣れれば発情も穏やかになる。
スバルの耳の柔らかさを楽しみながらも、ライアは言わないといけないことがあると体を起こした。
「スバル、俺は、運命の番じゃなかった……」
「……ライア…………」
スバルの肩がびくりと跳ねる。
何か覚悟をしたような顔に、ライアは決心をして伝えた。
「俺と、恋人になって欲しい。ニンニクになんて負けない、俺自身がスバルを発情させてみせるから」
「ライア……ライアっ!!」
スバルはライアに抱きついて、大粒の涙をこぼした。
「捨てられんかと思った……」
「捨てるか……俺のニンニク料理で、お前の香情体質を改善してやる。スバルが発情するのは俺の匂いだけだ」
ライアは涙をいっぱいに溜めたスバルの顔を愛おしそうに見て、柔らかい耳に触れた後、優しく口付けた。
ー完ー
◇◇◇
はい、この先はライアの溺愛執着、ニンニクへの嫉妬ターンに入っていくのですがww
今回は短編にしたいのでここでおしまいです。
また、番外編みたいな形で出せたらいいなと思っています。
香情体質という設定が気に入って突発的に書いてしまいました。
お付き合いいただきありがとうございました。
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