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第1話:君には適わない (おにショタ)

それは、ある夏の日であった。 「正義~!遊びにきたぞ~!」 「やあ竜二くん。いらっしゃい」 慣れしたんだアパートの一室へ入り、靴を脱いで中へ入る。 正義が外は暑いだろうと麦茶を持ってきてくれて、テーブルにコップを置く。 「まだまだ暑いな!夏だな!正義!俺はアイス食べたい!」 「えっ!?アイス?う~ん僕の家はアイスないんだよ」 「じゃあ買ってきてよ~!」 竜二が大きくくりくりとした眼で訴えると、正義は呆気なく折れ、財布を持って出かける準備をする。 この子には適わないんだなぁと骨の髄まで従っているようで、従順である。 「じゃあ何アイスがいい?」 「バニラ!あの紙に包んである棒アイスがいい!」 「はいはいアレだね。知らない人きても無視していいからね~」 「はーい」 バタン…ガチャガチャ なんとなく竜二の希望のアイスが頭に浮かび、正義は出かける。 ドアがばたんと閉まり、鍵がかけられ、竜二は静かな部屋と回る扇風機の音しかしない空間に一人となった。 「何かないかなぁ」 暇だ、と顔に書いてあるようで、正義の部屋をもそもそと模索し、本棚をあさる。 どれも興味のない本で何かないかと探してしまう。 結局本棚には何もなく、残念そうにした後、今度は押入れを開けてみた。 上の段には正義の布団が畳んでしまったり、下の段には段ボールに衣装ケースが入っている。 そこは初めてみる空間で、竜二は好奇心のあまり段ボールの中身を空けてごそごそとした。 「あれ…?」 段ボールから出てきたのは雑誌とビデオで、表紙には自分と同じ小学生くらいの男の子たちが体操着を着ている。 ビデオは背表紙を見ると「ドキッ?少年たちと過ごす秘密の体育館」と怪しい事が書かれている。 とりあえず雑誌のほうを見てみようと思い、中身をめくったら絶句した。 竜二は沸々と湧き上がるこの名前のわからない感情に困惑し、そして正義に対して苛立ちを覚えた。 そうこうしているうちに正義が帰ってきたようで、竜二は雑誌を手に持ち立ち上がる。 ガチャガチャ 「ただいま~」 「…おかえりなさい」 「あれ?押入れが……、竜二くん…?」 冷や汗をかいた正義が買ってきたアイスをとりあえず冷凍庫に入れ、無表情でこちらを睨む竜二を見て少し震える。 「正義、こっちこい」 手招きをされ、アイスを冷凍庫にしまった正義は竜二の前に座り、思わず正座になる。 本当だったら恋人が勝手に人の部屋の押入れを開けて探索しているなぞ理不尽で怒るべき案件なのだが、正義は怒る気など出なかった。 それよりも、脳裏によぎったのは…。 「ぼ、僕のこと、嫌いになった?」 ぺちん 顔を平手打ちされ、正義は頭が真っ白になる。 「俺がいるのに。なんでこんな本持ってるんだ?」 「ごめんなさい…」 「俺は謝ってほしいわけじゃない」 「はい…」 子供の力と言えど、平手打ちされた頬が痛い。 ヒリヒリとした痛みと、目の前に立つ竜二の顔が見れず、正義は下を向いてしまう。 「こういう内容の、雑誌とビデオ、全部今すぐ処分だ」 「へっ!?」 「俺がいるのに必要ないだろ!正義のバカ!」 竜二が怒った顔をし、正義の頬をつねる。 正義は直ちに押入れの中をひっくり返し、竜二の目の前でAV系の物を全部ゴミ袋に入れてみせた。 「これで、いいでしょうか…」 思わず敬語になってしまう、情けない正義に竜二は黙って頷く。 そして正義の頭を撫でて竜二は言った。 「次からは許さないけど、今回は大目に見てやる。正義は俺の大事な人だからな」 「りゅ、竜二くん……」 正義は心の底で、もしかしたら捨てられるかも…と考えていたため、嬉しくなって竜二に抱き付く。 お日様の香りと汗の匂いにつつまれて、少し幸せな気分になった。 「信じてるからな。正義」 「うん」 こうして完全に尻に敷かれている正義は竜二くんの言いなりになっていくのである。 下克上されるまであと四年後…。 おわり --------------------- 正義がエロ本を一冊も持ってないとかありえないだろ…と思って書きました。 このショタ竜二くんと正義のお話を番外編として、こうしてかけて嬉しいです。 またネタが浮かんだら更新したい…。

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