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第2話:ラブホテルへ行こう(未来編)
「ねぇ…竜二くん…」
体が熱を持っており、火照った頬で、潤んだ眼差しで、もう三十路であるこの男・河崎正義は年下の恋人である花梅竜二を誘ってくる。
その目線での訴えに若さゆえ我慢のきかない竜二は生唾を飲み込んでしまう。
うっとりとした眼で正義が竜二にもたれかかり、首筋に舌を這わせる。
「おい、正義、ここ、外…」
すっかり酔っている恋人に竜二は少し興奮しつつ冷静になれと頭に訴えかけ、フラフラと歩く正義を肩に抱いて歩く。
繁華街から少し離れたところまで来て、先ほどの今日の出来事を思い出す。
インドア派の正義が珍しく外でデートしたいと言い、2人で外出し、水族館に行ってきた。
結構夜遅くまで遊び、夕食は適当な店でと思い入ったら、調子に乗った正義が酒を注文してしまったのである。
お酒に弱い正義はあっという間に酔ってしまい、竜二は止めればよかったと思いつつも普段より色気を放つ恋人に欲情してしまう。
どうしたものか…と思い、歩いていると静かだった繁華街から離れたこのさびれた土地に、光る照明と大きな建物が建っている。
明らかにラブホテルと思わしきギラギラした派手な外観の建物を発見した竜二は思わずたじろいでしまう。
見た感じ玄関は見当たらず、ホテルのロゴと噴水に浮かべた花がなんだかいやらしい物に見えてしまった。
「あ~…竜二くん……ここ入ろうよ~」
「へぁっ!?」
「らいじょうぶらって~君、大人っぽいし~」
突然の正義の発言に竜二は驚き、年齢確認でもされたらおしまいだろと思いつつも自分から離れていき先を歩く正義を追いかける。
酔っているくせにやけにしっかりとした足取りで正義がホテルへ入っていき、入口を探すも見つからず、ホテルの周辺をぐるぐる回る。
「あれ?おっかし~な~僕こういうところ入るの初めてで~」
「…おい、あっちじゃないのか?駐車場の中」
珍しく乗り気なのか色気を出している正義を見ていると竜二も段々ムラムラと来てしまい、一緒にラブホの入り口を探してしまう。
一階が駐車場になっているホテルに入ると中央に出入り口を見つけ、入っていく。
内装も綺麗で、外観は派手だったわりにわりと上品な内装のホテルに驚きつつ、2階フロントへ続くエレベーターに乗り込む。
なんだかんだと欲に弱い自分に笑いつつ、竜二は正義と共にフロントへ行き、ベルを鳴らす。
中年の優しそうな女性が出てきて穏やかに対応する。
正義は、竜二にもたれかかり笑顔でニコニコしている。
「お待たせしました、お客様。ご予約はされている方ですか?」
「いえ、してないっすけど…」
「そうですか。わかりました。ではこちらルームキーになります」
「…はい」
スタッフが慣れた様子でルームキーと言い、薄いカードを竜二へ渡す。
初めてラブホテルに入ったが、こんな感じなのか…と思い受け取ったカードをまじまじと見てしまう。
「チェックアウトは11時です。それではごゆっくり。お部屋はそちらのエレベーターから3階まで行ってください」
「ああ、はい…」
なんだかむず痒い気持ちになりつつ、年齢確認とかされなかったことに安心し、正義をつれてまたエレベーターへ乗り込む。
3階へ到着し、意外と広いホテルにビックリしつつ渡されたカードの部屋へ正義を抱えて歩いて行く。
さっきから正義は竜二の肩に体重をかけて首筋に舌を這わせたりしており、竜二の欲望に火をつけていくばかりだ。
「んん……竜二くぅん…早くぅ……」
「待てって、正義。あ、部屋ここだ」
部屋の前につき、ドアを開けると精算機を発見する。
どうやら先払いのようで、自分の財布と正義のカバンから財布を抜き取り勝手に金を突っ込む。
自分はあまり金を持っていないが、正義は持っているだろうと万札を取り出して入れた。
「誘ったお前が悪いんだからな…俺まだ高校生だし……」
「いいよいいよ~僕は大人らからねぇ~」
へらへらと笑い、正義は竜二に玄関先で口づけをし、ごそごそと変な動きを始める。
慌てた竜二は正義を押しのけ、カバンを持って部屋へ入っていく。
そんなつれない態度に正義は口をへの字にし、竜二の後を追い部屋の奥へ入っていく。
「なんでよ~竜二く~~ん」
「先に風呂だろ。昼間さんざん歩いて俺たち汗だくだ」
「もぉ~~変なところで真面目なんだからぁ~~~」
パッと見、部屋を見ているとキングサイズのベッドにマッサージチェアまで置いてある部屋に入眠を誘う音楽が流れており、あまりラブホっぽくない。
わりかし清楚系のホテルなのだろうかと思い、竜二はバスルームへ向かい湯船にお湯をためる。
正義はすでに脱ぎ始めており、白い肌が上気して朱色に染まっており煽情的である。
それを見てまた生唾を飲み込んだ竜二は一緒に服を脱ぎ、シャワーから浴びてしまおうと正義を連れて浴室へ入る。
「眼鏡は外していくぞ」
「ひゃぁん、見えないよぉ~~」
「もういいだろ、見えなくても」
熱いシャワーを自身の手にかけ、温度確認をしてから正義を椅子に座らせ、お湯をかけてあげる。
背中まで伸びた長い艶やかな黒い髪は綺麗で、シャンプーで泡立てて洗っていると指先になじむようにしんなりとしている。
正義はおとなしく竜二に頭を洗われており、素直でいいと思いつつ、自分もあまり我慢はできそうにないと思った。
「正義、前も洗うぞ」
手にボディソープを泡立てて、正義の骨ばった薄い体を洗っていく。
その際に愛撫するように乳首を刺激すると体がビクンと反応し正義は可愛いらしく喘ぎ声を漏らす。
「ふぁぅ…んん……」
「正義、俺あまり我慢できねぇよ……」
「じゃあ、しなくていいんじゃないの?」
好戦的な眼で竜二を見、濃厚な口づけをしてくる。
竜二は自身の身体は後でいいかと思い、適当に流し、正義を連れて湯船へ入っていく。
バスタブで正義は竜二の上に圧し掛かり、自身の性器を竜二の性器にこすり合わせて腰を振っている。
その快感に竜二も喘ぎ声が漏れてしまい正義の口づけに応えつつも声が出て風呂場に反響する。
ズチュッ……ヌルッ……
「ふっ……はぁっ……ああっ……」
「んんっ……はぁっ…正義……」
お互いをむさぼり合うように口づけをしているうち、だんだんとのぼせてきて竜二は頭がくらくらしてきた。
正義もさっきよりぼんやりしてきており、これはまずいと思い、風呂を出ようとするも正義が足をからませて竜二の性器を愛撫してくる。
「はぁっ…正義……続きはベッドでやろう」
「んやぁっ…もうらめぇっ……」
「お前ってやつは……いつもは嫌がるくせに……」
裸のまま正義を横抱きにし、湯船から出てタオルで適当に水滴だけ拭うと竜二はベッドまで正義を担いで行く。
すっかり初めて出会った頃と比べると立場の逆転してしまった2人は、もう慣れた様子で、やや乱暴にベッドになだれ込む。
布団がぬぐい切れていない水滴で濡れてしまうがおかまいなしに竜二は食らいつく様に正義の薄い唇にかみついた。
「はぁっ…りゅうじぅっ……くぅん……ああ……」
「誘ったお前が悪いんだからな……っ……」
正義の熱い肌に手を這わせ、さっきより勃ちあがっている性器を手でしごくと体がビクビクと跳ねており、まるで陸に打ち上げられた魚のようだ。
竜二は正義の先走りを指先でねっとりと絡ませ、自身の性器とこすり合わせていく。
お互いがお互いに夢中になり、BGMも何も聞こえないようで、熱い吐息と喘ぎ声に粘着質なイヤラシイ音だけが部屋を支配している。
ズニュッ……ニュルッ……
「ああっ…だっ…イくぅ……」
「くっ……」
ドピュッ…ビュルルル………
熱い精液を吐き出し、竜二は慣れた動作で精液をかき集め、正義の秘部へ指先をノックするようにすりこませていく。
もう何度も竜二を受け入れているそこはヒクヒクと物欲しげに疼いておりローション代わりの精液を吸い込んでいく。
正義はうつ伏せにになってお尻を突き出し、シーツをつかんで呻いていてとてもエッチな雰囲気だ。
枕にしがみついているその背中に唇を押し当てていき、軽く吸ってキスマークを何カ所も作っていく。
「っあっ……りゅうじくぅん……やぁん……」
「正義…っ…正義……っう……」
うなじまで舐めていると正義の秘部が竜二の指をキュゥと締め付けて切なそうにしている。
もう少しでほぐれるかなと指の本数を増やし、自身が入れるまで指で愛撫を続ける。
ぐにゅりとイヤラシイ音を立てて指で正義の気持ちいところを刺激すると正義は身をよじらせて誘ってくる。
「もう…らめっ…りゅうじくんのほしいよぉ……おちんちん入れてぇ…」
「まだはえーよ、正義…もう少し我慢な……」
「やらぁ……んん……」
自分の恋人はこんなに積極的だっただろうかと錯覚してしまいそうな発言に竜二は我慢に耐えかね、正義の秘部から自身の指を引き抜く。
もういいか、と思い自身の完全に勃ちあがっている性器を正義の秘部へ押し当て、一気に貫いた。
「あっあああああっ……!」
「正義っ……くっ……」
細腰を掴み、根元まで一気に自身を入れると、正義がイッたのか身を震わせ、竜二の性器を締め付ける。
だが正義がイッている最中にも関わらず、腰を振り、ガンガンと体を揺さぶると正義は余計に喘いで切ない声をあげる。
ズチュッ…ズニュッッ……ズチュッ…
「はぁっ…やぁぁ…頭がおかしくらっちゃうよぉん……」
「もう充分っ…おかしくなってるだろう……」
「やぁっ…らめっ…あっあっ…またイクっ……ああ」
淫らな恋人の姿に竜二の怒張は大きくなるばかりで正義の中をグイグイとこすりあげていく。
腰を振り、肉と肉のぶつかり合う音に興奮は高まり、竜二も達した。
ドピュッ…ビュルルル……
「うっ…くぅっ…正義っ……」
「ああっ…あちゅいの来てるぅぅ……ああっん」
正義の上に覆いかぶさり、最奥まで熱を放ち、汗ばんだ正義の背中にキスマークを落とし、歯型をつけていく。
それに反応した正義が体を震わせて嫌がり、竜二にスイッチが入る。
「今夜は眠れると思うなよ?」
***
「はっ…ああっ……もっとぉ…んん……」
バチュンバチュンとイヤラシイ音が部屋に響き、もったいぶった甘えた声が響き渡る。
竜二も正義もおかまいなしに性行為に没頭し、正義の身体を食い尽くしていく。
「ああっ……ひぁ…んぐっ……」
「んんっ…はっ………」
舌を絡ませ、どちらのかわからぬ唾液は垂れていき、息遣いだけが聞こえる。
体勢を入れ替え、正常位にすると正義が顔を真っ赤にし、涙で瞳をうるわせて竜二を見つめる。
それを見て竜二は更に硬くなった自身を正義の奥へ上下にこすり上げていき絶頂へ導いていく。
ズニュッヌルッ…ピチョッ…
「ああっ…りゅうじくっ……すきっ…だいすきっ……」
足を絡ませて、竜二に抱き付き、正義は愛の言葉をささやき果てる。
気が付くとお互い体液でドロドロで、竜二も正義の中で達すると疲れ果てて眠りについた。
***
「こ、これはどういうことかな…?ゲホッゲホッ」
「これって、こういうことだよ」
翌朝、もみくちゃのベッドに全裸で向き合った2人は呆れた様子で話をしている。
正義は全身キスマークと歯型まみれで腰が痛いのか押さえている。
声も昨晩喘ぎ過ぎて枯れてしまいせき込んでしまう始末である。
「お前から誘ってきたんだよ。覚えてないのか?」
「う、ウソ…」
「酒飲んでからだったな」
「………」
正義が顔を真っ赤にし、頭を抱え込んでいる。
それをおかまいなしに竜二は時計を確認し、正義に声をかける。
「チェックアウト11時までだって聞いてるから、とりあえず風呂行こうぜ」
「う、うん……」
すっかり元気をなくした正義を竜二は肩に抱き、ヨロヨロとした足取りで歩く恋人を支えて浴室へ向かう。
だいぶやり過ぎてしまったなぁと反省しつつも昨晩の淫乱に喘ぐ正義は美味しかったと思う竜二であった。
「わぁ!ここすごい、昨晩の記憶ほとんどなくってさー!岩盤浴とかあるんだね!」
「そうだな。お前はホテル入る前から出来上がっていたから」
「そ、それ以上はいいよ…」
浴室でお互いの身体を清め、浴槽にお湯をためていく。
昨晩と同じように正義の身体にお湯をかけてあげると、歯型がしみるようで辛そうだった。
「っつぅ~~~…君、また歯型つけたでしょ?」
「ごめん…だって昨晩の正義、めっちゃエロかったから」
「も、もう……!!!」
耳まで真っ赤にし、恥ずかしそうにする恋人を目を細くして竜二は少し笑う。
まんざらでもない様子になんだか嬉しくなり、正義に背後から抱き付くと正義も笑った。
「起きたらラブホテルにいるなんて、ビックリしたよ…」
「そりゃあ驚くよなぁ、あ、お風呂沸いたぞ。入ろうぜ」
「うん、あ、このお風呂おもしろい、照明変えられるんだ」
楽しそうに浴槽のパネルを弄っている恋人が面白くて竜二は見つめる。
明るかった照明を別のボタンで変えてみるとショッキングピンクになり、気持ち悪いと2人で笑った。
正義は岩盤浴も入りたそうにしていたが、時間がなかったため、諦めてもらった。
2人で衣服に着替え、髪の毛をドライヤーで乾かしていると、正義が少し楽しそうにし、ほほ笑んでいる。
たまにはこういう日も良いのかなぁと思い、長い髪の毛を乾かしていると正義がハッとなり振り返った。
「そういえばお金!どうなってるの!?」
「ああ、入室時に精算機あったから。もう払ってあるよ。朝飯も無料だってよ」
「そっかぁ…」
正義の金をほぼ使ったというのは黙っておこうと思い、少し気まずい気持ちになり、話題を変えようと朝食の話をする。
無料という話を聞き、正義は嬉しそうにしているため、このまま忘れてくれないかなぁと思った竜二であった。
「今って何時なのかなぁ」
「ああ、何時だ?携帯見てみるか」
衣服を身にまとい、2人は部屋へ戻ると携帯を開く。
この部屋には時計はおいてないのである。
「10時か…まだご飯食べる時間あるな」
「何か注文してみようか」
フードメニューを見て2人で朝食を選び、注文する。
あっさり目がいいとのことで、竜二はパンと目玉焼きにしたが、正義はお粥にしていた。
未だに声が枯れている恋人に無理をさせてしまったかと思いつつ、けどあれは良かったと自身の思い出アルバムに仕舞う。
「ねぇ、竜二くん。僕、今日も休みだから、今日は一日ゆっくりしてようよ」
「そうだな…。ああ、俺学校の課題あるから正義の家でやろうかなぁ」
「ふふ、そうかい?」
2人で笑いながらゆっくり食事を摂り、11時まで堪能させてもらった。
その後、チェックアウトしようと思い、出入り口のドアノブを触ると開かなかった。
押しても引いても開かず。鍵をいじっても開かない。
「あれ?」
「あ、開かないね?」
しばらく二人でドアノブをいじり、開けようと奮闘していると、竜二が思い出したように精算機を見た。
ボタンが何種類かあって、その中に”お帰り”というボタンを発見し、押してみるとドアが開いた。
「ラブホってすごいね~」
「そうだな…」
誰かと会ったら嫌だなぁと思いつつエレベーターまで歩くも、幸い誰とも遭遇せず、退散した。
外へ出ると日差しが暖かく、良い天気である。
「こんなに良い天気だけど、今日は家でゆっくりだねぇ」
「そうだな」
その後、財布を見た正義が激怒するのは時間の問題であった。
2人の一日はまだまだ長い。
そして禁酒を決意する正義であった。
おわり
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