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番外①
付き合って一か月が立ち、引退ビデオを最後にAVの撮影も無くなった。撮影に行くたびに道慈が不服そうな顔をしていたので、気まずいような嬉しいようなくすぐったい気持ちからついに解放された。まさか道慈が自分の下半身に対して不満そうにする日が来るとは思ってもみなかった。
最後の引退ビデオの撮影を終えたその日に嬉々として報告すると、道慈が安堵したように言った。やっと終わりか。じゃあ今日から練習しないとな。
慣れ親しんだ膝を枕にしながら、頭を撫でられる気持ちよさに目を細めていた雪丸は気づかなかった。道慈の目の奥が光っていることに。
「あれ、お前俺のAV見たの?」
道慈のテレビには雪丸のAVの会員アプリが見られるようにしてある。いつでもこれでオナニーしていいぜと言ったときはいらねぇと吐き捨てていたのに、視聴履歴が残っていた。
「まぁな」
「どうだった? かっこよかった?」
「ぐちゃぐちゃだった」
「スゲェの選んでんじゃん。SM興味あんの? レイカ様激しかったろ」
S女優に縛られたり、嬲られたりと久々に女相手にたくさん喘いだ撮影を思い出しながら雪丸は笑った。
「二度とAVはでねぇんだよな?」
道慈が確認するように見下ろしてくる。雪丸は手を伸ばして道慈の眉間に僅かに寄った皺を親指で撫でた。
「引退したしな。お前のために辞めたんだから喜べよ」
「ああ、嬉しいよ。もうこれ以上お前の痴態がネットにアップロードされないと思うと」
「引退ビデオも見て」
「見ねぇよ」
「なんでレイカ様のだけ見てんだよ。もしかしてレイカ様好きなの? 確かにあの女ガリガリだけどよ……」
自分を見るために見ていたのかと思っていたが、女優目当てだったら面白くない。
「善慈から連絡あったんだよ。雪丸が推しと絡んでるって」
「あいつマゾなの?」
善慈は道慈の弟だった。兄に似て体格に恵まれているが、顔はもっと人懐っこい。たまに東京に用事がある時に道慈の家に泊まったりもしていた。
「しらねぇ。しりたくもねぇ身内の性癖なんざ」
「それで、感想は? 抜いた? 俺のAVで」
「抜けるかよ……そんな趣味ねぇんだよ」
「……どんな心境で見てたの?」
「はらわたが煮えくりかえりそうだった」
「……」
真顔で言った道慈の顔をまじまじと見つめる。道慈が雪丸の仕事相手に嫉妬している。AVの話をすると不愉快そうにされるのはいつものことだが、そこまで感情的になっているとは思っていなかった。
「それは俺が好きでしょうがないってこと?」
手を持ち上げて道慈の顎を撫でると、髪を手でとかれる。
「そうだな。もう二度と他の人間とセックスすんなよ」
この一カ月、撮影以外では道慈としかセックスしていない。こんなに同じ人間と毎日のようにセックスしているのは、ヒモをやっていた時以来だ。その時ですら雪丸の性欲が強すぎて女に断られる日があったのに、道慈は断ることがない。毎日という約束を律儀に守っているのだろう。行為に対して面倒がる素振りすらなかった。自分で要求しといてなんだが、正直意外だった。
道慈が男、それも雪丸相手に毎日セックスすることに本当に耐えられるなんて。たまに疲れていそうな時はキスとハグだけで勘弁してやってもいいかと思う時もあるが、気づいたら脱がされている。こっちの身体を気遣われて本番をしない時はあるものの、まず脱がされないことがない。
なんとなく察してはいたが、道慈は雪丸に負けない程度には性欲が強い。
当然のように脱がされると、道慈の所有物になったみたいで嬉しい。
「その代わりに道慈がたくさんやってくれんなら」
この幸せがずっと続いてほしい。1か月続いたからといってずっと続く保証なんてどこにもないが、念押しするのはタダだ。
なぜか道慈は、雪丸が道慈だけにすることに執拗にこだわる。雪丸も口では要求するが、本当に道慈が雪丸だけに絞れるとは思っていない。道慈はそもそも浮気ができない男なのは知っている。だが、普段和食ばかり食べている人間に毎日中華料理を食べさせたら、胃もたれするのは目に見えている。ヘルシーな飯だって食べたくなるだろう。
飽きて完全に捨てられるくらいならたまにつまみ食いされた方がマシだ。あえてそれを許すと口にはしないが、もし道慈がつまみ食いしているのを見つけたら、たくさん責めて、拗ねて、ご機嫌を取ってもらおう。
とにかく構ってもらえるならなんでもいい。
いつか女の方が良いと気づく日は必ず来るのだから、それまではたくさん構ってもらいたい。
「練習するぞ」
「練習ってなんの?」
「俺以外とセックスしないための練習」
「? 道慈とエッチするってこと?」
「いや、反復練習だな」
要領を得ない回答に首を傾げると、道慈がテレビを消して立ち上がった。道慈の膝から頭がずり落ちた雪丸は、道慈の後を追って寝室に入った。
なんだ、セックスするんじゃん。そう思いながら棚をごそごそやっている道慈の背中にそっと抱きつく。
広い背中に密着すると、道慈の匂いがして安心する。背中の窪みに鼻を擦りつけながらさりげなく大きな胸を揉んでいると、道慈が振り向いた。
「これ使うぞ」
道慈がベッドの上で手に取った袋をひっくり返すと、大五郎の横にボロボロと大人のおもちゃが転がった。跳ね返ったローターが体に当たったのか、大五郎が手でてしてしとピンクの楕円を叩いている。
「道慈のエッチ。こんなにおもちゃ買ったの?」
「これ全部お前が持ってきたやつだぞ」
「そうだっけ。ああ、このオナホ結構前にあげたやつじゃねぇ?」
事務所から好きなだけ持って行っていいと言われたので、とりあえず知り合いみんなにばら撒いた試供品だった。
「未開封だから使える」
「なんで未開封なのよ。使えよ。まあ今は優秀な生のケツマンコが隣にいるからいらねぇか」
「……言い方どうにかなんねぇのか」
「それで道慈はおもちゃプレイしたいってこと? 珍しいな。お前あんま好きじゃなかったよな」
「あんまりな。けど今日使うのはお前だから」
「ああ、俺が使うのね。任せろ。すげぇ気持ち良くしてあげる」
ベッドに腰掛けた道慈を押し倒す。が、分厚い身体は胸を押しても微動だにしなかった。
「……なに?」
すでに頭の中にはローターとバイブを使われて苦しげに喘ぐ道慈の卑猥な姿が広がっていた。興奮で涎が垂れそうだった。
アイマスクで視界を塞がれ、オナホを右手に自慰をしている状況に雪丸は半ば呆然としていた。
「……なにこれ」
始め道慈にアイマスクをつけられた時は、そこから色々触ってくれるのかと思って興奮したが、持たされたのは道慈が使うことなく放置していたオナホとローションだった。ローションを使って自分でやれと言われた時はちょっと興奮したが、目隠しをしているのもあって無言になられると道慈が本当にこの場にいるのかも分からなくなってきて何をさせられているんだろうと言う気持ちになってくる。
「道慈? なにこれ、ん、俺そろそろ逝くけど……逝っていい?」
何か言って欲しくて話しかけると、道慈がやっと口を開いた。
「ダメだ」
「え……?」
言われた言葉を飲み下すために手を止める。すると手止めんなという指示が飛んできた。仕方なくノロノロと手を動かしながら、道慈の声がする方向に顔を向ける。
「は? 何これ、何のために俺マスかいてんの?」
ベッドの横が沈んだので、隣に道慈が座ったのに気づいた。手を伸ばしても、触れられる距離にはおらず、空を切った手が虚しくシーツを握った。
「想像しろ。もし今お前のファンの女が、雪丸に抱かれなきゃ死ぬって言ってきたらどうする?」
「んー……とりあえず抱く」
流石にそんな状況だったら抱かざるを得ない。道慈も俺だけに絞れとは言ったが、そんな状況だったらしょうがないと言うだろうと思った。
逆の立場でも同じだ。道慈にそんなことを言う女が現れたら、もはやそのまま奪われてしまいそうだ。
「……」
道慈の返答が返って来ず、返答を間違えたかと気まずくなって付け加えた。
「……人命第一だから」
「そうだよな……お前はそうだよな」
ため息まじりの低い声に、雪丸は流石に手を止めて振り向いた。
「なに? なんて言ってほしいのよ」
「いい。まず身体に理解させるから」
身体に? 復唱していると、また指示が飛んできた。
「仰向けになれ」
言われるがまま、布団の上に仰向けになる。オナホを外そうとすると、それはつけたままと注意される。
「想像しろ。今、お前の好みのふくよかな女を抱いてるとする」
「……へぇ」
道慈の口からそんなシチュエーションが飛んでくるとは。乾いた唇を舐める。
「ほら、抱いてんだから腰動かせ」
「道慈の変態……」
オナホを手で固定して、言われるがままに足を踏んで腰を打ちつける。
「今お前が抱いてる女はどうなってる?」
「めっちゃ締め付けてる……」
雪丸自身がオナホを強く握っているからだった。
「あとは? どんな顔してる?」
「顔って……」
顔なんてどこにもねぇよと思い黙ると、ちゃんと想像しろという命令が飛んできた。
仕方なく好みの可愛い子を抱いている姿を想像する。なかなかコアなプレイをさせられている。
「いつも目つきそんな良くねえのに、今は目がトロンとしてて可愛い。黒い肌に汗が浮いてて、でかいおっぱいとばきばきの腹筋の間に汗が垂れるのが最高。舐めたい。くそ重いけど、この重みがいい。俺の上でちんこ振り乱して泣いてんのがすげぇそそる」
「……おい、誰だよ」
「俺の女になった道慈だけど?」
「その女じゃねぇよ。言うこと聞け」
「なんで道慈といるのに他の女想像しなきゃいけねぇの? 俺が一番抱きたいの誰か知ってて言ってんの? お前」
道慈がため息をつくのが聞こえた。
「まあ……確かに一理あるか」
一番大事な質問の回答は得られなかったが、追求すると道慈が逃げてしまうので、言われたとおりにしてやることにした。
「ふは、道慈に見られながら道慈のこと抱くの、なんか興奮してきた……ん……くっ、はぁ、出る……!」
今度はダメだと言われることもなく、目いっぱい握ったオナホの中にフィニッシュを決めた。
「道慈、はぁ、こっち来い、ちゅーしよ」
アイマスクを外して、若干引いた顔をしている道慈の身体に抱きつき、興奮のままに唇を合わせる。押し倒すと、今度は簡単に倒れてくれた。
唇に舌を差し込むと、簡単に分厚い舌に巻き取られて背筋に快感が走る。
「はぁっ、んむ、ん、」
道慈のキスは気持ちいい。ずっとしていたくなる。
「はぁ、もう一回しような。ほら、道慈これここで持って。いっぱい挿れてあげる」
道慈の手に下腹部でオナホを持たせる。パンツの中で窮屈そうにしているものが見えたが、意地悪してくる奴のちんこは無視だ、無視。
普段のセックスだったら絶対に相手の快感を優先するが、今回は道慈が先にわけのわからない要求をしてきたので好きにさせてもらうことにした。
「俺のメスにしてやるよ」
太い首筋に舌を這わせて、じゅっと吸い付く。黒い肌に控えめについた印に、おい、と迷惑そうな声が落ちてくる。
道慈の重たい膝を持ち上げて手で押さえ、その姿をじっくりと眺める。いつものスウェット姿なのに、膝裏を押さえられて股を開いている格好だけで酷くそそられる。道慈はもはや遠い目をしていた。
「道慈、こっち見て。お前の中に今から入るよ」
ぐぷりと精液の溜まったシリコンの中に腰を進める。
「はぁ、すげぇ気持ちいい。道慈の中最高……道慈は?」
「……」
「そうだよな。道慈はまだ前しか感じねえもんな。ごめんな? お前が可愛すぎてぶっ飛んでた」
雪丸は笑って道慈の膝を高く上げて、道慈のスウェットとボクサーパンツを脱がせる。道慈の体が重たすぎて、道慈が手伝うように腰を浮かせてくれても、脱がせるのも一苦労だった。
だがこの重みがいい。
「おい、」
「大丈夫。まだ挿れねぇよ。ちょっとエロい格好で抜きっこするだけ」
剥き出しになった尻穴に目を落としながら、涎が垂れそうになるのを唇を舐めることで誤魔化す。道慈のずっしりとした睾丸の間を通り抜けるようにして、立派なものに自身を沿わせる。身の危険を感じたのか、道慈のものは僅かに萎えてしまっていた。
「小さくなってんの、かわいい。道慈。ほら、道慈も手伝え。ちんこ一緒に握って」
分厚い手に握らせると、道慈の温かい体温が直に伝わってきた。ごくりと唾を飲み込む。
「すげぇいい景色。可愛いよ。道慈……好き」
重たい膝裏を押さえて、くるぶしに唇を落とす。道慈の眉が僅かに上がったのをじっくりと眺めながら、腰を動かす。自身に絡みついた精液が道慈のものに擦り付けられる。
道慈がこうやって擬似セックスを許してくれるのは初めてだ。自分がひどいことをした自覚があるのかもしれない。
「道慈、締めて……そう、上手」
興奮して額に滲んできた汗をシャツで拭いながら褒めると、道慈の耳が僅かに赤くなった。気まずそうに寄せられた眉がかわいい。
「ん、俺、もう出る、道慈もいっしょに」
足を押さえていた片手を離して道慈の先端を握る。道慈が小さくうめいた。素早く先端を擦ると、一息遅れて道慈も出してくれた。
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