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第2話

 互いの精でどろどろになった手を肉棒に擦り付けながら、道慈の表情を盗み見る。僅かに乱れた息を整えている姿が可愛くて格好いい。足を押さえていた手を退けられ、足を戻している。道慈が安心したように息をつきながら、太い腕で抱き込んでくる。嬉しくなって未だに硬いままのものを擦り付けながら抱きつく。 「道慈、抱いてもいい?」 「ダメだ」 「お前の気まずそうな顔、悪くねぇ」  頬にリップ音を立ててキスをすると、道慈が頭を撫でてくる。そのまま肩口に顔をぐりぐりと押し付けて懐いていると、道慈の匂いが鼻腔に広がり下半身が熱くなってくる。 「全然興奮おさまんねぇ……。後ろ入れる?」  道慈の手を取って尻を触らせると、遠慮なく掴んで開いてきた。 「ぁっ……」  後ろに捩じ込まれる快感を想像して身体を震わせると、道慈がドロドロの指で後孔を撫でてきた。入り口を撫でられる動きに肌が粟立つ。 「あ、道慈……もう入るから、」  そんな焦らすなと道慈の肩口に額を押し付ける。パキッと音がして、自身の体の上でローションが開けられたことに気づく。ポタポタと尻に生ぬるい感覚が落ちてくるのにいちいち反応しながら、道慈の指を待つ。  すると入ってきたのは、無機質なシリコンの感覚だった。 「あ、ん!?」  温かい指が入ってくると思い、安心し切っていた身体がびくりと硬直する。 「痛いか?」 「痛くねぇ……けどっ、なに……?」  道慈の指よりも細いものは、案外中まで入ってくることなく止まった。中途半端なところで止まり、外から会陰を刺激するような構造は覚えがある。エネマグラだろう。 「なんでこれ使うの? 道慈のちんこはぁ?」  早く挿れてほしくて疼いていた身体が不満にイライラむらむらし出す。 「まだだ。練習してからな」 「だから練習ってなんだよ?」 「これ、気持ちいいのか?」  道慈が不思議そうな顔でエネマグラを指先でトントンしてくる。わずかに前立腺にあたり、雪丸は眉を寄せた。 「これは使い方があんの。こうやってケツ絞めると、中でいいとこに当たって、あッ……ンンッ」  危ない。うっかり自分でやって逝きそうになった。トロリと先端から先走りが溢れて道慈の腹を濡らした。自然と生理的な涙が浮かんできた視界の中で、道慈に焦点を合わせる。 「……ふう、こんな感じ。これ使いたいんなら、お前の咥えてやるよ」  見ているだけでは道慈は暇だろうと思い、起き上ろうとしたら、がっしりと身体を抱きしめられて動けなくなった。 「……なに?」 「使い方はわかった。じゃあ、お前はこれちゃんと使え」 「舐めなくていいの?」 「いい。こっちに集中しろ」  後孔に刺さったおもちゃをとんとんと、指でノックされ、咄嗟に尻で締めてしまう。 「あっ、ンッ、これっでも、道慈が……! あ、いく、」 「ダメだ」 「んッ……!?」  いつもみたいに優しく逝って良いって言われると思ってたのに、ダメと言われて、咄嗟に擦り付けていた前を離す。 「雪丸、俺以外で逝く必要ねぇよな?」  道慈に頭を撫でられながら諭すように言われて、頭が混乱してくる。俺以外とは。 「え……?」 「雪丸、ケツ締めろ」  尻たぶを握られて、どくりと心臓が音を立てる。挿れてる時みたいだ。反射的に中を締めてしまい、前立腺にシリコンが食い込んだ。 「うっ、アァッ」  どくどくと白濁がよく鍛えられた腹の上に散る。 「我慢できなかったな」  いつも逝ったら褒めてくれるのに、出来損ないかのような評価をされて雪丸は口を尖らせた。 「道慈がけつ掴むから、つーかこれはそういう道具なんだからしょうがねぇだろ……おもちゃもういいから道慈とエッチしたい……」  控えめに主張すると、道慈が頭を撫でてきた。 「俺以外で逝くの我慢できたらな」  「俺以外ってなに? 道慈が触って突っ込んできたんだから道慈が俺のこと逝かせたんだろ? なんで俺が悪いみたいになってんの?」 「たしかにそういう考え方もあるな」  道慈は考えるように顎を触ってから、起き上がった。ベッドの上に降ろされる。  離れた体温に嫌な予感がした。 「じゃあ今度これな。お前一人でやれ」  投げ渡されたバイブを受け取りながら、雪丸はジト目で道慈を見た。 「おもちゃで逝くの我慢できたら抱いてくれるってこと?」 「ああ。逝きそうになったら手止めていい。ただ、それまではちゃんと追い込めよ」 「追い込めって部活かよ……。まあいいけど、見てるだけじゃ飽きんだろ、お前。咥えてやるって」 「咥えたら咥えてることに興奮しちゃうだろ、お前」 「……じゃあちゃんと見てろよ? 飽きたは無しだから」  何故道慈が急におもちゃプレイに興味を持ったかはわからないが、エロに前向きなのはいいことだ。要するにこのおもちゃで逝かなければ道慈がご褒美に突っ込んでくれるということだ。手も止めていいと言われたし、それなら余裕だ。あとは道慈を誘惑するだけだ。  ベッドで四つ足をついて足を開く。道慈に見えるように尻たぶをわざと開きながら、ローションでたっぷりと濡らしたバイブを挿入する。 「ん、ンン゙っ……」  道慈のと比べたら一回りは小さいバイブは、簡単に入った。奥まで挿れて、取っ手についているスイッチを入れる。 「うっ、く……!」  特にいいところに当たってるわけでもないので腹の中をかき混ぜられる感覚があんまり良くない。ちょっとは気持ちいいところに当てないと誘惑として成り立たないかもしれない。そう思って僅かにバイブを引き抜いて角度をつける。 「あっ……! んんっ、」  流石にいいところに当てたら気持ちいい。振動が前立腺に伝わってくる感覚に前から滴が落ちる。 「雪丸、もっとちゃんと押し付けろ」 「でも、いっ、いっちゃうかも……!」 「逝きそうになったら止めていい」  道慈の指示に従って、仕方なくもっと押し付ける。 「あ゙ッ、ああっ」  頭が白くチカチカし出したところで、すんででスイッチを切ろうとして、手が滑る。慌ててスイッチを切るのを諦めて、バイブごと引き抜く。  ごとりとバイブがシーツに落ちた。シーツの上で丸くなって体の中を渦巻く快感をやり過ごす。 「雪丸、もう一回」 「はぁ、はっ、……あ?」 「もう一回だ。もうバテたのか?」  道慈が全然優しくない。完全に教官モードになっている。 「がんばったんだから、まず褒めろよ……結構しんどいぞこれ」 「あと2回頑張れたらな」 「あと2回!?」 「ほら、準備しろ。そのまま挿れたら痛いぞ」  言われるがままにバイブにローションを塗りたくりながら、何故道慈の部屋で道慈に煽られながら一人でイキ我慢大会をさせられてるんだろうと思った。  道慈がエッチに前向きなのが嬉しくて普通に乗ってしまったが、エッチなことをしてるのは自分だけだし、冷静に考えたら意味がわからない。  俺以外逝く必要ねえってなに? 道慈以外で逝くなってこと? そんなの物理的に無理じゃねぇ?  そう思いながらも眼力に負けて、道慈に見やすいように再度股を開いて入り口にバイブをあてがう。 「んっ、ううっ」  ただでさえエネマグラを使って一回逝った上に、さっきイキ損なったせいで身体が敏感になっている。我慢するためにいいところからずらすと、すぐにバレてしまう。道慈がすぐに見抜いてくることが、ムカつくのに嬉しい。まるで道慈に調教されてるみたいで、イライラするのに興奮する。  いいとこに押し込んだまま、バイブのスイッチをオンにする。 「うっ、はぁあっ、やばっ、あぅっ」  どうにか腰を揺らして当たらないようにしても、ランダムなグラインドでどうしても当たってくる。しまいにはちゃんと当てろと指摘され、仕方なく取っ手を持って角度をつける。 「うっ、うううっ、いぐっ、はあっ、いっ……!」  上り詰める前に今度はスイッチを切ることに成功した。振り向くと、道慈がベッドに腰掛けたまま頬杖をついている。 「もっと追い込めんだろ。もう一回」  無情な一言に目に涙が浮かんでくる。  もっと追い打ちをかけるのは、道慈の顔も身体も全く興奮していないという事実だった。なんのためにやっているのかわからない。 「がんばっただろ! もうやだ、全然興奮してねぇし……! 道慈が挿れないならもうやらねぇ、ばーか!  クソ変態インポ!」  バイブを道慈に投げつけて部屋から出て行こうとすると、腕を掴まれた。バイブをキャッチされたのもむかつく。  身体を後ろから抱き込まれて道慈の匂いに包まれ、一瞬怒りが引き掛ける。 「悪い、嫌だったか?」 「好きなやついんのかよ! 百歩譲ってお前がイキ我慢オナニー見んのが好きな変態なら付き合ってもいいけど、全然興奮してねぇじゃねぇかよ。なんの嫌がらせだよ」  意味のわからない悔しさに唇が震えてくる。  興奮するかと思ってヤらせてみたら意外と萎えた、とかだったら最悪だ。ムカつく。立ち直れない。ノンケにビジュアルで訴えてもしょうがないのは分かってるのに、道慈も興奮してくれるんだと期待した自分に腹が立ってくる。 「ああ、悪かった。お前こういう時割りかしなんでも言うこと聞くから説明足りてなかったな」 「説明とかじゃねぇ、もういい。家帰る」 「……帰るのか? ここがお前の家じゃねえのか?」  機嫌を取るように顔にキスを落とされ、腕から抜け出そうとしていた身体から力が抜けていく。道慈に弱すぎる。  どうなんだ? 普通に考えたら酷いことをされたんじゃないのか? 俺は。つーか普通ってなんだ?  雪丸は自分で考えて訳がわからなくなっていた。  まあでもノンケがゲイオナニーを見て萎えるのは本来普通のことだから、ここは広い心で許すべきなのか。  雪丸は片思いの歴と女のわがままに付き合っていた経験が長すぎて、何に本来怒るべきなのかを見失っていた。もともと傷付いたときに傷付いたと主張する習慣もなかった。 「もうわかったろ、お前は男のオナニーじゃ興奮しねぇの。もうやりませんって謝ったら許してやるよ」 「……? そもそも興奮するためにやってねぇ」 「……は? なに考えてんのお前」 「お前が俺以外とセックスしても逝けねぇ身体にするためにやってる」 「……? なにそれ? なんのために? 俺他のやつとセックスしていいの?」 「ダメに決まってんだろ。でもおまえの常識そのものが緩すぎるからまず身体から作り変えようと思ったんだよ」  さりげなく身体を作り変える訓練をさせられそうになっていた事実にびっくりする。  道慈がベッドに腰掛けると、抱き込まれた体はそのまま道慈の膝の上にすっぽりとおさまった。 「他所でやってもイケなくなったら、そもそも俺以外とやろうと思わねぇだろ?」 「道慈お前……すげえこと考えるな。俺一応人間だぞ。そこらへんの去勢してねぇ犬だと思ってねぇ?」 「…………そこまでは思ってねぇよ」  意味深な間を置いて道慈は答えた。 「まぁ、お前が嫌なら別の方法を考えるよ。流石に泣かせてまでやることじゃねぇ」 「別に泣いてねぇよ。俺はお前が萎えてんのが嫌なの。俺が一人でおもちゃプレイしてんの見て興奮できんなら続けてもいいぜ」 「俺以外で気持ちよくなってんの見ても、興奮しねぇ」  雪丸は振り向いて道慈の顔をまじまじと見る。これは本当にそう思ってるのだろうか。男のアナニーが無理だったという話ではないんだろうか。雪丸だったら道慈がおもちゃを使っている姿だけで三度の飯が食えるが、道慈は大分堅物らしい。 「お前わがままだな。一応俺人気男優よ」 「もう辞めただろ」 「訓練なぁ。あ、いいこと考えた。ちょうど最近一人エッチ配信しねぇのかって言われたんだよ。どうせやんなら配信してみようぜ」 「お前何も理解してねぇじゃねぇか……お前の裸を電波にのせんの嫌だっつったろ」  上から降ってくる声が一段低くなった。舌打ちが聞こえてくる。 「誰に言われんだよそんなこと。もう辞めたんだろ? AVは」  顎を上げて道慈の顔を仰ぐと、凛々しい眉の間に深く皺が刻まれていた。  いまいち雪丸には道慈が何に不快感を露わにしているのか理解できなかった。雪丸だったら好きなものは自慢したい。できることならみんなに道慈とセックスしてることを自慢したいし見せつけたい。  特に道慈の職場にいる事務の女共には是非とも見せつけたい。以前偵察のためにわざわざ会社まで行って依頼してやったから、道慈の好みに入りそうで、かつ指輪がついていない女が何人かいることは把握している。 「だってお前は俺が一人エッチしても興奮しないんだろ。だったら興奮する奴が見たほうが良くねぇ?」 「目的が違うだろ。なんでほかのやつに見せなきゃいけねぇんだよ」  ゴツゴツした手に頬を掴まれて潰される。 「お前の身体を見ていいのは俺だけだ」  喉の奥からじわじわと快感が込み上げ、唾を飲み込む。まさかこんなことを堂々と宣言される日が来るとは思わなかった。  雪丸もたまにそんなようなことを女に言ったことはある。女は独占されると喜ぶ習性があるからだ。もしかしたら自分にもそんな習性があったのかもしれない。  死ぬほど気分がいい。 「はは、なにそれ……興奮する」  このままなし崩し的にいちゃいちゃしようとしたら、道慈にバイブを渡された。 「わかったら練習続けろ。あと一回」 「しつけぇなぁ」 「初めに決めたことはやりきれ」 「お前が勝手に決めたんだろーが」  ため息をついてバイブにローションをかける。  「こんだけ言うこと聞いたら、ご褒美いっぱいもらわねぇとなぁ?」  道慈が顎を掴んで口付けてくる。 「ちゃんとできたら、いやってくらいやるよ」  耳元で囁かれ、身体がぶるりと震える。  しょうがないから乗ってやろう。本当に身体が作り変わるとは思わないが、何故かそこにやる気を出している道慈が可愛いのもある。

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