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第4話

 雪丸は人に好かれて依存されるのが好きな割りに、道慈の好意はあまり間に受けないところがあった。  何回言っても性に対する奔放さの根底の認識が変わらないし、独占欲をそのまま口にすると不思議なものを見る顔をされる。暖簾に腕押しだ。一緒に生きてきた時間は長いはずなのに、まるで違う世界を生きている人間と会話しているみたいだった。  ただの幼馴染の友人だったときは、雪丸の下半身が果てしなくだらしないというだけでは、たいした支障にはならなかった。しかし関係が変わればそれが致命傷になりうる。道慈はそれなりに独占欲も嫉妬心もある方だった。  どうすれば良いか考えた結果、基本的に下半身でものを考えている奴なので身体から作り変えるのが早いという結論に至った。  しかし相手はほとんど身体を売って生きてきたような人間である。一筋縄ではいかない。  飲み会の帰りに他所で飲んでいた雪丸と合流し、たまにはラブホ行こうぜと誘われた。タッチパネルの前で雪丸は慣れた手つきで一番料金の高い部屋を選んでいた。 「今日も特訓すんの?」  部屋に入った瞬間、雪丸がジャケットをソファに放る。それを拾ってハンガーにかけながら、ソファに腰掛けた雪丸を見下ろす。 「いや、何も持ってきてねぇ」 「そういうと思って、買ってきた」  雪丸が持っていた黒い袋をテーブルの上にひっくり返した。 「ママのおすすめの極太張り型。お前のよりグロくないし、若干短いけど今までで一番デカくねぇ?」  ファンタジスタの坊主のいかつい体つきをしたママが頭に浮かぶ。 「……ママってこんなの使ってんのか」 「もしかして今ママのやらしい姿想像した? いけそう?」  雪丸が見つめてくる。一瞬本当に想像しそうになり、頭を振った。 「いけそうってなんだよ……」 「俺以外の男にも興奮する?」 「するわけねぇだろ」 「サウナとかでこいつ良いケツしてんなとか思わねぇ?」 「思わねぇよ……お前はいつもそんなことを考えながらサウナに入ってんのか?」  自分に当てはまることを確認しているのだろう。道慈だったらまず出てこない発想だ。  確かに以前雪丸と大衆浴場に行った時、やたら体を見られたような気がする。筋肉を確かめるように触られた記憶もある。もともと距離感が近い人間なのであまり気にしていなかった。付き合う前の話だったから、自分以外を見ていたかどうかはもはや覚えていない。たまに太った人がいたら目で追っていたかもしれない。これは大衆浴場に関わらずどこでもそうだが。 「俺はいつもお前の良いケツ見てるよ」 「……」  サウナも禁止にしてやろうかと思ったらこの返事だ。  雪丸が道慈のことを特別に好きなのは分かっているが、誤魔化されているような気もする。 「なに、その顔。見られんの恥ずかしい?」  話が不穏な雰囲気になってきたので、話題を変えることにした。張り型のパッケージを手に取り、サイズを確認する。  雪丸の拡張に付き合っていた時、無理やり張り型を入れようとして泣かれた記憶が蘇った。 「お前あんまりデカいディルド入れるの嫌がってなかったか?」 「今はお前ので毎日ズコバコしてっから抜けなくなることはねぇだろ。これで特訓する」  一度練習して以来、練習しようとするたびにあの手この手で話を逸らそうとしていたのに、なぜか今回は乗り気になっていた。 「どういう心境の変化だ?」 「ふふん、まあ見ときなさいよ」  雪丸は立ちあがると、身体を寄せてきた。肩に手をかけて、ちゅ、と頬に唇をつけてくる。準備してくるからチンポ勃たせて待ってて。人の股を無遠慮に撫でてから浴室に向かって行った。  遅れて雪丸の声が聞こえてくる。  「道慈、ここサウナついてるぜ!」  シャワーを浴びて出ると、キングサイズのベッドの上に細い煙が上っていた。  雪丸が寝タバコしているのだ。こちらに気がつくと、携帯をベッドの上に放って、バスローブの中で足を組み替えながら手招きしてくる。 「おいで。シャワー浴びなくてよかったのに。お前の汗の匂い興奮するから」  紫煙を吐きながら、雪丸が目を細めた。  長いまつ毛と通った鼻筋、薄い唇。耳のピアスが橙色の照明を鈍く反射していた。  普通に寝転がっているだけなのに、バスローブから覗く鎖骨がやたらと色めいて見える。  大学を卒業して再会してすぐに、雪丸の色気に気まずくなった記憶がある。それこそAV男優なんてやらずに俳優をやれば良かったのだ。テレビに映っても芸能人と遜色なくきれいな男だった。  隣に腰掛けると、バスローブの腹の合わせに手を差し入れてくる。 「俺が気持ち悪いんだよ。タバコ消せ」  雪丸が最後とばかりに大きくタバコを吸ってから、寄越したガラスの灰皿の上で潰した。  灰皿をサイドテーブルに置いている間に、雪丸が乱した前見頃の中に顔を入れている。 「あー、ボディソープの匂いいらねぇ……」  不満げに呟きながら人の腹に唇を落としている。小さな頭は簡単に手の中に収まる。大きな猫みたいだった。前髪越しに見上げてくる目が少し潤んでいる。  こういう時キスすると、雪丸は安心したように目を閉じる。顔を寄せてから、はたと道慈は気づいた。 「練習、すんだろ」 「……先にちゅーする」  雪丸が頭を掴んで唇を触れ合わせてくる。つい長めの髪を撫でながら答えてしまう。ラブホテルのシャンプーを使った金髪はいつもよりきしんでいた。 「ん、はぁ……道慈、触って……」  雪丸が身体を密着させてくる。下腹部に固いものが当たっていた。  頭を撫でていた指を耳にすべらせると、雪丸がくすぐったそうに首を傾げる。耳介を親指と人差し指でこねるように揉む。ふぁ、と吐息混じりの声が漏れた。 「道慈、身体熱い……」 「雪丸、先に練習だろ」 「……俺が、んっ、わざわざ買ってきてやったのに、褒められてないからやらない」  わかりやすくねだってきた。 「自分で買ってきてえらいな。練習したらもっと褒めてやる」 「ご褒美、奥までくれる?」 「ああ、ここまでな」  臍の下の刺青をバスローブの上から親指で撫でると、雪丸がごくりと唾を飲んだ。 「道慈、ちゃんと見てろよ?」 「見てるよ。後ろよく解せよ」  剥き出しの張り型とローションを渡すと、雪丸が手にローションを取りながら笑った。 「誰に言ってんのよ」 「ほら、離れろ」 「やだ、ここでやる」  人に跨ったまま始めようとした雪丸の腰を抱いて下ろす。あっ、くそっと雪丸が悪態をついている。  あぐらをかいて距離を取ると、雪丸が恨めしげに見上げながら近づいてきた。 「雪丸、」 「はいはい、一人でやりゃ良いんだろ。そこで見てろバーカ」  四つん這いになった雪丸が、道慈の膝のすぐ側で張り型に舌を這わせ始めた。赤い舌がグロテスクな形をした肌色のものをなぞっていく。 「ん、どうじ……ここ、気持ちい?」  雪丸が裏筋を何度も下の腹で撫でながら上目に見上げてくる。  かっと一気に下半身が熱くなるのを感じた。濡れた唇から赤い舌が何度も覗き、唾液が先端に塗りつけられる。 「道慈の、濡れてきた……。かわいい。好き、」  ちゅっと先端に唇が落とされる。うっとりと雪丸がシリコンに頬擦りしている。  雪丸の魂胆がわかった。つまり、一人で練習するのが嫌だから、こっちをその気にさせてしまえば良いと思ったのだろう。  実際道慈の下半身はいつもの練習の時と違ってはっきりと主張していた。恋人が自分のことを呼んで卑猥なことをしてるのだから当たり前だ。  いつも雪丸がおもちゃを使っている時は、雪丸が他の人間と絡んでいる姿を想像していた。そのため興奮しないどころかむかつきすら覚えていた。自分でやらせといて理不尽なのはわかっているが、雪丸が今後AV復帰や、そこら辺の女や男と致そうという発想にならないために、道慈は道慈で真面目に迷走していた。 「ん、本当はいっぱい咥えてやりてぇんだけど、こうやって……」  雪丸が先端をパクりと咥えて、どんどん深く咥えていく。道慈が咥えてもらったことがないくらいに。雪丸に限らず、誰も道慈のものを奥まで咥えてくれたことはなかった。顎が外れるか道慈のものが噛まれるかのどちらかになるのは目に見えているので、誰に求めたこともなかった。  雪丸の喉奥まですっぽりと入った陰茎に不思議な羨望を覚える。雪丸が生理的な涙が浮かんだ目で見上げてくる。 「んっ、んぐっ、は、」  そうして、頭を上下に振って無味無臭のシリコンを追い上げていく。その必死さに、なぜそこまで必死におもちゃを咥えているのだと思う気持ちと、羨ましさと嫉妬と興奮の混ざった何かが腹の奥に蟠る。  ぐちぐちと、口から以外も音が聞こえた。雪丸が自身の尻に指を入れているのだ。わざわざよく見えるようにバスローブを捲っている。 「んっ、んぶ、はぁっ……道慈、入れたい……?」  ごくりと唾液を飲む音がした。道慈自身の喉が動いた音だった。  雪丸が大きく足を開き、見せつけるように股の間に張り型を滑らせる。バスローブの紐だけが腹に絡まっていた。 「あっ、んっ、道慈……こっち、こっちいれて、」  ひくひくと赤く染まった穴があてがわれた張り型に吸い付くように収縮していた。 「どうじ、いれて、いっぱい突いて、ンッ」  丁寧に先端を捩じ込んだ瞬間、前立腺を抉ったのか、雪丸の腰が跳ねる。大きな目が見開かれて一瞬固まった。 「せ、セーフ、逝ってねぇ……優秀だな俺のちんこ……道慈、今のいっかい、な」 「……ああ」 「ふは、いつもよりイイ顔してんじゃん」  雪丸が目を合わせるなり嬉しそうに笑った。ゆるゆると張り型を動かしながら、自身の指を舐めている。 「道慈、こっちも……おっぱい舐めて」  乱れたバスローブをさらに開き、胸の先端を自身の指でいじり始めた。 「ぁっ、んっ、きもちいい、どうじ、」  道慈がいつも舐めるように、下から上に何度も撫であげている。片手の指先で突起をいじりながら、もう片手は張り型を動かしている。  動かすたびに腰が跳ねているので、前立腺をちゃんと狙っていることはわかった。 「ああっ、そこっ、好き、道慈のかたい……っ」  びくびくと身体を跳ねさせながら雪丸が身体を丸くした。 「はあっ、きっつ……、うぅ、」  若干先端に白濁が滲んでいたが、頑張っている姿が健気なので道慈は何も言わないでおいた。 「どうじ、道慈、もういきたい、いかせて、道慈のほしい」 「あと一回だから、がんばれ」  2回くらい寸止めすると、雪丸は身も世もなくねだってくる。道慈以外頼れなくて必死に縋りついてこようとする姿は可哀想で愛おしい。 「いきたっ、道慈、いきたいっ」  涙を流しながら張り型を必死に動かしていたが、何度かびくびくと身体を揺らしてから、手が止まった。 「もうやだ……、手ぇ、疲れたぁ……」 「胸だけでいけるだろ」 「一人じゃ無理、道慈、手伝って」 「それじゃ意味ねぇだろ。ほら、ゆっくりでいいからケツ締めたり緩めたりしてみろ」 「んっ、ん、」 「良いところ当てろ」 「当ててっけど、ずれるから、んッ、アッ、当たってる……!」  雪丸が眉を寄せて手を動かす。んっ、んっとうめき声を漏らしながら、必死に良いところに当てるべく手を動かす姿を眺める。 「アッ——、ああ……っ」  びくびくと身体を揺らして、雪丸が目を瞑った。陰茎の根本を痛いほどに握っている。 「はぁっ、はぁっ、ん、道慈、いかなかったっ、見て、」 「見てる。我慢できてえらいな。おいで」  手招きすると、雪丸が張り型を抜くこともしないまま震える手足でにじり寄って来て、腹に抱きついて来た。  いつものように膝に乗る気力もなかったらしい。そのまま人の下腹部に頬擦りしている。 「これ、ん、ちょうだい……。はやく、ご褒美」  バスローブの合わせをめくるなり、ボクサーパンツの上から舐め始めた。 「ああ。まず入ってんの抜かないとな」 「ん、抜いて」  雪丸が膝を立てて尻だけ高く上げた。本当に淫乱な格好が似合う。

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