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第1話 アルス・アマトリア

 神原 秋也(かんばら あきや)は、ワインを飲み干したグラスをローテーブルに置くと、うんと伸びをした。  宵の口から、だらだらと飲み続け、結局一瓶開けてしまった。  どさりとソファに背を預け、ベリーショートの黒髪をガリガリと掻く。 「明日も仕事だし、もう寝るか」  そう考え始めた矢先に、突然ドアが開け放たれた。 「ぃよぉ、秋也! お前、明日デートするんだってぇ!?」  大声と共に転がり込んできたのは、幼馴染の一本木 拓斗(いっぽんぎ たくと)だった。  幼稚園から始まって、こうして社会人になった今でも続く、腐れ縁だ。 「何だ、お前は。ノックもせずに!」  固い事言うな、と笑う拓斗の顔は薄ら赤く、息は酒臭い。  どうやら、飲んだ挙句にやってきたらしい。 「相変わらず、酒癖の悪い奴だ」 「はぁ? 俺はぁ、まだまだ酔ってなんかいねぇよ」  いかにも、酔っぱらいが言いそうなセリフだ。  秋也は、再び髪をガリガリと掻いた。 (黙っていれば、それなりにイケメンなんだが。この男は!)  切れ長の一重まぶたが涼しい秋也に対して、拓斗は目鼻立ちのハッキリした顔立ちだ。  和風のクールなイケメン・神原さん。  ラテン系の陽気なイケメン・一本木さん。  社内では、こんな具合に評判が良い二人なのだが、浮いた話に発展しない。  その理由は、もう一人の幼馴染にあった。 「秋也、お邪魔してもいいかな?」 「すでに邪魔してるだろ!」  拓斗の後ろから顔をのぞかせたのは、守岡 玲(もりおか れい)だ。  これまた拓斗と同様、幼馴染の腐れ縁。  大学はそれぞれ別々に進学し、ついに三人バラけたはずが、新卒入社したらば同期で再会した、というわけだ。  玲は、きゅるんとしたアイドル顔。  瞳は円くウルウル、頬は柔らかくフワフワ。  少し長めのフェザーショートも相まって、中性的な魅力に溢れている。 『この三人、怪しいよね!』 『三角関係!? 玲くんを、神原さんと一本木さんが奪い合ってるの!?』 『でも、神原と一本木も仲良いよな』 『3Pとか、してたりして!』  そんな噂話に出くわすたびに、違う、そうじゃない、と否定する三人だ。 『俺は、幼馴染としてしか、この二人を見ていない!』 『俺は自由人だぜ!? 誰かに縛られるなんて、ねぇよ』 『僕は、秋也も拓斗も大好きだよ。どっちかなんて、選べないな~』 『玲! お前がそんなことを言うから、誤解されるんだぞ!』 『え? 僕、何かマズいこと言った?』 『あぁ、もう! こいつらに振り回されっぱなしの、俺の人生だぜ!』  今日も、こんな不毛な会話をギャアギャア言い合った。  玲がいつもこんな感じなので、三角関係説が消えることは、無かった。 「何だ、二人で飲んでたのか?」  話題を逸らそうと、秋也はそう言ってみた。  だがしかし。 「聞いたぜ、秋也。お前、植村(うえむら)と付き合ってるんだってな!?」  残念なことに、話題は逸れるどころか深くなっていく。  秋也は、拓斗の言葉に肩を落とした。 (まさか、こんなに早くこいつの耳に入るとは!)  冷やかされるのは目に見えていたので、秘密にしておきたかったのだが。 「付き合うとか、まだ決まってない。明日、一緒に食事をするだけだ」 「そうか、うん。そうかぁ、うん、うん!」   勝手にリビングまで上がり込み、勝手にグラスへワインを注ぎ、勝手に一杯飲んだ後、拓斗はニヤリと笑った。 「食事だと? そいつはもちろん、ディナーだろうな?」 「ああ、夕食だが」  ひゃひゃひゃ、と愉快そうに笑いながら、拓斗はバンバンとテーブルを叩いた。  グラスが揺れ、零れそうになるワインを守りながら、秋也は逆にどんどん不機嫌になっていく。 「それがどうした。何が言いたい」 「うんうん。そうだなぁ」  2杯目のワインをグラスに注ぎながら、拓斗は目だけで秋也を見上げ、からかうような声だ。 「ディナーの後は、もちろんアレだよな?」 「アレ? 何だ『アレ』って」  とぼけんじゃねぇよ、と拓也はワインで喉を湿らせた後に、大声を上げた。 「女がディナーOK、ってのはなぁ。その後のベッドインもOKよぉ、ってぇ意味じゃねえか!」 「ばッ、馬鹿を言うな! 飛躍しすぎだ!」  拓斗の手からグラスを奪い、秋也はテーブルに叩き置いた。  零れたワインを、玲がのんびりとタオルで拭きとる。  よくあることだ。  三人で飲むと、よくあることなのだ。  だが、この夜は少し違っていた。  玲は、ワインで赤く染まったタオルを拓斗の頭にポイと被せると、秋也にゴメンネと両手を合わせた。 「許してやって。拓斗、めちゃくちゃ酔っぱらってるから」 「何言ってンだよ。俺は秋也クンを、とってもとっても心配してるんだぜ?」  嘘ばっかり、と声をあげた玲だったが、拓斗はそんな彼の頬を両手ではさみ、ぐりぐりとこねあげた。 「お前だって心配してたじゃねえか。何たって相手は、あの植村だから、って」  どういう意味だ、と秋也は玲に目で問うた。  口の悪い拓斗は仕方ないとして、なぜ玲までそんな事を言うのか。  拓斗は秋也に、芝居がかった神妙な顔を向け、腕組みをして唸った。 「植村はよぉ、男関係が派手だろ? そんな女が、お前の手に負えるのか、ってな」 「お、男関係が派手、って」 「貢がされて遊ばれた挙句、あっという間に捨てられて。さらに! 良くない噂を、ふれ回られるんじゃねえのか?」 「植村さんは、そんな人じゃない! ……と思う。たぶん」  秋也も、気にはなっていたのだ。  華やかで派手好きな植村さんが、どうして俺みたいに地味な男に声をかけたのか、と。  しかも、好きだとハッキリ言われたわけでも、ない。  何となく会話をするようになって、何となくディナーの約束をしただけなのだ。 「何だよ。結局、お前も不安なんじゃねぇか」  舌打ちをし、拓斗はとうとうボトルに直接口をつけ、あおり始めた。 「拓斗、ちょっと飲み過ぎだよ?」  呆れた顔でため息をついた後、玲が秋也に優しい顔を向けてきた。 「秋也、拓斗の言う事なんか気にしちゃダメだよ。誠意を持って付き合えば、きっとうまくいく。応援してるからね」 「よし! 応援しよう、秋也クンを!」 「拓斗、いいかげんにしなよ! もう帰るよ!」  腕をつかんで、無理矢理ソファから立たせようと玲はがんばったが、拓斗はビクともしない。  それどころか、さらに大きな声を上げ始める始末だ。 「ヤれ! 秋也! 速攻エッチしろ! 植村が満足するまでヤれば、お前の勝ちだ!」 「やっ、やめろ! 下品だぞ!」 「下品だとぅ~? 愛、ってのはなぁ、体の相性も重要なファクターなんだぜ?」   意外にまともな方向へベクトルが変わった、と秋也がホッとした瞬間、拓斗は再び大声を上げた。 「百戦錬磨の植村相手に、お前のテクが通用すんのかよ! あぁ!?」 「俺だって女くらい知ってる! 馬鹿にするな!」 「どれくらい!? 何人くらいと寝た!?」 「うッ……」  途端に、秋也は黙ってしまった。  売り言葉に買い言葉で、大声を張り上げた秋也だったが、突っ込まれると言葉に詰まった。  セックスの回数など、拓斗に引っ張られて風俗へ足を運んだ時が、すべて。  もともと性欲の強い方ではないので、それで困る事などなかったのだ。 「やっぱり、あれだ。秋也、お前には練習が必要だな」  うんうん、と一人で首を縦に振り、拓斗は傍らにいた玲をぐいと引き寄せた。 「玲。お前、秋也のために協力しろ」 「いいよ。何するの?」 「秋也、ここで玲を抱いてみせろ。俺が、アドバイスしてやっから」 「えぇっ!? ちょっと待ってよ!」 「本気か、拓斗!?」  とんでもない方向に、話は流れ始めた。 「いや、あの! 僕は、秋也と拓斗のこと、幼馴染……むぅ~!」  玲がモゴモゴと言い訳をしている最中に、拓斗はいきなり彼に口づけた。 「むぅ、う! うぐムグ!」 「うん、最高の感触~」  もがもがと暴れる玲を、がっちりとホールドし、拓斗は彼とのキスを味わった。  そして長いキスが終わった後、秋也の方を向いた彼は、意外にも真面目くさった表情だった。  いや、酔いが極まって、目が据わっているのだ。 「まずはキスだ。秋也、やってみろ」  唐突に、拓斗に熱い口づけを見せつけられた秋也は、反論するタイミングをすっかり逃してしまっていた。  しかも、相手は玲なのだ。 (た、拓斗。お前やっぱり、玲が好きなのか? だから、キスを……) 「どうしたぁ。もう一回、やって見せようか!?」 「いや、待て! 拓斗、お前は……」  秋也が言い終わる前に玲は立ち上がり、触れ合うほど彼の近くにやってきた。  やれやれ、と溜息をひとつついた後、玲は秋也に声をひそめた。 「酔っぱらうと、拓斗は言うこと聞かないよ?」 「ま、まぁ、そうだ」 「だから、さ。秋也、僕にキスしてもいいよ」 「え!?」 「秋也だって、酔ってるじゃん。だったら、できるよね。キス」 「う、うん」  秋也がキスして見せれば、拓斗は納得するだろう。  その後、玲が彼を部屋へ連れて帰る、と話はまとまった。 (まとまった。まとまった、のだが。これは……すごい破壊力だ!)  瞼を伏せて、軽く上を向いて見せる玲が、愛らしすぎる。  秋也の心臓は、どんどん鼓動が速まってきた。 「拓斗は、こんな感じで玲に触れてたな」 「うん、そうだよ。秋也、がんばれ!」  何か喋れば気がまぎれると思っていた、秋也だ。  だがしかし。  肩を抱いて、思う。 (何て、華奢なんだ)  髪に触れて、感じる。 (何て、柔らかいんだ)  そして、近づくにつれ、良い香りがする。  植村の、キツい香水とは違う、ナチュラルな優しい匂いだ。 「玲……」  秋也は、ついに玲の唇にキスをした。 (柔らかい。温かい。そして、この感触……途方もなく気持ちいい!)  のぼせ上りそうになったが、秋也は拓斗より自制心が強かった。 (いかん。俺も酔ってるんだ)  彼は心の中で、自分で自分を叱りつけた。  すぐに唇を離すよう、自分の体に命令した。  だが、ちゃんと言うことを聞くはずの体は、思い通りにならないほどに火照り始めていた。 「ぅん……」  小さな可愛らしい声と共に、玲が秋也の唇を割って舌を差し入れてきたのだ。  ゆっくりと咥内をさまよう細い舌が、熱い。 (も、もう少しだけなら、いいか!)  秋也は拓斗より誘惑に弱かった。  自分で自分を甘やかし、秋也は玲の舌を捕らえた。  軽く踊る舌を追い、絡ませ、擦り合う。  玲は息が上がり、たまらず秋也から唇を離した。 「ぅふ、ぅ。これでいいよね、秋也……むぅッ!?」  秋也が、玲にキスの続きを仕掛けて来たのだ。  今度はもっと角度をつけて深く繋がり、強く吸った。  喉の奥まで舌を伸ばし、敏感な部分をくすぐる。 (秋也! 秋也、もう充分! もう、おしまい!)  心の中で、玲は悲鳴を上げていた。  このキスは、拓斗を納得させるだけの、ちょっとした演技だったはずだ。  それが、秋也は荒い息を吐きながら、手のひらを玲の頬に当て、指先で耳にいたずらを始めている。  柔らかくゆっくりと耳をいじられているうちに、玲は体の芯が熱くなってきた。  ようやく玲の咥内から去った秋也の舌は、今度はその首筋をさまよい始め、玲は本格的に慌てた。 「ちょ、やめ! 秋也、おしまい。もう、おしまい!」  首をひねって、すがるような視線を拓斗に向けた、玲だ。  だが、テーブルを挟んで向こう側に座っている拓斗は、動かない。  ワインの瓶を手に下げて頬杖をつき、ニヤニヤと二人を見物している。  そうこうするうち、秋也に首筋を強く吸われ、玲は悲鳴をあげた。 「やめてよ、秋也! 見られてるんだよ? 拓斗が見てるんだよ!?」  そんな必死の願いが通じたのか、拓斗がようやくソファから立ち上がった。  拓斗の姿が目に入り、秋也は玲のシャツのボタンを外しかけていた手を止めた。 (な、何をやってるんだ!? 俺は!)  熱に浮かされていた秋也の頭は、少しずつ冷静さを取り戻し始めた。  しかし、拓斗が二人の横に腰かけた次の瞬間、玲は音がするほど息を飲んだ。  拓斗が、手にしていたワインを、玲の首筋からだらだらと流し始めたのだ。  すっかりぬるくなってしまったワインが、玲の白い首筋から胸にかけて紅く染め上げていく。  その艶めかしい様子は、秋也の情欲を再び呼び覚ました。  そこへ、拓斗がポンと背中を押す。 「よ~し、舐めろ。秋也、全部きれいに舐めるんだぞ」  そして拓斗は、玲の腕を後ろに回し、その手首をしっかりと繋ぎ止めてしまった。  後ろ手に縛められ、白い肌をワインで赤く染めた扇情的な玲の姿。  逃れようと身悶えするが、その動きすらセクシャルだ。  秋也の戻りかけていた理性は、簡単に弾け飛んだ。 「れ、玲……玲!」 「ヤだ! やめてったら、秋也! 拓斗、手を放してよ!」 「大きな声だすなって」 「むぅ! む、うぅ、くぅ、う……」  拓斗は、玲をキスで黙らせた。  秋也は秋也で、ぴちゃぴちゃと音を立て、夢中で濡れた肌を舐める。  二人がかりの責めに、玲の体はゾクリと打ち震えた。 (ヤだぁ! 僕、何か感じて来ちゃったぁ……!)  幼馴染の腐れ縁。  だが、確かに好意は抱いて来たのだ。  拓斗にも、秋也にも。  本気で二人を求め始めている自分の体に、玲は戸惑いを隠せなかった。 「ぷはッ!」 「何だよ、もう! スイミングのつもり!?」  大げさな音を立てて唇を離した拓斗を、玲は罵った。  だが彼は、玲の言葉に耳を貸さず、ソファの背もたれを倒してすばやく簡易ベッドをしつらえたのだ。 「え……何、これ」 「ソファーベッド。最近のは、質が良くってさ。寝心地イイぜ? 「や、ヤバッ!」  本格的に危険を察知した玲は、声を張り上げて訴えた。 「もう、やめようよ! 二人とも……あッ!? ちょ、ちょっと秋也!?」  玲が拓斗に注意を逸らした隙に、秋也がその衣服をどんどん剥がしにかかっている。  彼が脱がせた服は遠くに放り投げられ、手の届かないところに行ってしまった。 (服をかき集めて、裸で逃げ出すこともできないじゃん!)  これはもう、説得して正気に返ってもらうしかない。 「ねえ、秋也。バカなこと、やめよう! ぅぐッ……!」  その時、拓斗が玲の口に、いきなり太い指を突っ込んだのだ。  突然だったので玲はむせたが、その指は舌を優しく押しこすってくる。  甘美な刺激に、彼は黙るしかなかった。  口の中に指を突っ込んで玲を黙らせた拓斗だったが、すぐにまた騒ぎ出すことは目に見えている。 「キャンキャンうるせえなぁ。秋也、しゃぶらせて黙らせろ」 「あ、ンむ、ッくぅう!?」  玲は、青くなって秋也の方を見た。 (しゃぶらせろ、って。まさか、フェラ? いや、まさかでなくても、フェラだよね!?)  秋也は、そんなことしない。  玲は、確信に近い思いを抱いた。  小さい頃から、拓斗の悪ふざけが度を過ぎると、ストッパーになるのは秋也だったからだ。 (そろそろ拓斗をたしなめて、場を納めにかかってくれるはず……って、えぇええッ!?)  玲の目の前には、逞しい秋也のものが迫って来るのだ。  そしてそれは、有無を言わさず口の中にねじ込まれてきた。 「んッ! んぅう!」 「がんばれよ~秋也。最低でも10分は粘らねえと、植村に死ぬまで馬鹿にされるぞ」  笑いを含んだ拓斗の声が、いやらしい。 「ふざけるな。30分は持つ!」  二人は、それぞれ勝手なことを言っている。  玲は、プチ怒った。 (30分も口の中に、って冗談じゃないよ!)  そこで彼は、秋也のものを上手に舐め始めた。 「ん、ぅん。ふっ、んぅ、ぅんん……」  喉の奥で笑う拓斗の声と、はぁはぁと秋也の吐く荒い息遣い。  そして、舌を動かすことで生まれる水音。  ピチャピチャと自分のたてる濡れた音に、玲の体はどんどん火照ってきた。  後ろに腕を掴まれているので、手は使えない。 (唇と舌だけで、秋也を満足させなきゃ、ってことか。やってやろうじゃん!)  玲は、いつしか夢中で奉仕を始めていた。  そのエロティックな姿に、拓斗が眩んだ声を出す。 「どうだ、秋也。そろそろヤバいんじゃねえか?」  その艶めいた技巧に、秋也が裏返った声を出す。 「うッ、いや、まだ……しかし、やたら巧いな。玲」  玲の咥内に、少しずつ秋也の味が漏らされ始めた。 (もう少し。もっといっぱい出してよ、秋也!) 「んッ。はぅ、ふ、んんッ。ぅんぁ……」  玲は、昂ぶりから生まれる喘ぎを、全て外に吐き出していた。  男を感じさせるには、音も効果的だ。  玲は、それをよく知っていた。  喘ぎ声に混じって濡れた音が響くと、秋也はたまらず腰を使い始めた。  彼の動きを感じ取った拓斗はニヤリと笑い、玲を縛める腕を片方はずし、前に潜らせた。  そっと玲のペニスを掴んでみると、思った通り先端から精がこぼれ始めている。  それをすくい取って自分の指にからませると、彼の無防備な後膣に、ゆっくりと埋め込んだ。 「うぅッ! んっ、んぅ!」  玲の喘ぎは、激しくなっていた。  秋也の動きが、どんどん速くなってきたのだ。  さらに、拓斗の指が内壁の敏感な部分を押しこする。  前から後ろから責められ、玲は瞼を固く閉じた。 (あぁ、ヤバい! もう、もうダメ! 僕……イッちゃうかも!?)  その時、唐突に秋也が勢いよく射精した。  玲の口いっぱいに、彼の味が拡がっていく。  少し驚いたが、玲はこぼさないよう上手に秋也の精を飲み始めた。  上目づかいで彼の表情をうかがってみると、目を閉じて恍惚に浸っている。 (秋也ったら、アホ面! でもまぁ、気持ち悦かったのなら、イイや!)  すべて飲み干した後、ようやく秋也のものが口から引き抜かれた。  それに併せて、拓斗の指も後ろから去っていく。  ようやく終わったのだ、と玲は息をついた。 「いい子だったな、玲」  拓斗は掴んでいた手首を離し、玲の腕を自由にした。  そして手を取り、指に軽く口づけ、一本一本優しくしゃぶる。 「あ……何かこれ、イイかも……」 「イイか? じゃあ、もっとシてやる」  疲労感から、玲はその甘い仕草にぼんやり身を任せていた。  油断していたので、秋也がそっと背後に回ったことに気付かなかった。  やがて拓斗の舌が、指と指の間をくすぐるように舐めはじめ、玲は甘い吐息をついた。 「もう、ダメ。体が疼いちゃうから」  注意は、すっかり拓斗の方に奪われている。 「拓斗。もう、いいから。はい、もう終わり」 「いや~、これからだろ。なぁ? 秋也」 「え? 秋也?」  は、と気づくと、玲は後ろから秋也に抱きすくめられていた。  そして彼は凝りもせず、耳に頬を擦り付け、熱い息を吹きかけてくるのだ。 「秋也? ちょ、ちょっと!?」  耳を甘く噛まれ、舌で舐められる。  腕は胸にまわされ、小さな尖りを探り当て、指の腹で転がし始めた。  さらに過激になってきた秋也の動きに、玲は慌てた。  両腕は、拓斗に今度は前でしっかりと掴まれているので逃げられない。 「もうやめて、ったら! お願い、秋也ぁ……」  哀願の言葉は、逆に秋也の嗜虐心に油を注ぐ。 「も、ダメ。耳は、耳は、ぁ……」  耳は、玲の弱点だ。  そこを弄られ続けるうちに、彼の口からは喘ぎが生まれるようになってきた。 「はぁッ、イヤ。あ、あン。やだ。ああっ……」 「イヤだ、というわりには、イイ声だなぁ」  拓斗はニヤけた声でからかうと、玲の両腕をすでにベッドと化しているソファの上に押さえつけた。  上半身が前かがみになり、今度は四つん這いになった、玲。  その腰に、秋也が硬くなったものを擦り付けてきた。 「あぁ……!」  溶けるような玲の甘い声が、室内に響く。  彼の体を後ろから抱き、その滑らかな背筋に舌を這わせながら、秋也は拓斗に声をかけた。 「後ろは、どうしたらいいんだ。教えろ」 「自分で考えろよ。さっき、俺がやって見せただろ」  あまり参考にならない返事だ。  秋也は少し考え、拓斗がやっていたように、指を玲の後膣にねじ込み始めた。 「んッ! うぅッ! 痛いよ、バカぁ!」  甘やかだった声が、とたんに苦悶の響きに変わる。 「急に入れるな。ちゃんと慣らしてやれよ!」  玲に怒られ、拓斗に叱られ、秋也は困惑の表情だ。 (女は自然と濡れてくるものだが、男の場合はどうしたらいいんだ!?)  考えても、考えても、解らない。  すぐに答えを出すには、彼の頭の中は桃色に染まりすぎていた。 (とりあえず、指は抜こう)  その代わり、じっくりと玲の体を味わいにかかった。  敏感なその体は、どこを弄っても打てば響くような反応を返してくる。  絶え間ない喘ぎが、秋也の耳に心地よく響く。  だが突然、その悦い声が止んだ。 「ぅん、ふっ。ぅんんッ……!」  くぐもった声の合間に、濡れた音が混じる。  拓斗が、玲に咥えさせたのだ。  これは予期せぬ展開だった。 「口を塞ぐな。声が聴きたいんだ」 「ワガママ言うな。俺も、ヤりたくなったんだよ」  乱暴な言葉とは裏腹に、拓斗の顔は上機嫌だ。  愉悦の表情で、玲に奉仕させている。 (まったく、もう。秋也も拓斗も、自分勝手なんだから!)  後ろを秋也に抱えられているので、体を支えるために両手はベッドについておかねばならない。  再び唇と舌だけの愛撫に、玲は忙しかった。  先端にくちづけ、棒芯を舐めあげ、裏筋にまで舌を伸ばす。 「んぁ、あぅ、ふぅん。うっく、むむ、んんぁ……」  だんだんと、玲は被虐的な昂ぶりを覚えてきた。  拓斗にフェラをさせられながら、一方では秋也が体に快感を与えてくる。 (んぁ、あ。苛められてるのに、感じちゃうぅッ!)  耐えがたい疼きと震えが、玲の全身に走った。 「おい、そろそろいいかも」 「何が、だ?」 「玲の前に、手ぇやってみろ」 「玲の前、というと……」  秋也は手を前に回し、玲のペニスを静かに握った。  硬く張りつめたそこからは、とろりと精が溢れ出している。  なるほど、と秋也はそのまま擦り始めた。 「んッ! あッ! 秋也、ダメッ!」 「ダメなら、力ずくで逃げ出せばいいんだ」 「も、もうッ! 何で、そんなイジワル言うかなぁ!?」 「おい、口をお留守にすんな」  思わず声を上げた玲の口に、拓斗は腰をやり始めた。 「うっ、ぁぐっ! んうぅッ!」 「せっかくイイところまで来たのに、おあずけはごめんだぜ」 「っくぁ、んあぅ、っく。んんぅう!」 「喉奥、柔らかいなぁ。玲、お前サイコーだ」  口に突き入れられながら、玲は果てた。  秋也の掌に、彼の淫液がとろりと溢れてくる。  それを玲自身の後膣にたっぷりと塗り込み、秋也は準備を整えた。  そっと先端をあてがい、ゆっくりと挿入する。 「玲、いくぞ」 「んぁ。う、嘘ぉ……秋也ぁ……」  拓斗に充分弄られていたせいか、秋也のものは素直に玲の体内へ飲みこまれていった。  何度か慎重に抜き差しを繰り返し、少しずつ動きを速める。  熱い玲の内壁の蠢きは、秋也を夢中にさせた。 (な、何だ。一体なんだ!? この具合の悦さは!)  温かく、吸い付いてくる。  締め付けて、押し出すかと思えば、奥へと引き込んでくる。 「れ、玲! お前は、お前ってヤツは……!」 「あ、秋也ぁ! ちょ、激し……ッ!」  こぼした体液の濡れた音と、肌と肌とを打ち付けた時の乾いた音が、室内に響く。  切れ切れの艶めいた喘ぎ声が、興奮に拍車をかける。  秋也は玲の下の口に、拓斗は上の口に急所を預け、悦に入っている。  すっかり、酔ってしまっている。  荒い息を吐きながら、拓斗が秋也に話しかけてきた。 「おい。速くイッちまった方が奢る、ってのはどうだ?」 「不謹慎だな」 「自信ねえんだろ!」 「後悔するなよ!」  二人の世話をいっぺんに見ながら、好き勝手言われている玲だ。  しかし、もうその会話も耳に届かないほど、狂おしい悦楽の際まで昇り詰めていた。 「うぅ、ぐぅ! あ、あッ、ぁむ。んぅう、あんッ! んぁ、はぁ、あぁああ!」  唾液を溢れさせながら拓斗に舌を絡め、秋也をむさぼるように腰を蠢かせる。  果てしなく続く責めに、何度も体を引き攣らせ身悶えながらも、玲は自らの動きをやめなかった。  その舌で、腰で、甘い吐息で二人を捕らえて離さない。  そして、次第に追い詰めていく。 「やばい。俺、もうダメかも!」 「くッ! うぅッ!」  拓斗が大きく震えるのと、秋也が喉の奥で呻いたのは、ほぼ同時だった。  二人は玲の中に勢いよく吐き出した。 「あぁ、玲……悦かったぜぇ……!」 「はぁ、あ……玲……ッ!」  一滴残らず絞り出した後、拓斗と秋也は息をつき、ようやく玲からその身をはがして解放した。  たっぷりと、しっかりと、二人を受け止めた玲は横たわった。  引き抜かれた後は細かく体を震わせ、余韻に喘いでいる。  だが、その顔は恍惚として満足げな表情だ。  頬には、昂ぶりに耐え兼ねて流した涙の痕がある。  それを指先で優しくぬぐう拓斗と、汗で頬に貼りついた髪を静かに梳いてやる秋也。  狂乱の後の安らぎが、訪れていた。 「ねぇ……」  玲がささやく。  けだるい声は、小悪魔的な響きを持っていて愛らしかった。 「二人で同時に、イッたんだから。奢るなら、僕にだよね?」 「ち、ちゃっかりしてやがる!」 「拓斗。こいつには、一生勝てないぞ」 「激しく同意!」  二人がかりで嬲ったつもりが、逆に優位に立たれている。  拓斗も秋也も、玲には絶対に敵わない、とこの時悟った。 「そろそろ、か?」 「そうだね」  拓斗と玲は、軽く一杯やりながら短い言葉を交わした。  ここは、秋也の部屋。  一夜が明け、拓斗と秋也は玲に頭が上がらなかった。  酔っていたとはいえ、幼馴染を二人がかりで弄ぶとは!  社内の噂通りに、3Pに及ぶとは!  玲は一日ぐったりと、体が重くて動かない。  それをいいことに、彼は寝室を占拠して、拓斗と秋也を顎で使った。   『お腹すいた。朝ごはん、まだ?』 『え~? トーストじゃなくって、クロワッサンがいいな』 『ヨーグルト、無いなら買って来てよ。早く!』 『これ、無糖じゃん。微糖で、フルーツが入ってるのがいい!』  元凶の二人をこきつかっても、バチは当たるまい。  そんなこんなで下僕に働かせた玲は、夕方からようやく体が動くようになった。  そして今、拓斗と一緒に飲みながら、秋也のデートについて語り合っているのだ。 「もう、ディナーは終わる頃だね」 「植村と、ホテルのベッドでイチャついてるさ」  そうは言ったものの、拓斗は急に秋也が心配になった。  男遊びが盛んな、あの植村が相手だ。  真面目な秋也は、食われているのでは? 「あいつ、巧くやってるかな」 「大丈夫。昨夜、いっぱい練習したから」  皮肉を込めて、玲は拓斗を睨み付けた。  返事の代わりに黙ってグラスに口を付けたのは、さすがに悪かったと反省しているのだ。  短い沈黙が部屋に流れた後、ドアが開いた音がした。  玄関に人が入った気配もする。  まさか、と拓斗と玲は顔を見合わせた。 「ただいま」  ぷぅ、と拓斗は酒を吹き出した。 「あ、秋也!?」  玲は飛んできた飛沫を指先でぬぐいながら驚いた声をあげた。 「な、何で!?」  早い。  帰宅が早すぎる。  植村と、うまくいかなかったのだろうか。 「何だって、こんなに早く帰ってきたんだよ。植村相手に、失敗したのか!?」  拓斗の問いに、秋也はコートを脱ぎながら、ぼそぼそ答えている。 「植村さんの誘いは……断った」 「断った!?」  植村は、確かに拓斗の推察通り、秋也をベッドに誘ってきた。  夕食後の甘いひとときを、一緒に過ごすつもりだったらしい。  露骨に迫り、誘惑してきたという。 「そいつを断った、ってか。お前、バカじゃねえの!?」 「女性に恥をかかせるなんて、最低だよ!」  拓斗と玲は口々に秋也をなじった。  だが秋也は、黙って玲の隣に腰を下ろすとロックを作り、ぐいと飲み干した。 「つまり、その。植村さん相手では、やる気が起きなかったというか、何というか」 「お前、あんだけイイ女が誘って来たのに、そんなこと言うわけ?」 「仕方ないだろう」 「仕方ない、って……」 「仕方ないんだ」  秋也は、グラスをそっとテーブルに置いた。  置いてから。  玲をじっと見つめて抱き寄せ、その髪に顔をうずめた。  胸いっぱいに、その香りを吸い込む。 「やっぱり、いい匂いだ」 「ちょ、ちょっと、秋也!?」  慌てふためき、玲は秋也を引きはがそうと必死だ。  そんな彼を笑いながら、拓斗は立ち上がった。 「なるほど。そういうこと、か」 「どういうことかな!?」  もがけばもがくほど、玲を抱きしめる秋也の力は強くなっていく。  拓斗が玲の隣にゆっくり近づき、秋也と二人で挟み込むように腰かけた。 「昨夜のコイツが、悦すぎた。そうだろ、秋也」 「そういうことだ」  秋也の低いささやきが、玲の骨まで響く。  玲は観念して脱力し、ソファにもたれかかった。  右の頬に秋也、左の頬に拓斗の唇が優しく触れる。 「玲。これからも、仲良くしよう」 「こんな身近に、最高が潜んでたとはなぁ」 「あ~、はいはい。よろしくね」  雑な返事をしながら、玲は考えていた。 (男二人に挟まれても、『両手に花』 っていうのかなぁ?)  そんなことをぼんやり考えながら、玲はそっと眼を閉じた。

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