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第2話 秋也、スウィーツに挑む!

 顔色が悪い。  口元をひきつらせ、額には脂汗を流し、呼吸すら止めている、秋也の姿。  そして、そんな彼を玲が見守っている。  ここは、スウィーツが評判のカフェだ。  彼は、玲と一緒にこの店をよく訪れるようになっていた。  デート、などという楽しいものでは、ない。  重大な使命感を抱えて、秋也はこのカフェの常連になりつつあった。 「秋也ぁ、大丈夫?」  たまりかねて玲が声をかけると、彼は詰まった声を絞り出した。 「すまん、玲。後の処理、頼んでいいか?」 「処理、とか言う? ケーキに失礼だよ」  玲は秋也の手元から、まだ半分以上は残っているザッハトルテを取り上げた。  ぱくり、と一口頬張ると、上品な甘さがしっとりと広がる。 「おいし~い!」  思わず笑顔になる玲をよそに、秋也は濃いコーヒーのおかわりを頼んでいる。 「こんなに美味しいのに」 「甘いものは、苦手なんだ」 「それは、そうだけど……」  玲は、少年時代を振り返った。  思えば秋也は子どもの頃から、おやつのドーナツを一口かじっただけで、妹にあげたりしていた。 (それがなぜ、今になってスウィーツカフェに入り浸るのかな?)  玲は毎日のように、秋也に付き合って、ここで甘いものを食べている。  いつもなら飲み物しか頼まない秋也が、必ずケーキやパフェを注文することも妙だ。  そして結局残しては、玲によこすのだ。 「ねえ、何かワケ有り? 急にスウィーツ食べるようになったね」 「いや、別に。何でもないんだ」 「ふぅん……」 (でも、やっぱり変だよ?)  甘いものは口にしないはずの秋也が、まるで修行のようにケーキやパフェに挑んでいる。  昔から、玲には決して泣き言をこぼさない秋也だ。  今回も、そんな意地を張っているのだろう。  ならば、と玲は、拓斗に電話を掛けていた。 「すまん、玲。後の処分、いいか?」 「またぁ?」  スウィーツカフェ仲間に拓斗が加わっても、秋也は相変わらず甘いものを頼んでは、残りを玲によこした。  いいかげんに、意地を張るのはやめて欲しい。  僕たちは、幼馴染なんだから!  そんな思いも込めて、玲は身を乗り出した。 「ねぇ、秋也。一体なぜ、甘いものを毎日食べてるのかな? 何か、悩みでもある?」 「いや、別に」  そんなこと言ったってよ、と拓斗が玲を援護にかかった。 「どう考えても怪しいぜ、お前。甘党でもないくせに、何でまた急にケーキなんか食いやがる?」 「……」  玲に心配はかけたくない、という秋也の気持ちは強い。 (だが、拓斗なら!)  拓斗なら、この現状を打破する策を、生み出してくれるかもしれない!  そう考えた秋也は、ようやく重い口を開いた。 「実は……」 「実は?」 「実は、甘いものを食べる席に、絶対出なくてはならなくなったんだ」 「……何だ、そりゃ?」 「もっと、解りやすく話してよ」 「解った」  そう答えた秋也は、バッグを探った。  秋也は語る代わりに、一通の封書を拓斗に手渡した。  品の良い封筒に入っているのは、これまた美しい招待状。  開く拓斗に、玲も頭を寄せた。 『パストリーシェフ・三谷郁夫によるスウィーツ・フルコースへのご案内』  招待状には、そう記されている。 「お前たち、以前俺の下にいた、三谷(みたに)を覚えてるか?」 「あぁ、あいつか」 「覚えてるよ、もちろん」  拓斗と玲は、すぐに三谷の顔を思い出した。  熱心で真面目な新入社員だったが、実家の都合で退職していった、不運な青年だ。  確かその後は、故郷へ帰ったと聞いている。 「秋也に、よく懐いてたな」 「ひたむきな、好青年だったよ」 「その三谷が、菓子職人として店を構えたらしいんだ」 「……パティシエ、って言えよ」 「秋也、横文字に弱いねぇ」  封筒には、招待状だけでなく直筆の手紙も添えられていた。  招待状に同封されていた三谷からのメッセージには、こうあった。 『……私がこうして苦難を乗り越え、何とか自分の店を持つことができたのは、神原さんのおかげです。  神原さんに鍛えてもらった、精神力あっての賜物なのです……』」  こんな具合に、ていねいに礼が述べられていた。 「そして、恩人である俺に、ぜひ成長した自分の姿を見てほしい、と言うんだ」 「良い話じゃない! 秋也、カッコいい!」 「なるほど、それで店のオープンパーティーに招待された、ってわけか」 「ただのパーティーじゃないぞ。菓子職人の食事会だから出てくる料理が全て甘いものなんだ!」  秋也は絶叫すると、頭を抱えてしまった。  義理がたいこの男の頭には、欠席の文字は浮かんでこないらしい。 「三谷くんのパーティーのために、スウィーツを食べる練習してたんだね」  玲は、秋也の背中を優しく撫でた。  かわいそうな秋也。  誰にも打ち明けられずに、悩んでいたに違いない。  哀しそうな玲の表情に、拓斗は喉まで出かかっていた大笑いを飲み込んだ。 (こいつは、マジで考えなきゃならない案件、ってヤツだ)  拓斗は、大慌てで頭を巡らせ始めた。 「そういうことなら、俺に考えがあるぜ!」  拓斗の一声に、テーブルに突っ伏していた秋也は、首を跳ね上げた。 「本当か? 頼っても、いいんだな?」 「当たり前だろ!? 俺たちの仲じゃねえか!」  秋也は目の前が、ぱあっと開けた心地がした。 (拓斗、やはり頼りになる男だ!) 「良かったね、秋也!」 (玲、やはり優しい親友だ!)  秋也は、玲に自分の残り物を食べさせる事にも抵抗があった。  彼が、コロコロに太ってしまっては申し訳ない。  いろんな悩みが、いっぺんに解けた秋也は、二人に手を差し伸べた。 「ありがとう……ありがとう!」  拓斗と玲に固い握手をし、涙を流す勢いだ。 「やはり、持つべきものは友だ!」 「よせよ、照れるぜ」 「友達なら、力になるのは当然だよ」  そんな熱い友情を交わしながら、拓斗は素知らぬ顔で言った。 「玲。お前、秋也のために協力しろ」 「もちろん!」  あれ?  何か、今のやりとり、以前もあったような……?  ふと、引っかかるデジャヴを感じた、玲だ。  しかし、喜んでいる秋也の姿に、妙な不安は消えた。 「拓斗、こういうアイデアを考えるのは、得意だもんね」 「まぁ、な。秋也、心配すんな。絶対に、スウィーツ食えるようになっから」  その時、拓斗の口の端が微妙にニヤけていることに、秋也も玲も気づかなかった。  翌日、秋也は拓斗の部屋を訪れた。  準備が整ったら連絡する、と言われてからの、翌日だ。 「さすが拓斗は、仕事が速いな」  長年つるんで来た友人の実力に、いまさらながら感心する。  拓斗と秋也、さらに玲も、同じマンションに住んでいるので、移動は簡単だ。  いわゆる、社宅マンションだ。  三人で、部屋のパスワードも教え合っている。  秋也は、まるで自分の部屋のように、拓斗の部屋へと足を踏み入れた。  だが、すぐにヒヤリと肌寒さを感じた。 「今日は、それほど暑くもないのに。冷房が入れてあるのか?」  しかし、秋也が違和感を覚える間もなく、拓斗が奥から出てきた。 「よく来たな、待ってたぜ」  彼はニヤニヤと、やたら嬉しそうな顔をしている。  だがしかし。  その隣に玲の姿が、無い。  秋也は、二度目の違和感を覚えた。 (玲は、先に来ているのだと思ってたが?)  一緒に拓斗のところへ行こうと思い、玲の部屋へ足を運んだが、留守だったのだ。 「玲は、まだなのか?」 「玲なら、もうスタンバイしてるからよ。まぁ、奥へ入れ」 「スタンバイ?」  (そういえば昨日、拓斗は玲に、協力しろと言っていたな) 「玲も俺のために、骨を折ってくれるのか」 「そういうこと。言わば、体を張ってくれるから、さ」  そんな会話を交わしながら、秋也は拓斗にいざなわれるまま、部屋の奥へと進んだ。  秋也は、拓斗の部屋の奥へ進むにつれ、三度目の違和感を覚えていた。  なぜか床には、レッドカーペットが伸ばしてあるのだ。  ごていねいに、バラの花びらまで散らしてある。  カーペットに沿って進むと、これまたなぜか寝室へと続いていた。 「拓斗、これは一体……」 「さぁ、お入りあそばせ~!」  拓斗は、秋也の言葉を遮り、寝室の扉を大きく開いた。  中からは、さらに強い冷気がふわりと流れ出し、秋也の身を包んだ。  レッドカーペットはベッドまで長くのばしてあり、大量のバラの花びらが敷き詰めてある。 「この演出の意味が、知りたいんだが?」 「ベッドに着いたら、解るって」  いぶかしく思いながら、秋也は歩みを進めた。 「なぁ、そろそろ教えてくれ。一体何の……何だこれは!」  到着したベッドの周辺には、バラの花で飾られた数台のワゴンが置いてある。  ワゴンの上には、ボウルに入った様々なクリーム類や砂糖漬け、果物などがふんだんに準備してある。  だが、秋也を叫ばせたのは、その品々ではない。  ベッドの真ん中に、手足を折り曲げて縮こまっている、素裸の玲がいたのだ。 「秋也ぁ、寒いよぉ……」  泣き出しそうな顔の、玲だ。  部屋がキンキンに冷やしてあるのは、クリーム類が溶けてしまわないようにするためだろう。  だがしかし、今はクリームの心配をしている場合ではない。 「こんな寒い中、玲を裸で転がしておくとは!」  秋也は、拓斗を睨んだが、彼は平然としている。  さらには、玲に注文まで付ける始末だ。 「ちゃんと仰向けに寝てろ、って言っただろ。こいつは女体盛りなんだぜ? 解かってんの?」 「僕は女体じゃないもん!」 「じゃあ、まな板の上の鯉」 「うわぁん!」  これは一体……。  目を白黒させている秋也の両肩に、拓斗の手がポンと乗せられた。 「では、秋也クン。始めようか」 「始めようか、って何をだ!」 「甘いものを克服するための、トレーニングに決まってるだろ?」 「それがなぜ、玲の裸なんだ!?」 「早く好きなクリームで、玲をデコレーションしろ。終わったら、完食だ。OK?」  想像のはるか斜め上を行く、拓斗のアイデアだった。  まさか。  まさか、玲をクリームまみれにして、それを食えと!?   秋也は、戦慄した。 (何という楽し……いや、恐ろしい企画だ。こんな嬉し……いや、可哀想な事、できるわけが!)  だらだらと汗を流して葛藤する秋也を尻目に、どこまでも軽やかな拓斗だ。 「お前がやらなくても、俺はやるぜぇ~?」  そう言いながら、早速カスタードクリームのボウルを手に、玲に迫っている。 「ヤだヤだ! バカぁ、こっち来るなぁ!」  嫌がる玲の白い腹に、黄色いクリームがスクレーパーでたっぷりと撫でつけられた。 「ぃヤあぁ! 冷たい!」 「そのうち、ぽっかぽかに温まるからな~」  いやらしく笑いながら、これまたいやらしい手つきで拓斗が玲の腹をスクレーパーでぬりぬりしている。  そのうち、玲は笑い始めた。 「くすぐったい! や、ヤメれ! キャハハ!」 「暴れんなよ。クリームが落ちるじゃねぇか」  塗りたてたクリームの上に、イチゴをちょんちょんと乗せて、さらにデコレートする拓斗。  一丁上がりと秋也の方を見て、にんまりと笑った。 「楽しいぜ~? 参加しねえの?」 「くッ……」  これはトレーニングだ、と秋也は心の中で唱えた。  そう、これはトレーニング。 (三谷のために、俺が果たさねばならない修行なんだ!)  秋也は、ついに開き直った。 「玲、すまん! 協力してくれ!」  秋也はそう言いながら、ボウルの一つに手を伸ばした。  ふわふわに泡立ててある、メレンゲだ。  それを玲の恥部に、たっぷり乗せた。 「秋也! お前、嫌そうな顔しながら、とんでもねえ部分に塗りやがったな!?」 「玲が恥ずかしいだろうから、隠してやったんだ!」 「どうでもいいから、二人とも早く終わらせてくれないかな!?」  玲の涙混じりの声に、秋也は急いでワゴンからペストリーバッグを手にした。  すらりと伸びた形のいい脚に、生クリームを絞る。  絞る端から、拓斗がその上にスミレの砂糖漬けを散らしていく。  秋也にとって、そんな作業は。  そんな作業が……。 (い、いかん! 何だか、楽しくなってきた!)  秋也は背徳感と戦いつつも、玲を飾り付ける作業が楽しくなってしまった。 「あんっ!」  拓斗がクリームを胸に塗ると、玲の体はピクンと跳ねる。  秋也がそれをスクレーパーで撫でつけると、顔を逸らせて震えている。 (拓斗。これはもしや……) (ああ。玲も、気持ち悦くなっちゃったんだぜぇ!)  体のあちこちにクリームを塗られた玲は、見悶えることができなくなった。  仕方が無いので、首を動かして、快感を逸らしていた。  だがしかし。 「そんな姑息なコトする悪い子は、こうしちゃう~」 「あ! ちょっと、ダメ。そこは、そこはダメぇ!」  拓斗が、顔を背けられないように、ほんのり赤く染まった頬にもクリームを絞ったのだ。  本格的に、身動き一つ取れなくなってしまった、玲。 「もう……バカぁ。拓斗も秋也も、ホントに意地悪なんだからぁ……」  二人にデコレートされながら、うっすら唇を開いて甘い息を吐いている。  瞳は熱く潤み、拓斗の言った通り、ぽっかぽかになってしまっている。 「もう、これくらいでいいだろう」 「さて、完了~!」  クリーム、砂糖漬け、そして果物で飾られた玲の盛り合わせが、秋也の前に長々と横たわることとなった。  さて、問題はここからだ。  クリームまみれの、玲。 (これから、玲に塗られた甘いクリームを……舐めつくすのか。全部!?)  秋也は、調子に乗ってクリームを塗りまくった自分を、猛省した。 「後先考えずに目先の快楽を追うとは……何という迂闊な真似を!」 「秋也ぁ、そう深刻になるなよ」  拓斗は新しいワゴンを用意した。  上には、茶器が一式揃っている。 「コーヒーや紅茶も、ちゃんと準備してある。俺も手伝うから、美味しくいただこうぜ」  拓斗はそう言うと、秋也に温かいブラックコーヒーの入ったカップを渡した。 「では、秋也クン。お先にどうぞ! 好きなところから、思いきって行けよ!」 「……」  秋也はコーヒーを一口含むと、玲に口づけた。  温かいコーヒーが口移しで渡され、玲の冷えきった体を優しく浸す。 「んっ、秋也……ありがと……」  嬉しい、と玲は秋也のキスに応えた。  濡れた音を立てて、熱い口づけを交わす二人に、拓斗は舌打ちをした。  プチ妬きもち、なのだ。  そして、忌々しげに玲の脚に手をかけた。 「おぅおぅ、仲のいいコトですね!」  拓斗が長く舌を伸ばし、白い脚の生クリームを大きく舐め上げると、玲は声をあげて悶えた。 「やッ、あ! あぁッ!」 「あぁ、美味しいな~」  クリームを舌に乗せたまま、足の裏から指先までちゅぷちゅぷと舐めまわす。  玲は逃れようとしたが、体中クリームに覆われてしまっているので、それもできない。  瞼をぎゅっとつむって耐えると、頬に秋也の分厚い舌が乗った。 「え!? あ、秋也ッ!」  思わず目を開け、玲は秋也を見た。 (甘いクリームなのに、大丈夫!?)  玲の頬に塗られたクリームは、秋也の口の中へと溶けて消え、かろうじて首を動かすことはできるようになった。  少しだけ、ホッとした玲、  だが、秋也の次の動きに震えた。  彼の舌は、頬から首筋へとそのまま移ったのだ。  熱い息がかかり、舌が這い回る。  溶けるクリームと秋也の唾液とで、ぬるぬるだ。 「やっ、やッ、あぁ」  玲は喘ぎ、声を漏らして悦がった。  玲の甘い声を耳にしながら、秋也は彼の体を舐め回した、  甘い。  とんでもなく甘い。  口の中が、ただれてしまいそうだ。  だが、舐めれば舐めるだけ玲が応えてくる。  身を震わせ、髪を振り乱し、可愛い声で応えてくれる。 (良い。これは……イイぞ!)  秋也はコーヒーを一口飲んで、口の中の甘さを誤魔化した。  そして、今度は玲の胸に舌を伸ばした。 「あ、秋也。だッ、ダメ!」 「このままじゃ、寒いだろう?」 「もう……ダメだったらぁ……」  クリームを舐められ、肌に広げられると、いつもと違う刺激が玲の身を襲う。  ざらついた舌の感覚とは違う、滑らかな心地。  肌を滑る、粘液質の感触。 「あぁっ! あッ、あん! ぃやぁあ!」 「おぉ~。ぽっかぽかだな、玲」  俺にも食わせろ、と拓斗が脚から胸の方へ上がってきた。  遠慮なしに、すぐさま胸の一番敏感な飾りを、ぱくりと口にする。 「んぁああ!」 「ん~、なかなか。秋也、お前も食え。もうひとつ、あっから」 「そうだな、いただくか」 「いや! ヤだヤだ、バカァ!」  こちらも遠慮なしに、ぺろりと乳首を舐め上げる。  二人がかりで胸を弄られ、玲はどんどん熱くなってきた。  玲の胸を二人がかりで弄りながら、秋也と拓斗は話した。 「これはチョコレートかと思ったが、少し違うな」 「ガナッシュだ。チョコに生クリームをたっぷり加えてある」  違いが分かるようになたじゃねえか、と笑うと、玲が訴えてきた。 「も、もう……喋るか舐めるか、どっちかにして! 不真面目だよ!」 「じゃあ、舐める~」 「え!? い、いや。それは、そのぉ!」  焦る玲だが、拓斗は容赦ない。  ガナッシュを練りこむように、可愛い乳首をじっくり舐め転がした。 「う、ぅあ。っふ、くぅ。うぅん……ッ!」  自由になった両脚を擦り合わせ、悶える玲だ。 「秋也、この調子で、どんどん舐めろ」 「解った!」  脚に胸、腕に腹と、クリームは着々と減り進んだ。  途中コーヒーを飲みながら、秋也はもくもくと、玲に塗られたクリームを舐め続ける。  しまいには、メレンゲの乗った性器まで咥えこんだ。 「んッ、ぅん、ッうぅ! あッ、あッ、や、あ、あぁ!」  溢れ出た玲自身の精も、クリームと一緒に舐めてしまう秋也。  夢中になって体中を舐め回し、気づいた時にはきれいに完食していた。  はぁはぁと荒い息を吐いているのは、玲だけではない。  目の色を変え、すっかり乗り気になってしまった秋也がここにいる。  そんな秋也に、拓斗はボウルを差し出した。 「秋也、クリームはたっぷり余ってるぜ」 「あぁ」  玲はぎょっとした。  あれだけ甘いものが苦手だった秋也が、こんなに大量のクリームを舐めきったのだ。  訓練の効果は、充分なのに。 「く、クリーム完食したよね! 秋也のトレーニングは、もう終わりだよね!?」  それには、首を横に振る拓斗だ。 「仕上げが、まだだろ」 「仕上げ!?」 「ここまでやらせといて、ハイおしまい、は無いだろ? 蛇の生殺し、ってヤツじゃねぇか」 「と、いうことは。つまり、この後……」  玲は、ベッドから降りて逃げようとした。  しかし、ようやく自由のきく体になったというのに、全身舐めまわされたせいで、腰がくだけて動けない。 「あ、ヤバい。ヤバい、ヤバ……」  体の奥が、ジンジン疼く。  見悶えるような欲情が、頭をもたげてくる。  玲も、すっかり二人を受け入れる準備が、できてしまっているのだ。  自分の意志とは裏腹に、体はおねだりモードに入ってしまった、玲。 「べ、別に!? エッチしたい、なんて思ってないんだから!」  こんな強がりまで言って見せたが、秋也は黙ってクリームの入ったボウルに指を突っ込んだ。  たっぷりと指にすくわれたクリーム。 「え。秋也、それ、どうするのかな?」 「……」  まさか、と思った瞬間、後膣にクリームまみれの秋也の指が入り込んできた。 「ぃやあ! ダメダメ、秋也あぁ!」  何度でもクリームをすくい、ぬぷりぐちゅりと蕾は押し広げられる。  クリームで慣らされた秘所は、玲の意志とは関係なく、何本でも指を呑み込んでいく。 「んッく。ぅう、ヤだぁ……」  イヤと言いながらも、玲の腰はどんどん物欲しげに反ってくるのだ。  すっかり受け身の姿勢になって秋也を誘う玲の視界に、楽しそうな拓斗の姿 が入って来た。 「よく考えたら、俺たちだけいただく、ってのも悪ぃな!」  そう言いながら、玲の目の前に突き出された拓斗のペニスには、たっぷりとクリームが塗ってある。 「ギャー! 何コレ、ヤだ! 変態!」 「なンだよ! お前、甘いもん大好きだろうがよ!」  いいから食え、と拓斗は笑っている。 「バカぁ。もう、ホントにバカ……」  ぶつくさ言いながら、玲は拓斗のものに舌を伸ばした。  だが、ぺろり、とひと舐めすると目を輝かせた。 「あ……美味しい!」  今までさんざん苛められて、くたくたに疲れている玲に、甘いものはまさに甘露だったのだ。 「ん。っふ、ぅん。んぅう……」  音を立てながら舐めまわす玲を、ご機嫌そうに眺めながら、拓斗はコーヒーを一口飲んだ。 「玲ってば、何だかんだで付き合ってくれるから、大好きだぜ」 「おバカ……」  んむ、と玲が口いっぱいに拓斗のものを頬張った時、秋也が動いた。  すっかり準備の整った玲の後膣に、とうとうペニスを捻じ込んできたのだ。 「あッ、う! あ、秋也……!」  不意を突かれて、玲は背を反らせた。  クリームにまみれた玲の後膣に、ずぶりと突き立てた秋也は、すぐに動き始めた。  余裕なく、速いストライドで腰をやる彼に、うっとりと瞼を閉じる玲だ。 「ンぁあ……あっ、あッ! 秋也ぁ、凄いぃ……ッ!」  イヤだ、ダメだ、と言いつつも、最後には喘ぎ、甘い息を吐く。  そんな幼馴染の姿を見下ろしながら、拓斗は思う。 (玲も結構、楽しんでくれるんだよな)  それが、いい。  そこが、玲のいいところ。  俺が、玲を好きだと感じるところだ。  拓斗はニヤリと笑うと、彼の喉奥に向けて、ゆっくり腰を使い始めた。 「んぐ、うぅ! ぐ、ふッ。ぅう!」 「負けねぇぞ、秋也ぁ!」  秋也と拓斗の二人が動くたびに、いつもより濡れた音が鳴り響く。  クリームでぐちゃぐちゃになった、上の口と下の口。  そこが、ぐちゅりぐちゅりと音を鳴らす。  溶け出るクリームが流れ落ち、その刺激にも身を震わせる。  玲はすっかり夢中になって、二人を受け入れていた。 「んっ、んッ、ふぅ、うッ。あ、んぁ。あぁん……ッ!」  口いっぱいに拓斗とクリームとが溢れているので、玲は派手な声は立てない。  だが、その抑えた苦しげな声は、ひどく悩ましい。  庇護欲と同時に、いじめたくなる嗜虐的な欲望も刺激してくるのだ。 「イイぜ……玲、メチャクチャにしたいくらい、好きだぜ……!」 「玲、ッく。玲、は。玲は、俺に……!」  拓斗と秋也の、彼らなりの愛情表現だ。  秋也には照れがあるので、俺に無くてはならない存在、と続けることができなかったが。  室内に充満するクリームの甘い香りが、拓斗と秋也の吐く荒い息がかき回される。  玲の、二つの口から洩れる濡れた水音で乱される。 「あッ、くぅ、んあぁ。やッ! あ、あぁああ!」  玲から、白いものが勢いよく飛んだ。  すっかり流れ落ちたクリームで、シーツは汚れきっている。  そこに、新しい染みが作られていく。  その扇情的な光景に、拓斗も秋也も思わず動きを速め始めた。  拓斗と秋也の頭の中は、玲でいっぱいだ。  激しく突き上げ、昇りつめていく。  玲は、イッたばかりの体で、それを受け止めた。  二人の熱い想いを、感じ取っていた。 (あ、ダメダメ! ま、また。また、イッちゃうぅ!」 「ん、ぅん、ん。っく、ふぅう!」  塞がれている上の口にも、拓斗が深く突き入れてくる。  そして、玲の甘い咥内に苦みが走った。 「んっく。んうぅ!」 (拓也、そろそろかな……?)  玲の予想通り、精の苦みはどんどん濃くなっていく。  やがてそれは一気にほとばしり、彼の口をいっぱいに満たした。 「ッんうぅ、う!」  涙をにじませながら、飲み下す。  飲みながら舌を動かし、拓斗のペニスを舐め清める、玲だ。  秋也もまた、ほぼ同時に熱い滾りを渡してきた。  不意を突かれ、玲は思わず声を上げていた。 「ひゃッ! あ、あぁん! あぁああ!」  ひときわ高く啼いた玲を、秋也は後ろから強く抱きかかえた。 「玲……」  そして、くずおれるように、汚れきったベッドへ突っ伏した。  室内の空気は、ひどくこもっていた。  甘い甘い香りで、むせ返りそうだ。  だが、と秋也は思う。 (もう大丈夫だ。冷や汗は出ないし、吐き気もしない)  荒い息を吐きながら、そう感じていた。  玲の柔らかな耳たぶを優しく噛むと、そこも甘い味がする。  今までと違う、くすぐったい感覚がした。  甘い、とは。  甘いとは、こんなに素敵な感覚だったのか。 「おぅ、秋也。これで甘いもん、克服できたろ?」  拓斗も、息を弾ませている。  お洒落にいつも気を遣う、拓斗。  そんな彼が、すっかりクリームやらシロップやらで、べたべたに汚れている。 「拓斗、ずいぶん派手に汚れたな」 「ふん。ボーナスで買ったハイブランドが、台無しだぜ」 「すまない……いや、ありがとう」 「そいつは、一番の功労者に言ってやれよ」  拓斗と同じくらいに、汚れてしまった秋也。  そして、一番ぐちゃぐちゃに汚れきっている愛しい姿が、彼の体の下にある。 「ありがとう、玲。ホントにありがとう」 「んぁ。ううぅ……ん」  ぐったりと横たわるその頬に、秋也は甘い甘いキスをした。  オープンパーティーの当日、秋也は意気揚々と招待状を持って出かけていった。 『秋也、大丈夫? スィーツのフルコース、完食できる?』 『ああ。もう、すっかり平気だ。玲のおかげで、な』 『克服のアイデアは、俺が出したんだぜ?』 『もちろん、拓斗にも感謝してるぞ』  そんな会話を交わした後で、玲と拓斗はマンションの秋也の部屋でコーヒーを飲んでいた。 「あんなこと言ってたけど、ホントに大丈夫かなぁ?」 「まぁ、秋也のことだ。ダメでも、無理して食うだろ」 「もったいない! ケーキに、アイスクリームに、チョコレートフォンデュに、失礼だよ!」 「そ、それほど言うコトかぁ?」 「あぁ、可哀想な秋也……僕が代わってあげたかったな……」 「お前さぁ。それ絶対、趣旨がすり替わってるだろ」  こんな話をしながら、二人は秋也の帰りを待っていた。  甘いもの漬けになって、疲れきって帰って来るであろう友人のために、濃いコーヒーを入れる準備をして待っていた。 「ただいま」  秋也の声が聞こえると同時に、玲と拓斗はソファから素早く立った。  バタバタと玄関まで走りながら、次々と声を掛けた。 「秋也、鼻血出さずに済んだ!?」 「胃薬飲んだか、お前!?」 「何、食べてきた? チョコレートフォンデュ、出た!?」 「まだ言ってんのか、玲!」  二人の心配をよそに、秋也は青ざめてもいなかったし、吐き気をこらえてもいなかった。 「楽勝だった。素晴らしいパーティーだったぞ」 「良かったぁ」 「心配かけやがって」  お喋りをしながらリビングへ進み、玲がお茶の用意をしようとすると、秋也はそれをとどめた。 「お土産があるんだ。まずは、開けてくれ」 「三谷からか?」 「うん。玲と拓斗のことも、もちろん覚えていたぞ」  秋也の言葉通り、土産の入った箱を入れたペーパーバッグには、彼が忙しい合間を縫ってしたためた感謝の言葉が並んでいた。 『一本木さん、守岡さん、お元気でしょうか。  在籍時には、お世話になりました。  そして、ありがとうございます。  あの神原さんが、甘いスウィーツを笑顔で食べてくれるなんて!   きっと、お二人が鍛えてくださったのだと思います。  本当に、ありがとうございます……』  このような文面が、メニューの裏に三谷の筆跡で綴られていた。 「本当に、時間が無くてな。走り書きで申し訳ない、と言っていた」 「いや、こいつは心のこもったメッセージだぜ!」 「三谷くんらしいね。義理堅いなぁ」  そして、その三谷手作りの焼き菓子が、お土産だという。  まさに、心のこもった演出だ。 「海外修行も、したそうだ。得意な菓子だと言ってた」 「さっすが、三ツ星シェフ!」 「早く開けて! 早く見たい!」  秋也は、菓子の包み紙を破らないように、ていねいに開けた。  土産の包みを開けると、一口サイズの可愛らしい焼き菓子たちが入っていた。 「ポルボロンという、スペインの菓子だそうだ」 「美味しそう!」 「スノーボール、っぽいな」 「美味しそう!」 「呼び名が違うだけで、スノーボールとほぼ同じらしいぞ」 「美味しそう!」 「玲! お前、ちょっと黙れ!」 「ひ、ひどい!」  大げさに悲しんで見せる玲に、秋也は微笑みかけた。 「焦らしてすまないな。じゃあ、食べようか」 「やった!」  食べる気満々ではしゃぐ玲に、拓斗はニヤリと笑った。 「たしかに、美味そうな菓子だけどよ。クリームを付けて食うと、もっとイケるんじゃね?」 「ほう……それもそうだなぁ」  拓斗と秋也の目が、怪しく光る。  玲は身をすくめて、悲鳴を上げた。 「ヤだ! 絶ッ対に、イヤだ!」  冗談だよ、と拓斗がコーヒーを淹れ始めた。 「確か、幸せを運ぶ縁起物の菓子、じゃないか? それ」 「あぁ。しおりにも、そう書いてある」  しかし、と秋也は脱いだ上着を、玲に渡しながら考えた。 (もうすでに、俺は充分幸せなんだ)  甘いものを克服するために、あんな馬鹿騒ぎを。  しかも、大真面目にやってくれた拓斗と玲。  そんな友人など、どこを探してもいないのではないか。 (幸せは、俺はいいから、この二人に運んでくれ)  秋也はコーヒーの香りを胸いっぱいに吸い込みながら、そう祈った。

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