3 / 12
第3話 ラストオーダーは、ブルームーン・カクテル
乾杯、と拓斗と玲がグラスを合わせようとした矢先に、携帯が鳴った。
「あ、悪ぃ。ちょっと」
拓斗は、慌てて席を立つ。
わざわざ隣の部屋に行ったところを見ると、おそらく相手は。
「今、付き合ってるヒト……だよね」
すぐに済むと思いきや、これがどうして結構長い。
玲は、音を立てないように隣の部屋まで近づいて、聞き耳を立ててみた。
『だから、さぁ。前にも話しただろ? ただの幼馴染だ、って』
「ホントに!? そんなこと言って、浮気してるんでしょ!』
相手の怒鳴り声まで、聞えてくる。
どうやら、この夕食の席を、拓斗の浮気現場と思い込んでいるようだ。
「拓斗、モテるからな……」
玲は、そっとソファに戻った。
さらに数分後、ようやく電話を終えて現れた拓斗の言葉は、皮肉なことにさっきと同じだった。
「あ、悪ぃ。ちょっと」
「ちょっと、何かな?」
「ちょっと、出てくる」
クローゼットを開いて、さっさとコートを羽織る拓斗が憎らしい。
だが玲は、逆に明るい声を投げた。
「この、カサノヴァ! ダメだよ、お相手を泣かせちゃ!」
怒った様子のない玲に、拓斗はホッとしたようだ。
安心した表情で、いつものように軽いノリで返した。
「いや~、モテる男は辛いよな!」
そう言いながら、足はすでに表に向けて、一歩二歩と進み始めている。
「今夜、帰れねえかも。そうだ、秋也でも呼べよ」
そして、玄関の方へと行ってしまった。
「いってらっしゃい」
ひらひらと手を振る僕の顔を、ちらりとでも見てくれたかな。
見たら、出かけるのをやめてくれたかな。
「あ~ぁ、ホントに行っちゃった。つまんないな……」
拓斗を見送った玲は、自分でも呆れるほど情けない顔をしていた。
「どうしよう? これ」
はぁ、とため息まで出てしまう。
テーブルには、山のように盛られた生牡蠣が乗っている。
殻つきの、新鮮な牡蠣だ。
採れたてだからと言って、と調理しようとする拓斗を、わざわざ止めた牡蠣だ。
玲が牡蠣をおみやげに持って、拓斗を訪ねたことには、わけがある。
「最近、体が火照って仕方がないんだよね……」
ぶっちゃけ言ってしまえば、エッチな気分を持てあましているのだ。
「でも、だからって! 拓斗におねだりとか、絶対したくないし!」
『エッチしよう』なんて言うくらいなら、それこそ死んだ方がマシだ。
そこで玲は、策を練った。
自分では、良いこと思いついた、とうなずく、名案を考えついたのだ。
「我ながら、いいアイデアだと思ったんだけどな」
玲が考えついたのは、精力効果のある牡蠣を拓斗に食べさせる、という作戦だった。
牡蠣を食べて、拓斗がムラムラしてくれればOK。
欲情した彼に求められれば、素直にその身を任せる気でいたのだ。
それでもダメなときは……。
「こんなものまで用意したのに!」
玲は、ポケットから小袋を取り出した。
薬局で処方される粉薬が入っているような、何の変哲もない小袋だ。
しかしその中には、玲がネットで注文した怪しい薬が入っている。
催淫作用のある、いわゆる媚薬だ。
いつもの宅飲みのように、飲んで騒いで終わり、と流れそうな時には、グラスにそっと仕込んでやるつもりの、保険だった。
だが、その相手がいない。
拓斗が、この場から消えてしまった。
さすがに、ここにいない相手には、牡蠣を食べてもらえない。
媚薬を飲ませることは、できない。
はぁ、と玲は、今度は大きなため息をついた。
「独りで食べても、つまんないな」
しかし、牡蠣に罪はない。
玲は大きな牡蠣をひとつ手に取ると、ナイフでその殻をこじ開けはじめた。
「え? ぅんしょ、なかなか開かないな……」
無理に力を入れると、ナイフが滑って自分の手を傷つけてしまう。
「やっぱり、少し火を通して、口を開けさせた方がいいかな」
そう考えた時、玄関口から玲を呼ぶ声が聞こえた。
「玲、いるのか?」
「秋也?」
あれは、秋也の声だ。
秋也でも呼べよ、と拓斗が言っていたが、まさかすぐに現れるとは。
「僕、まだ秋也を呼んでないのに」
そうこうするうちに、秋也は室内へ上がり込んで来た。
「ああ、本当だ。玲と牡蠣がいる」
「あ、秋也。何で、ここに?」
牡蠣を手にしたまま、ぽかんとしている玲から、秋也は黙ってそれを取り上げた。
そして、ナイフで手早く殻を開いてくれたのだ。
「ほら、食べるといい」
「ありがとう!」
(秋也、優しい!)
玲の、キュンとする胸の内は知らないまま、秋也はどっかりソファに座った。
そして、もくもくと牡蠣の殻を開け始めた。
「拓斗と、エントランスで会ってな。玲が、牡蠣を持ってきてると聞いて、来てみたんだ」
「あ、うん。拓斗は、用事ができちゃって。あ、食べて。どんどん食べちゃって」
「そうだな。いただくか」
瞬く間に半数近くの殻を開けてしまった秋也は、ひとつ、またひとつと牡蠣をすすり始めた。
「おいしい? これね、市場で買って来たんだよ。新鮮なんだ」
「ああ、とても美味い」
玲は、どきどきしてきた。
(牡蠣を食べた秋也は、僕にムラムラしてきたりするのかな!?)
だが秋也は、もくもくと殻を開けたと同じように、もくもくと牡蠣をすするだけだ。
彼は、普段から理性の塊のような男だ。
(秋也は牡蠣くらいじゃ、エッチな気分にならないのかもしれない)
玲は、そっとポケットに手を忍ばせると、媚薬の袋に触れた。
(どうしよう)
もとはと言えば、拓斗と一緒に過ごそう、と思っていた夜である。
拓斗がダメになったから代わりに秋也と、というのは……。
(……あんまり、だよね。不誠実、だよね。秋也に、悪いよね)
だがしかし。
「どうした? 食べないのか?」
「う、ううん。食べるよ?」
「ジューシーだな。つゆがあふれてくる」
手にこぼれた牡蠣のつゆを舐めとる、秋也の舌。
それを見ているうちに、玲は我慢ができなくなってきた。
秋也の舌に欲情が抑えられなくなった玲は、とうとう策を実行に移してしまった。
「秋也、飲み物いらない? ビールと、ワインがあるよ」
「ありがとう。ワインが、いいな。そこにある、白」
解った、と玲はワインクーラーから、白ワインのボトルを取り出した。
そばにあったワイングラスに、封を切ったばかりのワインを注ぐ。
その手が、かすかに震えてしまう。
かいがいしく動く玲を、微笑ましく見ていた秋也だったが、やがて再び牡蠣の殻に挑み始めた。
(い、今だ!)
秋也の目を盗んで、玲は手にした媚薬を彼のグラスに溶かし込んだ。
(やっちゃった。ホントに、やっちゃった! いや、待て。今なら、まだ間に合う!)
やっぱり、秋也に不誠実な真似をするのは、止すんだ!
玲の心の中の良心が、グラスを引こうとした、その瞬間。
「結構、潮の味が強いな。喉が渇く」
媚薬入りのグラスを、秋也は何の疑いもなくひょいと取り上げてしまったのだ。
「あっ!」
玲は、思わず手を伸ばしていた。
今なら、まだ間に合う。
(言うんだ、秋也に。飲んじゃダメだ、って!)
一方秋也は、まさかこれが媚薬入りのワインだとは思いつきもしない。
「どうした?」
「え!? あ、あぁ、何でもない……」
玲の心の中では、天使と悪魔が戦っていたが、結局はエッチな悪魔の勝利に終わった。
それに、いまさら自分の悪事を晒す真似も、できやしない。
一瞬、不思議そうな顔をした秋也だったが、すぐにワインを飲み干してしまった。
玲は、瞬きもせず、それを見ていた。
(飲んじゃった!)
正確には『飲んじゃった』ではなく『飲ませちゃった』なのだが。
ふう、と一息つき、秋也はグラスを玲に向かって差し出した。
「冷たくて、美味しいな。もう一杯くれないか?」
「あ、うん」
牡蠣を開け、グラスを傾け、牡蠣を食う。
そんな秋也の様子を、玲は胸を高鳴らせながら観察していたが、一向に誘ってくるような気配は無い。
(薬、効かなかったのかな。インチキサイトの、嘘商品だったのか……)
そう諦めかけたとき、秋也に変化が表れた。
「暑いな」
秋也が、袖をまくり、氷をひとつ口に入れたのだ。
心なしか、顔が赤いような気がする。
玲の胸は、高鳴った。
(もしかして、効いてきたのかも!?)
「暑いなら、ちょっと開けるね」
玲は立ち上がり、ベランダドアへと歩いた。
カーテンを開け、サッシを大きく開くと、冷たい空気が火照った肌に心地よい。
「ふぅ」
顔が赤いのは、玲も同じだ。
期待と不安で、カッカと熱くなっている。
しかし、そんなこととは無縁に、夜空には星が瞬いている。
玲は、その美しさに心を奪われた。
そのまましばらく、ぼんやり空を眺めていると、秋也が傍に近づいて来た。
「どうしたんだ?」
「うん。星が、とっても綺麗なんだ」
「最近は何かと忙しくて、ゆっくり星を眺める暇もなかったな」
そう言うと、秋也も玲の隣で空を見上げた。
しばらく二人で、星空を眺める時間を楽しんだ。
澄んだ空気に瞬く星々を結び、星座を語リ合う。
勝手に新しい星座を作っては、笑う。
そんな穏やかなひとときが、ゆっくりと過ぎていった。
ちょっと冷えてきたな、と玲が思い始めたその時。
夜風がふいに強まり、彼の髪をふわりと動かした。
甘い香りが、秋也の鼻をくすぐる。
その匂いに、秋也は眩暈を感じた。
(……いい香りだ。だが、何だ。何だ、これは。クラクラしてきたぞ?)
しかも、玲の横顔を見ているうちに、心臓の鼓動が早まってくる。
(そんなに、飲んではいないはず、だが……)
冷たい夜風に当たっているというのに、体も熱くなる一方だ。
「ねぇ、秋也……秋也?」
玲が秋也の方を向いた時には、彼のまなざしは強く求めるものになっていた。
「玲。もっと、こっちへ来てくれ」
目と目が、合う。
秋也は、そっと玲の頬に手を差し伸べた。
玲はその手を頬に受け入れ、秋也から視線を外さなかった。
(玲……今夜の君は……何だか……)
秋也は、彼に顔を近づけてみた。
それを合図に、玲は静かに瞼を閉じた。
秋也は自然に、その唇に口づけていた。
ついにやってしまった、と玲はかすかに罪悪感を覚えた。
だが、秋也の情熱的なキスは、その思いを瞬く間に吹き飛ばしてしまった。
深く深く繋がり、唇を強く吸ってくる秋也。
舌が咥内に荒々しく進入し、激しく絡んできた。
舌を擦り合わせ、喉の奥を舐めあげ、敏感な部分を執拗に刺激してくる。
唾液があふれ、顎を伝うのが解かった。
「んッ、んぅ……ッ!」
玲は思わず声を上げていた。
おかしい。
いつもの秋也なら、もっと優しい溶けるようなキスを、何度も何度も繰り返してくれるのだが。
激しく口づけながら、秋也の右手は忙しく玲の胸元を探り始めた。
指先をもつれさせながらボタンをはずし、開いた襟元から無理矢理手を差し入れてくる。
「ちょ、ちょっと秋也? こんな所で!?」
激しい口づけに腰がくだけ、立っているのが危うくなってきた玲は焦った。
ベランダでこんな事をして、誰かに見られたら恥ずかしい。
だが、秋也は構わずどんどんシャツのボタンをはずし、ついにその胸のささやかな乳首にまで侵入してきた。
「ヤだッ! やめてよ!」
唇を強引に離し、玲は叫んだ。
拒む玲に歯噛みする秋也の息は荒く、舌打ちまで聞こえてきそうだ。
「秋也……?」
目の色が、違う。
秋也は、獲物を前にした肉食獣のまなざしを玲に向けていた。
滅多に見ない、秋也の眩んだ姿。
玲は、自分が蒔いた種とは言え、怯んだ。
(ど、どうしよう!)
逃げようかと思いかけたが、先に動いたのは秋也だった。
「来い」
腕を掴まれ、強い力で引っ張られる。
「ちょ、ちょっと! 痛いよ!」
部屋の奥へ連れて行かれて、開いた扉の向こうは寝室だ。
玲は、ベッドの上に押し倒された。
(少し怖いけど、こんなに積極的な秋也は刺激的!)
だが、すぐに後悔することになる。
舞い上がった空気の中に、かすかに漂ったのは……拓斗の匂いだったのだ。
玲は、我に返った。
(拓斗の留守に、拓斗のベッドで、秋也とエッチ? それって……最低じゃん!)
拓斗と秋也、両方に不誠実な、自分勝手だった自分を、玲は強く悔いた。
「や、やっぱりダメ! 秋也、離してよ!」
だが秋也は、暴れる玲の手首を痕が残るくらい強くつかんで、ベッドに縫い付けている。
そして再び唇を重ね、その口をふさぎ黙らせた。
「あッ、ンんッ! 」
すでに半分以上はだけられている胸元に、秋也の手が差し込まれてくる。
だが、興奮しているせいか、彼の手は玲の肌にうまく触れない。
「うざったい!」
とうとう、服を左右を引き裂く勢いで、大きく開いた。
弾け飛んだボタンが床の上に落ちる音を聞き、玲は心底震えた。
その、秋也の熱情に。
それに酔いかけている、自分の劣情に。
いけない、との気持ちとはうらはらに、体がどんどん熱く昂ぶっていくのだ。
「秋也! 秋也、やめてよ。離して、ったら!」
だが秋也はその哀願に、言葉で答えなかった。
露わになった胸の尖りを大きく舐めあげ、歯で噛んだのだ。
「ああッ!」
背筋を貫くような快感が、玲を襲う。
だが次の瞬間、その叫びが宙で凍りついた。
ドアを閉める音がする。
そして、室内に入ってくる足音が聞こえる。
拓斗が、帰ってきたのだ。
「秋也、ダメ! 拓斗が帰ってきた!」
玲は早口でそう言うと、のしかかってくる秋也を必死で押し返した。
だが、秋也は構わず玲に挑んでくる。
力任せに衣服を引き剥がし、たちまち全裸にしてしまった。
「秋也!」
あろうことか、秋也はもがく玲の両脚をつかむと高くかかげて、一気に貫こうとしてきた。
前戯もなしに、そんなことをされてはたまらない。
(絶対、痛いし! 裂けて、血が出るかも!?)
「やめて、秋也ったら! 拓斗! 拓斗、助けてーッ!」
玲の悲鳴を聞きつけた拓斗は、何事かと寝室へ飛び込んできた。
その目に飛び込んで来たのは、ベッドの上でもつれ合う秋也と玲だ。
「何だ、驚かしやがって。お楽しみの最中じゃねえか」
「ち、違う! あぁッ、いや!」
確かに、拓斗が寝室に入ってきたにもかかわらず、それを全く無視する秋也は変だ。
しかもそのまま行為を続け、がんばっている彼の姿は異様だ。
「おい、その辺にしとけ。玲が嫌がってるだろ」
「邪魔するな!」
肩に触れた拓斗の手を払いのけ、秋也はやめようとしない。
「痛い! 秋也、痛い、やめてー!」
秋也は、乾ききった玲の蕾に半ばまで埋め込んだペニスを、奥まで貫こうと腰を溜めた。
その一瞬の隙を逃さず、拓斗がベッドサイドの時計に手をやった。
ゴッ!
鈍い音を立てて、秋也の頭に衝撃が走った。
「ぐ……」
「正気になったか? バカ野郎」
秋也の頭を、拓斗が時計で殴ったのだ。
気絶しない程度に、抑えはしたが。
「さて。こいつは一体、どういうことだ?」
ベッドの上で正座をしている、秋也と玲に、拓斗は不機嫌そうな声を掛けた。
「俺は確かに、牡蠣が食べられる、って話したけど? 玲までいただけるとは言ってないぜ?」
秋也と玲が、寝る。
これには異存の無い拓斗だが、それがレイプとなると話は別だ。
毛布でその身を包み、小さく丸くなった玲は、怯えて震えている。
「別に、ダメじゃねえんだよ。でも、無理強いってのは何なんだよ!」
「いや、俺はそんなつもりじゃ」
そう言いながらも、秋也はまだ荒い息を吐いている。
「しかも、俺のベッドでだぁ? 言い訳は聞きたくねえな」
拓斗の声が、攻撃的だ。
そこに、意外な言葉が投げられた。
「拓斗、秋也を責めないでよ。ごめん、秋也。僕が、僕が……」
玲はそこまで言うと、うつむいて黙ってしまった。
(何で、玲が謝るんだ? 僕が、って何だよ?)
拓斗は、考えた。
確かに、無理強いは、秋也らしくない行動だ。
(すると、玲の方が誘ったのか? それにしては、大人気ないよな)
誘っておいてその気にさせて、やっぱりイヤ、というのはあんまりだ。
これはこれで、玲らしくない。
「何があったんだよ、玲?」
「う……」
もじもじと、挙動不審な玲だ。
拓斗は、ピンときた。
(これは絶対、玲に何か隠し事がある!)
「おい、秋也。ちょっと、耳貸せ」
「何だ?」
頷き合う二人のやりとりに、玲は顔を上げた。
そこを狙って、秋也がその細い顎に手をかけてきた。
そして、ゆっくりと唇を合わせたのだ。
「ん、ぅん……」
そのていねいなキスに、玲はつい心を緩めた。
(いつもの秋也の、甘い優しいキスだぁ……)
舌先が、玲の唇をていねいになぞる。
歯列を、歯茎をゆっくりと舐めとる。
薄く開いた間から、そっと差し込まれる舌に、玲は思わず反応した。
だがしかし。
玲が舌を伸ばし、絡めようとしたとたんに、秋也の舌が去ったのだ。
「えっ? ちょっと、秋也ぁ」
秋也の舌は、玲の咥内からすっと引いていった。
間をおいて再びキスをし、さっきと同じように優しくいじめにかかる。
しかし何度やっても、玲が舌を差し出した瞬間に、秋也は逃げてしまうのだ。
「秋也ってば、もうッ!」
物欲しげな声を上げた玲に、秋也ではなく拓斗が応えた。
「もっとエッチなキス、欲しいか? だったら言えよ、玲。何があったんだ?」
「べっ、別に!? そんなの、欲しくないし!」
強がって見せた玲だったが、今度はその首筋に、秋也が口づけてきた。
敏感なラインを何度何度も舌先で往復し、昂ぶらせてくる。
身を震わせた玲の耳を食み、熱い息を吹きかける。
玲は目を固く閉じ、唇を噛んだ。
一生懸命耐えてはいるが、熱は上がっていく一方だ。
「ん、んんっ!」
「強情なヤツだなぁ……って、おい! 秋也!?」
玲をやんわりと可愛がっていたはずの秋也が、はぁはぁと急いた呼吸で強く欲情し始めているのだ。
元はと言えば、何か隠している玲を、白状させるための行為だったはず。
大きく脱線して、目の前で彼を本格的に抱こうとしている秋也に、拓斗は驚き焦った。
「おい、秋也!? よせよ、俺の目の前で!」
「すまん! ちょっと、一回。とりあえず一回だけ、いいか? 我慢できん!」
この秋也の乱れようは、あまりに異常だ。
拓斗は、ようやく思い当たった。
「さては! 秋也、ひょっとして何か薬を飲まされたな!?」
「えぇッ!?」
「ごめんなさいッ!」
玲は、おもわず両手で顔を覆った。
(ついに、バレちゃった!)
ああ、死ぬほど恥ずかしい。
薬まで使って拓斗を、秋也を求めようとするなんて!
解りやすい玲のリアクションに、拓斗も秋也も気が抜けた。
「やれやれ……」
「何てこった……」
秋也は玲の髪をくしゃりとつかみ、拓斗は大きな溜息をついた。
溜息の後、煙草に火をつけ、じっくりと思い返す拓斗だ。
(牡蠣を山ほど持ち込んだのは、俺の精力増進を狙ったんだな)
そういえば、やたらとそわそわしてたっけ、と納得した。
要するに、今夜の玲は最初っから狙っていたのだ。
(そこに気付いてやれなかったなんて、俺としたことが不注意だったな)
「ソレならそうと、ハッキリ言えばいいのによ」
言葉にして出してはみたが、玲は子どもの頃から恥ずかしがり屋だ
あからさまに、セクシャルな言動ができるはずがない。
「……あぁ、悪い。ちょっと意地悪だったな」
そして、煙をふぅと天井に向かって吐いた。
まだ恥ずかしいのか、玲は手で顔を覆ったままだ。
秋也は、その手を優しくはずすと、玲の頬に軽くキスをした。
「もう、いいから。俺は怒ってない」
「……ホント?」
拓斗はそんな二人の様子に、呆れた。
(秋也ぁ。お前どこまでも、玲に甘い男だな!)
そこで、口の端をニヤリと上げた。
「でもまぁ、悪だくみのお仕置きはしねえとな」
へっへっへっ、と妙な声を立てて笑う拓斗が不気味だ。
「考えてる。拓斗が何か、変なコト考えてる!」
玲は、秋也にすがりついた。
怯える玲をニンマリと眺め、拓斗は煙草を灰皿に押し付けた。
「とりあえずぅ。秋也、先にヤッてろ。我慢も限界だろ?」
「お前は、どうするんだ?」
「へっへっへっ。俺はぁ、ちょいと準備があるからよ」
ひらり、と片手をあげると、拓斗は寝室から出て行った。
煙草の煙は、まだ室内に残っている。
しかし、それが消えてしまう前に、秋也は玲を強く抱きしめた。
体が火照って、ひどく気が急いているのだ。
正直、すぐにでも玲に突き立て、ぶちまけてしまいたい。
だが、ギリギリのところで我慢した。
「秋也、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
そんな秋也に激しく愛撫されながら、玲が切れ切れに囁いている。
「いいんだ。気にしてない」
秋也はそう返事をしたが、心ここにあらず、と言った現状だった。
秋也が玲に掛ける言葉は、相変わらず優しい。
だが、本音を言えば、今はそれどころではなかった。
前は硬く張りつめ、今にも精が溢れ出しそうなのだ。
そんな秋也の昂ぶりは、玲にも痛いほど伝わっていた。
張り詰めた秋也のものは、体に擦りつけられてくる。
その先から漏れ出す粘液が、体を汚している。
限界は近いだろう。
今から後ろをほぐして、馴らしてから挿入、とは気の長すぎる話だ。
(それじゃ、秋也が可哀想だよね……)
元はと言えば、自分が彼をそう仕向けたのだ。
玲は、腹をくくった。
「ね、秋也」
「何だ?」
「口に、ちょうだい。僕の口に、出していいよ」
潤んだ瞳が、秋也の心を射抜いた。
「い、いいのか?」
こくりとうなずくと、玲は体を大きく下へずらした。
そして秋也のものを手に取り、舌先で先端をぺろぺろと舐め始めた。
気のせいかもしれないが、体液の味がいつもより濃いような感じがする。
きれいに舐め上げた後、玲はそれを口いっぱいに頬張り、ゆっくりと抜き差しし始めた。
咥内での抜き差しに加え、指先で浮き上がった筋を軽くこする。
舌を伸ばして陰嚢を舐め上げた後、喉の奥深くまで咥え込む。
巧みな愛撫に、秋也のリミッターはついに弾け飛んだ。
「玲、玲……ッ!」
秋也は、腰を大きく動かし始めた。
玲は、その激しい動きに合わせて舌を躍らせた。
「ぅんッ! んっ、んッ!」
いつもより深く喉の奥に突き上げてくる秋也の動きに、玲はむせた。
しかし、秋也の動きは止まらない。
彼の両手が玲の髪をつかみ、頭をしっかりと押さえて責め立ててくる。
柔らかな喉奥まで、何度も何度も突き上げられる。
苦しさから逃れようとしても、身動き一つできない。
(これは、罰だよね。僕がバカなことした、罰……!)
咥内を責めさいなまれる時間は、永遠のように長く感じられた。
秋也の動きに合わせて軋むベッドの音だけが、やけに大きく聞こえた。
「……くッ」
軽い呻きとともに、ようやく秋也が吐精した。
「ん、んぅッ! ん、んぅ、ッく!」
玲は、口から溢れそうになる体液を、必死で飲んだ。
粘りつく苦味を、喉の奥へと送り込む。
やがて全て飲み終えると、舌を使って秋也のものをきれいに舐め清める。
それを一通り済ませて玲は息をつき、唇の周りに少し残った淫液を舌でぺろりと舐めた。
その吐息。
赤い舌先。
秋也の体の奥から、再び情欲の火が燃え上がった。
「玲……」
秋也は玲の肩を抱き、ベッドに横たえた。
(これでおしまい、じゃないか。やっぱり)
秋也の想いは玲にも解かっていたので、おとなしくその身を任せた。
背中に手を回し、自ら秋也の体を引きよせ、頬を擦り付ける。
その甘い仕草に、秋也の気分は最高にのぼせ上った。
「玲、好きだ」
「秋也……嬉しいな、そう言ってもらえると」
何とも奥ゆかしい、玲の返事だ。
(ッく! 可愛いぞ、玲ぃ!)
愛している、とまで言おうかとした矢先、ガチャガチャとした耳障りな音が聞こえてきた。
その騒音と共に、拓斗が寝室に乱入したのだ。
「おぅ! 一発、終わったか?」
何とも品の無い言葉に、せっかくの雰囲気が台無しだ。
秋也は、ムッとした声で彼を出迎えた。
「どうしてお前は、いつも騒々しいんだ!?」
「怒るなよ。良いモノ、持ってきてやったんだぜ?」
そう喋りながら、拓斗は上機嫌で手にした数本の小瓶を、ベッドのサイドテーブルに並べ始めた。
そして、そのうちの一本の口を開け、一気に飲み干した。
勝手に入ってきて、勝手に動く拓斗に、秋也は訊ねずにはいられなかった。
『良いモノ』とは、その小瓶なのか?
そして、なぜそれをすぐに飲んでいるのか?
考えは秋也の頭の中を渦巻いていたが、彼らしくシンプルに切り出した。
「何なんだ、それは?」
「勃起剤」
ぐぅ、と秋也はむせた。
「そっ、そのまま言うな! 生々しい!」
「じゃあ、性欲増強剤、精力剤、強壮剤、 起爆剤……」
ニヤニヤしながら延々と続ける拓斗に、秋也は両手を振った。
「解った、もういい! それで? 何でまた、そんな物を!?」
話は、ようやく本題に入った。
「だってよ~、カワイイ子猫ちゃんが発情してるからよ~。満足させてやらなきゃ、ってヤツ?」
「変な使命感を燃やすな!
「あと、お前にゃ負けられねえからな」
笑う拓斗からは、かすかに潮の香りがする。
残りの牡蠣を、全部ひとりで平らげたのだ。
「さて、と。お次は、玲の番だぜ?」
ニヤリと笑う拓斗に、玲は嫌な予感がした。
拓斗は複数の小瓶の中から一本を選び出すと、キャップを開けて微笑みかけてくる。
妙に温かな笑みが、返って怖い。
「おい、玲。こっち来い」
「イヤだ! 絶対、イヤだからね!」
秋也の後ろに隠れる玲だが、拓斗は回り込んで彼を追う。
そして小瓶の中の液体を手に取り、その体に塗りつけ始めた。
「何、これ!? イヤなんだけど!?」
「まぁ、静かにしてろ。マッサージしてやるから」
拓斗の手のひら全体で、怪しい液体は玲の体に塗り込まれていく。
ゆっくりじっくり、ていねいに。
体全体にマッサージをする、拓斗の手のひらだ。
その動きに、玲はだんだん火照ってきた。
(イヤだったけど、何か気持ちいい……でも、息が苦しくなってきたな……)
そこで大きく呼吸をすると、自分でも思いがけずに甘い声が出てきたのだ。
「あっ、あぁん」
無意識に出た甘い声に、玲は自分自身に驚いた。
(かっ、体に触られてるだけなのに!? こんな声が!?)
恥じ入った玲は、きゅっと唇を噛んで声を漏らすまいと耐えた。
(別に、僕! 感じてなんか、いないもんね!)
強情な玲だが、それも拓斗の想定内だ。
「おい、秋也。お前も手伝え」
笑いを含んだ拓斗の声は、いやらしい響きだ。
「何て楽し……いや、恐ろしいことをするんだ! こんな嬉し……いや、可哀想なこと、できるわけが!」
「お前、この前もそんな風に言ってなかったか?」
一度は拒否した秋也だったが、謎の液体にぬるぬると光りはじめた玲の肌は見るからに美味しそうだ。
秋也は黙って、拓斗から小瓶を受け取った。
「そう来なくっちゃ」
「黙れ、スケベ男!」
そして小瓶の液体を手に出すと、秋也も同じように玲の体に塗り始めた。
「ぅん、んんッ……ぁんッ!」
耐えても耐えても、声が漏れ出てしまう玲だ。
身をよじって逃れようとしたが、拓斗と秋也の二人がかりで、簡単に抑え込まれてしまう。
「我慢すんなって。声、出してみ? ん?」
「イヤ、だ。あ、あぁん!」
「意地を張るな、って。さっさと、楽になりな」
喉の奥で笑いながら、玲の体をいじめる拓斗。
「もう、ダメ。ね、秋也。もう、離して、ってば!」
「ふむ。玲は、ココが感じるのか」
「ソコ、ダメだ、ってばぁ! あぁあ!」
わざと敏感な部分を選んで、じっくりと塗り込んでくる秋也。
二人の愛撫に、玲の体は、どんどん火照ってきた。
熱い昂ぶりに、呼吸が苦しい。
息をしようと口を開くと、嬌声がこぼれてしまう。
「あぁ、イヤだぁ! もう、やめて。何、これ。拓斗、何なのさ、コレぇ!」
苦しげに吐く息も艶めいている。
喘ぐ玲に、拓斗は楽しげに答えた。
「媚薬オイル。効くだろ~? 気持ちいいだろ?」
「ヤだぁ! やめてよ。そんなの、反則!」
「あっ、そう。じゃあ、やめる」
ぱっ、と拓斗は、あっさりと玲の体から手を離した。
秋也も彼に倣い、やはりその体に触れるのをやめた。
「あぁ……はぁ、はぁ。んっ、く。んんぅ……」
荒い息を吐いて、小さく震えていた玲だったが、やがてその震えは大きく引き攣ってきた。
「んッ、ぅん。うぅ、あ。あ、はぁ、ぅん……ッ」
(ヤだ。何もされてないのに、声が出ちゃうよぉ!)
ぴくん、ぴくんと体が悶えだす。
玲はたまらなくなって、両脚をゆっくりとこすり合わせた。
「んんぁ。はぁ、ぅう、んッ。あぁ、んッ!」
体の疼きは、治まるどころかヒートアップする一方だ。
そんな玲に、拓斗は意地悪く声をかけた。
「欲しいだろ? 欲しい、っていいな。そしたら、してやるからよ」
違う、と言いたかった玲だ。
しかし、口をついて出る声は言葉にならない。
ただ熱い息とともに吐き出される、喘ぎだけだ。
「ちょっと、やり過ぎじゃないか?」
そう言いながらも、秋也はニヤニヤ笑っている。
拓斗は玲に、さらに意地悪なことを言った。
「目には目を、歯には歯を、ってな。クスリなんかに手ぇ出した、お仕置きだぜ?」
「ごめんなさい。もう、しません。だから、だから許してよぉ」
「だから、そうじゃねえだろ? ヤッて欲しかったんだろ。素直になれよ」
震える玲の体を、拓斗の手が舐めるように滑った。
「あぁ、ん。あ、あッ!」
だが、一撫でしただけで、その手はどこかにいってしまうのだ。
「ヤだ。もっと、もっとぉ……」
ついに口走ってしまった玲のおねだりを、拓斗も秋也も聞き逃さなかった。
「もっと、触って欲しいそうだぜ。秋也、どうよ?」
「呆れるほど、エロティックだな」
あまりの恥ずかしさに、玲は顔を伏せた。
色欲に眩んだ表情をさらすことに、耐えられなかったのだ。
だが、体は勝手に身悶える。
腰がひとりでに蠢いてくる。
「正直な玲は、好きだ。ご褒美をあげよう」
秋也が、今度は手だけでなく、唇や舌も使って玲を可愛がり始めた。
「ああっ! はぁ、あ。あっ、あッ、あぁんッ!」
どこに触れられても、体が敏感に反応してしまう。
まるで、全身が性感帯になってしまったようだ。
乱れ始めた玲に、拓斗が命じた。
「おい、玲。わんわんのポーズ、できるか?」
言われるまま、玲は腰を高くあげて四つん這いになった。
快楽への期待に、意志は完全に麻痺していた。
息を荒げる玲の体に手を掛けたまま、拓也は新しい小瓶を秋也に投げた。
「秋也。お前、後ろヤれよ」
片手でそれを受け取った秋也は、何に使うのだ、などと野暮なことは訊かなかった。
栓を開け、とろりと流れる液体を、ためらいもなく玲の蕾に塗りこみ始めたのだ。
指まで入れて、内壁を擦りながら、じっくりと塗り込む。
音を立てて指を抜き差しするうちに、玲の腰は淫靡に波打ちだした。
ローションとは明らかに違う刺激が、襲ってくるのだ。
刺激を求めて、後孔が疼き始めた。。
「ああっ! あっ、あっ、あッ!」
秋也の指に合わせて、短い切れ切れの喘ぎが漏れる。
やがてその声は、悲鳴に近い叫びに変わっていった。
「ああぁ、あッ! や、イヤッ! やだ、イヤだ! 秋也、やめてえぇッ!」
「やめて欲しいのか? 俺は正直な玲が好きだ、と言ったはずだが」
秋也は指を玲の体内に埋め込んだまま、その身に覆いかぶさって舌先を背筋に這わせた。
片手はその腰に当て、やんわりと撫でさする。
快感に耐え兼ねて、玲はぽろぽろ涙をこぼし始めた。
それは、四つん這いになった彼の下に潜り込んでいる拓斗に、ゆっくりと染み入った。
玲の下に潜り込んだ拓斗は、まず彼の胸に手のひらを当てた。
薄い、玲の胸。
「色気が無ぇなぁ」
笑う拓斗に、いつもの玲なら言い返すところだ。
しかし彼は今、媚薬でのぼせ上っている。
「ねぇ。早く触ってぇ……」
「お前の口から、そんな言葉が聞けるなんて、なぁ!」
女性のように豊かなふくらみは無いが、玲の胸ならば別だ。
じっくりと撫で上げ、小さなピンクの粒を転がし、つまみ、指腹で擦る。
愛撫を続けるうちに、玲の体は次第に低く下がってきた。
「んぁ、あ。はぁ、あぁ、んんぅ。力が、入らないよ……」
とうとう腰がくだけ、下半身は拓斗と重なってしまった。
「おぉ? こいつは、チャンスだぜ」
拓斗は玲のペニスに手をのばし、自分のものと一緒に握り込んだのだ。
「イヤだぁ! 拓斗、そんなコト!」
「イヤ、って言ってられんのも、今のうちだって」
二つのものから溢れ出す体液を混ぜ合わせながら、ゆっくりと動かす。
動くたびに擦れ、玲は初めての快感を覚えた。
「ん、あッ! あぁ、んぅ。イヤッ、ヤだってばぁ、もう!」
「イヤか~? 俺はぁ、すっげぇ気持ちイイんだけど?」
「ヤだ……ダメぇ……ッ!」
「じゃあ、コレでどうよ?」
拓斗は手の動きを速めながら、指先をきつく玲の先端に押し込んだ。
「あぁ、あッ!」
吐精の昂ぶりが、湧きあがってくる。
だが、もう一息というところで、拓斗はそれを逸らすように愛撫の手を抜く。
秋也もそうだ。
玲の体内に深く埋め込んだ指を蠢かせ、いたぶってくる割には、とどめを刺しに来ない。
玲は、もう気が狂いそうだった。
絶え間ない快感。
焦らされる絶頂。
そして二人の男は、悶えるその体を、いいように翻弄していた。
「ダメ……もう、ダメだぁ……降参……ッ」
はぁはぁと荒い息も絶え絶えに、玲は身をよじった。
「お願い、来て。僕を、滅茶滅茶にしてぇ……お願いぃ……」
熱い息と共に、ようやく吐かれた、おねだりの言葉だ。
拓斗と秋也は、にんまりと笑った。
「いい子だな。では……」
秋也の硬いものが、玲の秘所に触れた。
その気配に、彼の全身を貫くように、悦びの震えが走る。
「挿れるぞ」
ゆっくりと、秋也が玲の奥深くへと挿入ってきた。
「あぁッ! あ、あ、ああぁ!」
体内にしっかりと秋也の存在を確かめ、玲は歓喜の声を上げた。
秋也が腰をやるたびに、彼のペニスは玲の内壁に逆らって引き抜かれ、再び奥まで捻じ込まれる。
だんだんとその動きは速くなり、そのたびに濡れた音と玲の嬌声が響いた。
「あ、はぁ、あ! あぁんッ! はぁ、あ! ヤだ、前も熱いぃ!」
激しく貫かれながら、同時に前を拓斗に握り込まれ、擦られているのだ。
髪を振り乱し、玲は悦楽に我を忘れた。
「ああッ! もっと! もっと! はぁ、あぁ、あぁん!」
そして玲は、ようやく絶頂を許された。
一際高い声を上げ、体を強く反らせて震えた。
拓斗の手のひらの中には、たっぷりと玲の淫液が吐き出される。
「おぉ、いっぱい出たなぁ」
「う、うぅ……ふぅ、うぅ……」
引き攣っていた玲の体から、力が抜けていった。
だがしかし。
「いや、こっからが本番だぜ?」
拓斗は、玲に休息を許さないのだ。
たっぷりの精を使って、さらにぐちゃぐちゃと玲のものをいじめ抜く。
滑らかな体液を利用して、先端に絶妙の刺激を与えてくる。
「うぅ、うぅう! んぁあッ、あぁああ!」
「どうだ? 気持ち悦いだろ?」
「ふぅ、あ。あっ、あッ、んんあ!」
二度目の昂ぶりの予感が、すぐに玲を浸し始めた。
玲の昂ぶりに併せたように、秋也の動きが大きく強くなってきた。
体内の奥深いところまで激しく突かれ、体が大きく揺れる。
秋也が突いてくるたびに、ぶつかり合う肌が乾いた音を立て、濡れた内部からは水音がこぼれる。
淫らな音が室内中にあふれかえり、激しい興奮が玲を襲った。
彼は正常な思考を失い、ひたすら快楽を貪るようになっていた。
「来て、来て! もっと奥まで、挿れてぇッ!」
玲は、激しく腰をくねらせた。
そのうねりは、前を握る拓斗の手の動きにも伝わって、玲自身をどんどん追い詰めて行った。
「あぁッ! イくッ! もう一回、イッちゃうぅ!」
激しい悲鳴を上げながら、玲は果てた。
拓斗の手は、玲の二回分の体液でべとべとだ。
零れ落ちたしずくで、ハイブランドの服を派手に汚してしまった。
しかし、そんなことはどうでもいい、と拓斗はのぼせた頭で考えていた。
(こんなに激しく乱れる玲なんか、そうそう見られるもんじゃねえからな)
それはひどく嬉しく、興奮することなのだ。
だが拓斗は、わざと意地悪な声を玲に掛けていた。
「今の玲、めっちゃエロいぞ。どうだ? もっと欲しいか?」
「もっと。もっと、欲しい! もっと、いじめて……あッ! あんんぅンッ!」
「ど、どうした?」
「あぁ……秋也が、いっぱい……ふぅ、うぅん。うッ、うぁあ……」
秋也が、玲の中に射精したのだ。
「うぅ、あ……はっ、はッ、あぁ……」
くずおれる玲の熱い体を受け止め、拓斗はぺろりと乾いた唇を舐めた。
「さぁ。まだまだ、これからだぜ?」
拓斗は、玲の体を大切に支えながら起き上がった。
「どうよ? 秋也は、こんな玲を見て、どう思う?」
「いじめたくなる、な。もっともっと、泣かせたい」
「秋也クンは、ドS、だったか!」
達したはずなのに、秋也はまだ玲から引き抜いていない。
どうやら、抜かずの3発くらい、頑張るつもりでいるらしい。
拓斗は肩をすくめて見せたが、内心は燃えていた。
(これは、負けられねえな!)
夜は、まだ長い。
朝まで、たっぷり可愛がってあげよう。
秋也も拓斗も、考えることは同じだった。
「んぅ。拓斗、拓斗ぉ……どこ?」
「あ? れ、玲? うぁ、エッロ!」
玲が、手探りで捕まえた拓斗のペニスを、ぱくりと咥えたのだ。
命令もしていないのに、しゃぶり始めた玲に、拓斗はひどく萌えた。
「う~ん、そっかぁ。玲は、俺のことが大好きなんだな~」
ちらり、と秋也の方を見ると、彼は解りやすいほど不機嫌だ。
「いいか、玲。今からお前を気持ちよくさせるのは、この俺・秋也だ」
そして、ゆっくりねっとりと、螺旋を描くように腰を動かし始めた。
体内のいろんなところに刺激を感じ、玲はうっとりと瞼を閉じた。
「んぁ、あぁ……はぁ、あぁ……」
「気持ち悦いか? 玲」
「んっ、ふ。んあぁ、はぁ! あぁん、んうぅんッ!」
終いには、秋也と拓斗のどちらが、深く玲を満足させることができるか、の競争になっていた。
「おぉーい」
拓斗は、ベッドに突っ伏して寝ている玲に、声を掛けた。
返事がない。
秋也も寝室に入ってきて、首を傾げて見せる。
「どうだ?」
「ダメ」
拓斗は両腕をクロスさせて、バツ印を作った。
「ちょっと……ヤり過ぎたかな? 俺たち」
「ちょっと……苛めすぎたようだ。俺たちは」
朝まで3Pに耽り、体を洗おうとバスルームへ玲を連れて行った。
しかし、場所が代わっただけで、再び3Pに突入してしまった。
シャワーを浴びて、服を着て、シーツを変えて。
さっぱりしたのは、どうやら拓斗と秋也の二人だけのようだ。
玲はといえば、食事も摂らずにベッドを占拠して、ひたすら寝ている。
いや、寝たふりをして、拗ねている。
やれやれ、と拓斗と秋也は、彼が横たわっているベッドに近づいた。
「なぁ、いいかげん機嫌なおせよ」
拓斗が、毛布を頭まで被った玲の顔を覗き込んだが、彼はクルリと寝返りを打って、反対側を向いてしまった。
「お前だって充分楽しんだろ? いじけるのは、お門違いだぜ?」
「うるさい!」
がばりと跳ね起きて、玲は拓斗を睨み付けた。
「あんな、あんなこと……」
勢いが良かったのは、最初だけだ。
後はもう顔を真っ赤にして、枕を抱いて顔を埋めてしまった。
昨夜、自分がやったこと、口走ったこと。
思い出すだけでも、恥ずかしくて死にそうになる。
(ううん。もう、いっそのこと死んだ方がマシ!)
もう二度と、この二人に顔向けできない。
ううぅ、と玲はうめいた。
「だけど昨夜のお前は、悦かったぞ。たまには、あんな姿も悪くない」
秋也が、慰めにならない言葉で、褒めている。
「新しい自分、発見できたろ!?」
拓斗が、理解できない前向きな言葉で、励ましている。
まったくもって、二人とも身勝手だ。
(でも、身勝手って。僕が一番、身勝手だったんだよね……)
拓斗がダメなら、秋也。
牡蠣がダメなら、媚薬。
認めたくはないが、これはおそらく天罰なのだ。
そして、そこには全く触れてこないところが、拓斗と秋也の優しさだ。
(だから、嫌いになれないんだ。僕は、この二人が好きなんだ)
玲は、少しだけ顔を上げた。
顔を上げ、玲はポツリと言った。
「……行きたい」
拓斗は身を乗り出して、彼の言葉を拾おうと耳を傾けた。
「何だ? もう一回、言って」
「……どこか、お洒落なバーに行きたい。綺麗で美味しいカクテルが、飲める店」
拓斗と秋也は顔を見合わせ、安堵のため息を大きくついた。
どうやら玲は、交換条件で許してくれるらしい。
二人とも、大げさに明るい声を上げた。
「雰囲気の良い店、知ってるぜ!」
「それはいい。今夜、出かけるか!」
玲は、枕の陰からそっと二人を眺めた。
ホッとした顔で、店に予約を入れるため、さっそくスマホを取り出す、拓斗。
なだめるように、優しく背中を撫でてくれる、秋也。
好き。
大好き。
(でも、今夜のラストオーダーカクテルは、ブルームーンだからね!)
ブルームーンのカクテル言葉は『今夜はおあずけ』だ。
昨晩、あれだけ付き合ったのだ。
それくらいの仕返しは、してもいいだろう。
「おぅ、予約とったぜ!」
「さぁ、朝食ができてるぞ!」
玲は、ようやく枕から顔を離して、笑顔になった。
ともだちにシェアしよう!

