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第18話
前を歩くランドセルの集団は、時々ぶつかりそうなほど近づいたり、かと思えば弾き飛ばされたり。固まって戯れ合いながら下校するその様子は、傍から見て危なっかしいことこの上ない。道いっぱいに広がり、時にははみ出して歩く自分の同級生たちを冷めた目で見つめる。
「みんな、帰ったら公園集合な! 今日はサッカーしようぜ」
「何公園?」
「中央公園!」
「晴人も来いよ」
集団の一人がこちらを振り向いて言った。
「行かない」
「はぁ? なんで」
「ノリ悪っ」
「いいよ、こんなやつ。ほっといて行こうぜ」
自分の返答が不満だったらしい彼らは、蜘蛛の子を散らすように各々の自宅へ向かって通学路を駆けて行った。一刻も早く遊びたいという気持ちが伝わってくるような、あっという間の出来事だった。
一人通学路に残された俺は、ため息をつく。何とか今日は免れた。断っても家まで押しかけてきて、無理矢理連れて行かれることもあるので気は抜けないが、サッカーをすると言っていたし、今日は絶対に巻き込まれたくない。
体を動かすことが苦手だ。特に球技は苦手意識が強い。白熱してくると誰かのミスを容赦なく責め立てる同級生たちの雰囲気も含めて、絶対に混ざりたくない遊びだった。
自宅へ辿り着き、玄関の扉を開ける。家の中はふんわりと甘い匂いが漂っていた。
「ただいま」
「おかえり、晴人。学校はどうだった?」
「うん」
キッチンにいたらしい母親が、エプロン姿で玄関まで出てくる。重いランドセルを下ろして靴を脱ぐ俺の背中に話しかけてくる。
「今日は何かあるの。お友達と約束した?」
「ううん」
「ねーお母さん、このドーナツ食べていい?」
「一人で食べちゃダメよ! みんなの分なんだから!」
リビングから二つ上の姉の声が飛んできた。母親は声を張り上げてその呼びかけに答えた後、俺を気遣うような目で見つめた。
「今日はドーナツがあるのよ。手を洗ったら食べにおいで。……明日はね、プリンを作るから。たくさん作るから、お友達を呼んでもいいからね」
「うん」
同級生たちが毎日のように集まって公園で遊んだり、誰かの家でテレビゲームをしたりしているのに、ほとんど家で一人過ごしている俺を、母親が心配しているのは気づいていた。
だが、正直余計なお世話だった。俺は自分の部屋へ入ると、誕生日に買ってもらったコンポにCDをセットして、再生ボタンを押した。大きなスピーカーが震えて音が流れ始める。音楽鑑賞の授業で聞いた、シューベルトの『魔王』だ。
教師が何の説明もなく、まずは聴いてほしいと言って授業で流し、初めてこの曲を聴いた時、何かが追いかけてくるようなピアノの連打音に、胸が焦燥に駆られたことを思い出す。何が起きているのか分からない。なのに、ただ逃げなければならないという感覚だけが胸を締め付けた。
暗い森の中を走っているような気がした。背後には何かがいる。けれど振り返ることができない。得体の知れない恐怖に追い立てられ、必死に駆け続ける。曲が終わる頃には息苦しいほど緊張していて、自分でも驚いた。
その頃の俺は、周りの同級生たちのように、大声で笑ったり、夢中になって騒ぐことが苦手な子どもだった。誰かと遊ぶより一人の世界にこもっていたほうが楽で、それが寂しいと思ったこともなかった。親から見ても心配になるくらい、感情を表に出さない子どもだったと思う。
そんな俺にとって、音という刺激だけで、感情がここまで揺さぶられるという経験は、この後の自分の人生を左右するほどの出来事になった。
母親の心配をよそに、毎日部屋に閉じこもって音楽を聴き続けた。ショパン、ベートーヴェン、ドヴォルザーク——次々にCDを買い集めては、家族に呆れられるほど繰り返し聴いた。なぜこの音で胸が苦しくなるのだろう。なぜこの音の重なりで、見たこともない景色が浮かぶのだろう。分からない。分からないからもっと知りたかった。
やがて俺を外に出すことを諦めたのか、どんどん音楽にのめり込む姿を見た家族が、ピアノを買い与えてくれた。鍵盤を叩くと自分の指先から音が生まれる。それは、ただ聴くだけだった音楽を、自分の手で操れるようになった瞬間だった。
中学生、高校生になるにつれ、聴く音楽のジャンルも広がっていった。クラシックだけでなく、ロック、メタル、ジャズ、民謡、ポップス……音が表現する様々な世界を追い求めて、没頭した。
楽器も様々なものに触れた。ピアノ、ギター、ベース、ドラム。DTMに出会ったのはこの頃だ。世間で流行っていたSNSで見つけたのは、レコード会社にも事務所にも属さない無名の人たちが作る曲で、彼らの音楽は自由だった。クラシックにもポップスにも収まりきらない、剥き出しの感情そのもののような音楽。
誰もが、自分だけの世界を音にしていた。自分もこんな曲が作りたい——そう夢を抱くのに、時間はかからなかった。
そうして音楽を志した俺は、高校卒業後に入学した専門学校で、大きな壁にぶつかることになる。ゼロから音を生み出すことの難しさ——他人に興味のない俺が、人に何かを伝えるということの難しさに。
音楽から受けた感動をそのまま形にしようとしても、人の生み出した音をなぞるだけだ。俺の作る音楽は、誰かの真似でしかない。個性もなければ、リアリティもない。かつて自分が音楽から受けたような衝撃を、自分では生み出せないのだと思い知らされて、目の前が真っ暗になった。
ずっと音楽に携わる仕事がしたいと思って、ここまでやってきた。でも、認めたくないけれど、もしかして、自分には。
音楽を作る、才能なんてないんじゃないか。
そう、思っていた時だった。あの人の言葉が、未来の見えない、俺の真っ暗な道を照らしてくれたのは。
——今は、何にも見えなくて、目の前が真っ暗みたいな気がしてもさ。見落としてたコードが一個見つかって、急に、目の前が明るくなるみたいに。
七年前と同じように、今また、先の見えない真っ暗な世界で、あの人の言葉が俺を光の先へ引き上げる。
最上に出会って、人を愛おしく思う気持ちを知った。誰よりも何よりも大切で、その人さえいれば世界は明るく色づいて見えるようだった。
——二人で考えよう、二人のこれからのこと。俺と晴人くんが、一緒にいられる未来のことを。
幸せの絶頂も、耐えがたい絶望も、全て彼が与えてくれた感情だ。最上がいてくれるだけで、ほんのささいなことでも、今生きていることに感謝するような幸せを感じられる。最上がいなければ俺の世界は真っ暗なまま、うるさいノイズのような耳鳴りが続く、絶望の日々が続いていく。
彼の消えてしまった世界で、どれだけの時間が経ったのだろう。いっそこのまま俺の存在ごと、全部消えてしまったほうが楽だとすら思っていた、そんな絶望の中で、二度と触れられないと思っていた温もりに包まれた俺は、未来に続く約束を聞く。
ずっと、俺ばかり彼を求めていると思っていた。彼の未来に、俺は必要ないんだって思っていた。
そんなあなたから、初めてもらう、確かな告白。
——愛してるんだ……晴人くんを。
きっと、これは夢だ。自分の都合のいい夢を見ているに違いない。
あまりの嬉しさに、涙があふれた。うるさかった耳鳴りが嘘みたいに消え、彼の声を、言葉の一つ一つを聞き漏らすまいと、全ての神経が研ぎ澄まされた。
嬉しくて、きっと目が覚めたらいなくなってしまう、俺の理想が作り出した幻覚のあなたの存在が切なくて、確かめるように何度も、何度も口づけを落とした。
朝日の眩しさに、重い瞼をこじ開けられる。
ゆるりと目を開けると、寝室の天井が見えた。カーテンに隙間があるのか、朝日が差し込んで室内は明るい。このところ、薄暗いリビングのソファかパソコンデスクのチェアでそのまま意識を失うように眠ることが多かったので、寝室のベッドで目を覚ますのは久々のことだった。
それにしても、いつの間にここへ来たのだろう。昨日、自分でリビングから移動したのだろうか?
昨日は久しぶりに、幸せな夢を見た。荒れ果てた部屋に、最上が現れて、俺と一緒に生きることを約束してくれた夢だ。
本当に、幸せな夢だった。目覚めて現実に戻ってしまったことが悔やまれるくらいに。彼が、いつか俺を救ってくれた言葉と同じ言葉で、俺と一緒に生きることを約束してくれた。これから先の未来を、一人ではなく、二人で生きていこうと言ってくれた。
「……遼馬さん……」
ずっと、あの夢の中にいたかった。そう思って、思わず彼の名前を呟いた。涙が溢れそうになり、片手で目を覆った。その時だった。
「おはよう、晴人くん」
ピタリと、体が固まってしまった。
聞こえるはずのない声が、すぐそばで聞こえたような気がした。まさかまだ夢を見ているのだろうか。信じられない気持ちで隣を見る。
柔らかな朝日に照らされたベッドの上。俺の横に寄り添うようにして、最上が、何度も願ったその人が大きな目を瞬かせてこちらを見上げていた。
最上は俺と目が合うと、幸せそうに、ふわりと笑った。心臓が、止まったかと思った。あまりにも優しくて、幸せで、愛おしいその人の笑顔に。
「晴人くん?」
「……っ!」
状況が分からず、混乱する。今の今まで全く気づいていなかったが、よく見ると、狭いベッドの中で俺に寄り添う最上と触れ合う部分が、彼が現実にそこにいることを伝えるように温かかった。なぜ今までこの温もりに気づかなかったのか、自分でも自分が信じられない。
「遼馬さん……?」
「うん。おはよう、晴人くん」
「本物……? 夢……?」
「夢じゃないよ……って、昨日も言ったけど、やっぱり、覚えてなかったかな」
最上は気まずそうに頰をかいた後、恐る恐るというように体を起こした。温もりが離れていき、隣にヒヤリと冷たい空気が流れて、苦しくなる。このまま、また、俺のそばから消えてしまいそうな気がした。
「ごめん、びっくりした……? あの、晴人く——」
「っ、遼馬さん……!」
何か話そうとしている彼の言葉を待たずに、ガバリと勢いよく抱きついた。温かい、その温もりをもう一度自分の腕に閉じ込めて、確かな存在を感じて胸がいっぱいになる。
「遼馬さん……遼馬さん。会いたかった……!」
「晴人くん……ごめん、俺」
「謝らないでください……! もう、どこにもいかないで。遼馬さんが、また、一緒にいてくれるなら、なんだっていい」
彼の謝罪に続く言葉を聞くのが怖かった。少しだけ体を離して、彼の顔を見つめる。
「昨日の言葉、夢じゃないですよね……?」
頷いて、肯定して欲しくて、祈るような気持ちで彼の答えを待った。
最上はしばらく大きな目を瞬かせた後、もう一度ふわりと、幸せそうな笑顔になって、言った。
「勿論。何度でも言うよ、晴人くん。俺——」
現実であればいいのにと、夢だと思っていたその言葉が、彼の口から確かに伝えられる。胸がいっぱいで、苦しくて、じわりと目頭が熱くなり、涙がこぼれそうになる。
最上の前ではカッコよく見せたいと、いつも考えているのに、上手くいかない。どうしたって俺の心を震わせるのはこの人だけ。喜びも悲しみも何もかも、全部、彼だけが俺に与えてくれる。
二度と見つけられないと思っていた、自分の音が再び鳴り響き始めた感覚があった。胸が震え、騒ぎ出すような、じっとしていられない、再生の音が。
◆
離れようとしない藤谷を病院へ連れて行くのを諦めて、冷蔵庫の中のもので簡単な食事を作った。冷凍うどんを煮込んで柔らかくしただけのそれを、藤谷は大袈裟なくらいに感動して、じっくりと味わうように食べ始める。
「遼馬さんの作ってくれた料理だ……美味しい」
必死に泣くのを堪えているような様子に、胸が苦しくなる。こんなものでここまで喜んでくれるなんて、藤谷がこの数ヶ月間、どれほど自分を渇望してくれていたのかが手に取るように分かり、改めて自分の犯した過ちを思い知らされるようだった。
「ゆっくり食べなよ。多かったら、無理しなくていいから……晴人くん、最後に食事したのはいつ?」
「………」
「もしかして……分からないくらい前?」
美優が『ご飯も全然食べない』と泣きながら訴えていたのを思い出す。長いこと食事していないなら、いきなりものを食べるのは難しいのではないだろうか。やはり病院へ行ったほうがいいのでは。
真剣に悩み出した俺を見て、慌てたように藤谷が言う。
「いえ、あの、何か食べてたと思うんですけど、あんまり覚えてなくて……三食食べるというより、耐えられなくなったら何か口に入れるって感じだったんで」
想像を上回る生活の荒れように唖然とする。料理が好きだと言って、一人でも凝ったものを作り、スポンジケーキまで手作りしてしまう、俺の知っている藤谷ではないようだ。
信じられない気持ちでまじまじと見つめる俺の視線に気づいて、藤谷はハッとしたように顔を背けた。
「すみません、遼馬さん……俺、今めちゃくちゃカッコ悪いですよね」
「えっ」
「髪も伸びっぱなしだし、スキンケアとかも全然気にしてなかった……待って、最後に風呂入ったのいつだっけ……? 俺、臭いますよね……⁉︎ すみません‼︎ すぐシャワー浴びてきます‼︎」
「晴人くん⁉︎」
ガタリと勢いよく席を立った後、残ったうどんを見て、離れがたそうにその丼鉢の中身と風呂場への道を見比べて、「まだ食べますから‼︎ 絶対残しておいてください‼︎」と言い残してバタバタとリビングを出て行った。
藤谷の背中が見えなくなった後、まだ湯気の立ち上る丼鉢の中に視線を落とした。半分ほど食べ残された、何の具も入っていない、煮込んだだけのうどんを見て、こんなものにまで執着する藤谷を可愛いと思うと同時に、また、罪悪感が湧いてくる。
ダイニングテーブルの椅子に座ったまま、辺りを見渡した。荒れた部屋の中、リビングの隅には、俺が去ったあの日のまま、クリスマスツリーが置かれていた。たった一つだけ持ち出した、あのプレゼントと同じオーナメントの包装紙が、開いたカーテンから差し込む陽の光を反射してはいたが、どこか埃っぽくくすんでいるのが分かった。
あの日のまま時が止まってしまった部屋を見て、胸が痛む。この部屋を去った後、彼にとって、自分という存在がちっぽけであればいいと思った。すぐに忘れて、別の人と幸せになれるような、その程度であればいいと。
同時に、そんなはずはないとも思っていた。藤谷にとって自分の存在は、そんなに軽いものではないはずだと。俺がいなくなったことに、傷つき、胸を痛めているのではないかという想像に、不安や罪悪感も、最初のうちは確かに感じていた。
だが、美優と寄り添って歩く藤谷の姿を街中で見て、やはりそれは俺の願望で、藤谷は俺のことを忘れ、別の人と幸せになったのだと思った。俺も彼を忘れて、彼のいない人生を受け入れなければいけないと思っていた。
自分にとって、あまりにもつらいその現実を受け止めるために、何も考えなくていいという、他者から与えられた甘言に身を任せ、思考を放棄していた。それがどれほどの間違いだったか、今になってその現実を目の当たりにして、苦い気持ちが胸を締め付ける。
もう間違えないと決心するのと同時に、ここへ来る時、引き止めるその手を振り払って置き去りにした、あの男の、世界が終わるかのような、絶望的な表情が、脳裏に蘇った。
——けじめを、つけなければいけない。
シャワーを浴びて、急いで戻ってきたらしい藤谷は、まだ乾いていない濡れた髪から水滴が滴る状態で、肩にタオルをかけていた。不安の浮かぶ強張った表情が、俺の姿を認めて、ホッとしたようにまた弛緩する。
「遼馬さん……」
思い詰めた声で名前を呼んで、近づいてきた藤谷は、また存在を確かめるように俺の体を抱き締めた。シャワーを浴びたばかりの、せっけんの優しい香りがした。
温かい体温に包まれて目を閉じる。部屋の隅にはまだ、あの日のままのクリスマスツリーが静かに鎮座していたが、止まっていた時間がやっと動き出したような、そんな気分だった。
食事を終えた藤谷は、とにかく俺に触れていたがった。俺の反応を気にしながらも、手を握ったり、抱き寄せたり、キスをしたり。ソファに並んで座って、藤谷の気が済むまで、俺はされるがままだった。
「遼馬さん、また、ここに戻ってきてくれますか」
「うん。晴人くんが、許してくれるなら」
「許すなんて……! 嬉しいです。良かった……」
藤谷の大きな手に頰を包まれて、唇を塞ぐようなキスを受け止める。感動に身を震わせる藤谷の手に指を絡めて、俺は、重い口を開いた。
「晴人くんが許してくれるなら、また、ここへ戻ってきたいんだけど……その前に、話さなきゃいけないことがあって」
「遼馬さん……?」
「……今まで、俺が、どこにいたかなんだけど……」
俺の言葉を聞いた藤谷の表情が、何かを察して凍りついたようになる。
「遼馬さん……その話は」
藤谷の反応を見ていると、話すのが躊躇われた。これ以上傷つけたくはない。けれど、黙って自分で何とかしようとするのも、きっと彼を傷つける結果になるだろう。
「うん、ごめん。だけど、黙ったままっていうわけにもいかなくて……これだけは、聞いてほしい。俺、今まで五十嵐さんのところにいて」
「……知ってます」
「それで……え?」
「会ったんです。遼馬さんがいなくなってから、一回だけ。あいつに会って、聞いたから」
何かを堪えるように視線を落とす藤谷に、やっと、何が彼をここまで追い詰めたか理解した。
あの男が——五十嵐が、わざわざ藤谷に会って何を言ったのか。自分を手に入れるためなら手段を選ばない彼が何をしたのか、具体的な手段は分からなくても、それが徹底的に彼の心を潰す何かであったことだけは確かだ。
おそらく五十嵐は、俺がずっと心の奥底では、藤谷に対する未練を抱えていることに気づいていた。彼が藤谷を追い詰めたのが、その不安に駆り立てられた結果であるなら、それはやはり、自分の気持ちに対して中途半端な向き合い方しかしてこなかった、俺の責任だろう。
藤谷をここまで追い詰めて傷つけたのは、俺が選択を間違えたせいだ。
「ごめん、晴人くん」
「……謝らないでくださいって、言いました。遼馬さんが、今、ここにいてくれるだけでいいって」
「うん……でも、どうしても、もう一回、五十嵐さんには会わないといけないから」
それまで何かを堪えるようにしていた藤谷の顔が、絶望的な表情になる。彼にそんな顔をさせてしまうことが心苦しかった。
「なんで……」
「ごめん……自分の荷物とか、引越しのこととかもそうだけど。今、五十嵐さんと立ち上げた、事業があって」
話すたび、藤谷の表情が暗くなっていくのが分かる。これ以上どれほど彼を不安にさせればいいのか、自分自身が嫌になる。
けれど、どうしても、けじめをつけなければいけない。間違えてばかりいたからこそ。自分の行いに対する、責任を取らなければ。
「どうしても、五十嵐さんと、仕事の話を整理しないといけないんだ。今までの利益の分配もそうだし、業務委託の解消と、それから、今受けてる案件の引き継ぎも」
「………」
「約束するよ。話をするのは、仕事のことだけ。会うのも、それで最後だから。……もう、逃げたくないんだ。責任を放棄したままで、君の隣にいたくない。俺が、晴人くんの隣にいてもいいんだって、思えるように」
俯いてしまった藤谷の表情は分からない。けれど、簡単に頷くことができない藤谷の気持ちは痛いほど分かった。俺だって、藤谷が美優と会うと言われたら、それが必要なことだと説明されても、簡単には了承できないと思う。
それでも、五十嵐に会うことを撤回はできなかった。罪悪感に押し潰されそうになりながらも、藤谷の許しを待つ。
「……分かりました」
やがて覚悟を決めたように、藤谷がぽつりと言う。
「晴人くん……ありがとう」
「でも、俺も行きます」
「えっ……」
俯いていた顔を上げた藤谷は、その瞳に強い光を湛えてこちらを見る。
「遼馬さんのことは信じてますけど。あいつのことは信用できないんで」
「晴人くん……」
藤谷の言葉に反論はできない。実際、俺も五十嵐がどんな行動に出るのか全く分からなかった。
諦めたのか、まだ俺に執着して、どんな手段を取ってでも俺を引き止めようとするのか。何があっても自分の気持ちが変わることはないが、五十嵐が何を考えているのか推測するのは難しい。
「君が来てくれると、心強いよ。でも、その……あんまり、気持ちのいい話では、ないかもしれなくて」
五十嵐の手を振り払ったあの瞬間から、俺はもう、この先の未来を選び取っている。例え藤谷が俺を許してくれなかったとしても、藤谷の隣に、俺の居場所がもうなかったとしても。それでも、五十嵐の元に戻ることはないと、引き止める五十嵐の手を振り払い、絶望的な表情の彼を置き去りにしたあの時に、俺の中でそれだけは決定的だった。
だから、俺がこれから五十嵐と話すのは仕事の話だけ。だが、五十嵐がそれをよしとするかどうかは分からない。藤谷の耳に入れたくないような……何も聞かず、俺の過ちを許してくれた彼をこれ以上傷つけるような、そんな話題にならないとも限らなかった。
「……ええと……」
どう説明すればいいのか、何を話しても彼の心の傷を抉ってしまう気がして、口ごもっていると、指を絡めて繋いだ藤谷の手に、力がこもった。
「大丈夫です。俺のこと、心配してくれてるんですよね。ありがとうございます。でも、待っているだけより、そのほうがずっといいから」
繋いだ手を持ち上げて、指先を擦り合わせながら、愛おしげに藤谷は繋いだ手を見つめる。
「遼馬さん、昨日、言いましたよね。二人で一緒にいられる方法を、一緒に考えてほしいって。だから、俺も一緒に行きます」
強い意志が込められた瞳に射抜かれて、ハッとする。
そうだ、俺はもう決めた。どれだけ苦しくても、傷ついても、他の誰に何を言われてももう、自分の気持ちに嘘はつかないと。藤谷の隣にいられるように、努力をすることを諦めないと。
藤谷が同じ覚悟をしてくれたことが伝わってきて、胸がじんと震える。
「……ありがとう」
繋いだ手を、俺も強く握り返した。いつか、藤谷がいてくれるなら、何だってできるような気持ちになれたことを思い出した。
——遼馬さんがいてくれるので。多分、今なら空も飛べます。
本気かどうか疑ってしまうような冗談を言う藤谷まで思い出して、ふっと笑みが込み上げる。改めて、藤谷が空を飛ぼうとしないように、俺がちゃんと見ていなければ、なんて考えて、そんなことを考える心の余裕が生まれたことに、自分でも驚くばかりだった。
◆
時計の秒針が動く音すら聞こえるような部屋の中で、目を閉じていた。
どれだけ時間が経ったのか分からないが、玄関からガチャリと鍵を回す音がして、ハッとして立ち上がった。
廊下を歩いて玄関へ向かう。薄暗い廊下の向こうで扉が開こうとしている。思わず、こちらからドアノブに手をかけて、その扉を押し開けた。
「最上さ……!」
だが、目の前に立っていたのは最上ではなかった。
「……藤谷くん」
そこに立っていたのは藤谷だった。予想の範疇ではあった。この男が、まさか最上を一人でこちらへ寄越すだろうとは思わなかったからだ。
藤谷は長い前髪の隙間から、鋭い目つきでこちらを睨みつけていた。硬く結んだ唇からは、何の言葉も発せられないが、こちらに対する敵意だけはありありと伝わってくる。
忌々しい男だと思った。俺のいない間に、まんまと最上の懐に入り込んで、彼のその絶対的な特別の座を独占しておきながら、俺に対してそんな目を向けてくる。
少しは勝者の余裕とか、こちらを見下すような態度でもあれば、もう少し親近感が持てたというのに——最上に対する執着という共通点がありながらも、俺とこの男の明らかな違いを見せつけられているようで、本当に嫌になる。あまりにまっすぐな、その若さゆえの直情的なところが、憎たらしいことこの上ない。
「五十嵐さん」
藤谷の背後から声がした。背中に守られるようにして立っていた最上が、こんな状況でも物怖じしない、はっきりとした口調で、俺に告げる。
「先に連絡していた通り、相談に来ました。……業務委託の解消について」
他人行儀なその口調に、はっと自嘲じみた笑みが漏れる。
「やだな、最上さん。いつもみたいに名前で呼んでくれません?」
目の前の男から、黙っていても伝わってくるような殺気がぶわりと立ち上った。だが男の背後にいる最上からは、何の動揺も感じられなかった。
馬鹿馬鹿しくて、余計に笑えてくる。既に勝負は決まり切っているのに、こんな言葉で、勝者を煽ることしかできない惨めな自分が、あまりにも馬鹿馬鹿しい。
「すぐ終わる話じゃないでしょう、上がってください。コーヒーくらい淹れますよ。……藤谷くんも、どーぞ」
声が震えないようにするのがやっとだった。精一杯の虚勢でそう言って、二人に背中を向ける。
二人が室内へ入って、扉の閉まる音がした。
リビングのソファへ二人を案内して、キッチンでコーヒーを淹れた。最上の生活していた痕跡が、未だにありありと残った部屋の中を見て、藤谷が傷ついたような顔をするのを見逃さなかった。
少しくらいは傷つけばいいと思う。俺が喉から手が出るほど欲して、様々な画策をしたその人を横から手に入れたのだから、これくらいの仕返しはさせてもらわないと気が済まない。
コーヒーをローテーブルに置いて、予め用意していた書類を提示した。業務委託の解消にあたり、これまでの利益の分配と、現在進行中の案件の引き継ぎについて。
特に、投資家向けにリリースした投資管理プラットフォームは複雑だ。サブスクリプションによる収益は今後も発生するため、その将来収益をどう精算するか、慎重に決めなければならない。
「俺としては、これまでのプロモーション業務の対価は十分もらってるんで、このまま手を引いてもいいんですけど」
「そういうわけにはいかないよ。五十嵐さんのプロモーションがなければ、このプロダクトはここまで成功しなかったから」
「……アンタなら、そう言うかなと思ってました」
最上の性格を間違えずに読み切った自分に、笑みが浮かぶ。仕事の話を進めていく俺と最上を見て、藤谷は複雑そうな表情を浮かべていたが、口を挟むことはなかった。
「これまでの利益の分配に、今後のサブスクリプション収益の予測も含めて、契約終了の精算金を決めよう。金額は……ごめん、あんまり詳しくないから、五十嵐さんに出してもらいたいんだけど」
「そういうとこ、これから一人でやっていくつもりなら、直したほうがいいですよ。アンタみたいなお人好しは、すぐ食いつぶされて終わっちゃうから」
苦手でもなんでも、個人事業主としてやっていくつもりなら、向き合わなければならない。相手を信頼するばかりでは、いつか自分の首を絞めることになる。
「難しいならやっぱ、人に任せるのが一番ですけどね。例えば、俺とか」
「!」
まるで外敵を威嚇する子犬のように、五十嵐がこちらを見て噛み付かんばかりの殺気を向けてくる。
「忠告ありがとう。そうだね、これからは自分で考えるようにするよ」
「……そうしてください。今回は、このくらいでどうですか」
事前に作成していた試算表を確認しながら金額を提示すると、最上は頷いてそれに応じた。新しく金額を反映させた書類を作成し、印刷をかける。
事務的な話は、これで全部片付いた。俺が最上を引き止めておける、最後のキーだった仕事の話が終われば、本当に、この人との関係は終わるのだろう。
途端に、様々な思い出が頭の中を駆け巡った。初めて最上に出会った、あの会社の廊下。高熱にうなされる俺を撫でてくれた手のひらの冷たさ。俺ばかりが気にして、最上の目には自分が映らない日々のもどかしさ。同じチームにやって来た最上に対して、これまでの執着が抑えきれず暴走していた時期のことまで。
やっと、腕の中に捕えたと思ったその人の、温もりと、視線と、好意と。その全部が終わったなんて信じられなくて、完成した書類を持つ手が震えてしまった。
最上だけが認めてくれた、完璧にあろうとする自分の仮面が剥がれ落ちたあの日の記憶が自分を襲って、振り向くことができない。行かないで、捨てないでと言って泣いて縋ることができたらどれだけいいだろう。そんな自分の姿で、最上を引き止めることができたならどれだけ良かったか。
でも分かっていた。そんなことをしたって、最上は自分を選ばない。何の迷いもなく、俺の手を振り払うことが分かっているから。だから、最後くらい、こんな情けない顔を見せたくはなかった。
落ち着け、大丈夫だと自分に言い聞かせる。虚勢を振り絞って、手の震えを収める。
振り向いた自分の顔は、多分、この状況で求められた役割そのもの。彼らの仲を引き裂こうとした、負け犬の悪役、五十嵐迅であったことだろう。
二人で生活した部屋から、最上が自分の痕跡を消していくのを黙って見守った。藤谷は俺から少し離れたところで、相変わらず威嚇するようにこちらを睨みつけていた。
「じゃあ、五十嵐さん。これまでありがとうございました」
あくまで事務的に、つい先日まで、ここで二人きりの生活を送っていたことを感じさせないような残酷な態度で、最上はそう告げた。二人で何度も食事をしたダイニングテーブルの上に、合鍵が置かれる。
「………」
かける言葉も見つからないまま、彼に近づいて手を伸ばす。頬に触れると、ピクリと体が震えて強張るように反応した。ほんの数日前までは、当たり前のように触れる権利があったはずの自分に、拒絶を示す彼が憎くて、狂おしいほど愛おしかった。
「! 遼馬さん……!」
ここへ来て、初めて藤谷が言葉を発した。少し離れて見守っていた彼が辿り着く前に、吸い寄せられるように顔を近づけて彼の唇へ触れようとする。
だが俺の唇が届く前に、最上の手がそれを遮った。嫌がるでも、目を逸らすでもなく、ただ静かに拒絶して、そうこうしている間に到着した藤谷が、思い切り俺と最上を引き剥がした。
「……っ、この!」
「行こう、晴人くん」
「でも!」
今にも掴みかからん勢いの藤谷を制して、最上が言う。もう最上の瞳に、俺の姿は少しも映ってはいなかった。じっと藤谷だけを見つめると、やがて諦めたらしい藤谷の腕を引いて、玄関へと向かっていった。
家を出る前の挨拶すらなく、最上は藤谷を連れて出て行った。バタンと、扉の閉まる音がして、しばらくして、廊下の壁にもたれると、そのままズルズルとその場に崩れ落ちた。
「……は、」
やっと虚勢が剥がれ落ちて、堪えていた涙が込み上げる。完膚なきまでに、とはきっと、こういうことだと思った。
最上が事業の清算に来ると連絡があって、これが最上に会う最後になるだろうとすぐに分かった。戻ることを期待したわけじゃない。ただ、その目に、態度に、少しでも自分に対する思いのかけらが残っていればいいのにと、そんな、ありもしない可能性に賭けていたのだ。
結果は散々だ。あの日、藤谷に向かって走り出す最上が、何の迷いもなく俺の手を振り払った時と同じ、屈辱と絶望を与えられたに他ならなかった。
どこから計画が狂ったのだろうか。美優が、藤谷のために最上に助けを求めたから? 一人になった最上に、俺より先に藤谷が接触したから? それとも、もしかして——最上を休職になるまで追い込んで、孤立させたところから?
もし俺が最初から、最上に対して妙な策略を張り巡らせずに、上司として、部下として……対等な、ビジネスパートナーとして接していたなら、違う未来があっただろうか。
考えても仕方ないような、もしもばかり頭に浮かんだ。自分が最も忌み嫌うような、非効率的な思考に自虐的な笑みがこぼれる。
それほどまでに欲した相手を手に入れられなかった、この絶望的なまでの孤独が、きっと、俺があの人に対して行った仕打ちの罰なんだろう。
◆
「晴人くん、その……そろそろ、寝る準備したいなー、なんて……」
「………」
五十嵐の家で事業の清算を行い、帰宅してからというもの、藤谷はずっと俺にしがみついて離れなかった。
食事を作る間もべったりで、食事を食べ終わってからもずっと腰に手を回し、肩口に顔を埋めるようにして、ソファの横に座ったまま離れない。諦めて、俺のほうから彼にもたれかかるように、体の力を抜いた。
「今日はありがとう。やっぱり、晴人くんについてきてもらえて良かった」
「………」
色々と、嫌な思いをさせてしまったと思う。それでも、事前の約束通り見守るだけに徹してくれた彼が愛おしくて、彼の頭をよしよしと撫でた。
「すみません、遼馬さん……なんか、自分でも上手く言えない……胸がモヤモヤして、不安で。遼馬さんのこと信じてるのに。今日のやりとり見てて、もうあいつと会うことはないって分かってるのに。なんか……」
辿々しく、苦しそうにそう告白すると、藤谷は小さくため息をついて、また俺にぎゅっとしがみついた。
極力、藤谷に嫌な思いをさせないように振る舞ったつもりだった。事務的な会話にとどめて、滞在時間も必要最低限になるようにした。
だが、それでも、酷なものを見せたと思う。例えば、そう。
「分かるよ……その、俺も」
「え……?」
「……キッチンに、見たことないエプロンがあって……そういうのに、すごく、モヤモヤするんだ。晴人くんのことを、信じてるのに。それでも」
俺の言葉に、藤谷はサッと顔を青ざめさせた。
「すぐ捨てます‼︎」
「違うよ、晴人くん、そうじゃなくて! 捨てちゃダメだよ、ちゃんと返そう、美優さんに」
あれだけ離れなかった藤谷が立ち上がって、すぐさま行動に移そうとするのを慌てて止めた。こんな流れになりそうで言えなかったが、最初の日にうどんを作るため、キッチンに入った時からずっと気になってはいたのだ。自分にそれを責める筋合いなどないと分かってはいたが、それでも、嫉妬してしまう気持ちは止められなかった。
俺に引き止められた藤谷は再びシュンと勢いを落として、俺にしがみつく体勢へ戻ってきた。
「ごめんなさい、遼馬さん……」
「いや、違うよ晴人くん、そうじゃなくて。その……同じような気持ちに、なってほしくなかったんだ。君に」
自分がそばにいなかった間に、誰かがそばにいた証拠を見ると、どうしても、誰かといた彼の姿を想像をしてしまうものだ。藤谷に、同じような思いをさせているかと思うと、申し訳なかった。
「だから、謝るなら俺の方だよ。ごめん、晴人くん。嫌な思いをさせて」
「遼馬さん……」
感極まったような声で、藤谷が名前を呼ぶ。僅かに顔を離すと、目を閉じてそっと再び俺に顔を近づけてきた。
柔らかい唇が触れるのを受け止める。藤谷が何度か、角度を変えてキスを繰り返すのを、幸せな気持ちで受け止めていたら、ふと、視界の端に静かに佇むクリスマスツリーが見えた。
「そうだった」
思い出して、立ち上がる。突然体を離された藤谷が名残惜しそうにこちらを見上げてくる。
「遼馬さん?」
「ごめん、晴人くん。ちょっと待ってて」
一度リビングを離れると、今日五十嵐の家から持ち帰って来た荷物のもとへ向かった。鞄の中に押し込んだ冬物のコート、そのポケットから、クリスマスツリーのオーナメントを取り出す。
それを持ってリビングへ戻ると、藤谷は俺の手にあるオーナメントを見て、驚いたように目を見開いた。
「遼馬さん、それ……」
「うん、ごめん……ここを出る時、晴人くんとの思い出にって、一個だけ、持って行ったんだ」
勝手に持ち出したことを謝って、手の中のオーナメントに視線を落とす。あの日のままの輝きを失わない、クリスマスプレゼントの形をした小さなオーナメントの中には、俺が持ち出した藤谷との思い出が、全部詰まっている。
同じオーナメントがたくさん飾られたままのツリーに近づいて、もみの木を模した枝に再び飾りつける。あるべき場所に戻ったオーナメントを見て、やっと、自分がこの場所に戻って来たことを実感できた気がした。
「遼馬さん」
いつの間にかそばに来ていた藤谷が、背後から俺を抱き締める。
「晴人くん」
首だけ動かして振り向くと、すぐに唇を塞がれた。幸せなその感触に目を閉じて、考える。
これから、自分を待ち受けているのはどんな未来だろうか。幸せなことばかりではないと思う。五十嵐の言う通り、事業運営のノウハウがない自分一人で今の事業を成り立たせるのは、きっと簡単なことではない。
藤谷の隣に立って恥ずかしくない人間になれるまで、少なくとも、自分にそれほどの自信が持てるようになるまでは、まだまだ長い時間が必要だと思う。あまりにまっすぐで、自分には眩しすぎるこの青年の隣に立つにふさわしい、そんな人間になれる日が、本当に来るのかも分からない。
不安は尽きないけれど、俺はもう、一人じゃない。これからは一人で悩むのではなく、一緒に悩んで、乗り越えていきたい。あの暗くて、荒れた孤独な部屋から、俺を救い上げてくれた藤谷と。
小さなオーナメントには収まらないほどの、数えきれないほどの思い出を、君と。
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