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第1話
まさかこんな所で出会うとは思っていなかった。
「壮太朗・・・」
垂れて大きな目を更に大きくして、目の前の男は呟いた。
白いバスローブに身を包み、ベッドに浅く腰を掛けて、垂れ目の男が俺を見上げる。
「マジで尚?」
店先のパネルを見て、似ている子を選んだのは確かだけど、まさか本人だなんて。
「何でこんな所にっ」
尚が悲痛な顔で俺に訊いた。
いや、それ俺の台詞だから。
恋い焦がれて苦しくて、何をしていても尚の事が頭から離れなくて。
その上厄介な事に、健康な男として欲求も付いてくるわけで・・・。
悶々とする日々を、何時もは自力で何とかしているんだけれど、昨日はバイトの給料日。
一月に一度だけ贅沢が出来る日。自力ではなく他人の手(文字通り)を借りて、欲求を満たせる日。
「壮太朗がこんな所に来るなんて・・・信じらんない」
放心状態の尚がボソッと呟く。
だーかーらー、それは俺の台詞だって!!
「はぁっ」
俺は盛大に溜息を吐くと、尚の横に乱暴に腰を下ろした。
ビクッと肩を震わせて、不安そうに俺を見た尚は、何か言おうと口を開きかけて止めると、下唇を噛んだ。
何か言いたい事があるのにそれを口にできない時、尚は何時も下唇を噛んで飲み込む。何時もの癖。
多分本人は気付いていない。
「尚、そんなに噛んだら痛いだろ?」
親指でそっと下唇に触れる。
「言いたい事があんなら言えよ。ちゃんと聞くから」
そう、ちゃんと聞くよ。
もう欲なんてどっか行っちゃったし。
俺は尚と話をするつもりだった。
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