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15 【3】 完結
「すっごい……気持ち良かった」
それは噛まれたことへの感想であり、その後盛り上がりまくったことへの感想でもある。
「ちょっと。人が感動してるのに俗っぽくしないでよ」
隣の英一が苦笑する。もちろん、俺の照れ隠しだと彼はわかっている。
うつ伏せのままリラックスしていると、うなじを撫でられた。宝物に触れるような手付きで、かえってくすぐったい。
「アルファに生まれて良かったって、初めて思った」
「そんな大袈裟な」
「本当だよ。……痛くない?」
「ぜんぜん」
オメガはアルファに噛まれると歯型がつくというが、強く噛まれていないから痕が残るとはとても思えない。
「触ってもわからないんですけど、どうなってます?」
「歯型の形にほんのり赤くなってる。アレルギー反応みたいにも見えるけど」
「かゆくもないですよ。こういうものなんでしょう」
振り返らなくても、まじまじと観察されているのがわかる。
「若いときに歯列矯正しておいてよかったな」
「綺麗な痕だってことだけ伝わってきました」
仰向けに寝返りを打つ。横を向けば英一と目が合った。
「……世代も違うし、私はキミの《運命のつがい》ではないかもしれないけれど、責任はとるからね」
指輪を嵌めたときと同じようなことを言われる。
不安をやわらげようとしているのかもしれないが、お門違いだ。俺は英一と共に生きることを心配していない。
それどころか、だ。
「俺は花より団子、運命より選択です。あなたが教えてくれたんですよ」
「違うよ、キミが教えてくれたんだ」
「そうでしたっけ……?」
覚えがないけれど、英一は確信があるらしい。じゃあ俺が英一に教えて、さらに英一が俺に教えて? うん? こんがらがってきた。
「とにかく。義務感なんて抱えないでくださいね」
窓の外から鳥の声が聞こえる。そういえばまだ昼なんだった。
昼飯も食べていないことを思い出し、冷蔵庫の中のことを考える。──腹がぐぅぅと鳴った。
「出前でもとる?」
「や、作りますよ。やってみたい料理もあるので」
「掃除もした後でしょう。無理しないでね」
「やりたいことをひとつずつやってるだけです。嫌々してるわけじゃないですから」
ベッドから起き上がって伸びをする。
なんだか噛まれる前より元気だ。いい気分だった。
「家事とかなんでもないことでも、日常のいろんなことが楽しみで……。いますごく、幸せなんです。英一さんもそうならいいなって思います」
見やると、彼は嬉しそうに微笑んだ。
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