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第5話 ようこそ月城家へ。
緋美くんが黒く大きな日傘を広げると、月城くんは当たり前のようにその中へ入った。
俺は二人の後ろを追う。
住宅街を抜け、人気のない森へ…。
しばらく歩くと、昼間だというのに薄暗い木々の奥から、古びた洋館が姿を現した。
——えっ、まさか……
「あれだよ、僕たちの家!」
こんなの映画でしか見たことないぞ…あの映画のタイトル、何だったっけ…
月城くんが洋館の扉をノックすると、中から綺麗な女の人が現れた。
「お帰りなさい、しーちゃん!ひーくん!」
「ただいま、お母様! 今日はね、お友達を連れてきたよ。」
「あ…えっと、転校してきた、日向野です。突然お邪魔してすみません。」
「ひなたの…!? まあ、ホホホ……明るくて素敵なお名前。。。」
「さあ、どうぞ。ゆっくりしていってちょうだいね。」
お母さんまで!
なんでみんな俺の名前を聞くだけで、そんなに驚くんだ??
変わった家族だな……。
中は外観通り、アンティークな骨董品や古い肖像画が並び、大きなテーブルには真っ赤な薔薇が活けられていた。
なんだろうこの既視感…ハリーポッター?いやもっと古い洋画で観たような…実際にあるんだなこんな家……
「こーくん、ここまで来てくれてありがとうね。喉乾いたでしょ。はい牛乳!」
「あ、ありがとう、いただきます。」
「……月城くんは、牛乳しか飲めないんだよね。それって本当なの?それで、大丈夫なの?」
「うん…その偏食の話を、君に聞いてもらいたくて、ここに来てもらったんだ。」
「……引かずに聞いてね?」
「もちろん、大丈夫だよ。」
「良かった。じゃあまず、こーくん。」
「砂食べたことある?」
「す、砂?!無い…けど、突風とかで、不可抗力で口に入ったことは、ある…かな…?」
「砂って、ザラザラして、不味いでしょ。それと同じなんだ。僕にとって食べ物は、砂と同じ。美味しそうだとも思えないし、口に入れてもみ〜んな、まっずいただの砂。」
「へえ…、アレルギーとかじゃなく、不味いんだね。何でなのかなぁ?」
「遺伝だと思う。お父様もそうだったらしくて。物心つく前に亡くなっちゃったから、詳しいことは聞けていないんだけど。」
「ええ…そうなんだ…。お父さんと同じ体質なんだね。お父さんも、牛乳しか飲んでなかったのかな?
「でもそれじゃ、栄養とれないよね?牛乳以外の栄養ドリンクとか飲んでるの?」
「うん、そこなんだけど…。
「…栄養はね…。やっぱり必要だから……。」
「……血を、飲んでる。」
「えっ!!!」
「っっって、引いたわけじゃないよ、ちょっと驚いちゃって…。」
「何の血??マムシとか?スッポン??」
「えっと、お………」
「…弟…。」
「はっ?!おとっ?えっ!???」
俺は月城くんと緋美くんの顔を何度も見比べた。
緋美くんは「どうだ」と言わんばかりのしたり顔で俺を見下ろしている。
一方の月城くんは、両手の人差し指の先をちょんちょんと合わせながら、なんだか照れていた。
「えっ、てか…飲むって…どうやって……」
まさかと思って恐る恐る、緋美くんの首筋をよく見ると、
2枚の絆創膏が…!
俺は固まってしまった。
「あ〜んやっぱり、引いちゃった?ここまで偏食な人、なかなかいないよね。弟の血が主食なんて、恥ずかしいな…。」
月城くんは色白の肌を耳まで真っ赤にし、両手で顔を隠して俯いた。
「いやいや、引いてはいないよ!!ちょ、ちょっとびっくりしただけ。だって、それって…あの……。」
「…き…きゅっ…吸血鬼じゃないの??」
真っ青な顔で俺がそう言うと、
月城くんと緋美くんは一緒きょとんと顔を見合わせて、笑った。
「あははははは!」
「こーくん、吸血鬼信じてるの?あれはフィクションだよ!吸血鬼なんて実在しないって!」
「先輩、冗談キツいっす!小学生じゃあるまいし…!」
「僕は…!ふふっ!吸血鬼ではないよ。ただの平凡な高校生だよ。」
笑いを堪えながら月城くんはそう断言した。
いやいや、そこまでそろってて平凡な高校生なワケある?
吸血鬼だった方が、今までの違和感全部説明つくんだけど………?
「まあこんな洋館に住んでて、日光に弱くて、血しか飲めなかったら、吸血鬼(笑)だと思われても仕方ないよなぁ〜。」
「ふふっ、そうだね。まさかそんな発想がでるとは。こーくんって、面白い人だね!」
「…そして…」
「そして??」
「……とっても美味しそうな人……!」
光「は!?」
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