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第17話 2人の帰り道。

そうは思っていても、まだ吸われる勇気はないし、 月城くんも元気になってきたので、家に帰ることにした。 月「こーくん、今日はありがとうね。僕が送って行くよ。もう眠たくないし!」 緋「あ!じゃあ俺も…!」 月「緋美は僕のことおんぶして帰って疲れたでしょ。洗ってあげられなくて悪いけど、先にお風呂入って(血を吸われるの)待ってて?」 うわっ、『先にシャワー浴びてこいよ』ってか! セリフの破壊力よ…… 月城くんに洗われるのを回避出来た上、 この後ラブラブ吸血タイムが待っているとわかった緋美は、ホッとしたような顔で大人しく俺たちを見送った。 まだ日が暮れ始めたばかりだったけれど、帰り道の森はもう薄暗かった。 光「1人で帰れるから、送ってくれなくてよかったのに。月し…静夢が、帰り1人になっちゃう方が心配だよ。」 月「大丈夫だよ!僕、このくらいの時間からの方が元気なんだ。夜目も効くし、心配ないよ!」 月「…それに…」 月「2人になりたかったし…」 光「エッ?」 月「こーくん、」 光「何??」 月「……おんぶして。」 光「はぁ?!」 光「眠くなったの??」 月「…ううん。」 光「あ!まさか、また緋美直伝の血が美味しくなる儀式的な??」 月「いや、儀式は関係なくて…。」 光「じゃあ、何で?」 月「う〜ん…わかんない。あはっ。」 月「……ダメ?」 そう言うと、月城くんは立ち止まった。 振り返ると、潤んだ大きな瞳で、俺をじっと見つめている。 無理やり血を吸おうとしているわけでも無さそうだし、吸血に関しての儀式でもないのなら… おんぶが気に入ったのかな? 寝てただけなのに? よくわからない人だな…… でも俺だって、月城くんをおんぶしてる緋美を、実は羨ましいな…って、どこかで感じていたんだ。 重い荷物と傘を持たされていたから── だけじゃなくて。 何なんだろうな……。 理由なんて、わかんない時もあるよね。 頭で考えるのはよそう。 『そうしたい』と心が動いたなら、 それが全てだ。 光「ダメじゃないよ、ちょっと待ってね。」 俺は背中のリュックを前に掛け直し、空いた背中を見せるよう向き直り、右膝を立てて屈んだ。 月「やったぁ!こーくん、ありがとう!」 言うや否や、月城くんは俺の背中に飛び乗った。 表情こそわからなかったが、その明るい声で、喜んでいる様子が伝わった。 良かった、嬉しそうだな。 俺は真綿のような月城くんをおんぶして、森を抜け、駅までの道を歩き続けた。 重さは殆ど感じないけれど、 背中に月城くんの温もりと、首元にほのかな息づかいを感じる。 月城くん、満足してるのかな? おんぶして〜なんて我儘言ってきた割には、何も喋んないじゃん。 光「静夢って、軽いね。体重どのくらいなの?」 月「やだっ、乙女に体重聞くなんて!」 光「ははっ、それ自虐?」 光「静夢お嬢さま、俺の乗り心地はいかがでしょうか?」 月「悪くなくて…よ……。」 月「……ハァッ……!」 光「どうしたの!?」 月「ヤバい、こーくんの首筋が近くて……」 月「血も出てないのに、良い匂いする……噛みたくなっちゃってる。ふざけきれない…」 光「えええ!ヤバいヤバい!」 光「下ろしていい??」 月「いやっダメっ!」 月「我慢するから……」 月「噛まないって約束するから、ちょっとだけ、首舐めてもいい?」 光「はっ??なめっ?!」 承諾もしていないのに、月城くんは俺の首筋を、 ペロッ 軽くひと舐めした。 光「あっ……!」 俺のピュアッピュア拗らせメーターの針が、ギュイン!と一気に右に振れた。 これは俺の方がヤバい……!! それからも、俺の首筋を何度か舐めたり、唇で挟んだりしてきたが、俺は頑張って無言で耐えていた。 でも、俺が何も言わないのをいいことに、 チュッ♡ 光「だぁぁぁぁああああ!!」 光「ッツ…!タタタタタ…!」 光「ストップストップ!!」 月「こーくん!どうしたの?痛かった??ごめん!!大丈夫??」 光「痛いのは違う、こっちの話…!」 光「キスしていいなんて言ってない!!」 月「ごめーん、ついつい!」 光「メーターの針、ぶっ飛んじゃうから!首絞めることになるから!」 月「こーくん??」 光「えっとつまりその、静夢のためにならない」 光「……から………」 そう言って振り返ってしまったのは── 失敗だったのか、成功だったのか。 唇が重なりそうなほどの至近距離で、 顔を真っ赤にした月城くんと目が合ってしまって…… えっ、血を吸う側が、こんなに照れる作法って、あったっけ?? 驚いた顔で見ていると、月城くんは目を逸らし、 ゆっくり頭を俺の背中に乗せた。 月「なんか、今日の僕、おかしいね。」 月「もう、何もしないから、   お願い、このまま連れてって……」 光「……うん。」 それから駅までは、お互い言葉を発することはなかった。 駅に着いて、背中から降りた月城くんは、 俺が見えなくなるまで、手を振り見送ってくれたけれど、 視線は斜め下に落としたままだった。 いつも変だけど、今日はなんか、変の方向性が違ったような気がするな…。 空にはもう、青白い月が浮かんでいた。

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