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第18話 ハサミ違い。

「こーくん、おはよう!」 ──翌日、教室に入ると、月城くんがいつもの笑顔で声をかけてきた。 光「えっ!おはよう!珍しいね、静夢が朝から起きてるなんて!」 月「ふふっ!僕ね、日中に起きて夜寝るように、頑張ろうと思ってて。」 月「体質だからって諦めずに、やれるだけやってみようと思うんだ!だから昨日は、帰ってからずっとベッドで寝てたの。」 月「まあ、殆ど眠れなかったけど……段々と慣れてくるんじゃないかなって。」 光「大丈夫なの??靴履きながら寝ちゃうくらいなのに。体質なんだから、そんな急に無理しなくても…。」 月「急に無理する必要があるの!」 月城くんは、一枚の紙をヒラヒラさせて、俺に見せてきた。 その紙には、『林間学校について』と書かれていた。 月「今まで日中の野外活動は全部休んできたけど、今回は、いきます!」 月城くんは、異論は認めない!と言わんばかりに、張り切った口調で宣言した。 「えええ、外の体育も全部休んでるのに、林間学校なんてアウトドアメインの活動、出来るの?」 月「出来るかじゃくて、やるんです!」 月「こーくんと山歩いて、こーくんとお風呂に入って、こーくんと同じ布団で寝る!」 クラスの空気がざわめいた。 光「ちょちょちょ…!声大きいよ…。また誤解されちゃうから…。」 月「たのしみだね!僕、がんばるから!」 月城くんに野外活動なんて出来る気がしないけれど、あれだけ張り切ってるんだから、本当に参加するつもりなんだろう。 確かに血を飲むチャンスは多そうだな…ウォークラリーで、「疲れたー、おんぶしてー、血飲ませてー」って言ってる月城くんの姿が目に浮かぶもんな…… ただ昨日の雰囲気と違って、血を飲むことに真っ直ぐな月城くんに戻っていて、俺はホッとしたような、少し残念な気持ちにもなっていた。 昨日は危うく勘違いしそうだったからな… それにしても、日光に弱いだけじゃなく、食料(緋美)もいないし、牛乳だけじゃ体力持たないだろうし、本当に大丈夫なのかなぁ… 月城くんが滅茶苦茶弱ったら……、 俺は血をあげられるのかな……。 もしそれでも無理だと拒否したら、月城くんは無理やり俺の血を吸うかな? それとも、他に血を吸わせてくれる童貞を探すかも知れない。 月城くんは美人だし、事情を話せば血を飲ませてくれる男の1人や2人くらい、いるだろう。 その男の血が、俺のより美味しかったら……? <…光の想像…> 「日向野くん、君より美味しい子を見つけたから、もう君にしつこく血を飲ませてなんて言わないよ。今までごめんね。じゃっ!」 ……ズキッ……… 心臓が、針で突かれたように痛んだ。 …そんなふうに、月城くんが俺の知らない他の子の血を気に入ってしまったら、俺は、どうなるんだろう……。 血を介さない俺らの関係って………。 隣を見ると、月城くんは微笑みながら、林間学校のチラシを眺めている。 机の上には、カラフルな洗濯バサミが大量に置かれていた。 うそっ!?眠くなったらあれでどっかつまむつもり?! 俺の視線に気付いた月城くんは、ニコッと笑いかけ、洗濯バサミを「カチカチッ!」っとおどけたように鳴らした。 ちょっと…!肌弱いのに無理だって……! 授業中、何度か隣から「ててっ!」と聞こえてきた。恐る恐る目を向けると、月城くんの指先は、洗濯バサミだらけになっていた。 シザーハンズかよ………。

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