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第30話 狙われた純潔。
「あ、この辺は日本語で書かれた文献もあるよ。」
「これは何だろう、手書きみたいだけど…」
俺が埃を手で払うと、そこには、
『月城家 血統及び食餌録』
と書かれていた。
「あ!これ…それっぽい!!!」
「血統と…しょくじ?えさ?」
「食事と同じだけど、栄養補給的な意味の強い字らしい。グーグル調べ。」
「へえ〜。」
俺はひとつ息を呑み、
最初のページを読み上げた。
『我らが祖は、遠くルーマニアの地より海を渡り、この国へ移り住んだ。』
『我らは夜を好み、陽光を避け、血を糧として暮してきた。』
「わあ!僕のルーツだね!」
「そうだね、読み進めてみよう。」
『土地に馴染み、名を変え、暮らしを変えても、
夜に目覚め、血を求めるその特異な性質だけは、途絶えることなく受け継がれている。』
「う〜ん、静夢の偏食はやっぱり、遺伝なんだね。
「あ、食餌のマナー的なことも書いてる。」
『血を得る際には供血者の同意を得ること。
傷口は清潔に保ち、必要以上の吸血を行わぬこと。』
「あれえ、食材として体を丁寧に洗いましょうとか書いてないなぁ〜?緋美くん。」
「いやいやいや!清潔に保ちって書いてます!!なんか、他の文献には、もっと詳しく、洗い方とか!止血の方法とか!書いてたんす!間違いないっす!」
「そうなの?まあいいや、とりあえず、続きを読もう。」
『血の味は供血者ごとに異なる。
年齢や体質、健康状態だけでなく、
その者が抱く感情によっても、大きく変化する。』
『中でも、吸血者へ強き『情欲の念』を抱く者の血は、風味を著しく増す。』
「情欲の念?」
静夢が首を傾げると、
「ちょっと……先輩いいすか」
「なに?」
「ちょっと、廊下に…」
緋美は俺を廊下に連れ出した。
───────・・・
「先輩!やばいっす!『情欲』って…。」
「下心っすよ!!」
「このまま読み解いていったら、俺たちの下心、バレちゃいます!!!」
「はぁ?!俺に下心なんて…!」
「無いですか?」
ないよ!!と言いたかったけど、
ある………
「つーかあんな可愛い子に、邪念ゼロで接すること出来る男がいるわけないだろ!!」
「しーちゃんが気付く前に、古文書読み解くのは中止にしましょう。」
「……それと俺、ずっと考えてたんすけど…」
「なに?」
「しーちゃんのキスの相手、先輩っすよね?」
「えっ!!いやっ…」
「少なくとも俺の監視下で、しーちゃんが誰かとキスするような隙は与えてません。」
「合宿中しかあり得ない。だとしたら…。」
「だとしても!向こうからしてきたんだよ?!俺は奪われた側だからね?!」
「…だったら俺も、奪います…。」
「えっ!静夢に無理矢理キスすんの?!」
「違います!」
「先輩の……童貞……。」
「はぁっ?!」
「童貞じゃなくなれば、確実に味は落ちるはず……そしたら俺がNo. 1に返り咲く!!」
「待て待て!お前はどうなるの??お前も血が不味くなるんじゃないの??」
「俺は処女捨てるだけなんで!童貞のままなんで!」
「えっ、そーゆーもんかな??」
「兄弟だし、俺にも情欲持てるでしょ。」
「俺のお尻結構、綺麗なんで…」
「見ますか……」
緋美はカチャカチャとベルトを外しはじめた。
「わーーー!!!馬鹿馬鹿!見たくないって!!」
「いくらなんでも、捨身過ぎるだろ!」
もちろん応える気は無いし、本気の顔で迫られて怖さもあったけれど、
緋美のあまりに突飛な行動に、俺はむしろ笑いが込み上げてきた。
「見ないって!っはは!」
「見たら気に入りますって、しーちゃんが磨いてくれたお尻ですし!」
「もう、やめて!腹が痛い!」
「……ねえ…何してるの?」
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