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第54話 生意気な弟たち。
「あっ、緋美!寝てたの? 目がすごい腫れてるけど……」
真っ白なフリルエプロンを纏った静夢が、腫れぼったい緋美の目元を覗き込む。
緋「いや、夢だったらいいなとは思ってたけど、現実見せられてたよ…。」
光「話してみたらさ、やっぱり寂しかったみたいで。ちょっと泣いちゃったんだよ。ね?
でも、もう大丈夫。緋美もちゃんと、弟としての健全な距離感を理解してくれたから。」
月「そう、良かった!さすがこーくん。お兄ちゃんだね〜。」
──とぷ、とぷ、とぷ……。
静夢は、フルーツとトマトの特製スムージーをグラスいっぱいに注いでくれた。
緋「…先輩、兄弟いるんすか?」
光「うん、弟と妹がいるよ。」
緋「弟いるんすか!」
光「なんでお前ら弟だけに反応すんの?
妹もいるよ。弟が小6、妹が小4。」
緋「ふ〜んまだ子どもっすね。」
月「今度会いにいくんだ♪」
緋「えっ!」
月「僕がこーくんの家族のこと、なんにも知らないの、おかしいでしょ。」
月「こーくんの兄弟、絶対可愛いよねえ〜!楽しみ!!」
緋「お、俺もいく!!」
光「は?なんでだよ!」
緋「しーちゃんが弟に噛みついたらどうするんすか!!」
月「そんなことしないってば!」
緋「先輩の弟っすよ?!」
光「だからなによ」
緋「小6って、そろそろ思春期じゃないすか。」
緋「しーちゃんのこと気に入って、
『僕の血飲んで♡』って言ってきたら?
しーちゃん、拒否できるの?」
月「……できるに決まってるでしょ!」
ん?今、一瞬考えたよね?
確かに美味しそうな血の男の子が誘ってきたら、静夢は本当に耐えられるんだろうか……。
……弁当、持ってきてもらった方が安心か?
光「……いいよ、緋美。来ても。」
緋「えっ!やったぁ! 先輩さすがっす!」
緋美がパチパチと手を叩いて喜んだ。
月「え〜、信用してない?」
光「……そういうわけじゃないけど、お互いの家族が仲良くなるのは、いいことなんじゃないかな。」
月「あっ、両家の顔合わせ的な?」
静夢は頬をピンクに染め、両手の人差し指をちょんちょんと合わせた。
光「いやいや、そんな大袈裟な話じゃないけど、うちの家族、賑やかなの好きだし、弟たちも喜ぶと思う。」
緋「じゃあ、来週は日向野家にお泊まりっすね!」
光「泊まりなの?!」
緋「はい。日が暮れてから行った方がいいですし。」
光「今まで浮いた話なんて一つもなかったのに、転校して早々、彼氏とその弟が泊まりに来るなんて……親、びっくりするだろうな……」
光「まあでも、自慢の恋人だし! いいよ。二人でおいで。」
月「わーい! こーくんちにお泊まり♡ 楽しみすぎる〜」
光「親に話したら、喜んでご馳走作りそうだなぁ。血をあげてることは、さすがにまだ言えないし……アレルギー持ちだから、お弁当持参で来るって言っておくよ。」
緋「こんなデカい弁当持参で来るなんて、夢にも思わないでしょうね。ははっ!」
光「ほんとだよ。体も声もデカいくせに、泣き虫な弁当とはなぁ。」
緋「いやそれ、ただの悪口っすよね?」
光「事実でしょ。お前といたら難聴になりそう。」
緋「俺は感受性豊かな人間なんで!エロいことしか考えてない先輩と違うんで!」
光「どの口が」
月「もう!!二人とも仲良すぎ!」
月「二人が罵り合ってると、すごく親密そうに見えて……。何かあったんじゃないかって、モヤモヤしちゃう……」
月「……ダメだからね?」
静夢は持っていたお盆を胸元に抱きしめ、上目遣いで俺の顔を覗き込んだ。
嫉妬してる! 可愛い!!
静夢の中で「何か」の解像度が上がってるから、余計に心配なんだろうな。
光「何もないよ。うちの弟ともこんな感じだし。生意気だから、つい揶揄っちゃうだけ。」
光「会えばわかるよ。」
月「そっか! 楽しみにしてる!」
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