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第54話 生意気な弟たち。
「あっ、緋美!寝てたの? 目がすごい腫れてるけど……」
真っ白なフリルエプロンを纏った静夢が、腫れぼったい緋美の目元を覗き込む。
「いや、夢だったらいいなとは思ってたけど、現実見せられてたよ…。」
「話してみたらさ、やっぱり寂しかったみたいで。ちょっと泣いちゃったんだよ。ね?
でも、もう大丈夫。緋美もちゃんと、弟としての健全な距離感を理解してくれたから。」
「そう、良かった!さすがこーくん。お兄ちゃんだね〜。」
──とぷ、とぷ、とぷ……。
静夢は、フルーツとトマトの特製スムージーをグラスいっぱいに注いでくれた。
「…先輩、兄弟いるんすか?」
「うん、弟と妹がいるよ。」
「弟いるんすか!」
「なんでお前ら弟だけに反応すんの?妹もいるよ。弟が小6、妹が小4。」
「ふ〜んまだ子どもっすね。」
「今度会いにいくんだ♪」
「えっ!」
「僕がこーくんの家族のこと、なんにも知らないの、おかしいでしょ。」
「こーくんの兄弟、絶対可愛いよねえ〜!楽しみ!!」
「お、俺もいく!!」
「は?なんでだよ!」
「しーちゃんが弟に噛みついたらどうするんすか!!」
「緋美ぃ、そんなことしないってば!」
「先輩の弟っすよ?!」
「だからなんだよ。」
「小6って、そろそろ思春期じゃないすか。」
「しーちゃんのこと気に入って、『僕の血飲んで♡』って言ってきたら?しーちゃん、拒否できるの?」
「………できるに決まってるでしょ!」
ん?今、一瞬考えたよね?
確かに美味しそうな血の男の子が誘ってきたら、静夢は本当に耐えられるんだろうか……。
……弁当、持ってきてもらった方が安心か?
「……いいよ、緋美。来ても。」
「えっ!やったぁ! 先輩さすがっす!」
緋美がパチパチと手を叩いて喜んだ。
「え〜、信用してない?」
「……そういうわけじゃないけど、お互いの家族が仲良くなるのは、いいことなんじゃないかな。」
「あっ、両家の顔合わせ的な?」
静夢は頬をピンクに染め、両手の人差し指をちょんちょんと合わせている。
「いやいや、そんな大袈裟な話じゃないけど、うちの家族、賑やかなの好きだし、弟たちも喜ぶと思う。」
「じゃあ、来週は日向野家にお泊まりっすね!」
「泊まりなの?!」
「はい。日が暮れてから行った方がいいですし。」
「今まで浮いた話なんて一つもなかったのに、転校して早々、彼氏とその弟が泊まりに来るなんて……親、びっくりするだろうな……」
「まあでも、自慢の恋人だし!いいよ。二人でおいで。」
「わーい! こーくんちにお泊まり♡ 楽しみすぎる〜」
「親に話したら、喜んでご馳走作りそうだなぁ。血をあげてることは、さすがにまだ言えないし……アレルギー持ちだから、お弁当持参で来るって言っておくよ。」
「こんなデカい弁当持参で来るなんて、夢にも思わないでしょうね。ははっ!」
「ほんとだよ。体も声もデカいくせに、泣き虫な弁当とはなぁ。」
「いやそれ、ただの悪口っすよね?」
「事実でしょ。お前といたら難聴になりそう。」
「俺は感受性豊かな人間なんで!エロいことしか考えてない先輩と違うんで!」
「どの口が」
「もう!!二人とも仲良すぎ!」
「二人が罵り合ってると、すごく親密そうに見えて……。何かあったんじゃないかって、モヤモヤしちゃう……」
「……ダメだからね?」
静夢は持っていたお盆を胸元に抱きしめ、上目遣いで俺の顔を見つめた。
嫉妬してる! 可愛い!!
静夢の中で「何か」の解像度が上がってるから、余計に心配なんだろうな。
「何もないよ。うちの弟ともこんな感じだし。生意気だから、つい揶揄っちゃうだけ。」
「会えばわかるよ。」
「そっか! 楽しみにしてる!」
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