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第55話 ようこそ日向野家へ。
───次の日曜日。
日が暮れる頃、俺は静夢と緋美を迎えに、最寄駅まで歩いた。
とりあえず両親には、『友達が来る』としか話してない。
「転校早々、泊まり合えるような友達ができるなんて…!」と、両親はとても喜んでいた。
恋人って知ったら、ビックリするかな…。
恥ずかしいな……どのタイミングで言えばいいのかな……。
そんなことを考えているうちに、駅に到着した。
そろそろ二人の乗った電車が着く頃だ。
程なくして、静夢と緋美が改札から出てきた……
……んだけど、
静夢は、ふりふりの襟がついたシャツにダブルボタンのベスト。その上から、襟の大きな長い上着まで羽織っていて………俺は一瞬、言葉を失った。
光「……えっ、静夢!貴族みたいじゃん!」
月「御両親に初めてお目にかかるワケだし、正装がいいかなって!」
これ正装なの?なんの正装??
Tシャツにスウェット姿の緋美との差が凄い…!
光「カジュアルで良かったのに、でもオシャレしてきてくれてありがとう。じゃあ、行こっか。」
最寄駅から家までは、歩いて10分もかからない。
なのに、ハロウィン先取り貴族と、大柄な寝巻き男と、地味シャツの俺が並んで住宅街を歩いていると思うと、物凄く家が遠く感じた。
家に着いて、二人を見た両親も、やっぱり一瞬目を丸くして言葉を失った。
母「…いらっしゃい!静夢くんと、緋美くんね。自分の家だと思って、ゆっくりして行ってね。」
父「ど、どうぞどうぞ、狭いところですが…。」
月「お父さま!お母さま!初めまして!月城静夢です。こーくんとお付き合いさせてもらってます!どうぞよろしくお願いします!」
うわっ、普通に言った!!
母「えっ!お友達付き合いじゃなくて??」
月「はいっ!お友達でもありますが、恋人です!」
父・母「ええ〜!」
母「光が恋人を連れてくるなんて…初めてよ!ビックリだわ〜」
父「そうか〜、光。お前も隅に置けないなぁ〜」
いきなり知られてしまって、恥ずかしさで顔から火が出そうになったけれど、意外と両親がすんなりと受け止めてくれたので、少しホッとした。
月「これ、お口に合うかどうかわかりませんが…」
静夢は手作りのマフィンを持ってきてくれていた。
これほど本気の「お口に合うかわからない」というセリフを、俺は今まで聞いたことがないなと思った。
母「まあ、ありがとう!キレイに出来てるわね〜!お菓子はよく作るの?」
月「はい、自分はあの…アレルギーが多くて、食べられる物が殆ど無いんですけど、作るのは大好きで!よく作ります!」
母「そうなの、アレルギー、大変よね…。」
月「あ、でももう直ぐ治るので!治す方法見つかったので!」
月「ねっ、こーくん♡」
あああああ…治す方法考えちゃうからヤメテ…
母「緋美くんも仲良くしてくれてありがとうね。賑やかで嬉しいわ〜」
緋「仲良くな…、いえ、仲良しっす。光先輩はおれを、弟のように可愛がってくれて…。」
緋「あの、弟さんは?」
あれっ?こいつの方が弟襲おうとしてない?
静夢を抱けないからって、
弟狙ってそうで怖いんだけど…
ドタドタ……!
弟「こーにぃ、お友達来たの??」
妹「わあ、ハロウィンしてる!」
月「ハロウィン?どこ?」
妹「ねえあっちでハロウィンごっこしよ!」
静夢は妹に腕を引っ張られ、連れて行かれてしまった。
弟「お兄ちゃん、遊ぼ!」
緋「お兄ちゃん?俺、弟だよ?」
弟「どっちでもいいよ!トランプしようぜ!」
緋「俺、手加減するタイプじゃないけど、いいの?」
弟「いいよ!俺が勝つから!」
緋美も弟に連れられて行ってしまった。
良かった、すぐに家族に馴染んでくれて。
こうやって、お互いの家族が仲良くなっていくのは嬉しいな。
母「良かったわね〜あんな可愛い恋人ができて。服装にビックリしちゃったけど、とっても素直な良い子だってわかるわ。大切にしなさいよ。」
光「…うん……。」
親とこういう話をするのは、本当に生まれて初めてだった。
気恥ずかしいけれど、どこか誇らしくもある。
うまく言葉にはできない、くすぐったいような温かさが、胸の奥にじんわりと広がっていった。
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