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第56話 光の将来は。
「見てー!しーちゃん可愛くなったよ〜!」
妹の風(ふう)に、静夢はハロウィンコスチュームのメイド服を着せられていた。
うそっ!可愛いが過ぎる……!!
写真撮りたい!ありがとう妹よ…!!!
「静夢、四年生のコスチューム、入ったの?」
「ううっ……キツキツだけど入っちゃった…。
でも丈が、さすがに……。」
あっ!本当だ!パンツ見えそう!
静夢は恥ずかしそうに、スカートの裾を引っ張ってどうにか丈を伸ばそうとしているけれど、安価な化学繊維で作られたコスチュームに伸縮性なんてなく、前を下げれば後ろが上がり、後ろを下げれば今度は前が上がるだけだった。
何これ?!どう思えばいいやつ??
今ラッキーと罪悪感のハイブリッドなんだけど!?
てか、中身は普通にボクサーパンツでしょ??
俺なんてパンツ一丁でリビングで涼んでたりするのに….。
必死に隠されると、同じものでもこんなに見え方が変わるのか。
勉強になるな……。
ところで緋美は大丈夫かな?
トランプでムキになって、弟を泣かせてないかな?
気になって弟の陽(よう)の部屋の方に行くと、
「わぁ〜〜!なんで勝てないんだ!!ッくしょ!陽!もう一回!!」
「ははは!ひみぃ、よわっ!」
トランプで陽に負かされ続け、再戦を申し出ている緋美のでかい声が廊下にまで響いていた。
…ひみぃ?緋美のことか!ぷっ、呼び捨てされてる!
弟って負けず嫌いだから、負けると『次こそは!』ってすぐムキになるんだよね。
適当なところで負けてあげないと、エンドレスだ。
緋美は小6より精神年齢低そうだから、お互い折れないなこれは…。
リビングに戻ると、静夢はメイド服を着たまま、夕飯の準備を手伝っていた。
わお…!本物のメイドさんが俺の家に……!
「食べられないのに手伝ってもらって、なんだか申し訳ないわねえ、遊んでていいのよ?静夢くん。」
「いえ、作るのは好きなので!お手伝いさせてください♡」
「わたしも手伝うよ〜!しーちゃん一緒にサラダ作ろう!」
「いいよ、じゃあ僕がトマト切るから、風ちゃんレタスちぎって〜」
…何この微笑ましい光景……。
現実離れしてるのに、見てるだけでテンションが上がる。
なんだかずっと、頭の中でウンパルンパが踊ってるみたいだ。
3人でキャッキャと食事の準備をしている様子を、父さんも目細めて眺めている。
「光、キッチンが華やかだな。眩しいなぁ〜。お前、この先大丈夫か?蟹工船にでも乗る羽目にならないか、心配だな……。」
えっ、俺の脳内ではチョコレート工場なのに?!
そっちの工場は嫌過ぎる!!
でも今これだけ幸せだったら、将来とんでもないしっぺ返しが来そうで、心配にもなるよな…。
食事の準備ができたので、弟コンビの無限トランプを中断させ、リビングに集まった。
夕飯は母さんの得意料理のハンバーグと、
静夢たちの作ったサラダ。
食事を頬張る俺たちを見ながら、静夢は牛乳を満足そうに飲んでいた。
ここで俺や緋美を噛んだらさすがに家族もドン引きたろうから、弁当は後で食べてもらおう。
食べ終わるや否や、弟が緋美に声をかけた。
「ひみぃ!俺と風呂で勝負しろ!どっちが長く、お湯に顔をつけてられるか!」
「は?いいの?俺10分は潜れるけど?!」
「嘘つくなアホ!絶対俺が勝つ!」
2人はバタバタと浴室へ向かった。
「負けず嫌いな弟たちだなぁ〜」
「陽はいつもお風呂嫌がるのに、緋美くんのおかげだわね。二人があがったら、光と静夢くんで入ったら?」
えっ、親がそんなこと言う?
付き合ってるって言ったのに??
男同士だし、恋人でも欲情はしないと思ってるのかな???
「はい!ありがとうございます!」
静夢が屈託のない笑顔で答えた。
えっ、入るんだ!!
気にしてるの俺だけ??
どうにかなっちゃいそうで怖いんですけど……。
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