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第1話:最悪の出会い

夕暮れ時の薄紫色のグラデーションを溶かしていく頃、一人の少女が綺麗な青い髪を靡かせ芯のしっかりとした声で、ナンパを断っていた。 「お断りします、今から兄のご飯を作るので帰らせてください」 「ご飯奢るから、美味しいとこ行こうよ」  嫌がる、少女の言葉を無視してしつこい男は手を掴んで引っ張る男に呆れて、涼宮楓はため息を吐きながら間に割って入る。 「しつこい男は嫌われますよ、お兄さん」 「うるせえな!お前に関係無いだろ」  「さっき、警察に電話したから警察来るのも時間の問題だけど、どうする?」   楓は(めんどくさ…)なんて思いながら少女の前に立ち、冷めた声で駄犬のように吠える男に睨みを効かせ一言告げると、男は舌打ちをして、尻尾を巻いて逃げて行く。 「ありがとうございます。」 「いえいえ、この道不審者とかも多いみたいだから違う道使うのをおすすめするよ」  楓は、助けた少女——トリシア・クリフォードと他愛のない会話を少ししながら大通りまで送り届け、柔らかく微笑んだで手を振ると、自分の仕事場であるキャバクラへと向かった  ————  数日後。先輩に連れられてその店にやってきたトリシアの兄ハウレス・クリフォードは、女性たちに囲まれてすっかりオドオドと固まっていた。その様子を見かねた楓が「紙タバコを吸われるならお外ですので案内いたします」と声をかけるるとハウレスは楓の言った意味を理解してないようで「俺はタバコは吸わないが…」と断りをいれてくる。 「いいから黙って、着いてこい」  耳元で囁かれあ低く甘い声に、ハウレスはか反射程に肩をびくりと揺らした。 「…っ」  戸惑いながら、楓はヒラリとハウレスから離れ背をむけ、裏口に歩き出す。女性たちの群れから逃れられた安堵感に負け、楓の後を追うことにした。  ざわめく店内の喧騒が遠ざかり、重い金属扉の向こう——さきほどと同じ殺風景な路地裏に出る。夜風がお酒を飲み熱った肌を撫でハウレスは大きく息を吐き出した。 「助かった…」  楓は胸ポケットにいれたシガレットケースを取り出すとタバコを咥え、火をつけゆっくりと。息を吸い煙を吐く。 「そこ、真っ直ぐ進んで突き当たり右に進むと大通りだから」  「タバコは体に悪いですよ。夜のお仕事をされていると思うので、少しでも健康の事を考えた方がいいと思います」 「……は?」  火をつけたばかりのタバコを指に挟み、楓は間抜けな声を漏らした。  先ほどまで女性に囲まれて、冷や汗を流していた大男は、今や驚くほど真剣な眼差しをこちらにむけ、説教をするかのような正論を言ってくる。 (待て待て、立場が逆だろ)  ハウレスの職業を知らない楓は、単に「世間知らずのお坊ちゃんか堅物な一般人」あのだろうと適当な事を考えていた。 「あのね、お兄さん。タバコが体に良く無い事は吸ってる本人が一番知ってるのよ。」 「でしたら…」 「じゃぁ、お兄さんが禁煙手伝ってくれるの?」  楓は、明らかに面倒臭そうに手に持っているタバコを灰皿に押し付け消すと、ハウレスの夕焼け色の瞳を見つめた。 「禁煙外来になら着いていけます。」 「禁煙外来ね〜まぁ、辞めないけど。早く帰りなよお兄さん」 「…そうですか」  ハウレスは一瞬だけ眉を寄せた。健康を害するものをわざわざ自分から口にする意味がハウレスには理解ができなかった。  だが、これ以上言っての無駄なのだろう。 「では、失礼します」  ひらひらと手を振る楓は、めんどくさい客を追い払うような仕草だった。  ハウレスは小さく頭を下げ、数ほ歩いたところで振り返る。 「あの」 「先ほどのことですが…」 「何?」 「煙草は、本当に身体に悪いですから」 「……」  楓の笑顔が引きつった 「お兄さんさ」 「はい」 「もしかして、めちゃくちゃ面倒臭い人?」 「は?」  思わずハウレスの眉間に皺が寄る。 「初対面の人に説教するの、普通に失礼だと思うけど」 「俺はあなたの健康を心配して——」 「それが余計なお世話なんだって」  楓は呆れたように肩を竦める 「俺の身体なんだから、俺がどうしようと勝手でしょ」 「ですが——」 「ほら、そういうところ」 「……?」 「真面目すぎて疲れる、」  楓はそう言って、今度こそ興味を失ったように背を向けた。 「じゃ、お兄さん二度と会わないことを願ってるよ」 「……こちらです」  ハウレスは即答した。そして、お互いにいっぽずつ離れていく。  楓は心の中で、(なんだよ、あの説教魔……)と、ため息を吐いた。一方のハウレスも。(人をからかうような態度……。あの人とは絶対に関わらない方がいい)と、同じようにため息を吐いていた。

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