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最終話 未来への約束

【登場人物】 ・青山コウタ(あおやまコウタ) 鉄道会社の車掌。 響の事が好きだが、まだ告白していない。 木田の元彼。 現在、車掌を続けるか新たな道へ進むか揺れている。 《FiVE DrinK》 ・響ワタル(ひびきワタル) FiVE DrinKのセンター。 青山の事が大好きだが、まだ告白していない。 BLドラマ「フタツノ ヒカリ」で主演を務めた。 ・黒川ジン(くろかわジン) FiVE DrinKメンバー。 長く響を想い支えてきたが、 今では青山を“推し”として慕っている。 ・押部リョウタ(おしべリョウタ) FiVE DrinKのリーダー。 明るくノリの良いムードメーカー。 騒がしいが、何気に周囲をよく見ている。 ・緑川コウヘイ(みどりかわコウヘイ) FiVE DrinKメンバー。 冷静そうに見えて、実は天然で子供っぽい。 メンバーの暴走に巻き込まれがち。 ・楓ユウサク(かえでユウサク) FiVE DrinKメンバー。 距離感が近く、人をイジるのが大好き。 特に黒川をからかって遊ぶ策士。 ・木田アスカ(きだアスカ) FiVE DrinKの敏腕マネージャー。 青山の元彼女で、 メンバーと青山を誰より理解している人物。 ・吉川キョウスケ(よしかわ キョウスケ) ReACTiO PRO所属のマネージャー。 人当たりは柔らかいが、 芸能界の裏で独自に動く情報通でもある。 ・社長/中尾マサシ(なかお マサシ) ReACTiO PRO社長。 響をスカウトした張本人。 人を見る目に長け、青山にも マネージャーとしての素質を見出している。 ・野村リカ 中尾社長の秘書で右腕。 中尾が役者時代から支え続けており、 彼の事を最もよく知る人物。 ・黒崎零(くろさき れい) 芸名RAY-K。 Crest Aster社長。 過去に青山に助けられており、 再会をきっかけに良き友人となった。 ・兎波奏(となみ かなた) VIRESTのセンター。 「フタツノ ヒカリ」で響とW主演。 共演をきっかけに響と親しくなり、 恋愛相談もする仲。 ━━━━━━━━━━━━━━━ --1ヶ月後 フタツノ ヒカリの放送が 終盤を迎える中、 響は、 フタツノ ヒカリの取材、 メディア展開、番宣、 FiVE DrinKのツアーの準備、 新曲の録音、ダンスレッスンと 多忙な毎日を過ごしていた。 青山も相変わらず、 響の家と、大阪の仕事の往復の日々。 だが変わった所がある。 もう無理をしない。 ということ。 仕事が終わって余裕があれば、 響の家へ行く。 しんどければ、LINEや電話で 話して二人の時間を埋める。 多少の張り詰めた緊張感と緩和の中、 安定しだした二人の仲。 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --ReACTiO PRO社内 社員A〈ツアー衣装の チェックお願いします。〉 社員B〈兎波さんとの インスタライブの日程、 調整出来そうですか??〉 社員C〈フタツノ ヒカリの 公式ビジュアルブックの打ち合わせ、 来週なんでよろしく。〉 社員D〈ツアーのセトリまだ?〉 経理〈早急に、山口ロケの領収書 早くまとめて持ってきて。 明日まで。 じゃないと、経費で落ちないわよ。〉 木田「ヤバい……。」 パソコンの中に、 山積みとなった仕事の数々。 木田「マジでヤバい。」 木田「過労死する……。」 野村が近くを通る。 野村「どうしたのぉ?」 木田の肩に手を置き、 パソコンを覗き込む野村。 木田「リカ……、ヤバい……、 私死んじゃう……。」 野村「流石にこれはね……。」 木田「コウちゃんはまだだし。」 野村「その件は、イケそう?」 木田「大丈夫だと思うんだけど……。」 野村「アスカらしくないわね……。」 中尾「野村!何してるの?!」 野村「はい。社長。」 野村「社長になんとか言ってみる。 とりあえずこの場はなんとかしなさい。」 木田「お願い……、リカ……。」 肩をポンと叩き野村は、 社長室へ入っていった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━ 中尾「どう……?」 野村「何が……ですか……?」 中尾「さっき話してたじゃない木田と。」 野村「なんとか……、 するんじゃないでしょうか……?」 中尾「本音は……??」 野村「無理かと……思います……。」 野村「ここで、木田が潰れると、 全てが終わります。」 中尾「流石に無理があるわよね……。」 野村「3日……、いや1日だけでも、 休みがあれば……。」 中尾「…………。」 中尾「吉川を呼んで。」 野村「その手がありましたね!」 ━━━━━━━━━━━━━━━━ 木田「いいの……??」 吉川「はい。 大事な連絡は必ずしますので。」 木田「ちょっと待って!!確か……、」 木田は、響のスケジュールと、 青山のスケジュールを確認する。 画面に並べる二人のスケジュール。 17日、18日、19日 青山がたまたま3連休の日。 響のスケジュールを確認する。 17日 雑誌の取材4件 ツアーの衣装合わせ 18日 ツアーの衣装合わせ ダンスレッスン 19日 移動日 木田「雑誌の取材、ズラせる……。 ツアーの衣装合わせ……、 これも……、 23日と24日に詰め込めば、 なんとかイケる。 移動日、これは無視。」 タタタタタタタタタタタタ。 画面の中のスケジュールを 変更していく木田。 《更新》 木田「よし……。」 更新をクリックした木田。 吉川「いいんですか……これ??」 木田「なんとか、なるっしょ!!」 吉川「はぁ…………。」 木田、響、青山のスケジュールが、 中尾、野村、吉川、響、青山、 FiVE DrinKのメンバーに共有された。 ピコンッ。 ピコンッ。 中尾、野村が 更新されたスケジュールを確認する。 中尾「木田らしいわね。」 野村「どうしましょうか……?」 中尾「あの二人……、 まだ付き合ってないのよね?……。」 野村「そのハズですが……。」 中尾「使えるかも……。」 中尾「野村、 今から言うことを手配して。」 野村「かしこまりました。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ --17日朝 響の家 響「コウタくんおはよう!!」 ベッドの掛け布団を勢いよく剥ぐ響。 青山「おはよう……。」 響「さぁ、準備して行くよ!!」 青山「テンション高過ぎ……。」 眠い目を擦る青山。 ゆっくり起き上がり寝室を後にする。 ガチャ。 青山「………………。」 言葉を失う青山。 目の前に広がる光景……。 それは、 ぽっかりと広がった 空のリュック。 その周りに 乱雑に散らかった 衣類と 持っていく物?達……。 ゆっくり口を開く青山。 青山「昨日、準備してなかった……?」 響「起きて、パンツ入れてなかった! と思って、入れようとしたら……、 いつの間にか、こんなんに、 なっちゃった……。」 ハッと時計を見る青山。 9:30 木田が迎えに来るのが、 10:00 青山「あ゛ぁ゛ーーー!!!」 響「どしたの?」 呑気に、ぽんぽんぽんぽんと リュックに荷物をぶち込む響。 青山「あと、30分でアスカが来るよ?」 響「大丈夫っしょ!」 青山「あのさぁ、 とりあえず一回、鏡見てきたら??」 響「ん??」 なんの事?っていう感じで 面倒くさそうに洗面所に行く響。 ガチャン。 洗面所の鏡を見る響。 寝癖がつきまくったボサボサの髪……、 目の下のクマ……、 どこで買ったのか?と思うような、 紫色のヨレヨレのTシャツ……、 これもどこで買ったのか分からない、 ヨレヨレの短パン……。 響「……………」 響「キャーーーーー!!!」 響「あんた誰?!」 青山「お前だよ……。」 離れた洗面所から聞こえる大きな声に 小声でツッコミを入れる青山。 青山「てか、あんなTシャツ、 どこで売ってんのよ??」 ガチャ! 響「コウタくん!今洗面所に、 ふ、ふ、不審者がいた!!」 青山「多分、 今、オレの目の前にいる人だと思う。」 響「あたし?」 青山「そう……、あたし……。」 髪を触り、服の裾を伸ばし下を向く響。 響「これで行ったら身バレしないよね。」 青山「いいけど……」 青山「知り合いと思われたくないから、 半径50m以内に近付かないでね。」 響「だよねーー……。」 響「よっしゃ! アイドル、響ワタルに変身だ!!」 拳を突き上げる響。 青山「それはそれで困る……。 普通で良いよ。普通で……。」 響「はーーーーい……。」 振り返り、 トボトボと歩き洗面所に戻る響。 --9:40 青山「あと、20分か……。 無理だな。」 スマホを取り出す。 タタタタタタタタタタタタ。 青山〈ごめん。10:30にして。〉 ━━━━━━━━━━━━━━━━ ブッブ……。 青山「あ!」 木田〈着いたわよ〉 青山「ワタル!来たよ!!」 ピンポーン。 ピンポーン。 ピンポーン。 ピンポーン。 ガチャ。 楓「迎えに来たよーー!!」 響「もうちょい。」 楓「コウちゃーーん♡!!」 響「気安く呼ぶな!」 お構い無しに靴を脱ぎ廊下を突き進む楓。 ダダダダダダッ。 リビングに入り青山に抱きつく楓。 バサッ。 楓「コウちゃん♡会いたかった〜♡」 楓「もう!全然会えないから、 楓、干からびる所だったよ♡」 青山に上目遣いで甘える楓。 青山「おはよう……。」 青山「嬉しいんだけど……、後ろ……。」 楓「後ろ??」 ゆっくりと振り返る楓。 リビングの入口で メラメラと燃える炎を後ろに、 戦闘服に身を包み、 バズーカーを持った響が 鬼の形相で立っていた。 響「お前だけは、許さねぇーー……。」 ゆっくりと青山の方に向きを直す楓。 楓「あの方……、お知り合いですか?」 青山「一応……。」 青山「殺される前に、 離れた方が身のためだと……。」 楓は諦め、ゆっくりと青山から離れる。 そして、薄ら目をし、響に言った。 楓「嫉妬深い男は嫌われるよーー。」 響「何しに来たんだよ!」 楓「お迎えに決まってんじゃん!!」 楓「あ!荷物これっすね!持ちます♡」 青山「あ、ありがとう……。」 青山「ワタル!大丈夫??」 響「大丈夫じゃない!!」 ━━━━━━━━━━━━━━━━ ピッピ。 ウィーン。 ガチャ。 押部「おせぇーよ!」 緑川「こんな時に寝坊?」 黒川「だから言ったじゃん。 早く行っても意味無いって。」 響「ボロカス……。」 木田「そりゃぁねぇ……。」 青山「おはようございます。」 押部、緑川、黒川 「おはようございます!」 黒川「コウタくん!こっち!こっち!」 楓「コウちゃんは、楓の隣だよ!!」 青山「あ……、あぁー……。」 木田「何言ってんの?! コウちゃんは、助手席よ!」 一同「………………。」 冷たい目線が木田の背中を刺す。 響「何どさくさに紛れて、 好き勝手なこと言ってんのよ。」 響「緑川!あんた、前。」 緑川「え?!オレ??」 響「コウタくん、後ろね!」 青山「あ、あ……、うん。」 響に押し込まれ車に乗り込む青山。 ピッピ。 ウィーン。 ガチャン。 木田「行くわよ!」 押部、緑川、楓、黒川、響 「レッツゴーーーー!!」 青山「……ごーー……。」 カッチ、カッチ、カッチ……。 ヒュイーーン。 ━━━━━━━━━━━━━━ --1時間後 響「コウタくんポテチ食べる?」 青山の隣でバリバリと ポテチを食べる響。 青山「だ、大丈夫……。」 黒川「コウタくんごめんね。」 青山「ん?何が??」 黒川「せっかくの休みなのに……、 響と二人きりの方が 良かったんじゃない?」 青山「何気にしてんのー?」 子供をあやすかのように、 髪をワシャワシャする青山。 嬉しそうに微笑む黒川。 青山「旅行はみんなで行く方が 楽しいやん!」 響「オレは、二人きりの方が 良かったですけどねーー。」 青山「ワタル!」 響「へーーい。」 黒川「やっぱ、大好きだわ。」 青山「ありがと。」 黒川「え?!あ?!」 黒川「きこ……、きこえて……た??」 青山「丸聞こえ……。」 3列目の後部座席に、 黒川、青山、響が座る。 重なる肩。 顔が真っ赤になる黒川。 青山「いつもクールなのに、 たまにめちゃくちゃ可愛くなる時、あるよね。 ジン。」 黒川(もう、やめてくれ。 それ以上言われると、抱きしめたくなる。) 膝の上の手を握りしめ、 本能と戦う黒川。 ダン!! 青山の腕が目の前を掠める。 黒川「え?!」 右を見ると、 窓ガラスについた青山の左手。 ゆっくりと左に顔を向ける。 すると目の前には、 青山の顔が数cmの距離にあった。 目と目が合う。 黒川(あ、もうダメ。) 目を瞑る黒川。 黒川「…………。」 黒川「…………。」 青山「ごめん、ジン。虫がいた。」 魂が抜けたままのジン。 青山「ワタル、ティッシュある?」 響「待ってねー。今出すからねー。」 響「はい!」 青山「ありがとう!」 魂が抜け微動だにしない黒川。 響「ジンくん、良かったねー!」 響「ジンくん??」 黒川「…………。」 ハッと意識を取り戻した黒川。 黒川「何の罰ゲームだよーーー!!」 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --箱根到着 押部「やっと着いたー!」 背伸びをする押部。 楓「コウタくん!お風呂行こ♡」 諦めずグイグイ攻める楓。 緑川「ずっと木田マネの横とか、 何の罰ゲームだよ……。」 憔悴しきった緑川。 木田「誰が罰ゲームですって?!」 通常運転の木田。 響「うぅーっ!やっと着いたね!」 背伸びをする響。 青山「そだね! オレ、箱根って初めて来た。」 通常運転の青山。 黒川「…………。」 ピヨピヨ……ピヨピヨ……。 魂をどこかに置いていった黒川。 そんな七人の前に現れる建物。 どこからどう見ても高級旅館。 その後ろには、 なだらかな斜面にポツポツと 離れが佇んでいる。 青山「なんか、 めっちゃ高そうだけど、 ここで合ってる??」 木田「ごめん。私、知らないんだ。」 一同「え……?」 木田「中尾社長が 取ってくれた宿だから……。」 響「フリーザ、たまにはヤルじゃん!」 ザッ。 砂利を踏む足跡。 中尾「誰がフリーザですって??」 箱根全体が凍り付いた……。 一同「……………。」 黒川「気の所為だよな……?」 響「気の所為だと思うよ……。」 黒川「一応……後ろ……向くか……。」 押部「辞めといた方が……。」 緑川「オレは向かない。」 楓「オレはなんも言ってないからね。」 身体が凍りつき、微動だにしない七人。 中尾「たまにヤルじゃん??たまに……??」 何かを察知し、 中尾に近付く青山。 響「いや……、これは……、」 中尾「私がどれだけ、お前のことを……!!」 中尾を後ろから羽交い締めにする青山。 中尾「お前のおかげで、 どれだけ白髪が増えたか!!」 青山「やめましょ……、社長……。」 中尾「…………。」 中尾「すまない。取り乱した。」 その光景を見て驚く一同。 黒川「嘘だろ?! あの中尾を……、手懐けてる……。」 青山「社長、 この後、二人で飲みませんか?」 優しく微笑みかける青山。 中尾「いいね!行こう行こう!」 青山は中尾を連れ、 旅館の中に入って行った。 響「助かったー……。」 木田「死ぬかと思ったわ……。」 押部「コウタくんって何者??」 緑川「どんな裏技使ったんだ?!」 楓「後で、攻略法教えてもーらお!!」 木田「それ、私が一番教えて欲しいわ……。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --チェックイン 木田「みんな鍵は貰った?? もう、ここからは自由行動だから。」 響「はーい!!」 響「コウタくん居ないから一人……。」 木田「誰のせいよ?」 響「さーせん……。」 黒川「コウタくん戻ってくるまで、 オレが相手してあげようか?」 響「大丈夫! オレ、コウタくん戻ってくるまで 部屋で待ってる!」 黒川「……そう……。」 黒川「そ、そうだよな!」 黒川「楓!!」 楓「オレもパスー。」 黒川「え……?」 黒川「そかぁ……。」 楓「響にフラれてからって オレの所に来るなんて、最低……。」 楓はそう言い残し、 緑川と押部と3人で 玄関を出ていった。 押部、緑川、楓 「え?!え?!なんで??なんで?!」 旅館の外から3人の驚いた声が聞こえた。 響、黒川、木田は、旅館の外を見る。 兎波「はーーい。」 軽い笑顔と共に手を振る兎波と、 黒崎「よ!!」 微笑み手を挙げる黒崎が立っていた。 木田「…………。」 咄嗟に頭を下げる木田。 木田「お疲れ様です。」 黒崎「仕事じゃねぇんだから、 そんなの要らねぇよ。 せっかくの旅行なんだから、 もっと気楽にいこうぜ。」 木田「あ、ありがとうございます。」 木田(いや、そんなの……、 無理に決まってるじゃん。) 響「どしたのー??」 兎波「社長が、 ドラマの視聴率良いし、 仕事も増えたから。って、 連れて来てくれた!」 響「へーー……。」 じっと黒崎を見る響。 響(コウタくん狙いだなコイツ。) 黒崎(な、なんか怪しまれてる??) 黒崎「兎波!と、とりあえず、 チェックイン済ますか!」 兎波「そうっすね!」 黒崎は、響を躱し(かわし)、 兎波と共にロビーに向かう。 木田「さ、私は部屋に籠って ちょっとだけ仕事しようかな。」 響「こんな所まで来て仕事??」 木田「ちょっとだけよ。」 そう言い残し部屋へ向かう木田。 チェックインを済ませた兎波が来る。 兎波「響、どっか行かない?」 響「今、コウタくん待ってるから行かない。」 兎波「そかぁ……。」 横を見る兎波。 黒川と目が合う。 バツが悪そうに頭を搔く兎波。 黒川の横を掠め玄関を出る兎波。 黒川「兎波さん!」 振り向く兎波。 黒川「初めまして。黒川ジンです。」 兎波「初めまして、兎波奏です。」 黒川「オレもさっき、 響に振られまして……。」 兎波「そっかぁ、一緒だね。」 黒川「良かったら、 歩きながら話しませんか?」 兎波「いいよ。」 兎波「てか、お酒飲める?」 黒川「はい。大丈夫ですけど……。」 兎波「じゃぁ、飲みに行こ!」 黒川「いいっすね!」 ロビーに取り残された黒崎と響。 響「ポテチ食べて、待ってよー。」 黒崎「さて、オレも部屋に行くか!」 黒崎と響、並んで部屋へ向かう。 黒崎「ねぇ、コウタとは、 どこまでいったの??」 響「はい?!しかも呼び捨て。」 響「言う……、 そんなの言う訳ないじゃん!!」 黒崎「で、コウタいないけどどこ行ったの?」 響「知ってても言わなーい!」 黒崎「ふ〜ん。」 なだらかな斜面を ゆっくり登って部屋へ向かう二人。 気まずい空気。 黒崎は、ふと左下にある建物に目をやる。 窓越しに、楽しげに談笑する二人の姿。 黒崎「は?」 黒崎「おい、響。」 響「何よ?」 黒崎「まさかとは思うけど……、 中尾のおっさん来てるのか?」 響「そうよ! それで、コウタくん取られたのーー。」 響「てか、 社長来てるの知ってんじゃないのー?」 黒崎「FiVE DrinKとコウタが ここに泊まるのは、 おっさんから聞いたけど、 おっさんが来るのは聞いてないぞ!」 響「あ、そうなんだ。」 響「それは残念でしたねーー。」 黒崎「後で、乗り込まね??」 響「オレはダメ。」 黒崎「おっさんが怖いか?」 響「オレが社長怒らせて、 それでコウタくんが 社長を飲みに 連れ出してくれてるから。」 黒崎「そういうことか。」 クスクス笑う黒崎。 黒崎「じゃぁ、オレは後で乗り込も。」 響「どうぞ。どうぞー。」 黒崎「あ、オレ、部屋こっちだから。 じゃぁな!」 響「あ、はい。」 響「べーーー!」 響と別れた黒崎はルンルンで 部屋へ入っていった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ --旅館のラウンジ横にあるBAR 中尾「それでね。 私はFiVE DrinKを 東京ドームに連れて行きたいんだよ! 東京ドームのステージに立ってる 五人を見たいんだよ!」 完全に青山に乗せられ、酔っている中尾。 青山「それって三年後ですか?」 中尾「そんな訳ないだろ。」 中尾「……え……??」 青山「いや、社長の事だから、 三年後くらいの展望なのかなぁ。と。」 中尾「青山……、三年後……、 FiVE DrinKが東京ドーム……、 イケると思うか??」 青山「そうですね……。」 青山「ジンくんと楓くんが ドラマに出て、 それが当たれば、 全然余裕じゃないですか?」 中尾「ジンと楓かぁー……。」 青山「ま、素人の戯言ですが……。」 中尾「素人ねぇ……。」 グラスをゆっくり傾ける中尾。 ブッブ、ブッブ……。 テーブルに置いていた 中尾のスマホが震える。 ピッ。 中尾「もしもし?」 中尾が通話をし始めたので 暇を持て余す青山。 ふと、窓の外を見ると 手を振る人物が目に入る。 目を凝らしてよく見ると、 黒崎が手を振っていた。 青山「え……?」 驚くが笑って、 中尾には悟られないように 手を振り返す。 中尾「分かった。今すぐ帰る。」 ピッ。 中尾「もっとゆっくり話したかったけど、 会社が許してくれないみたいだ。」 青山「何かあったんですか?」 中尾「まぁね……。 またゆっくり話そう。」 青山「あ……、はい…………。」 中尾は、足早に その場を立ち去っていった。 窓の外に目をやる青山。 さっきまでいた黒崎がいなかった。 黒崎「コウタ!」 ポンッと肩を叩かれると同時に、 後ろから黒崎の声がした。 黒崎「オッサンは?」 青山「なんか電話があって、 会社に帰ってった。」 黒崎「良かったぁ……。」 黒崎「オッサンいたら、 また何言われるか分かんねぇからな。」 青山「問題児だったからーー??」 笑いながら言う青山。 黒崎「昔はねーー。」 笑いながら応える黒崎。 青山「なんか飲む?」 黒崎「とりあえずビールかな!」 ウェイター「お待たせしました。」 黒崎の前にビールが運ばれてきた。 黒崎「お疲れさまー。」 青山「お疲れさまー。」 乾杯をし、ビールを一口飲む黒崎。 青山「てか、なんでここに??」 黒崎「ドラマの打ち上げ的な?」 青山「一人で??」 黒崎「んな訳!兎波と来たよ!」 青山「兎波くんもいるんだ!」 黒崎「ま、今日のことは、 オッサンから聞いてたけどねー。」 青山「だよね……。」 黒崎「ま、仲間は多い方が楽しいだろ?」 青山「それは、そうだね。」 黒崎「楽しくないのか?」 青山「いや……。」 青山「あのさぁ、この前の話……。」 黒崎「この前の……?」 青山「相談したいことがある……。」 黒崎「おぉ……。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 箱根の街をゆっくり歩く 兎波と黒川。 兎波「ジンくんは、 いつからワタルと一緒なの?」 黒川「ジンでいいですよ。」 兎波「じゃ、オレも 奏(かなた)でいいよ。」 黒川「なんでそんなこと聞くんですか?」 兎波「ドラマが始まる前から、 何度か音楽番組やLIVEで 一緒になったことあったじゃん。 そこで二人、常に一緒だったから。」 黒川「そうでした? そんなつもりじゃ なかったんですけどね。」 兎波「凄く仲が良いんだなぁ。って。」 黒川「ワタルとは高校の時からです。」 兎波「そうなんだ!だからかぁ。」 兎波「ジンくん、ワタルの事、 好きでしょ?」 黒川「そうですね……。」 黒川「でも今は違うかな……。」 兎波「今は……?」 黒川「奏は、好きな人いないの?!」 兎波「お……オレ??」 兎波「……い……、いるよ……。」 黒川「メンバーの誰か??」 兎波「なんでそうなるんだよ!! アイツらはない!」 黒川「へー……、男なんだ……。」 兎波「え……?」 黒川「で、誰??」 兎波「ファ……、ファン…………。」 黒川「え……?」 黒川「……マジかよ……。」 兎波「ひ……引くよな……。」 黒川「引きはしない……。」 兎波「え……?」 黒川「オレの今の彼女……、 ファン……だから……。」 兎波「お前!彼女いんの?!」 黒川「居て悪りぃかよぉー。」 兎波「ココ入る??」 黒川「おぉ……。」 兎波「ココでゆっくり話そうぜ。」 黒川「お互いにな……。」 居酒屋の暖簾を潜り店に入る二人。 ガラガラガラ……。 店員「いらっしゃいませ!!」 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --旅館の一室 カタカタカタカタカタカタ……。 カタカタカタカタカタカタ……。 木田「うぅーーーー!!」 座ったまま背伸びをする木田。 木田「あとは……、」 【フタツノ ヒカリ ファンミーティング(仮)】 パソコンの画面を見下ろした木田。 木田「ヨッシャーー!!」 ピコンッ。 パソコンのメールに一通のメールが……。 中尾《楓と黒川の件》 木田「え?何?」 木田「開くの怖いんだけど……。」 恐る恐るメールを開く木田。 中尾《楓と黒川だけど、 ドラマに出すから。 オーディションを受けさせて。 今募集してるオーディションを、 いくつか送ります。》 バタンッ。 パソコンを畳み、その上に倒れ込む木田。 木田「無理……。」 そのまま横を向いた木田。 木田「何よいきなり……。 響以外はドラマに出さない。 って言ってたじゃん……。」 バッ! 木田はいきなり立ち上がった。 木田「もう、やめ!」 木田「せっかくの休みなんだし、飲もう!!」 部屋を後にする木田。 ガチャン。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ --旅館のラウンジ 店員「いらっしゃいませ。」 木田(さすが高級旅館……。) ラウンジの中を見渡す木田。 ふと窓側にいる二人に目が止まる。 ニヤリとする木田。 足音と気配を消し近づく木田。 黒崎「オレは応援するよ。」 青山「ありがとう……。 レイに相談して良かった……。」 木田「なーにーー??相談ってーー??」 ビクッ!! 青山「わっ!出た!!」 黒崎「あ!響の……。」 木田「その節は、 大変お世話になりました。」 青山の頭も抑え、お辞儀をする木田。 青山「何すんだよ……。」 木田「何が、何すんだよ。よ?」 木田「すいません。 ハイボールください。」 店員「かしこまりました。」 青山「さてそろそろオレは……。」 青山の腕を掴む木田。 木田「コウちゃん……、どこに行く気??」 青山「い……いや、そろそろ……。」 木田「付き合いなさいよ!」 青山「え……えぇーー……。」 木田「何よ?」 青山「何も……。」 黒崎「なんか恋人みたいだね!」 青山「元です……。」 木田「元です……。」 黒崎「え……?」 青山「だからぁ!元カノ!」 黒崎「マジかよ……。」 黒崎「そろそろ……オレは……。」 バッ! 黒崎の腕を掴む青山。 青山「どこ行くの?」 黒崎「邪魔……。」 青山「お願い……居て……。」 黒崎「う……うん。」 気まずい無言の時間が三人を覆う。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ --旅館の一室 響(コウタくん、まだかなぁー。) パリパリっ。 パリパリっ。 パリパリっ。 リュックのポケットを見る響。 響(手紙……、いつ渡そう……?) パリパリっ。 パリパリっ。 パリパリっ。 ピコンッ。 響(コウタくん!?) 黒川〈奏と飲んでるけど来るか?〉 響「なーんだっ、ジンくんかぁ……。」 響(ヒマだし、行こうかなぁ……。) カサ……カサカサ……。 響「あ、もうポテチないや……。」 ポテトチップス コンソメ味 BIG スっと立ち上がる響。 響「うぅーーーっ!」 背伸びをする響。 すると掛け時計が目に入った。 響「もうすぐ、晩御飯じゃん!!」 スマホを取り、 黒川に返信する響。 響〈もうすぐ晩御飯だよー?〉 シュポッ。 ピコンッ。 黒川〈じゃぁ、帰る。〉 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 木田「だからぁ! ウチの所の社長、 人使い荒いのよ!! 何がぁー、 黒川と楓をドラマに出せよ!よ。 響以外はドラマに出さない。 って言ったの、社長じゃん! それも、いきなり!」 青山「アスカ、飲み過ぎ……。」 木田「こんなの、 飲まずにいられるかっての!! ねぇ、黒崎さーん!」 黒崎「コウタ、ガンバ!」 木田「コウちゃん! 何とか言いなさいよ!!」 青山「あ……、 楓くんと、黒川くんのドラマの件、 オレの……提案なんだよね……。」 木田「はぁーーーーー?!」 木田「あんたねぇ!何してくれえんのよ? 仕事だけ増やして! 早く、FiVE DrinKの マネージャーになりなさいよ!!」 青山「いや……まだぁ……。」 木田「コウちゃんは、 明日からマネージャー!!」 ラウンジの入口を通る 緑川、押部、楓。 一番後ろを歩いていた楓が、 ラウンジで騒ぐ木田を見つけた。 楓「緑川、押部!あれ、見て!」 緑川「何?」 押部「なんだよ。」 緑川、押部 「……見なかった事にしよう……。」 楓「コウタくんが可哀想じゃない?」 押部「可哀想だけど……」 緑川「オレ達には、 あの悪魔は止めらんないよ……。」 楓「……悪魔……。」 すると、 後ろから黒川、兎波が帰ってきた。 黒川「何してんの?」 楓「あ!ジンくん!」 楓「あれ、見て……。」 ラウンジの中を覗き込む黒川。 黒川「はぁー……、 誰だよ、木田マネに酒飲ましたの……。」 そう言うと黒川は、 迷いなくスタスタと ラウンジの中に入って行った。 押部「あーいう所って凄いよね。」 緑川「怖いもの見たさ。というか……。」 黒崎、青山、木田に近づく黒川。 黒川「木田マネ!何してんすか?」 木田「あ!ジンちゃーーん!!」 黒川「酒臭っ!」 黒川「さっき、 社長から電話あったんすけど、 アレ……なんすか??」 木田「電話??え? もうジンにも電話いったのー? マネージャー通さない。とか、 どぅーーいぅーーことぉーー?!」 酔ってフラフラしている木田が 頭を振らつかせながら考える。 木田「…………。」 固まる木田。 木田「あーーー!!!」 黒川「うっせぇな……。」 木田「また怒られるーー……。」 黒川「早く部屋に帰って、 電話した方が良いんじゃないっすか?」 木田「はい!隊長!! 電話して参ります!!」 木田は黒川に敬礼し、 フラフラと歩きながら、 ラウンジを出ていく。 入口で様子を見ている、 緑川、押部、兎波。 木田「何見てんのよぉー!」 緑川、押部、楓、兎波 「いや……なにも……。」 木田「緑川!! 私を部屋まで連れて行きなさい!!」 緑川「え?オレ??」 木田「文句あんの?!」 緑川「ナニモアリマセン……。」 押部、兎波「…………」 楓「緑川!ガンバーー!!」 緑川が楓を睨み付ける。 緑川「かえでーーー!!」 笑顔で手を振る楓。 青山「ジンくん、ありがとう。」 黒川「オレ、酔っ払い嫌いだから。」 青山「オレも!」 黒崎「ホント、コウタは、 みんなから愛されてるな。」 青山「レイはー??」 黒崎「敵ばっかり!」 青山「オレは、味方だからね。」 黒崎「……お……おぉ……。」 照れて頭を搔く黒崎。 青山「悪魔も居なくなったことだし、 部屋に戻るか!」 黒川「うん!」 黒崎「だな。」 会計を済ませラウンジを出た三人。 黒川「お前ら、まだいんの?」 押部、楓「え……あ……、まぁ……。」 楓「押部!行こ行こ!」 押部「あ、うん。」 青山「レイ、ありがとう! また今度、ゆっくり飲みに行こう!」 黒崎「コウタの為なら、 いつでもスケジュール空けるから!」 青山「ありがとう!」 青山「ジンくんもありがとう。」 黒川「お、オレは……なにも……。」 黒崎「ジン!お前やるなぁ!!」 黒川「あ、ありがとうございます……。」 青山が黒川に近づき一言添える。 青山「悪い人じゃないから!」 黒川「目、見たら分かる……。」 青山「さっすがぁーー。」 黒川「もっと怖いのが、 丘の上からこっち見てるけど。」 部屋の入口で仁王立ちで立っている 響の姿が……。 青山「あ……。」 黒崎「早く……行った方が……、 良いんじゃない??」 黒川「意外と、 怒ると怖いからアイツ……。」 青山「ごめん!!」 黒川と黒崎の元から足早に立ち去る青山。 黒崎「なぁ……ジン……、 コウタの事好きか……?」 黒川「うん……、大好き……。」 黒川「黒崎さんは……?」 黒崎「オレも……、大好き……。」 二人の大好きな人が少しずつ遠ざかる。 黒崎「オレ達の、拠り所だな……。」 黒川「そうだね。 オレ達の、拠り所。」 そう言うと二人は、微笑んだ。 黒崎「ジン、今度飲みに行くか?!」 黒川「黒崎さんとなら、 話し合いそうですし、喜んで。」 黒崎がスマホを取り出し、 何やら操作をし、 黒川へ差し出す。 黒川もスマホを取り出し、 黒崎のスマホに表示された QRコードを読み取る。 黒崎「よろしく。」 黒川「よろしくお願いします。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 響の元へ走る青山。 青山(ワタルを一人にし過ぎた。 怒ってるだろうなぁ。) 青山「はぁ……、はぁ……、はぁ……。」 響の元まで、あと10m。 すると、仁王立ちしていた響が 駆け寄ってくる。 バッ!! 青山に抱きつく響。 響「……、遅いよ……。」 胸の中でそう言う響。 響の頭に手を置く青山。 青山「ごめん……。お待たせ……。」 響「今日は、もう離れんといて……。」 青山「もちろん。」 ハグが解ける。 手を繋ぐ青山。 響は微塵も怒ってはいなかった。 ただ、寂しかった……。 部屋に入る二人。 ガチャ……。 部屋の扉が閉まり、 青山の方へ向き直す響。 響「コウタ…………。」 コウタくん……、 と言う前に唇が重なっていた。 ゆっくりと、 手を青山の背中にまわす響。 響を、強く抱きしめる青山。 キスは徐々に激しくなっていく……。 響「ん……、」 響「ん……、」 ゆっくりと離れる唇。 頬を赤らめる響。 頬を赤らめる青山。 お互いの顔を見て微笑む二人。 響「恥ずかしっ!」 そう言うと、 響は青山の胸に顔を埋めた。 青山「ワタル……、オレと……」 青山が何かを言おうとした時。 コンコンッ。 女将「お食事をお持ち致しました。」 響「お預けみたいよ……。」 クスクス笑う響。 青山「だね……。」 気まずそうに顔を歪め応える青山。 ━━━━━━━━━━━━━━━━ テーブルに広がる料理の数々。 ステーキ、お刺身、天ぷら……。 響「凄いねぇー。」 青山「ここまでとは……。」 女将「以上になります。 お食事が終わりましたら、 フロントにお知らせ下さい。」 青山「分かりました。」 女将「ごゆっくりどうぞ。」 そう言い、女将は部屋から出ていった。 青山「さぁ、食べよっか。」 響「うん。」 青山、響「いただきます。」 ルンルンで箸を進める響。 それを見て楽しそうな青山。 響「コウタくん! ステーキ美味しいよ! めっちゃ柔らかいー!」 青山「マジ?!」 ハムッ。 青山「……、」 青山「いつぶりだろう……、 こんなお高いお肉食べたのーー!」 響「天ぷらもサクサク!」 青山「ねぇ、良く食べるよね。」 響「何が??」 青山「ポテチのBIG……。」 響「あー、あの前菜??」 青山「ぜ…………、」 言葉を失う青山。 横目で、ゴミ箱を見る。 青山「これが……前菜??」 青山(ポテチのBIGに、 500mlのコーラ4本……。) 青山(え……?コーラ4本??) 目線を響に移す。 パクパクと料理を食べている響。 青山(オレも負けてられないな……。) 急に食べる速度を上げる青山。 響「何急いでるの??」 青山「別に……。」 響「そんなに急いで食べると、 喉詰まらせるよ……。」 青山「うっ…………!!」 案の定、喉に食べ物を詰まらせる青山。 拳で胸を叩く。 ドンドンドンドンッ! 響「コウタくん!大丈夫?!」 駆け寄る響。 青山「っあぁ゛ーー!!」 響「ほら、言わんこっちゃない。」 青山「一瞬、三途の川が見えた……。」 パシッ! 青山の頭を叩く響。 響「冗談でも、そんなこと言うのやめて。」 響「言っとくけど、 オレは後を追うからね……。」 青山「ワタルより、先に死ねないな……。」 響「当たり前!」 響「ふふ……。」 青山「ふふ……。」 青山「ごめんなさい。」 響「しゃぁねぇなぁ……。」 響「許すけど……、 ステーキ最後の一切れ貰うね!!」 そう言い、 響はステーキ一切れを摘み 口に頬張る。 青山「あ……!!」 青山「オレのステーキちゃんが……。」 響は、ステーキを口に含み、 満足そうに席に戻る。 ひょい! 青山の箸がサッと動いた。 なんと響のお刺身を一切れ 奪った。 響「今、何した??」 青山「モグモグ……、ん??」 響「ん??じゃねぇーなぁー。」 そして、 青山は窓の向こうに指を指し、 青山「あ!UFOだ!!」 響「え?!どこどこ??」 響が窓の外を見た隙に、 ひょい! また、刺身を一切れ奪う青山。 ゆっくりと振り返る響。 響「なぁ、兄さん……、 あんた、オレの刺身……、 また一切れ奪わなかったかい??」 青山「ちょっと、 何言ってるかわかんないです……。」 響「窓に反射して、 刺身を奪うところ見えてたよ。」 青山「気の所為じゃない??」 パクパクとご飯を食べる青山。 響「ふーーーん……。」 響「ねぇ、後ろに、 堀越さん立ってるけど、大丈夫??」 青山「えっ?!」 バッと後ろを振り向く青山。 サッ! 青山「びっくりしたーー。 ホンマにおるんかと思ったやん。」 そう言い向きをテーブルの方に直すと、 目の前の天ぷらの皿が消えていた。 天ぷらの皿を持ち、 えびの天ぷらパクパク食べる響。 青山「それ、どうしたの?響くん??」 響「ん??」 青山「その天ぷら……、 ポクのだよね……??」 響「あーこれ?」 響「そこに、落ちてた……。」 青山「どこに??」 響「コウタくんの目の前のテーブルだよ。」 青山「それは落ちてないんだよなぁ……。」 響「え?!そうなの?!びっくり!!」 青山が響の茶碗蒸しに手を伸ばす。 サッ! パチッ!! 青山の手を叩く響。 響「茶碗蒸しはダメ絶対!」 青山「何、痴漢はダメ絶対! みたいに言うてんねん!」 響「茶碗蒸しへのお触り禁止!!」 青山「キャバクラか!」 響「キャバクラや!」 楽しいやり取りが繰り広げられる……。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 響「あーーー、お腹いっぱい……。」 青山「オレ、物足りんのやけど……。」 響「なんでーー??」 首を傾げる響。 可愛い顔になにも言えない青山。 青山「お風呂入った後、なんか食べよ。」 響「お風呂……行く……??」 青山「ちょっと、ゆっくりするかな。」 響がゆっくりと動く。 リュックを開き何やら出している。 後ろ手で何かを隠している。 青山の目の前に座る響。 響「ねぇ、コウタくん……、 渡したい物があるから、 目を瞑って。」 青山「え?あ……、うん。」 びっくりしたが、 指示に従い目を瞑る青山。 パサッ。 響「目を開けていいよ。」 目を開ける青山。 手の上には一通の手紙が置いてあった。 【 コウタくんへ 】 青山「手紙……?」 響「うん。」 青山「読んでいい……??」 響「うん。今読んで欲しい。」 サッ。 パラ……。 封筒に入った1枚の手紙。 ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌ -- コウタくんへ コウタくん、いつもありがとう。 しんどいのに、いつも来てくれてありがとう。 いつも隣に居てくれてありがとう。 そして、ボクを大切にしてくれてありがとう。 コウタくんと出会うまでボクは、 凄く弱い人間だった。 逃げてばかりだった。 弱くて臆病でズルい人間だった。 だけど、コウタくんに出会えて、 変われた。 コウタくんが守ってくれたから。 コウタくんがいつもいてくれたから。 コウタくんは、 僕にとって大切なヨリドコロです。 僕もコウタくんにとって 大切なヨリドコロでいたい。 だから……、 ボクと付き合って下さい。 一生、傍にいてください。 響 ワタル ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌ ポタ……、 ポタ……、 ポタポタ……。 青山「ありがとう……。」 響「ねぇ、覚えてる? オレがスマホケース変えた時のこと。」 青山「覚えてるよ。」 スマホをテーブルに置く青山。 響「あの時、 オレとコウタくんのお守り。 って言って サインした紙入れてたよね。」 青山「うん。 響からオレへのお守りって……。」 響「違うよ。 オレとコウタくんのお守り……。」 青山「え……?」 青山は、ハッとして スマホケースを外す。 すると、サインされた紙が ヒラヒラと舞い 膝に落ちた。 サインの裏には、 ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌ これから いつも いつまでも 一緒♡ ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌ と書いてあった。 青山「うん。」 青山「うん。」 大粒の涙が溢れ止まらない青山。 青山「ありがとう……、ワタル……。」 青山は、動き出す。 青山「ワタルも目を瞑って。」 響「え??」 予想もしてない展開に驚く響。 響「あ……、はい。」 驚きながらも大人しく従う響。 リュックから、 箱を取り出し、 テーブルの上に置く青山。 青山「目を開けて良いよ。」 ゆっくり目を開ける響。 そこには、ティファニーの箱が……。 響「え……?ティファニー??」 響「開けていい??」 青山「もちろん。」 ゆっくりと箱を開ける響。 そこには、 シンプルながらも光り輝く ネックレスがあった。 青山「指輪にしようと思ったけど、 外し忘れたら大変だから……。」 青山「ネックレスなら 誰からも怪しまれないでしょ。」 響は、そんな事を全く予想もしていなかった。 青山からのプレゼント。 それだけで響の胸はいっぱいになった。 震える手で、 ネックレスを取り出す響。 ネックレス越しに青山を見る。 だが、涙でボヤけてあまり見えない。 青山「貸して。」 響がネックレスを手渡す。 そして青山は、響の後ろに回った。 胸元から そっと手を首元に移動させ ネックレスを止める。 そして、青山の顔が耳元に……。 青山「ワタル……、大好きだよ。」 青山「オレも、ワタルがヨリドコロだよ。」 青山「だから、これからも、 ずっと……、一緒にいてください。」 青山「オレと付き合って下さい。」 後ろから響を抱きしめる青山。 響「コウタくん……。」 抱き締められた腕を掴む響。 響の涙が青山の腕を濡らす。 響「ありがとう……。」 響「ありがとう……。」 青山は、響の身体の向きを変える。 青山「オレ、決めたから。」 青山「ワタルと一緒に暮らす。」 それを言われた響は、 更に大粒の涙が溢れる。 響「ずっと一緒ってこと??」 目を見て問いかける響。 青山「ずっと一緒ってこと!」 目を見て答える青山。 響「だーーーい好き!!!」 バッ!! 強く抱きしめる響。 それに答えるように、 優しく抱きしめる青山。 青山(オレは、ずっとヨリドコロを 探していたのかも知れない。 弱いのも、臆病なのも、ワタルじゃない。 オレだった。 でも、ワタルがそれを変えてくれた。 ワタルだから、変わったのかも知れない。 理由なんてどうだっていい。 ワタルのヨリドコロになれた。 オレのヨリドコロはワタル。 その事実だけでオレは……、) 青山(それでいい……。) おわり。

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