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エピローグ
大雨が降る朝だった。
雷が鳴る外を見た後、廊下を進んで部屋のドアをノックする。
「将満、雷が凄いです」
「ん~。雷落ちたら嫌だなぁ。雷ガード付きのタップ使ってるよな」
「はい。私のPCは大丈夫です」
「UPS(無停電電源装置)も繋げてるから在宅ワークは大丈夫のはずだ」
「ありがとうございます」
もうすぐ就業時間だ。オフィスカジュアルに着替えた里斗は、仕事部屋のPCを起動させて仕事の準備を始めた。
取引先から過剰な接待を要求され、経費横領だけでなくオンラインカジノにまで手を染めた営業が逮捕された、というニュースは職員に大きな衝撃を与えた。
営業第一課の係長や一色はネットニュースや新聞に顔写真付きで大きく載ってしまい、会社は一部の取引先を失うなど少なくない損失を被ってしまった。
社長が全職員宛に文書を出して経緯を説明し、会社としての管理体制の不備を謝罪。
今後の対策などに関する対策委員会も立ち上げられた。
同時に、営業部の部長や課長が減俸処分を受けるなど、暗いニュースが社内を駆け巡った。
「内定を出していた新採から内定辞退もあったんですよね」
なんとも苦しい結果になったが、残ったメンバーで信頼回復に努めていくしかない、と意思を固めたのだった。
「お陰様でというと変ですけど……、在宅ワークができるようになったんですよね」
マスコミに追われる職員も出てしまい、また、働き方を変えたいという声も多数出たお陰で、在宅ワークの整備が急速に進んだ。
これで悲鳴を上げたのが情報システム部門だ。
外部から社内システムにアクセスできるようにするのはリスクも高く、セキュリティ面でクリアすべき課題が多い。
ショートスリーパーを自負する将満でも泣き言を言うくらい忙しい日々が続いた。
しかし、そのお陰でほとんどの部門で在宅ワークが実現した。
経理課も恩恵を受けた課のひとつだ。
「さぁ……、静かで集中できる仕事の時間です」
里斗と将満は、会社近くのマンションに引っ越して同棲をスタートさせた。
部屋のネット環境は全て将満が担当。
本職が手がけただけあって、PCの性能も回線もベストな環境が揃った。お陰で出社するよりも快適に仕事が行えている。
マンションの部屋も広いところを借りたお陰で、狭いながら里斗と将満それぞれが「仕事部屋」を持っている。同時に異なるWeb会議に参加しても、干渉し合うことがなくて快適だ。
「今日は溜まっている決済処理を片付けましょう」
在宅ワークは通勤時間がゼロ。
たっぷりと睡眠時間を取れたお陰で体調は万全だ。
始業時間の数分前にシステムにログインし、早速、経理処理に取りかかった。
電話は鳴らず、横やりを入れて来る人も居ない。
静かな環境で集中して仕事に取り組めるので、非常に効率が良かった。
(こんなに一気に仕事を進められるなんて!)
どんどん仕事が片付いていくのが嬉しかった。
あっという間に昼を迎え、大きく伸びをしてから部屋を出た。一時間の昼休みは家で完全にリラックスできるから堪らない。
「里斗~」
キッチンで何を食べようか、と迷っていると、部屋から出て来た将満に抱き付かれた。
バックハグで髪に頬擦りしてくる大柄な恋人に里斗もギュッと抱き付いた。
「なに食べますか?」
「ん~……里斗がいい」
「はい?」
眠そうだな、なんて思いながら逞しい腕を撫でていると将満が耳元に囁いてきた。
「ちょ~っとだけでいいから、イイことしねぇ?」
「な、なんてこと言ってるんですか!」
「会社じゃ無理だけど、在宅だとできちゃうからいいよなぁ」
将満の手は既に服の下に入り込んでいた。キュッと胸の突起を摘まんでくる。
「ぁっ……」
「昨日の夜、相手してやれなかったし……」
「そ、それは……、あの……」
「キッチンで立ったままってどうだ?」
「っ!」
「そういうシチュもいいよな」
こういう時、将満は返事を待たない。
あっという間に服を乱され、その気にさせられてしまう。
「あ、あのっ! でもっ! ご、午後からWeb会議があって……」
「じゃぁ、見えるところに痕付けないようにする」
胸から滑り落ちた無骨な手が、双丘の間を滑った。硬い窄まりを撫でたと思うと、ツプンと入り込んで来る。一気に息が乱れ、妖しい期待で胸が躍る。
「ヤらしい顔にならないように、軽く一回だけにしような」
「んっ」
シンクと将満の間で窮屈さを感じながらも繋がり会う瞬間を心待ちにし、熱い吐息を吐いている時だった。
「!」
電話が鳴った。
将満の会社の携帯だ。
「あの……、鳴ってますっ」
「知ってる」
「で、出た方が……いいのでは?」
「昼休みだぞ」
「でも……っ」
しばらく密着していたが、しつこく鳴るので将満は渋々離れて電話に出た。
「あ? 落雷? システムが落ちた? ……復旧しねぇってどういうことだよ」
額に手を当てながら将満が声を上げた。緊急事態だ。
システムが復旧しないと仕事に支障が出てしまう。出社は避けられない。
渋い表情の将満がキッチンに戻ってきた。
「出社になった」
「雷ですね」
仕方がありません、と頷き返す。将満は長い口付けの後、出社準備を始めた。
「せっかく、二人一緒の在宅なのになぁ! 早く帰って来るから待っててくれ!」
本気で泣いてしまいそうな顔で将満が部屋を出て行った。
その背中を見送った里斗も、シュンと気落ちしてしまった。
仕方が無いと思っていても心から納得することはできない。
「中途半端に放り出されたら……」
体がむずむずします――。
そう心の中で呟いた後、里斗は自室に戻った。そして、そっとクローゼットの奥に手を伸ばすと黒と金でデザインされた箱を取り出す。
「少しだけ……」
解されてしまった秘所が疼いて仕方がないのだ。体の疼きを抱えたまま、午後の仕事はしたくない。
箱を開け、中の玩具を取り出す。見るだけで下腹部が熱を帯びた。
(少しだけ……、ほんとに少しだけっ)
そう自分に言い聞かせながらズボンを脱いだ。
ベッドに上がり、ローションを垂らして準備を始める。さっき、将満の指を迎え入れていた秘所は簡単に花開いた。
「将満……っ」
恋人の名を呼びながら、電動の玩具を取った。かなり太いサイズの玩具だ。
スイッチを入れると、低い音を立てながら豪快な動きを見せてくれた。
(玩具って……久しぶりです)
ゴクッと喉が鳴った。多めにローションを垂らせばすぐに挿れられるだろう。
ナカに挿れてスイッチを入れ、ハードモードで責めれば、すぐにイけるに違いない。
(やっとコレを試せる……)
妖しい期待に胸が躍る。
足を開き、先端を秘所に宛がった。
紫色の本体がゆっくりと秘所に埋没していく。
「うわっ……、すごく、エッチ……」
興奮で背筋がゾクゾクしてきた。箱に入っていたDVDも取り出した。
表紙を見ると、さらに興奮が高まった。青年がマッチョに囲まれて責められそうになっている。
「大好きなマッチョに囲まれて……、グイッて掴まれて……」
足を開くように促されて、大きな楔を打ち込まれるのだ。
「あぁぁぁぁっ」
玩具が深くまで入っていく。ゆっくりと抜き差しすると、ゴツゴツとした表面が擦れるのが伝わってきた。
「んっ、んんんっ」
ちょっと物足りない気がした。
「やっぱり……動いてもらいたいですよね……」
電動タイプを買って良かった――。
そう思いながらスイッチを入れた。
「ひゃぅっ!」
鈍い音を立てて玩具がうねった。激しく振動しながら内壁を押し広げてくる。
「ぁっ、ぃぃっ! んんんっ」
玩具を抜き差ししながら指に触れたスイッチを押した。モードが変わり、今度はピストン運動になった。
「ぁぅ! んっ! ぁっ! そこっ!」
こっちの方が好きかも――。
そんなことを思いながら、うつ伏せで穿たれる振動に身を任せていた時だった。
「おいおい~。そりゃねぇだろ」
「!」
将満の声が聞こえた。
あまりに驚き過ぎて息が止まるかと思った。
「ま、まままままさっ!」
「ただいま~」
「な、なん、でっ!」
慌てて起き上がり、ガバッと股を閉じた。
しかし、玩具は体の中に入ったまま。ヴィンヴィンと低い音が響いている。
「いや~、いっつも俺が出社するから、たまには別のヤツに出てもらおうって頼んだんだわ」
「え、あ、じゃ、じゃぁ……」
「俺は出なくてもよくなって、回れ右してきたって訳」
「そ、そうだったんだ」
「で、里斗はナニしてんだ?」
ニカッと笑みを作った将満がベッドに上がってきた。
「ぁっ、あのっ……それはっ、そのっ……」
「いい音してんなぁ。気持ちイイか、それ」
将満がベルトを外し、スラックスの前をくつろげた。天を突くような立派な猛りが露わになる。
「ご、ごめん、なさい……」
謝りながらも、秘所を穿たれる刺激に痺れていく体を止められない。
乱れた息を隠しきれないまま、目の前に迫った将満を見上げた。
「俺のために準備してたってことだよな?」
「あ、あの……、それは……」
「玩具と俺と、どっちが好き?」
仰向けになって足を開くよう促された。
玩具を咥え込んだ秘所を見られるのは恥ずかしいが、仕方がない。
(は、恥ずかし過ぎますっ!)
我慢できなかった自分に後悔の言葉を吐きながら、玩具を引き抜かれる喪失感に喉を鳴らした。
「まさみちぃ……」
涙目で見上げながら両手を下腹部に添えた。
「また、途中で止められたら……我慢できません……」
卑怯かもしれないが、泣き落としにかかった。
すると、将満がゴクッと喉を鳴らした後、のし掛かってきた。
「あぁ、クソッ! 昼休みだから一回だけ……辛いけど、一回だけだ」
「はい……」
「前からと後ろから……。どっちがいい?」
「ん……じゃぁ……後ろから……」
「分かった」
「後ろからいっぱい突いて……前もぐちゃぐちゃにして……」
「分かったよ。俺のシンデレラ」
獰猛さを帯びた声で答えた将満が期待に応えてくれる。
深々と突き込まれた剛杭に鳴きながら、里斗は淫らな幸せを噛みしめていた。
自分の欲も、本性も隠さなくていい幸せ――。
甘過ぎる幸せの絶頂に駆け上りながら、里斗は何度も恋人の名前を呼ぶのだった。
(了)
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